【事例】
Aさんは,永住者の資格で日本に在留している外国人です。
Aさんは,数年前から週に一回くらいの頻度で女子高校生のスカートの中をスマートフォンで盗撮し,撮影した画像を自宅のパソコンの「昆虫図鑑」という名前のフォルダに保管,保存していました。
ある日,これまでと同様に無音カメラアプリを使ってスカートの中にスマートフォンを差し入れ,撮影したところ,自分の背後にいた男性に見つかり,逮捕されてしまいました。
なお,Aさんに前科はありません。
このような場合に,①どのような刑事処分になるのか,②退去強制処分になってしまうのかについて解説していきます。
このページの目次
(1)性的姿態等撮影罪の刑事罰
性的姿態等撮影罪というのは,性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の映像に係る電磁的記録の消去等に関する法律2条1項各号に規定される罪で,簡単に言えば盗撮行為を取り締まる法律です。
これまで盗撮に対しては各都道府県の条例が適用されるのみでしたが,法改正によって「盗撮罪」が法律として規定されました。
この規定によれば,盗撮行為を行った場合には3年以下の懲役又は300万円以下の罰金が予定されています。
このような犯罪が成立した場合の量刑については,①何回同様の行為を行ったのか,②どのような手段で盗撮を行ったのか,③前科があるか,④示談はしたのかなどによって判断されます。
①については,同様の行為を行った回数が多いほど,重く見られます。
②については,靴の中に小型カメラを隠し,盗撮するなど巧妙な手段であれば,重く見られます。
③については,同種の前科があれば,重く見られます。
④については,示談が成立する場合,被疑者に有利に見られます。
今回のAさんの事例の場合,同様の行為を行っていることが不利な事情になります。しかし,前科が無いこと,巧妙な手段によるものではないという不利にはならない事情があります。
そのため,今回のAさんの事件については,罰金刑を受ける可能性が高い事件であるということが言えます。
また,示談をするということも考えられますが,起訴前に示談が成立した場合,不起訴処分となる可能性があります。
(2)退去強制になるのか
Aさんは永住者であることから,入管法24条4号リに基づき,懲役1年を超える実刑判決を受けた場合でなければ退去強制処分になることはありません。
そのため,今回の前科のないAさんが退去強制処分を受けることは考えにくいです。
しかし,刑事処分を受けた後も繰り返し盗撮を行うと,実刑判決を受けることが考えられます。
(3)弁護士として出来ること
このような刑事処分を受けることから,弁護士としては,①取調べの際には他の画像について詳しいことを話さないことをアドバイスすること,②示談交渉を行い,不起訴処分を求めることが考えられます。
①というのは,取調べの際には覚えていないことを覚えていたというような形で話してしまい,より被疑者にとって不利益な判断をされる可能性があります。そのため,取調べのアドバイスとして,他の画像について詳しい子をと話さないようにすることが重要になります。
②というのは,起訴前に示談を成立させた場合,被害回復が済んでいることを理由として,不起訴処分となる可能性があります。この際の示談交渉を弁護士が行うということができます。示談交渉というのは,弁護士が介入した方がスムーズに進みますので,示談交渉をしたいということであれば,弁護士に依頼する方が良いと考えられます。
このように対応できることから,取調べに当たってのアドバイスを求めたい,示談をしてほしいということであれば,迅速に弁護士に依頼することをお勧めします。
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