同性婚の場合の在留資格はどうなるのか?その2

2022年9月30日,日本人と同性婚をした外国籍の方が,国を被告として起こしていた裁判について判決の言い渡しがあり,外国籍の方の主張について一部容れた判断をしたという報道がありました。

報道:日米同性カップル、定住資格認めず 「特定活動」を与えないのは違法 朝日新聞デジタル

訴訟の内容

訴訟において訴えていたのは,「定住者」としての在留資格を付与するように,というものです。

そもそも,日本にいる外国人同士の方で同性婚をしている方については,「特定活動」としての在留資格を認めています。しかし,日本人と外国人とが同性婚をした場合の扱いについては何も規定がありませんでした。

この訴訟で原告となった外国籍の方も,日本人の方と同性婚をした後,入管で「定住者」の在留資格の変更を申請しましたが,入管はこの申請に対して不許可処分としていました。

訴訟の中で外国籍の方は,異性婚であれば「日本人の配偶者等」として在留資格が認められるのだから同性婚の場合にも同様に保護されるべき等と言った主張をしていました。

判決の内容

判決の主文としては,原告の外国籍の方の訴え(定住者としての在留資格を付与する)を認めたものではありませんでしたが,入管の対応について違法があった事を認めました。

違法とされた点は,「外国人同士の同性婚」と「日本人と外国人の同性婚」で扱いという部分で,このように扱いが違うのは法の下の平等を定めた憲法14条の趣旨に反する,とまで判断しました。そして,同性婚に対して,「日本人の配偶者等」と同じ在留資格までは認められないものの,外国人同士の同性婚と同じ「特定活動」の在留資格を認めなかったのは違法である,と判断をしました。

直接の憲法の違反であるとまでは言いませんでしたが,憲法14条に言及して入管の対応について違法な点があったとまで触れた点は,一歩踏み込んだ判決であるといえるでしょう。裁判において憲法論を扱う,それも,憲法に違反するかもしれないという判断をするということは,先例としても大きな意味を持つ裁判例になります。

判決文の全文は公開されていないため,それ以上の詳しい主張や証拠については分からないところですが,報道などによれば,今後の入管における取扱いとして,日本人と外国人との同性婚において,外国人の方に対しては「特定活動」の在留資格を付与することとなっているようです。また,原告となった外国籍の方は,「定住者」の在留資格が認められなかった点について不服が残るので控訴を申し立てるとのことです。

定住者と特定活動との違い

定住者とは,日本とのつながりや活動内容に応じて,法務大臣が個別の事情を考慮して付与する在留資格です。

定住者ビザ

「定住者」の在留資格は,就労ビザや留学ビザなどと異なり,基本的には職業に制限がありません。また,定住者として「3年」以上の在留期間がもらえていれば,「永住者」へ在留資格の変更ができる場合があります。

定住者と特定活動の在留資格との大きな違いとして,この,永住者への変更のしやすさというものがあります。

定住者の場合には「3年」以上の在留期間で良いのですが,「特定活動」の場合には「5年」の在留期間が認められないと永住者への変更ができない場合があります。より早く永住者の在留資格を得られるのは「定住者」の方になります。

上記の報道のあった事件で原告の方が「定住者」の在留資格を求めて争っている理由の一つとして,永住者の在留資格の得やすさという点も考慮されているのかもしれません。

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