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【事例】
Aさんは、日本に永住資格で在留している外国人です。
Aさんは仕事として、従業員を募集している性風俗店から依頼を受け、性風俗店で働きたい女性に性風俗店を紹介するいわゆるスカウトの仕事をしています。
スカウトとして働き始めたのは、5年前で、これまで、500人くらいを風俗店に紹介し、紹介した女性一人につき5万円を報酬としてもらっていました。
ある日、Aさんが女性従業員を紹介した先の性風俗店が風適法違反で捜索を受けたことから、関係者として、Aさんが浮上し、Aさんは職業安定法違反の疑いで逮捕されました。
なお、Aさんに前科はありません。
参考報道 SNSで勧誘し風俗店に紹介、スカウトグループ「シード広告」のリーダーら4人を容疑で逮捕
このような事例の場合に、①Aさんはどのような刑事処分を受けるのか、②退去強制処分を受けるのかについて解説していきます。
(1)職業安定法違反に対する刑事処分
職業安定法63条2号によれば、「公衆衛生又は公衆道徳上有害な業務に就かせる目的で、職業紹介、労働者の募集、募集情報等提供若しくは労働者の供給を行い、又はこれらに従事したとき。」には処罰されることが規定されています。
そのため、女性に性風俗店を紹介する業務を行うこと、つまり、スカウトとして働くことは職業安定法63条2号に違反することになるとされています。
今回のAさんは、スカウトとして働き、女性を性風俗店に紹介していることから、職業安定法63条2号に違反していると判断されます。
この職業安定法63条2号違反についての法定刑は1年以上10年以下の懲役又は20万円以上300万円以下の罰金が予定されています。
職業安定法違反の量刑については、①活動期間、②収益額、③強制的に働かせるような体制ではなかったかなどから判断されます。
①については、活動期間が長ければ長いほど重く見られます。
②については、収益額が高ければ高いほど重く見られます。
③については、強制的に働かせているような事情があれば、重く見られます。
今回のAさんについては、活動期間が5年やや長く、これまで合計約2500万円を稼いでいること、強制的に働かせたような事情はないことから、執行猶予付きの有罪判決になることが予想されます。
(2)退去強制処分を受けるかについて
入管法24条4号ハによれば、「人身取引等を行い、唆し、又はこれを助けた者」については、退去強制処分を受けることが規定されています。入管法2条7号には人身取引の定義が書かれており、その中に、売春の紹介、あっせんなどは含まれていません。あくまで、人を捕まえて、売買したり、捕まえた人を買った人などに送り届けることなどが「人身取引」に当たります。
なので、単純にスカウト行為を行い、性風俗店に紹介したというのでは、入管法24条4号ハには当たりません。
そのため、入管法24条4号リに該当するかどうかが問題となります。入管法24条4号リによれば、1年以上の実刑判決を受けた場合には、退去強制処分となることが規定されています。
今回のAさんの事例の場合、執行猶予付きの有罪判決が予想されることから、退去強制処分にはなりにくいということが予想されます。
(3)弁護士にできること
このような処分が予想されることから、弁護士にできることとしては、①Aさんの反省や今後の仕事を探して反省させるなどして、刑事裁判でなるだけ有利な判断をしてもらうこと、②実刑判決とならないよう求めることが考えられます。
このように、弁護士を入れることで、有利な判断を得られる可能性がありますので、職業安定法違反で捕まった場合などは早めに弁護士に相談されることをお勧めします。
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