前回の解説記事にて,「家族滞在」の在留資格の取得に必要な手続きを解説をしました。
その中で,「永住者の配偶者等」と「家族滞在」の在留資格に似ている部分があることについて触れました。
この記事では,その,「永住者の配偶者等」と「家族滞在」の違いについて具体的に解説をしていきます。
「永住者の配偶者等」と「家族滞在」の共通点
まず,この二つのビザについて共通している点があります。
それは,外国人の家族であることによって認められる在留資格であるということです。
基本的に,日本での在留資格は,「その人の日本での活動内容」によって判断されます。
お医者さんであれば「医療」,エンジニアであれば「技術」の在留資格,といったように,日本での活動内容が重要になります。
しかし,この上記の在留資格の場合,日本で在留したいと思うその人の活動内容だけでなく,「その家族の活動」によって在留資格が認められるかどうかが変わってくるのです。
「永住者の配偶者等」であれば,その家族が「永住者」でなければなりませんが,在留資格を申請する家族側は永住者でなくても構いません。
「家族滞在」の場合,その家族が一定の在留資格をもって日本で在留している場合でなければなりませんが,在留資格を申請する家族側は「その家族である」ことさえ明らかにできればよいのです。
いずれの在留資格も,「日本にいる外国人が,自分の家族を日本に呼び寄せたい」という時に大きく機能するものになります。
「永住者の配偶者等」と「家族滞在」の違い
この二つの在留資格の違いとしては,
①在留資格が認められる場合の条件
②家族側が日本で働くことができるかどうか
という点に現れます。
まず,①在留資格が認められる場合の条件についてですが,結論としては,「永住者の配偶者等」の方が在留資格の取得自体は簡単です。
「家族が永住者であること」と,「その永住者の配偶者/子供であること」だけを示せばよいからです。
一方,家族滞在の在留資格の場合,家族の在留資格,その家族であることに加えて,「家族の収入によって日本で一家が生活していけること」を示せなければなりません。
つまり,「家族滞在」の在留資格を取得しようと思うと,収入面での審査がされるということになります。
次に,②家族側が日本で働くことができるかという点についてですが,「永住者の配偶者等」であれば,日本での活動内容に制限はありません。
正社員として働くこともできますし,アルバイトやパートタイムで働くこともできます。業種についても特に制限はなく,専門知識が必要な仕事でもよいですし,単純作業のみの仕事でも構いません。「永住者の配偶者等」という身分が続いている限りは,日本での働くことについては自由と言えます。もちろん,法律に反するような仕事ではいけません。
一方,「家族滞在」の在留資格の場合,基本的には働くことはできません。働いて給料や報酬をもらおうと思う場合には,資格外活動許可を受けなければなりません。
「家族滞在」の在留資格を持っていたとしても,資格外活動許可を受けないで働いて給料をもらってしまうと,「資格外活動」をしているとして在留資格を取り消されてしまったり,不法就労行為として逮捕されてしまったりする可能性があります。
また,外国人を雇用する側としても「日本人/永住者の配偶者等」と「家族滞在」の在留資格の違いをよく理解しないで同じもとだと考えてしまうと,場合によっては「不法就労助長罪」に当たり処罰されてしまう可能性もあります。「そんな法律の細かいことは知らない」という方もいるかもしれませんが,残念ながら実際の実務では「法律を知らなかった」という主張は認められませんので,外国人の方を雇用するのならば事前によく確認をしてきちんと自己防衛をしておかなければなりません。