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名誉毀損をしたら永住者になれなくなるのか,刑事事件がビザに与える影響,強制送還の可能性を解説

2024-01-24

(事例はフィクションです)
Aさんは日本で通訳として「技術,人文知識・国際業務」のビザをもって働いていました。
ある日,Aさんは仕事や家庭の問題がうまくいかず,インターネットで有名人のSNSにたくさん誹謗中書・悪口を書き込んでしまいました。
このことでAさんは警視庁丸の内警察署で取調べを受けることになってしまいました。
Aさんは将来,永住資格を取ろうとしていたのですが,警察から取調べを受けたことがどのように影響するのか不安になりました。

就労ビザで在留している方で,警察から呼び出しを受けたという場合や,急に自宅にやってきたという場合には,すぐに刑事事件に強い弁護士にご相談ください。
刑事事件の段階ですぐに対応することは,ビザを守ることにもつながります。

名誉毀損の罪

名誉毀損は刑法230条に該当する犯罪で,3年以下の懲役又は50万円以下の罰金が科せられます。
現在,誰でもSNSやインターネット掲示板を通じて情報発信ができるようになったことで,「他人の悪口」も簡単に発信できるようになりました。
ちょっとした悪口/いたずらのつもりであったとしても,その内容によっては名誉毀損に該当し,犯罪が成立してしまいます。
Aさんのように警察から呼び出しを受けて取調べに行く場合もあれば,いきなり警察官が自宅にやってきて逮捕されたり,自宅の中の捜索を受けたりすることもあります。

名誉毀損の罪で強制送還になるか

日本の出入国管理法では,名誉毀損の罪によってすぐに強制送還の対象になるという規定はありません。
名誉毀損の罪は刑法の「34章」にありますが,出入国管理法には刑法の34章に関する規定を置いていないからです。
ただし,名誉毀損の罪によって将来強制送還となってしまう場合はあります。
一つ目は逮捕されてしまった場合です。
逮捕されてしまうことで,仕事をクビになったり,そうでなくとも退職せざるを得なくなってしまう場合があります。
Aさんのような就労ビザworking-visaで日本に在留している人の場合,仕事がなくなってしまうことで,その後の在留資格がなくなってしまったり,更新ができなくなってしまうということがあります。
また,逮捕されている間にビザの有効期間が過ぎでしまうとオーバーステイとなってしまいます。オーバーステイになると,そのまま出入国管理局での強制送還手続きが始まってしまうことになります。強制送還の手続きが始まると,新しくビザの申請をしたり,別のビザに変更したり,ビザの更新をしたりすることができなくなります。
二つ目は起訴されてしまった場合です。
逮捕されなかったとしても,起訴されて有罪の判決を受けてしまった場合には前科がついてしまいます。
前科の内容が1年を超える懲役刑だった場合には,名誉毀損の罪であったとしても強制送還の対象になります。
また,前科がついてしまうことで,ビザの変更や更新が認められにくくなってしまうというデメリットがあります。
名誉毀損の罪によってすぐに強制送還になってしまう可能性は低いですが,ビザには多大な影響が発生します。
名誉毀損の罪によって取調べを受けたり,警察から呼び出されたりした,いきなり警察官が自宅にやってきたという方は,すぐに弁護士に相談した方が良いでしょう。

永住資格はどうなるか

永住者として認められるためには,いくつかの条件があります。
永住者の条件についてはこちらのページでも詳しく解説をしています。

永住者ビザ(永住許可)

また,出入国管理局も永住者の申請についてガイドライン(こちらのリンクから開けます)を提供しています。
名誉毀損をしてしまった場合,永住者の条件のうち,「素行の善良性」という条件が問題になります。
素行の善良性とは,日本で在留している間の生活に法的な問題がないかどうかという点に関する条件です。
素行の善良性は,有罪判決を受けたことがあるかどうかという点でまず審査されます。
そのため,名誉毀損の罪によって有罪判決を受けたことがあるとなると,素行の善良性を満たさず,永住者の在留資格が認められない可能性があります。
一方,逮捕されたり取調べを受けたりしたとしても,有罪の判決を受けていなければ,前科はつかないことになるため,その他条件を満たしていれば永住申請が認められる可能性も十分にあります。
永住資格を目指すのであれば,前科が付かないようにすること,が一番大切です。

名誉毀損の罪への対応

それでは,Aさんのような立場の方はどのような対応が必要になるでしょうか。
何よりも,被害者との示談交渉が必要不可欠です。
名誉毀損罪の罪について,起訴されるかどうかは示談ができているかどうかによって大きく左右されます。
被害者との間できちんと示談ができており,相手に対して誠意のある対応をしていること,被害者からも許しを貰っていることが証明できれば,起訴されず前科が付かないで解決できる可能性もあります。一方,示談ができていない場合,被害者の処罰感情が強かったケースなどでは起訴されて裁判になってしまうこともあります。
名誉毀損の事案で被害者と示談交渉をするには,弁護士などの専門家のサポートが不可欠です。
そもそも,弁護士でないと被害者の連絡先を聞けないこともあります。
Aさんのように,将来永住者としての申請を考えている方の事案では,警察から呼び出しを受けた時点ですぐに弁護士と相談して,示談交渉を進めた方が良いでしょう。
示談は速やかに行わなければなりません。裁判で罰金を払った後の示談では遅すぎるのです。裁判の後に示談をしたとしても,既に払った罰金は返ってきませんし,前科も付いたままです。
就労ビザで在留している方で,警察から呼び出しを受けたという場合や,急に自宅にやってきたという場合には,すぐに刑事事件に強い弁護士にご相談ください。
刑事事件の段階ですぐに対応することは,ビザを守ることにもつながります。

酒気帯び運転で前科が付くと在留資格が更新できなくなる?刑事事件に強い弁護士事務所が解説

2023-12-06

事例(フィクションです)

日本人の配偶者という在留資格で日本に滞在しているAさんは、適法な運転免許証を所持し、自家用車を保有していました。
ある日、Aさんは、友人宅で飲酒をした後、そのまま自家用車で帰宅したところ、帰宅途中の道路で警察官に呼び止められ、そのまま呼気アルコール濃度の検査を受けることになりました。
検査の結果、Aさんの呼気からは1リットル当たり0.2mgのアルコールが検知され、Aさんは酒気帯び運転で検挙されてしまいました。
このとき
①Aさんが受ける刑事罰はどのようなものになるか
②①の刑事罰は、Aさんの在留期間の更新時に影響があるか、若しくは退去強制処分となるか

以上の点について解説していきたいと思います。

酒気帯び運転の刑事罰

道路交通法第65条1項により、何人も酒気を帯びて車両等を運転してはならないこととされています。この「酒気を帯びた」かどうかの判断は、呼気アルコール濃度によって行われ、呼気1リットル当たり0.15mg以上のアルコールが含まれていた場合には、酒気帯び運転として刑事罰の対象とされます。
酒気帯び運転の罪の法定刑は、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金とされています(道路交通法117条の2の2第3号)。
酒気帯び運転の罪の場合、初めて刑事罰を受けるような場合であれば、略式起訴という簡単な手続きにより罰金刑となることが多いです。
ここから先は、Aさんが罰金30万円の刑となったことを前提として解説していきます。

日本人の配偶者の在留資格について

 在留期間の更新は「更新を適当と認めるに足りる相当の理由があるとき」(出入国管理及び難民認定法21条2項)に認められますが、この認定にあたっては、出入国在留管理庁によるガイドラインがあります。
 このガイドラインによると、在留期間の更新が許可されるのは
1 行おうとする活動が申請に係る入管法別表に掲げる在留資格に該当すること
2 法務省令で定める上陸許可基準等に適合していること(別表第1の2の表又は第4の表に掲げる在留資格の下欄に掲げる活動を行おうとする者)
3 現に有する在留資格に応じた活動を行っていたこと
4 素行が不良でないこと
5 独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有すること
6 雇用。動労条件が適正であること
7 納税義務を履行していること
8 入管法に定める届出等の義務を履行していること
とされています。
 このうち4の部分には「素行については,善良であることが前提となり,良好でない場合には消極的な要素として評価され,具体的には,退去強制事由に準ずるような刑事処分を受けた行為,不法就労をあっせんするなど出入国在留管理行政上看過することのできない行為を行った場合は,素行が不良であると判断されることとなります。」との記載がなされています。
 今回Aさんは、道路交通法違反により刑事処分を受けています。
 そこで、まずこの刑事処分がAさんにとって「退去強制事由」になるかどうかを見てみます。
 Aさんは「日本人の配偶者」ですので、入管表別表第2に記載されている在留資格を有しています。この在留資格の場合には、「無期又は1年を超える懲役若しくは禁錮に処せられた者」(入管法24条4号リ)に該当する場合には、罪名関係なく退去強制を受ける事由となります。
今回のAさんの場合には、罰金30万円となっています。罰金刑は、懲役の刑よりも軽い刑罰となっていますので、この4号リには該当しませんから、Aさんにとっては退去強制事由には該当しないということになります。
 次に、Aさんの罰金が退去強制事由に「準ずる」刑事処分とまで言えるかどうかが問題となります。この点について、定住者告示3号等に該当する者の素行要件についての審査要領では「日本国又は日本国以外の国の法令に違反して、懲役、禁錮若しくは罰金又はこれらに相当する刑(道路交通法違反による罰金又はこれに相当する刑を除く。以下同じ。)に処せられたことがある者(以下略)」とされています。
 この審査要領は一般の在留期間の更新にも該当すると考えられます。そのため、Aさんの場合には、道路交通法違反による罰金刑を受けているだけですから、かっこ書きの中にある「道路交通法違反による罰金」に該当しますので、素行不良要件には該当しないと考えられます。
 よって、現在の資格である「日本人の配偶者」資格の期間を更新するにあたっては、酒気帯び運転による罰金刑は大きな問題とはならないと考えられます。
 ただし,永住許可を申請する時には,罰金前科があることはマイナスの事情になってしまいます。
出入国管理庁は永住許可の審査についてガイドラインも公開しています。ガイドラインはこちらです。
日本人配偶者の在留資格で在留している方の多くは,ゆくゆくは永住許可を取って長く日本に在留することを希望しています。
罰金刑の前科が付くかつかないかで,今後の手続きに影響が出てくるという方は,早いうちに弁護士に相談する必要があります。

永住者ビザ(永住許可)

酒気帯び運転で検挙されると永住許可が認められなくなるのか?刑事事件に強い弁護士事務所が解説

酒気帯び運転で検挙されると永住許可が認められなくなるのか?刑事事件に強い弁護士事務所が解説

2023-11-29

事例

(フィクションです)

日本人の配偶者という在留資格で日本に滞在しているAさんは、適法な運転免許証を所持し、自家用車を保有していました。
ある日、Aさんは、友人宅で飲酒をした後、そのまま自家用車で帰宅したところ、帰宅途中の道路で警察官に呼び止められ、そのまま呼気アルコール濃度の検査を受けることになりました。
検査の結果、Aさんの呼気からは1リットル当たり0.2mgのアルコールが検知され、Aさんは酒気帯び運転で検挙されてしまいました。
このとき
①Aさんが受ける刑事罰はどのようなものになるか
②①の刑事罰は、Aさんが永住権を得るときに影響するか
以上の点について解説していきたいと思います。

永住権への影響

⑴酒気帯び運転の刑事罰

道路交通法第65条1項により、何人も酒気を帯びて車両等を運転してはならないこととされています。この「酒気を帯びた」かどうかの判断は、呼気アルコール濃度によって行われ、呼気1リットル当たり0.15mg以上のアルコールが含まれていた場合には、酒気帯び運転として刑事罰の対象とされます。
酒気帯び運転の罪の法定刑は、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金とされています(道路交通法117条の2の2第3号)。
酒気帯び運転の罪の場合、初めて刑事罰を受けるような場合であれば、略式起訴という簡単な手続きにより罰金刑となることが多いです。
ここから先は、Aさんが罰金30万円の刑となったことを前提として解説していきます。

⑵永住権を取得する際に影響が出るか

 現在Aさんは「日本人の配偶者」という資格で在留しています。
 この後、Aさんが「永住者」資格へ資格の変更を考えるとした場合、今回の罰金前科は何らかの影響が出るのでしょうか。
 永住者については、入管法22条に定めがあり、要件は
①各号のいずれにも適合すること
 1号 素行が善良であること
 2号 独立の生計を営むに足りる技能を有すること
②その者の永住が日本国の利益に合すること
とされています。

出入国管理庁は永住許可の審査についてガイドラインも公開しています。ガイドラインはこちらです。

また,本HPでも永住者の在留資格について解説をしています。

永住者ビザ(永住許可)

 しかし、「その者が日本人、永住許可を受けている者又は特別永住者の配偶者又は子である場合においては、次の各号に適合することを要しない」(入管法22条2項但書)とされています。このような場合には、上記の要件のうち①の要件は不要ということになります。
 今回のケースでAさんは「日本人の配偶者」ということですから、この但書が適用されることになります。よってAさんが永住者の在留資格を得られるかどうかは、この②の要件を満たすことができるかどうかということにかかっています。
 では、この「日本国の利益に合すること」(国益適合要件)を満たすといえるのはどのような場合でしょうか。
 この点について、入管の審査要領においては

  • a 原則として引き続き10年以上日本に在留し、この期間のうち技能実習等を除く就労資格又は別表第2の資格を以て直近において引き続き5年以上在留していること
  • b 公的義務(納税、入管法上の手続きなど)を適正に履行していることを含め、法令を遵守していること
  • c 現に有している在留資格について、規定されている最長の在留期間をもって在留していること(例外有)
  • d 公衆衛生上の観点から有害となるおそれがないこと
  • e 著しく公益を害するおそれがないと認められること
  • f 在留特別許可又は上陸特別許可を受けた者の場合には一定の条件を満たすこと
  • g 原則として公共の負担となっていないこと

をポイントに審査されてることとなっています。
 今回のように刑罰を受けている場合には、eの要素が問題となります。
「日本国の法令に違反して、懲役・禁錮若しくは罰金に処せられたことがあること」は、eの要件を満たさない可能性が高いと言えます。但し、罰金については「その執行を終わり(中略)5年を経過し(中略)たときは、これに該当しない者」と考えられます(刑法34条の2)。
 Aさんは日本人の配偶者であるため、「素行善良」の要件は問題となりません。しかし、国益適合要件は問題となりますので、前科の有無はこの場面で問題となります。
 ただ、このeの要素を考慮する際には、罰金刑があるからといって一律に永住権を付与しないわけではなく、罰金刑を受けた原因やその金額などによって判断をされる傾向にあるようです。
 今回のような道路交通法違反の場合には、これがあるだけで直ちに永住権が付与されないと言われるまでのものとは考えられませんが、他の要素の兼ね合いで不許可となることも想定されます。
 仮に永住申請が不許可となってしまった場合には、刑法34条の2に従い、罰金を納付した日から5年を経過したタイミングで、再び永住申請をしていただく必要があります。

外国人による公然わいせつ事案の法律解説

2023-11-15

外国人の方がしてしまった公然わいせつも,日本国内においては日本人と同様に処罰されてしまいます。

特にスポーツの応援などから気分が盛り上がってしまい公共の場で露出をしてしまったという事案や,仕事等のストレスから夜間に路上で露出をしてしまうという事案があります。

日本に在留する外国人の方が公然わいせつをしてしまったという事例を基に,刑事手続やビザへの影響について解説をします。

参考事案 公然わいせつ容疑で男性を逮捕 大分 BS大分放送

公然わいせつ罪についての詳しい解説はこちら

公然わいせつ罪の定義

公然わいせつ罪は、日本の刑法第174条に定められています。この罪は、「公然と」「わいせつな行為」を行うことによって成立します。

「公然」とは、不特定または多数の人が認識しうる状態を指します。この定義には、実際に多数の人に認識されたことは必要なく、認識される可能性がある状況が含まれます。例えば、公園や路上での性器露出などがこれに該当します。周囲に人がいなかったとしても、通行人が通れば認識される可能性があるため、「公然と」に該当します。

「わいせつな行為」とは、性的な行為であり、普通人の正常な性的羞恥心を著しく害し、善良な性的道義観念に反するものを指します。これには、性器の露出や性的な行為が含まれます。行為者自身や他者の性欲を刺激、興奮させる動作がこれに該当します。

公然わいせつ罪は、社会の健全な性風俗を守るための規定と解されており、時代背景や行為の目的など様々な事情を考慮して判断されます。この罪には、6ヶ月以下の懲役、30万円以下の罰金、拘留、または科料が科されることがあります。

外国人による公然わいせつ

公然わいせつ罪の具体的な事例として、外国人による公然わいせつ行為を考えてみましょう。

事例の紹介

(以下の事例はフィクションです)

ある外国籍の男性Aさんが、夜間に酒に酔って全裸で東京都内の路上を走り、警察に逮捕されました。この行為は、公然として周囲の人々に認識され得る状態で行われたため、公然わいせつ罪に該当します。

法的問題点の分析

この事例では、外国人であるがゆえの文化的背景や意図が考慮される可能性があります。

しかし、日本の法律は行為の性質と公共の場での行為の影響を重視します。公然わいせつ罪の判定においては、行為が普通人の正常な性的羞恥心を著しく害し、善良な性的道義観念に反するかどうかが重要な判断基準となります。

この事例においては、文化的な誤解や知識不足により行動した可能性があるため、法的対応においては教育的な側面も考慮されるべきです。また、被告人が再犯を防止するための環境を整えること、例えば専門のカウンセリングを受けることも重要です。

法的な対応と刑罰

このような事例での公然わいせつ罪に対する法的な対応と刑罰について詳しく見ていきましょう。

公然わいせつ罪の法定刑

公然わいせつ罪(刑法第174条)には、以下のような刑罰が定められています。

  • 6ヶ月以下の懲役
  • 30万円以下の罰金
  • 拘留(1日以上30日未満の間、刑事施設に拘置する自由刑)
  • 科料(1000円以上1万円未満の金銭を強制的に徴収する刑罰)

刑事手続とAさんのビザ

逮捕されたAさんはその後,48時間以内に検察庁へ,さらにその後24時間以内に裁判所へ送られ,最大20日間の勾留を受けるかどうかの審判を受けます。

勾留されたとしても,釈放されたとしても,その後の捜査の結果として,罰金刑や懲役刑を受けて,日本での前科がついてしまう可能性があります。

長期間の身体拘束を受けてしまうと,仕事等に行けないだけでなく,出入国管理局での必要な手続きも出来なくなってしまいます。例えばビザの取得,更新,変更等のような窓口での手続きが行えないと,場合によってはオーバーステイとなってしまうことがあります。逮捕や勾留をされている間にオーバーステイとなってしまうと,入管からは強制送還の処分を受けるリスクがあります。

また,罰金や前科がついてしまうことで,その後のビザの更新・変更が不許可となったり,強制送還のリスクが生じてしまいます。

総じて,刑法犯によって逮捕されるということは,外国人の方にとって強制送還リスクを高めるものなのです。

逮捕された直後から弁護士への早急な相談を行いましょう。早期から弁護士が活動することによって

  • 逮捕後の身体解放
  • 勾留期間の短縮
  • 刑事処分の回避

といった,ビザへの影響を最小限にするための弁護活動も行える場合があります。

東京都内で逮捕された外国人の方の面会についてはこちらからもご相談いただけます

強制送還を避けて日本に滞在するためのビザについてはこちらでも解説しています。

外国人の逮捕の問題点

示談と被害者への対応

公然わいせつ罪における示談の重要性と被害者への対応について詳しく見ていきましょう。

示談の重要性

公然わいせつ罪の場合、示談は法的解決に向けて重要なステップとなります。示談は、被害者と加害者双方が合意に達し、被害者が加害者に対する告訴を取り下げることを意味します。示談が成立すると、裁判所はこれを量刑の際に考慮することが一般的です。起訴される前であれば,不起訴の処分を得られる可能性が高まります。

示談は、被害者の精神的な苦痛を和らげ、加害者にとっても刑事責任を軽減する機会を提供します。

示談のプロセス

示談のプロセスには、被害者への謝罪、弁償の提案、合意書面の作成といった準備進みます。

このようなプロセスは、弁護士が代理人として行うのが望ましいです。

被害者への対応

公然わいせつ罪の被害者への対応は、精神的なケアが重要です。被害者は、性的な羞恥心やトラウマを抱えることがあり、適切なサポートと理解が必要です。加害者による誠実な謝罪や弁償は、被害者の心の傷を癒す一歩となり得ます。

示談は、公然わいせつ罪における法的解決の一環として、被害者の感情的な回復と社会的な和解を促進する重要な役割を果たします。このプロセスを通じて、被害者と加害者双方にとって公正で納得のいく解決が図られることが望まれます。

外国人加害者の再犯防止と社会復帰

公然わいせつ罪において外国人加害者の再犯防止と社会復帰の重要性に焦点を当ててみましょう。

外国人加害者に特化した再犯防止措置

外国人加害者の場合、再犯防止措置は文化的背景と言語の違いを考慮する必要があります。異文化間コミュニケーションや文化的適応に関するカウンセリングも重要となります。これらの措置は、加害者が日本の社会規範を理解し、将来的に同様の過ちを犯さないようにするために不可欠です。

外国人加害者の社会復帰支援

外国人加害者の社会復帰支援には、言語教育や職業訓練が含まれます。これらの支援は、加害者が日本社会での生活に適応し、健全な生活を送るための基盤を築くのに役立ちます。また、文化的適応を支援するプログラムも、外国人加害者にとって重要です。

外国人加害者の社会復帰の重要性

外国人加害者の社会復帰は、彼らが日本社会の一員として再び機能する機会を持つことを意味します。これは、文化的な違いを乗り越え、再犯のリスクを減らすために重要です。外国人加害者に対する社会復帰支援は、彼らだけでなく、日本社会全体の安全と健全性を保つためにも重要な役割を果たします。

外国人加害者に対する再犯防止と社会復帰支援は、文化的な違いを理解し、個人の改善と社会の安全を両立させるための重要なステップです。これらの措置を通じて、外国人加害者が日本社会の有益なメンバーとして機能する道を築くことができます。

まとめ

公然わいせつ罪に関わる事案においては、弁護士への早期相談が非常に重要です。

弁護士は、法的な側面からのアドバイスを提供し、加害者や被害者の権利を保護する役割を果たします。

特に外国人が関与する場合、言語の壁や文化的な違いによる誤解を避けるためにも、専門家の介入が不可欠です。早期の法的介入により、適切な法的対応が可能となり、示談の成立や社会復帰の道がスムーズに進むことが期待されます。

外国人による住居侵入罪と日本の刑事手続き

2023-11-11

外国人が日本で住居侵入罪を犯した場合、日本の刑事手続きに従って処理されます。

この記事では、その手続きの流れと、外国人が直面する可能性のある法的な問題について解説します。

1. 住居侵入罪とは

この罪は、他人の居住する場所や他人が管理している建造物等に無断で立ち入る行為を指し、刑法第130条によって禁止されています。

外国人がこの罪を犯した場合、その法的責任は日本国民と同様に問われます。

しかし、文化的背景や法律に対する理解の違いから、外国人が無意識のうちにこの罪を犯してしまうこともあります。

具体的には、「人の住居、法律上その住居に準ずる場所、または人が一時的に居住する場所に、正当な理由なくして侵入した者」を処罰の対象としています。

外国人がこの罪を犯す場合、意図的であれ計画的であれ、法的責任を免れることはできません。

日本においては、文化的な誤解や言葉の壁が原因で、外国人がこの罪を犯す事例が報告されています。

2. 事例

(次の事例はフィクションです)
ある米国籍の男性が、大阪の住宅街で、門が開いている一軒家に入り、庭を散策しました。住民の方が通報したところ警察官がやってきて,現行犯人逮捕されてしまいました。

この行為は、家主の許可なく私有地に侵入したため、住居侵入罪に該当します。

男性は、文化的な誤解により、開いている門は歓迎の意味だと解釈していましたが、日本の法律では、明確な許可なく私有地に足を踏み入れることは禁止されています。

このようには、文化的な違いから意図せず日本の刑法に触れてしまったという事例もあります。

3. 逮捕から起訴まで

外国人が住居侵入罪で逮捕された場合、日本の刑事訴訟法に従って手続きが始まります。逮捕された瞬間から、被疑者は法的な権利を有し、弁護士との相談を求めることができます。

警察は最長で48時間の逮捕後、検察官・裁判所の判断により最大23日間の勾留がなされます。

この期間中に、警察と検察官は事件の事実関係を調査し、起訴するかどうかの決定を行います。

勾留の期間中,外部との連絡が禁止される場合もあり,職場や家族への連絡も途絶えてしまう可能性があります。

外国人であることが、起訴の決定に直接的な影響を与えることはありませんが、言語の壁や文化的な誤解が適切な法的支援を受ける上で障壁となることがあります。

4. 裁判手続き

起訴された後、外国人被告人は日本の裁判所で審理を受けます。裁判の過程では、検察官が提出する証拠と、弁護側の反論が交わされます。

また、通訳の手配が必要な場合、国はこれを提供する義務があります。

住居侵入で起訴されてしまった場合,判決の内容は懲役刑も罰金刑もいずれもあり得ます。

ただ間違えて立ち入ってしまった,という程度であれば罰金刑で終わることもありますが,窃盗やわいせつ行為等の別の犯罪にあたる行為を目的としていた場合には執行猶予付きの懲役刑が言い渡されることも考えられます。

5. 在留資格と刑事手続き

住居侵入罪による有罪判決は、外国人の在留資格に深刻な影響を及ぼす可能性があります。日本の入国管理法は、犯罪行為を理由に強制送還処分することができると規定しています。

つまり,合法的なビザを持っていたとしても,有罪判決を受ければ強制送還になってしまうリスクがあるのです。

住居侵入罪の場合,現在の在留資格の内容によっては,たとえ執行猶予付きの判決であったとしても強制送還の対象になります。

退去強制に関する手続きについて出入国管理局の解説はこちら

そのため,逮捕された直後から起訴されないための弁護活動が非常に重要になるのです。

その他の事件について刑事事件と在留資格について解説したものはこちらになります。

強制送還の法的手続きと対策 就労ビザと窃盗

6. まとめ

逮捕された瞬間から、外国人の被疑者・被告人の在留資格は危機に瀕します。
このような状況では、直ちに法的支援を求めることが、ビザを守る上で極めて重要です。
弁護士へ相談することで、逮捕後の初期段階での適切なアドバイスが受けられるとともに,在留資格の保持に向けた活動に着手することもできます。
日本の法律下では、犯罪行為によって在留資格が取り消される可能性があり、これは強制退去につながることもあります。
しかし、適切な法的対応が速やかに行われれば、在留資格の失効を回避し、最終的には強制退去を避けることが可能になる場合があります。

逮捕された直後から、弁護士との相談を行うことは、在留資格を守る上で不可欠です。
外国人が日本で法的な問題に直面した際には、迅速な法的支援がその人の将来に大きな影響を及ぼすことを理解していただけたと思います。
日本での生活を続けるためには、日本の法律を尊重し、必要な場合には適切な法的手続きを踏むことが重要です。

傷害,器物損壊罪で強制送還になるのか?在留資格への影響はどうなるのか

2023-11-08

報道によると,外国人の男性がタクシー運転手に対する傷害罪で逮捕され,さらに余罪として器物損壊が疑われていると報じられました。

2023年10月25日付 FNNプライムオンライン

この方のように,傷害罪や器物損壊罪について検挙された場合,ビザにはどのような影響があるのでしょうか。

退去強制とは

日本に正規で在留している外国人の方は,どなたも何かしらの在留資格をもって在留しています。

正規の資格をもっていたとしても日本で何かしらの法令の違反や,入管の手続の違反があった場合には,強制送還の対象となってしまう場合があります。

日本から外国人の方を強制送還する手続きのことを,正式には「退去強制」と言います。

退去強制手続きは主に

  1. 理由となる事実の発生(例:オーバーステイ,不法就労,虚偽の申請,犯罪歴などなど)
  2. 入国警備員による調査
  3. 入国審査官による審査
  4. (場合によっては)法務大臣による裁決

という4つの段階を踏まえて進められていくことになります。

退去強制の理由となる理由が発生した場合,そのことを入国管理局が知ることで調査が実施されます。調査の結果は全て,入国審査官へ引き継がれて「強制送還をすることが適法かどうか」の審査がなされます。審査の結果を踏まえて,強制送還が最終的に決定されることになります。

強制送還をする,という審査がなされた後,決定に不服がある場合には異議を申し出て口頭審理,法務大臣の裁決へと手続きが進みます。

口頭審理,法務大臣の裁決を踏まえて,最終的に強制送還をするか,在留特別許可をするか,それとも強制送還をしないか,といった決定が下されることになるのです。

刑事事件を起こしてしまった外国人の方が強制送還されるかどうかという点や,審査手続きの流れについて細かく解説します。

退去強制の理由になる事実

入管法上,刑事事件と関連して強制送還される場合というのは,次のような場合です。

  • 一定の入管法によって処罰された場合
  • 一定の旅券法に違反して懲役,禁錮刑に処せられた場合(資格外活動の場合,罰金だけでもアウト!)
  • 麻薬取締法,覚醒剤取締法,大麻取締法などの薬物事件で有罪判決を受けた場合
  • 一定の刑法犯で懲役,禁錮刑に処せられた場合(執行猶予がついてもアウト!)
  • どの法律違反であっても,「1年を超える実刑判決」を受けた場合

執行猶予が付いたとしても強制送還になってしまう刑法犯は,代表的には次のようなものです。

    • 住居侵入罪
    • 公文書/私文書偽造罪
    • 傷害罪,暴行罪
    • 窃盗罪,強盗罪
    • 詐欺罪,恐喝罪

これらの罪の場合,たとえ執行猶予付きの判決であったとしても,裁判が確定すると強制送還の対象となります。一定の刑法犯で懲役刑,禁錮刑に処せられたとして強制送還されるのは,入管法の別表1に該当する在留資格をもって日本に滞在している外国人の方です。入管法の別表1に該当する在留資格とは,こちらのページで列挙されています

在留資格の一覧についてはこちらです。

在留資格の種類

何かしらの犯罪で逮捕されてしまった,というだけでは強制送還の対象とはなっていません。ですが,逮捕,勾留に引き続いて「公判請求」,つまり,「起訴」がなされてしまうと有罪の判決が言い渡される可能性が極めて高く,有罪の判決を受けると内容によっては強制送還されてしまう可能性があるということです。

特に,薬物事件入管法違反については,「悪質な事案」として入管法でも厳しく扱われており,強制送還されやすくなっています。逆に,一般刑法の違反の場合には,「その罪名や言い渡された刑の内容によっては強制送還される」という定め方になっています。

報道では,当該外国人の方の在留資格までは分からないのですが,仮に永住者,日本人の配偶者等,定住者といった,いわゆる別表2の在留資格の場合には,直ちに強制送還の対象となるものではありません。

一方,留学や就労系の在留資格,家族滞在のように,別表1の資格の場合,逮捕・起訴されて有罪の判決を受けて執行猶予となってしまうと強制送還の対象となってしまいます。

在留資格の種類によって,強制送還の対象となるかどうかが変わってくるような事案です。

入国警備官による調査

刑事事件を起こしてしまったことが強制送還の理由となってしまった場合,刑事手続きが終了した後,近くの各地方出入国在留管理局に呼び出された上で,入国警備官による調査を受けることになります。

この時の調査の内容は,「退去強制をするべき事実が発生したかどうか」ということに限られます。そのため,調査での一番の調査事項は,

  • 一定の入管法によって処罰されたかどうか
  • 一定の旅券法に違反して懲役,禁錮刑に処せられたかどうか
  • 麻薬取締法,覚醒剤取締法,大麻取締法などの薬物事件で有罪判決が確定したかどうか
  • 一定の刑法犯で懲役,禁錮刑に処せられたかどうか
  • どの法律違反であっても,「1年を超える実刑判決」を受けたかどうか

という点になります。そして,これらの事実のほとんどは,刑事裁判の結果を基に認定がなされます。

裁判で事実を争っていない場合にはそのまま「強制送還の理由あり」という認定になってしまうでしょう。

裁判で争っていた場合,または入管の手続きになってから初めて事実を争うという場合,改めて証拠を提出したり詳細な主張を行ったりする必要があります。

入国審査官による審査

入国警備官が調査した内容は,そのまま入国審査官へと引き継がれていきます。そして入国審査官が対象となる外国人の方と面談(interview)を行い,審査を実施します。

審査の対象となるのも上に書かれた調査事項と同様です。

なお,強制送還の理由となる事実に加えて,日本での生活や仕事のこと,家族のこと,財産のこと等も一緒に質問されることがあります。

これは,強制送還の理由になる事実があったとしても,在留特別許可をするかどうか,という判断で考慮される事情になります。

審査が終わると強制送還の理由になる事実があったか/なかったか,という点についての判断がなされ,「事実があった」と認定されると一時的に入管の施設に収容されてしまいます。

元々オーバーステイだった場合には,そのまま収容が続いてしまうことが多くあります。

一方で,審査が終わるまでは一応在留資格をもって日本に在留していたという方の場合,一時的に収容の手続きがなされたとしても,すぐに「仮放免」といって,保証金を払うことで釈放される場合もあります。仮放免の解説はこちらです。

入管に収容されたらどうすればいいか

入国審査官による審査が不服であった場合,強制送還の理由になる事実があったとしても,さらに日本での在留を希望する場合には,その後の口頭審理という手続きを行うことになります。

口頭審理とは何か?

口頭審理とは,入国審査官が「退去強制事由がある」と判断をしたことに対して,特別審査官が再度審査をするという手続きのことです。

退去強制になるまでには,

  1. 理由となる事実の発生(例:オーバーステイ,不法就労,虚偽の申請,犯罪歴などなど)
  2. 入国警備員による調査
  3. 入国審査官による審査
  4. (場合によっては)法務大臣による裁決

という段階がありますが,「口頭審理」という手続きは,この3と4のちょうど間にある手続です。

口頭審理では,入国審査官の判断が間違っていたかどうか,が審理の対象になります。

そのためまずは,強制送還の理由となった事情について再度細かく質問を受け,その後,日本での在留に関する質問をされます。ですが,口頭審理でのインタビューは,法務大臣の裁決という手続きに進む前の,最後のインタビュー手続きです。

そのため,口頭審理の場では,違反審査に関する事だけでなく,在留特別許可を認めるかどうかの判断で重要となる部分の『聞き取り』も行われることになっています。

ただ,あくまで「聞き取り」を行うだけですので,事実に間違いがない限りは,口頭審理の結果については,「元の審査に誤りはなかった」と判断されることになります。

口頭審理の後も,引き続き日本での在留を希望するという場合には,異議の申立てをして,法務大臣の裁決を求めることになります。

口頭審理のポイントとなるのは,『法務大臣による裁決前の最後のインタビューである』という点です。

法務大臣の裁決

入国警備官による調査から始まって,強制送還に関する最後の手続きが法務大臣の裁決という手続きです。

この手続では面談などはなく,口頭審理の結果を踏まえて在留特別許可をするかどうかについて,書面による審査が実施されます。

法務大臣の裁決では,それまでの手続きにおける間違いがないかどうかという点の審査に加えて,在留特別許可をするかどうかという最も重要な点についての審査が行われます。

在留特別許可をするかどうかについては,入管における判断の透明性を確保するという観点から,ガイドラインが公開されています。

そのガイドラインの大枠は,次のようなものになります。

参考URL ガイドラインの全文

  • 積極要素

日本人の子か特別永住者の子である

日本人か特別永住者との間に生まれた未成年の子を育てていて親権を持っていること等

日本人化特別永住者との間に法律上有効な婚姻が成立している

⇒日本と外国人とが,家族関係を持つレベルで接着していること

  • 消極要素

重大犯罪によって刑に処せられた

出入国管理行政の根幹を犯す違反をした

反社会性の高い違反をした

⇒日本に在留させることが日本にとって不利益が特に大きい場合

最終的には様々な事情を総合して判断することにはなりますが,これらの積極要素/消極要素を中心にして,過去の事例なども参考にしながら,在留特別許可をするかどうかの判断がなされます。

まとめ

報道の事例では,在留資格の種類によっては強制送還の対象となり得るものです。また,逮捕されてしまうとそれ自体によって資格の変更や在留期間の更新といった各種手続きが滞ってしまい,オーバーステイとなってしまう可能性もあります。

日本に残って生活を続けたいと希望する場合には,刑事事件の中で不起訴を目指すという活動と,その間に在留資格が失われてしまうことがないようにするための活動,刑事事件後に退去強制手続きが掛かってしまうとしても在留特別許可を目指すための活動が重要です。

強制送還に関する手続きについて,弁護士等に一度ご相談された方が良いでしょう。

強制送還の法的手続きと対策 就労ビザと窃盗

2023-11-01

強制送還という言葉を聞いて、不安を感じる方は少なくないでしょう。
特に、日本で生活している外国人にとって、この手続きは命運を左右する可能性があります。
本記事では、強制送還手続きがどのようなものなのか、その法的背景と具体的な事例を通じて解説します。
「介護」の在留資格を持つAさんが窃盗罪で有罪判決を受けた場合、どのような法的手続きが待ち受けているのか、その詳細についても触れます。
この記事を通じて、強制送還手続きについての理解を深め、必要な対策を考える一助としていただければ幸いです。

事例紹介: 介護の在留資格を持つAさんが窃盗を犯した場合

Aさんは、日本で介護の在留資格を持っています。
しかし、ある日、スーパーマーケットで食料品を盗んでしまいました。
スーパーマーケットの防犯カメラによって、Aさんの行動は記録されており、その後、警察に逮捕されました。
この事件によって、Aさんは窃盗罪で起訴され、裁判で執行猶予付きの有罪判決を受けてしまいました。
結果として、Aさんは強制送還の対象となり、その在留資格も危うくなってしまいます。

法律解説

強制送還手続きは、正式には「退去強制」と呼ばれます。
この手続きは、主に4つの段階で進められます。

  1. 理由となる事実の発生(例:オーバーステイ、不法就労、虚偽の申請、犯罪歴など)
  2. 入国警備員による調査
  3. 入国審査官による審査
  4. (場合によっては)法務大臣による裁決

Aさんの場合、窃盗罪で執行猶予付きの有罪判決を受けたため、強制送還の対象となりました。

Aさんの「介護」のように、就労系の在留資格の場合、執行猶予付きの判決であっても有罪となってしまうと強制送還のリスクが生じてしまうのです。

入国管理局がこの事実を知ると、調査が始まります。
調査の結果は、入国審査官に引き継がれ、「強制送還をすることが適法かどうか」の審査が行われます。
審査の結果に不服がある場合、異議を申し出て口頭審理、法務大臣の裁決へと進む手続きがあります。

Aさんが今後も日本に在留し続けたいと望む場合には,在留特別許可を得なければならないのです。

弁護士に相談することのメリット

強制送還の手続きは複雑で、専門的な知識が必要です。
そのため、弁護士に相談することで、適切なアドバイスや対策が得られます。
異議申し立てや口頭審理などの法的手続きにおいて、弁護士のサポートは非常に有用です。
弁護士は入管法だけでなく、刑事事件にも精通している場合が多く、Aさんのような犯罪歴がある場合でも、最良の対策を提案してくれます。
さらに、弁護士に相談することで、精神的な安堵感も得られるでしょう。

特に、今回のAさんのように「裁判を受けた場合に強制送還になるリスクが高い人」の場合、逮捕された直後からビザについても専門性のある弁護士に相談しておく必要性が高いのです。

今回の事例の場合

Aさんが窃盗罪で有罪判決を受けた場合、強制送還の手続きが始まってしまいます。
まず、入国管理局がこの事実を知り、入国警備員による調査が行われます。
その後、入国審査官による審査があり、強制送還が決定される可能性があります。
このような状況で重要なのは、早期に弁護士に相談することです。
弁護士は、Aさんがどのような法的手続きを進め、どう対策を取るべきか具体的なアドバイスを提供できます。
特に、異議申し立てや口頭審理の手続きは、弁護士のサポートが不可欠です。

ポイントとなるのは

  • 逮捕された直後から専門の弁護士に相談すること
  • 裁判になる前に事件を終結させること
  • 入管の手続きの経験のある弁護士に相談すること

です。

まとめ

この記事では、強制送還手続きとその法的背景について解説しました。
特に、介護の在留資格を持つAさんが窃盗罪で有罪判決を受けた場合の事例を通じて、手続きの具体的な流れと対策について説明しました。
強制送還の手続きは複雑であり、専門的な知識と対策が必要です。
そのため、早期の弁護士相談が非常に重要であることを強調しました。
法的な問題に直面した場合、適切なアドバイスとサポートが得られるよう、専門家の協力を得ることが肝心です。

強制送還の危機!家族滞在のAさんの事例から学ぶ、法と対策

2023-10-13

1. 導入文

強制送還とは、日本に滞在する外国人が特定の理由で日本から送り返される手続きです。 この記事は、特に強制送還の危機に瀕している外国人、特に留学生を対象としています。 留学生Aさんの事例を通じて、強制送還の手続きとその回避方法について詳しく解説します。

2. 事例紹介: 家族滞在ビザAさんの住居侵入事件

Aさんは、日本にいる両親に帯同している外国人学生です。 2022年の夏、Aさんは友人と遊びに行く途中、お酒に酔っぱらってしまい,間違えて他人の家に入ってしまいました。

Aさんは友人Bさんの家に遊びに行く予定で、Bさんの家と非常に似た外観の家に誤って入ってしまったのです。被害者がすぐに異変に気付いて警察へ通報し, Aさんはその場で逮捕され、後に「住居侵入」で起訴されました。 裁判の結果、Aさんは有罪とされ、執行猶予判決が言い渡されました。

この事件により、Aさんは強制送還の対象となるのではないかと怖くなってしまいました。 特に、Aさんは「家族滞在」という在留資格で日本に滞在していたため、このような刑事事件によってその在留資格が危うくなる可能性があります。

3. 法律解説: 強制送還の手続き

強制送還、正式には「退去強制」とは、日本から外国人を送り返す手続きのことです。 この手続きは主に以下の4つの段階を踏んで進められます。

  1. 理由となる事実の発生: 例えば、オーバーステイ、不法就労、虚偽の申請、犯罪歴などが該当します。
  2. 入国警備官による調査: 理由となる事実が発生した場合、入国管理局がその事実を知ると調査が開始されます。
  3. 入国審査官による審査: 調査の結果は全て、入国審査官へ引き継がれ、「強制送還をすることが適法かどうか」の審査が行われます。
  4. 法務大臣による裁決: 審査の結果に不服がある場合、異議を申し出て口頭審理、そして法務大臣の裁決へと手続きが進む。

審査の結果を踏まえて、強制送還が最終的に決定されることになります。 特に、刑事事件を起こしてしまった場合、その後の手続きが非常に厳しくなる可能性があります。

Aさんの事例の場合,有罪の判決が確定することで,入国警備官が調査を開始することになります。

4. 法律解説: 強制送還の理由になる

強制送還の理由となる事実は多岐にわたりますが、以下に主要なものを詳しく解説します。

一定の入管法によって処罰された場合

オーバーステイや不法就労は、入管法によって厳しく規制されています。 例えば、ビザの期限が切れた状態で日本に滞在すると、強制送還の対象となります。

 一定の旅券法に違反して懲役、禁錮刑に処せられた場合

資格外活動であっても、罰金だけでなく懲役や禁錮刑に処せられる場合があります。 このような状況では、強制送還が適用される可能性が高くなります。

 薬物関連の犯罪で有罪判決を受けた場合

麻薬取締法、覚醒剤取締法、大麻取締法など、薬物に関する犯罪は特に厳しく扱われます。 有罪判決が確定すると、仮に初犯であっても多くの事例で強制送還の対象となります。

 一定の刑法犯で懲役、禁錮刑に処せられた場合

住居侵入罪や傷害罪、窃盗罪など、一定の刑法犯でも強制送還の対象となります。 特に、執行猶予がついていても、裁判が確定すると強制送還が適用される場合があります。

 1年を超える実刑判決を受けた場合

どのような犯罪であっても、1年以上の実刑判決を受けると、強制送還の対象となります。 この場合、犯罪の種類に関わらず、強制送還が適用される可能性が非常に高くなります。

Aさんの事例の場合,「住居侵入」によって執行猶予付きの判決となってしまった場合,「 一定の刑法犯で懲役、禁錮刑に処せられた場合」に該当するため,入国警備官による調査が始まります

強制送還を回避するためにどうしたらよいか分からない/日本に残る可能性を高めたい,という場合には,早急に弁護士に相談しましょう。

5. 弁護士に相談することのメリット

弁護士に相談することで得られるメリットは多く、特に強制送還のような複雑な法的問題においてはその価値は計り知れません。

 専門的なアドバイス

弁護士は法律の専門家であり、あなたの状況に最も適したアドバイスを提供できます。入管関連の事件を取り扱う弁護士の数も多くなく,また,「日本」という外国の地で法的な課題を乗り越えるのは非常に困難です。専門的な知識を基に,きちんと現状を整理して,適切な対応を心がけましょう。

 法的手続きのサポート

強制送還の手続きは複雑であり、一人で行うにはリスクが高いです。 弁護士がサポートすることで、手続きがスムーズに進む可能性が高くなります。

 精神的な安堵

法的問題はストレスが伴うものですが、専門家がサポートしてくれることで精神的な安堵を感じることができます。

 時間の節約

法的手続きは時間がかかるものですが、弁護士が適切なアドバイスとサポートを提供することで、時間を節約することができます。

 費用対効果

弁護士費用はかかりますが、その費用がもたらす効果は大きい場合が多いです。 特に、強制送還を回避することができれば、その価値は計り知れません。

6. まとめ

本記事では、強制送還手続きについて詳しく解説しました。

強制送還は複雑な手続きであり、一人で対処するには多くのリスクが伴います。

そのため、専門的な知識と経験を持つ弁護士に相談することが、最も安全かつ確実な方法であると言えます。

 何か疑問点や不明点があれば、専門の弁護士に相談することを強くお勧めします。

強制送還の危機!? 就労ビザの外国人の権利と正しい対応方法

2023-10-08

日本で生活する外国人にとって、法律の遵守は必須です。

しかし、誤って法律を犯してしまった場合、強制送還のリスクが迫ることも。 この記事では、強制送還の手続きとその対応方法について詳しく解説します。

事例紹介: 報道の在留資格のAさんの万引き事件

(解説のためのフィクションです)

2021年、東京都内で「報道」という在留資格を持つAさんが万引き事件を起こしました。

Aさんは、友人との食事後、飲み物を手に入れるためにコンビニへ向かいました。 しかし、金銭的に困窮していたAさんは、飲み物をポケットに忍ばせ、店を出ようとしました。 しかし、店員に見つかり、警察に通報される事態となりました。 この行為により、Aさんは強制送還の危機に直面しました。

法律解説: 強制送還手続きとは

日本における外国人の強制送還手続きは、「退去強制」と正式に称されます。
この手続きは、いくつかの段階を経て進行します。

  1. 事由の発生: これはオーバーステイ、不法就労、虚偽の申請、犯罪歴などが該当します。
    これらの理由が生じたとき、入国管理局は事実を知り、調査を開始します。

  2. 入国警備員による調査: この調査の主な目的は、「退去強制をするべき事実が存在するか」を確認することです。
    事実の確認は、刑事裁判の結果を基に行われます。

  3. 入国審査官による審査: 調査内容は入国審査官に引き継がれ、審査が行われます。
    強制送還の事由とともに、日本での生活、家族、財産などの事情も審査の対象となることがあります。

  4. 法務大臣による裁決: 入国警備員と入国審査官の手続きを経た後、最終的には法務大臣が裁決を行います。
    この段階では、事実関係の再確認のみならず、在留特別許可の可否も決定されます。

強制送還の理由となる犯罪は、入管法や旅券法、薬物関連の法律、一定の刑法犯などが含まれます。
特に薬物事件や入管法違反は厳しく取り締まられ、強制送還の対象となる可能性が高まります。

Aさんの「報道」の在留資格は,いわゆる「就労ビザ」と呼ばれる在留資格の一種です。就労ビザの場合,配偶者ビザや永住者ビザよりも強制送還となる可能性が高くなります。Aさんの事例のような万引きは,刑法の窃盗罪に該当します。就労ビザの人が窃盗罪によって訴追されてしまった場合,仮に刑務所に行くことがなかったとしても,強制送還の対象となり得ることを知っておかなければなりません。

弁護士への相談

強制送還の手続きは複雑で、外国人にとっては非常に難解な場面も多いです。
そんな時、弁護士に相談することで得られるメリットを紹介します。

  1. 専門的知識: 弁護士は法律の専門家であり、退去強制の手続きや法律に関する深い知識を持っています。
    そのため、具体的なアドバイスや最適な対応策を示してくれます。

  2. 手続きのサポート: 強制送還の手続きは煩雑ですが、弁護士がサポートしてくれることで、スムーズに進行することが期待できます。

  3. 権利の保護: 外国人が日本の法律に疎い場合、自分の権利を十分に守れないことがあります。
    弁護士はクライアントの権利を最優先に考え、適切な対応を指南します。

  4. 信頼性: 弁護士は守秘義務を持っており、相談内容が外部に漏れることはありません。
    そのため、安心して悩みや問題を相談することができます。

  5. 強制送還を回避する可能性: 弁護士の適切なアドバイスや対応により、強制送還を回避する道が見えることもあります。

強制送還の危機に直面した際は、1人で悩むのではなく、専門家である弁護士に相談することを強くおすすめします。

弁護士への相談の仕方

弁護士に相談する際の適切なアプローチ方法やポイントを紹介します。正確で迅速な対応を受けるための手順を理解することは非常に重要です。

  1. 弁護士の選び方: 外国人の問題に精通した弁護士や、入管法を得意とする弁護士を選ぶことが望ましいです。
    Aさんの事例のように,刑事事件も関係しているという場合には,外国人問題と刑事事件とどちらも扱える事務所がベターです。刑事事件の処理次第では,強制送還のリスクを最小限まで抑えられる場合があります。

  2. 事前の情報整理: 相談する前に、自分の状況や問題点を明確にしておくことが大切です。
    必要な書類や証拠も整え、弁護士に提示することで、具体的なアドバイスを受けやすくなります。

  3. 具体的な質問: 相談の際は、具体的な質問を持ってアプローチすると効果的です。
    例えば、「この状況での強制送還のリスクは?」や「どのような対応が最適か?」といった質問を準備しておくと良いでしょう。

  4. 費用の確認: 弁護士に相談する際の費用や、今後の手続きにかかる費用を明確に確認しておきましょう。

  5. 信頼関係の構築: 弁護士との信頼関係は非常に大切です。
    隠さず正直に事実を伝え、アドバイスや指示に従うことで、最善の結果を迎えることができるでしょう。

弁護士に相談することで、自身の問題に対する理解を深め、適切なアクションを取るための助けとなります。そのため、相談の際のアプローチや準備は非常に重要です。

まとめ

強制送還手続きは、多くの外国人にとって非常に重要かつ深刻な問題となる可能性があります。この記事では、その手続きの概要から弁護士に相談するメリット、さらに具体的な相談の仕方までを詳しく解説しました。

  1. 退去強制の手続き: 日本の「退去強制」は、外国人が日本から強制送還される正式な手続きです。
    事由の発生から法務大臣の裁決まで、いくつかの段階を経て進行します。

  2. 弁護士の重要性: 強制送還の手続きにおいて、専門家である弁護士の助けは計り知れない価値があります。
    事実の確認、権利の保護、適切な手続きのサポートなど、多岐にわたるメリットが存在します。

  3. 弁護士への相談方法: 適切な弁護士の選び方から、事前の情報整理、具体的な質問の準備、費用の確認、信頼関係の構築まで、相談を成功させるためのポイントを紹介しました。

強制送還の危機に直面することは誰にでも起こりうる事態です。そんな時、正確な知識と専門家のサポートを得ることで、適切な対応を取ることが可能となります。この記事が、その一助となれば幸いです。

薬物所持の疑いで検挙されてしまった!?ビザへの影響を解説

2023-10-02

事例紹介(法律解説のためのフィクションです)

Aさんは,日本で「定住者」として生活していました。 ある時,Aさんは友人のBさんと一緒に東京の渋谷区で過ごしていました。

その夜,警察による一般的なパトロールが行われ,AさんとBさんが職務質問を受けてしまいます。警察はBさんに対して身体検査を行い,その際にポケットから小さな袋が見つかりました。

袋の中身は白い粉で警察はそれを薬物と疑い, Bさんは薬物所持の疑いで警察署に連行されました。

Aさんはその場に居合わせたことを強く主張しましたが,Bさんと一緒に警察署へ連行され,共同所持の疑いで逮捕されてしまいました。Aさんの家族は,すぐに弁護士に相談し,今後の対応を依頼することにしました。

弁護士のアドバイスにより,Aさんは適切な手続きを踏み,最終的には在留資格に影響を受けることなく問題を解決しました。

Aさんの事例では,どのような点から在留資格にリスクが生じていたのでしょうか。

退去強制とは

日本から外国人の方を強制送還する手続きのことを,正式には「退去強制」と言います。

退去強制手続きは主に

  1. 理由となる事実の発生(例:オーバーステイ,不法就労,虚偽の申請,犯罪歴などなど)
  2. 入国警備員による調査
  3. 入国審査官による審査
  4. (場合によっては)法務大臣による裁決

という4つの段階を踏まえて進められていくことになります。

退去強制の理由となる理由が発生した場合,そのことを入国管理局が知ることで調査が実施されます。調査の結果は全て,入国審査官へ引き継がれて「強制送還をすることが適法かどうか」の審査がなされます。審査の結果を踏まえて,強制送還が最終的に決定されることになります。

強制送還をする,という審査がなされた後,決定に不服がある場合には異議を申し出て口頭審理,法務大臣の裁決へと手続きが進みます。

口頭審理,法務大臣の裁決を踏まえて,最終的に強制送還をするか,在留特別許可をするか,それとも強制送還をしないか,といった決定が下されることになるのです。

刑事事件を起こしてしまった外国人の方が強制送還されるかどうかという点や,審査手続きの流れについて細かく解説します。

退去強制の理由になる事実

入管法上,刑事事件と関連して強制送還される場合というのは,次のような場合です。

  • 一定の入管法によって処罰された場合
  • 一定の旅券法に違反して懲役,禁錮刑に処せられた場合(資格外活動の場合,罰金だけでもアウト!)
  • 麻薬取締法,覚醒剤取締法,大麻取締法などの薬物事件で有罪判決を受けた場合
  • 一定の刑法犯で懲役,禁錮刑に処せられた場合(執行猶予がついてもアウト!)
  • どの法律違反であっても,「1年を超える実刑判決」を受けた場合

執行猶予が付いたとしても強制送還になってしまう刑法犯は,代表的には次のようなものです。

    • 住居侵入罪
    • 公文書/私文書偽造罪
    • 傷害罪,暴行罪
    • 窃盗罪,強盗罪
    • 詐欺罪,恐喝罪

これらの罪の場合,たとえ執行猶予付きの判決であったとしても,裁判が確定すると強制送還の対象となります。一定の刑法犯で懲役刑,禁錮刑に処せられたとして強制送還されるのは,入管法の別表1に該当する在留資格をもって日本に滞在している外国人の方です。入管法の別表1に該当する在留資格とは,こちらのページで列挙されています

在留資格の一覧についてはこちらです。

在留資格の種類

何かしらの犯罪で逮捕されてしまった,というだけでは強制送還の対象とはなっていません。ですが,逮捕,勾留に引き続いて「公判請求」,つまり,「起訴」がなされてしまうと有罪の判決が言い渡される可能性が極めて高く,有罪の判決を受けると内容によっては強制送還されてしまう可能性があるということです。

特に,薬物事件入管法違反については,「悪質な事案」として入管法でも厳しく扱われており,強制送還されやすくなっています。逆に,一般刑法の違反の場合には,「その罪名や言い渡された刑の内容によっては強制送還される」という定め方になっています。

Aさんの事例の場合,「Bさんと一緒に薬物を持っていたという疑い」がかけられています。このような疑いだけであればビザには影響はありませんが,「Bさんと一緒に薬物を持っていた」あるいは「Aさんの薬物をBさんが代わりに持っていた」という疑いのままで正式な裁判で起訴されてしまうと,事態は急転します。

裁判の間は,在留資格の変更が認められにくくなったり,更新の期間が短くなったりするリスクがあります。

また,万が一,有罪の判決を受けてしまうと,薬物事件の場合には強制送還に該当する可能性がとても高くあります。

薬物の共同所持の場合には,起訴されるまでの弁護活動が非常に重要です。薬物の共同所持を疑われてしまったという場合には速やかに弁護士に相談した方が良いでしょう。

入国警備官による調査

刑事事件を起こしてしまったことが強制送還の理由となってしまった場合,刑事手続きが終了した後,近くの各地方出入国在留管理局に呼び出された上で,入国警備官による調査を受けることになります。

この時の調査の内容は,「退去強制をするべき事実が発生したかどうか」ということに限られます。そのため,調査での一番の調査事項は,

  • 一定の入管法によって処罰されたかどうか
  • 一定の旅券法に違反して懲役,禁錮刑に処せられたかどうか
  • 麻薬取締法,覚醒剤取締法,大麻取締法などの薬物事件で有罪判決が確定したかどうか
  • 一定の刑法犯で懲役,禁錮刑に処せられたかどうか
  • どの法律違反であっても,「1年を超える実刑判決」を受けたかどうか

という点になります。そして,これらの事実のほとんどは,刑事裁判の結果を基に認定がなされます。

裁判で事実を争っていない場合にはそのまま「強制送還の理由あり」という認定になってしまうでしょう。

裁判で争っていた場合,または入管の手続きになってから初めて事実を争うという場合,改めて証拠を提出したり詳細な主張を行ったりする必要があります。

入国審査官による審査

入国警備官が調査した内容は,そのまま入国審査官へと引き継がれていきます。そして入国審査官が対象となる外国人の方と面談(interview)を行い,審査を実施します。

審査の対象となるのも上に書かれた調査事項と同様です。

なお,強制送還の理由となる事実に加えて,日本での生活や仕事のこと,家族のこと,財産のこと等も一緒に質問されることがあります。

これは,強制送還の理由になる事実があったとしても,在留特別許可をするかどうか,という判断で考慮される事情になります。

審査が終わると強制送還の理由になる事実があったか/なかったか,という点についての判断がなされ,「事実があった」と認定されると一時的に入管の施設に収容されてしまいます。

元々オーバーステイだった場合には,そのまま収容が続いてしまうことが多くあります。

一方で,審査が終わるまでは一応在留資格をもって日本に在留していたという方の場合,一時的に収容の手続きがなされたとしても,すぐに「仮放免」といって,保証金を払うことで釈放される場合もあります。仮放免の解説はこちらです。

入管に収容されたらどうすればいいか

入国審査官による審査が不服であった場合,強制送還の理由になる事実があったとしても,さらに日本での在留を希望する場合には,その後の口頭審理という手続きを行うことになります。

口頭審理とは何か?

口頭審理とは,入国審査官が「退去強制事由がある」と判断をしたことに対して,特別審査官が再度審査をするという手続きのことです。

退去強制になるまでには,

  1. 理由となる事実の発生(例:オーバーステイ,不法就労,虚偽の申請,犯罪歴などなど)
  2. 入国警備員による調査
  3. 入国審査官による審査
  4. (場合によっては)法務大臣による裁決

という段階がありますが,「口頭審理」という手続きは,この3と4のちょうど間にある手続です。

口頭審理では,入国審査官の判断が間違っていたかどうか,が審理の対象になります。

そのためまずは,強制送還の理由となった事情について再度細かく質問を受け,その後,日本での在留に関する質問をされます。ですが,口頭審理でのインタビューは,法務大臣の裁決という手続きに進む前の,最後のインタビュー手続きです。

そのため,口頭審理の場では,違反審査に関する事だけでなく,在留特別許可を認めるかどうかの判断で重要となる部分の『聞き取り』も行われることになっています。

ただ,あくまで「聞き取り」を行うだけですので,事実に間違いがない限りは,口頭審理の結果については,「元の審査に誤りはなかった」と判断されることになります。

口頭審理の後も,引き続き日本での在留を希望するという場合には,異議の申立てをして,法務大臣の裁決を求めることになります。

口頭審理のポイントとなるのは,『法務大臣による裁決前の最後のインタビューである』という点です。

法務大臣の裁決

入国警備官による調査から始まって,強制送還に関する最後の手続きが法務大臣の裁決という手続きです。

この手続では面談などはなく,口頭審理の結果を踏まえて在留特別許可をするかどうかについて,書面による審査が実施されます。

法務大臣の裁決では,それまでの手続きにおける間違いがないかどうかという点の審査に加えて,在留特別許可をするかどうかという最も重要な点についての審査が行われます。

在留特別許可をするかどうかについては,入管における判断の透明性を確保するという観点から,ガイドラインが公開されています。

そのガイドラインの大枠は,次のようなものになります。

参考URL ガイドラインの全文

  • 積極要素

日本人の子か特別永住者の子である

日本人か特別永住者との間に生まれた未成年の子を育てていて親権を持っていること等

日本人化特別永住者との間に法律上有効な婚姻が成立している

⇒日本と外国人とが,家族関係を持つレベルで接着していること

  • 消極要素

重大犯罪によって刑に処せられた

出入国管理行政の根幹を犯す違反をした

反社会性の高い違反をした

⇒日本に在留させることが日本にとって不利益が特に大きい場合

最終的には様々な事情を総合して判断することにはなりますが,これらの積極要素/消極要素を中心にして,過去の事例なども参考にしながら,在留特別許可をするかどうかの判断がなされます。

まとめ

Aさんの事例では「薬物事件で有罪判決を受けてしまった場合」には強制送還の手続きが開始されてしまう可能性があり,その内容に照らすと,在留特別許可がもらえない可能性もあります。日本に残って生活を続けたいと希望する場合には刑事事件の手続の中で不起訴・無罪を勝ち取ること,有罪の判決を受けた場合には在留特別許可の獲得に向けた活動が必須です。

強制送還に関する手続きについて,弁護士等に一度ご相談された方が良いでしょう。

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