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ALT教員がわいせつ事件で逮捕,ビザの更新は認められる?
(事例)
AさんはX国籍の方でしたが,日本の小学校で語学教員をするために「教育」の在留資格を取得して来日しました。
ある時,Aさんは,児童とスキンシップをとるつもりで,児童の臀部や足を触ったところ,児童の親から学校に連絡が入り,「不同意わいせつ罪」に該当するとしてAさんは警視庁の警察で逮捕されてしまいました。
Aさんにはこの後,どのような手続きが待ち受けているのでしょうか。
お知り合いの方,身内の方が逮捕されてしまってお困りの方は,あいち刑事事件総合法律事務所までご相談ください。
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不同意わいせつ罪に対する刑罰
児童に対する不同意わいせつとは,13歳未満の人に対してわいせつな行為をすることを指します。
被害者については男女関係がありませんので「女性から女性に対して」,「男性から男性に対して」の不同意わいせつ罪も成立します。
わいせつ行為とは,身体の性的な部位に触ることを指し,胸や陰部,性器,臀部を触る行為は「わいせつ」行為に該当するでしょうし,太ももや鼠径部などの下半身を触る行為についても,「わいせつ」行為に該当する可能性があります。
また,13歳未満の人に対するわいせつ行為は,たとえ相手が承諾していた(同意していた)としても,不同意わいせつ罪に該当します。13歳未満の子供は,わいせつ行為の意味を十分に理解して同意する能力がまだ未熟であるとみなされているからです。
Aさんの事例のように,勤務先の小学校の児童のお尻や足を触ったという事案では,相手はみな13歳未満であることが明らかですから,不同意わいせつ罪が成立してしまう可能性が高いといえます。
不同意わいせつ罪で逮捕されてしまうと,事実関係に間違いがない事件の場合,ほとんどの事例で起訴され,有罪の判決を受けることになります。
不同意わいせつ罪に対しては6月以上10年未満の懲役刑が定められており,有罪の判決を受けた場合には懲役刑が選択されます。
児童に対する不同意わいせつ罪の場合,たとえ初犯であったとしても実刑判決が言い渡されることも珍しくありません。
Aさんのように就労系の在留資格,「教育」ビザで在留している方の場合,1年を超える実刑判決を受けてしまうと強制送還の対象となります。
また,後述するように,事件によるビザへの影響は甚大なものがあります。
刑事事件のビザへの影響を最小限に留めるために,逮捕された直後から弁護士に対応を依頼するべきです。
あいち刑事事件総合法律事務所では,外国人事件・刑事事件いずれにも知識と経験のある弁護士が弁護を担当します。
刑事事件によるビザへの影響
不同意わいせつ罪による逮捕や刑事事件の手続きが,Aさんのビザに対してどのような影響を及ぼし得るでしょうか。
まず第一に考えられるのは,ビザの更新が難しくなってしまうことです。職場内での事件となると,「懲戒免職」といって,解雇の処分を受ける可能性があります。
「教育」ビザのような就労ビザの場合,勤務先を解雇されたままではビザの更新が認められません。在留期間内に同種の仕事を見つけることができれば,更新手続きはできるかもしれませんが,懲戒免職となってしまうと次の職場もなかなか見つかりにくいでしょう。
また,逮捕されたという事情や刑事裁判で有罪の判決を受けたという事情は,日本国内での「素行の善良性」についてマイナスの評価を受けてしまいます。仮に,懲戒免職になった後で「教育」ビザに該当するような仕事を見つけられたとしても,刑事事件の結果次第で「日本での素行が悪い」と評価されて,在留期限の更新が不許可となることが十分に考えられます。
更に,刑事事件の結果が実刑判決となってしまった場合,日本の刑務所に収容され,その後,強制送還までされてしまう可能性があります。この強制送還に関する手続きは,刑務所の内部で進んでしまうため,外部から手続きの状況を知ることは困難です。そのため,周囲の人としては「知らない間に強制送還まで決まっていた」ということがあるのです。
いずれも,刑事事件での対応・その結果が,在留資格・ビザに影響を及ぼすことになるのです。
刑事事件による逮捕から生じる,ビザに対する種々の影響へ対応するためには,刑事事件・外国人事件のいずれにも精通した弁護士へ対応を依頼しましょう。
逮捕された外国人の方の刑事弁護においては,刑事手続だけでなく,在留資格まで見据えた対応が必要不可欠です。
留学生が詐欺罪で逮捕されてしまった,ビザはどうなる?
日本の大学に留学しているAさんは、大学の友人から「高額な時給のアルバイトがある。電話で指示された家に行き、家の人から封筒を受け取るだけの仕事なので、違法なものではない」と聞かされ、その報酬が高額であったことからこれを引き受けることにしました。
Aさんが指示された家に近付くと、電話で指示役から偽名を名乗ることや、弁護士事務所から来た使いの者であることを相手の人に伝えるよう言われました。
実際にAさんが行ってみると、高齢の男性がAさんに対して封筒を手渡してきました。
封筒を受け取っただけで仕事が終わりだと思っていたAさんでしたが、電話で指示役から中に入っているカードを取り出すこと、ATM機でおろせるだけ現金をおろすよう言われたため、そのままATMから預金約500万円を引き出しました。
引き出したお金とキャッシュカードについては、指定された駅のコインロッカーに入れ、おろしたお金からAさんは報酬として10万円を受け取りました。
以上を前提として
①Aさんが受ける刑事罰はどのようなものになるか
②①の刑事罰によってAさんは退去強制となることがあるか
以上の点について解説していきたいと思います。
窃盗罪の刑事罰
Aさんが行ったことは、いわゆる特殊詐欺に類するようなものです。罪名としては窃盗罪となりますが、実体的には人(高齢者)を騙してクレジットカードを受け取り、現金を引き出すというものですので、感覚的には詐欺に近いところです。
窃盗罪は刑法235条に定めがある罪で、その法定刑は10年以下の懲役又は50万円以下の罰金となっています。10年以下と極めて重い罪になっていますが、これは被害額によって法定刑の区分がないからです。
窃盗罪の具体的な刑罰を決める際には、
- 被害額がいくらであるか
- どのような目的で盗んだか
- 被害回復がなされているか
- 何回目の検挙であるか
が大きな考慮要素となります。
①まず被害額ですが、これは単純に多ければ多いほど重くなるということになります。ただ、1000円と1万円で比較すると1万円のほうが10倍悪いという単純なものではありません。
②目的ですが、自分で使用する目的などが通常だと思われますが、転売目的や組織的な窃盗だと重く見られます。
③窃盗罪は財産に関する犯罪です。ですので、財産的な補填が被害者になされているかどうかも重要です。
④最後に、前科前歴があるかどうかも処分の考慮要素となります。
ところで、同じ「窃盗罪」で処罰されるものに、いわゆる万引きがあります。しかし、1回数千円程度の万引きと、被害が出た場合には数十万円~数百万円と高額な被害が発生する特殊詐欺では、当然刑の重さが異なります。窃盗罪には罰金刑の定めがあり、万引き等では略式処分となることがありますが、特殊詐欺ではこのような処分になることは考えられません。
今回のAさんの行為も、後述の点を争わなければ窃盗罪が成立し、被害額が500万円と極めて大きいものであるため、実刑の判決となることが予想されます。
弊所HPでも特殊詐欺について詳しく解説をしています。
退去強制となるか
それでは、Aさんの刑事処分により退去強制(強制送還)となるかについて検討します。
退去強制事由については入管法24条に定めがあります。ただ、Aさんは留学ですので、在留資格としては別表第1の資格となります。
同条4の2には
「別表第一の上欄の在留資格をもつて在留する者で、刑法第二編第十二章、第十六章から第十九章まで、第二十三章、第二十六章、第二十七章、第三十一章、第三十三章、第三十六章、第三十七章若しくは第三十九章の罪、暴力行為等処罰に関する法律第一条、第一条ノ二若しくは第一条ノ三(刑法第二百二十二条又は第二百六十一条に係る部分を除く。)の罪、盗犯等の防止及び処分に関する法律の罪、特殊開錠用具の所持の禁止等に関する法律第十五条若しくは第十六条の罪又は自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律第二条若しくは第六条第一項の罪により懲役又は禁錮に処せられたもの」
という定めがあり、この条文に該当する場合には仮に執行猶予判決であったとしても退去強制となります。
窃盗罪は刑法第36章の罪です。そのため、仮にAさんが窃盗罪で有罪となってしまった場合には、罰金刑とならない限り退去強制となってしまいます。特に特殊詐欺のような事件の場合には、罰金刑となることが考えにくい部類の事件ですので、有罪になるということはイコール退去強制事由に該当と考えてもよいと思われます。
弁護活動
既に述べた通り、本件では有罪の判決を受けてしまうと退去強制となってしまう可能性が極めて高いという事案です。
何とか退去強制を回避するためには2通りの方向性での弁護活動が考えられます。
①被害弁償を行う方向性
自身が行ったことで被害者の方に被害が生じたことには間違いありませんので、被害者の方へ被害弁償を行い、起訴猶予を目指すという方向性があり得ます。
ただ、既に述べた通り、この手の事件では被害額が高額になることが多いところです。また、法律上は自身が得た報酬(Aさんの場合であれば10万円)に留まらず、被害額全体(Aさんの場合では500万円)を返済しなければならない義務が生じるところですから、示談金の額が高額となってしまう可能性もあります。
また、このような事件の場合、複数回犯行に関与していると繰り返し逮捕されることも多いところです。回数が多ければ示談をしても起訴猶予とならない可能性が高まるほか、示談金の額も高額になりかねない(複数件全部の被害弁償を行うため)ところですので、資力が求められるところです。
②故意を否認する方向性
有罪となるためには、犯罪が成立しなければならないところですが、犯罪の成立のためには客観的に犯罪が成立しているだけではなく、犯人に「故意」が必要となります。
故意の内容については様々な見解があるところですが、今回のようなケースでいえば「自分が行っていることが、詐欺のようなお金を盗る行為である」という認識があるかどうかというところになります。
指示役から何の説明も受けず、単なる事務手続きとして一連の行動をしていたような場合には、詐欺に加担していた意識がなかったということで故意を否認することが考えられます。
検察官が故意の証明が困難であると考えた場合には、不起訴(嫌疑不十分)となる可能性があります。
①②のいずれの活動を行うにも、初動が大切です。
①の場合、示談交渉には通常時間を要しますから、いち早く被害者の方に連絡を取れるように働きかけを行い、また示談金の準備をしていくことが必要となります。
②の場合、一番最初に作成される弁解録取書の内容がどのようなものになるかが大切です。最初に罪を認めてしまった場合、後からこれを覆すためには相当大変です。ですので、最初からきっちりと取調べへ対応し、不用意に供述したり調書を作成することの内容にする必要があります。
退去強制を回避するためには、少なくとも不起訴になることが最低条件です(なお、不起訴になったとしても在留資格の更新に影響が生じる場合があります)。ですので、ご家族や知人が逮捕されてしまった場合には、速やかに経験のある弁護士に依頼をすることが必要です。
外国人の方が逮捕されてしまった場合や、刑事事件に関わってしまったという場合、刑事事件・入管事件のどちらにも知識と経験のある弁護士に早急に相談しましょう。
刑事事件、入管事件のどちらの段階からでも相談することができます。
お問い合わせは0120-631-881,03-5989-0894のいずれか、HPの方はこちらからお問い合わせください。
不法就労助長罪を犯してしまった外国人の刑事弁護と強制送還の可能性について
事例
不法就労助長罪に関わる実際の事例を紹介します(フィクションです)。
この事例は、ある中小企業の経営者が外国人労働者を雇用する過程で、不法就労を助長してしまったケースです。経営者は、外国人労働者の在留資格を確認せずに雇用し、その結果、労働者が資格外活動を行っていたことが発覚しました。この行為により、経営者は不法就労助長罪で起訴され、法人としても罰金を科されました。さらに、経営者自身が持つ経営・管理ビザにも影響が及び、在留資格の更新が危ぶまれる状況になりました。このケースは、不法就労のリスクとその深刻な結果を浮き彫りにし、法令遵守の重要性を示しています。
この事例を基に、不法就労助長罪に関する具体的な解説を進めていきます。
法人と個人の責任
不法就労助長罪において、法人(会社)と個人の責任は異なる形で定められています。
法人に対しては、主に罰金刑が科されることが一般的です。これは、法人自体に懲役刑を科すことができないためです。
一方で、個人に対する責任はより複雑で、不法就労を助長した事実が認められた場合、在留資格の取消しや退去強制(強制送還)の対象となる可能性があります。
特に、経営・管理ビザなど特定の在留資格を持つ外国人が自らの会社で不法就労を助長した場合、その行為は直接自身の在留資格に影響を及ぼす可能性があります。不法就労を知っていたか、あるいは知らなかったかにかかわらず、過失があると判断されれば、その外国人は強制送還の対象となることもあります。
このように、不法就労助長罪は単に法人に対する罰金刑にとどまらず、個人の在留資格や将来に深刻な影響を及ぼす可能性があるため、企業経営者や人事担当者はこの点に特に注意が必要です。
次に、不法就労助長罪による強制送還の可能性について詳しく見ていきましょう。
強制送還の可能性
不法就労助長罪に関与した外国人が強制送還される可能性は、その行為の性質や在留資格、さらには過去の在留履歴に大きく依存します。不法就労を助長したと認定された場合、外国人は「入管法24条第3号の4」に該当し、退去強制(強制送還)の対象となることがあります。この法律は、不法就労を知っていたか、あるいは知らなかったかに関わらず、不法就労を助長した個人に適用されます。
強制送還のプロセスは、まず入管当局による調査から始まります。この調査で不法就労の事実が確認された場合、外国人に対しては退去強制令書が発付され、日本国外への出国を命じられます。強制送還の手続きでは「在留特別許可」を求めるために,異議の申出をすることもできます。
在留特別許可に関してはこちらの記事も参考にされてください。
また,在留特別許可については法務省によるガイドラインも策定されています。
重要なのは、強制送還されると、その後の日本への再入国が困難になることです。再入国禁止期間が設けられることが一般的で、この期間は5年から永久に及ぶこともあります。
したがって、不法就労助長罪に関与するリスクは非常に高く、外国人労働者を雇用する際には、適切な在留資格の確認が必須となります。
このように、不法就労助長罪は個人の生活に深刻な影響を及ぼす可能性があり、特に外国人にとっては在留資格の喪失や強制送還という重大な結果を招くことがあります。企業や個人は、法律を遵守し、不法就労のリスクを避けるための適切な措置を講じることが重要です。
以上で、不法就労助長罪とその結果についての解説を終えます。この情報が、不法就労のリスクを理解し、適切な対策を講じるための参考になれば幸いです。
不法就労,不法就労助長に関する問題でお困りのことがある方は,こちらからお問い合わせください。
「日本人の配偶者等」のビザの人が窃盗事件を起こしてしまうとどうなるのか?
日本人の配偶者という在留資格で日本に滞在しているAさんは、ある日スーパーで買い物をしている際、魔が差してしまい、スーパーの商品を数点万引きしてしまいました。
Aさんの行為はスーパーの店員により確認されており、店を出たところですぐに捕まってしまいました。
以上を前提として
①Aさんが受ける刑事罰はどのようなものになるか
②①の刑事罰によってAさんは退去強制となることがあるか
以上の点について解説していきたいと思います。
「日本人の配偶者等」の在留資格の方で刑事事件についてお困りのことがある方,ご不安なことがある方は一度専門の弁護士にこちらからご相談ください。
窃盗罪の刑事罰
窃盗罪は刑法235条に定めがある罪で、その法定刑は10年以下の懲役又は50万円以下の罰金となっています。
10年以下と極めて重い罪になっていますが、これは被害額によって法定刑の区分がないからです。1000円から1万円くらいの万引きであれば、10年の懲役等を受けることは通常
考えられません。
窃盗罪の具体的な刑罰を決める際には、①被害額がいくらであるか②どのような目的で盗んだか③被害回復がなされているか④何回目の検挙であるかが大きな考慮要素となります。
①まず被害額ですが、これは単純に多ければ多いほど重くなるということになります。ただ、1000円と1万円で比較すると1万円のほうが10倍悪いという単純なものではありません。
②目的ですが、自分で使用する目的などが通常だと思われますが、転売目的や組織的な窃盗だと重く見られます。
③窃盗罪は財産に関する犯罪です。ですので、財産的な補填が被害者になされているかどうかも重要です。
④最後に、万引きのような事件の場合これが大きな問題となってくるのですが、何回目の検挙であるかも重要です。いくら被害額が少なく、被害回復がなされていたとしても、何度も何度も
検挙されているような状況では、処分を軽減することにも限度が生じます。一般的な感覚の通りですが、通常は1回目より2回目が、2回目より3回目が、3回目より4回目が重い処分となります。
また、前回と今回の間隔(何年程度空いているか)も重要です。これがあまりに近いということになると、常習性が疑われて、より重い処分となります。
そこでAさんの刑事罰ですが、1回目の検挙であれば被害回復を行っていれば起訴猶予となる可能性も十分あります。ただ、2回目であれば罰金、3回目であれば執行猶予付きの判決という形で
どんどん重くなってきます。また、たとえ100円の万引きであっても、執行猶予付き判決中や猶予期間満了後すぐにやってしまうと、刑務所に行く実刑判決となる可能性が相当高いと言えます。
退去強制となるか
それでは、Aさんの刑事処分により退去強制となるかについて検討します。
退去強制事由については入管法24条に定めがあります。ただ、Aさんは日本人の配偶者資格ですので、在留資格としては別表第2の資格となります。
同条4の2には「別表第一の上欄の在留資格をもつて在留する者で、刑法第二編第十二章、第十六章から第十九章まで、第二十三章、第二十六章、第二十七章、第三十一章、第三十三章、第三十六章、第三十七章若しくは第三十九章の罪、暴力行為等処罰に関する法律第一条、第一条ノ二若しくは第一条ノ三(刑法第二百二十二条又は第二百六十一条に係る部分を除く。)の罪、盗犯等の防止及び処分に関する法律の罪、特殊開錠用具の所持の禁止等に関する法律第十五条若しくは第十六条の罪又は自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律第二条若しくは第六条第一項の罪により懲役又は禁錮に処せられたもの」という定めがあり、この条文に該当する場合には仮に執行猶予判決であったとしても退去強制となるように思われます。
しかし、先ほど述べた通り、Aさんは別表第2の資格ですから、この条文には該当しません。ですので、執行猶予判決の場合にまで退去強制となるというものではありません。
ただ、4号リにある「リ ニからチまでに掲げる者のほか、昭和二十六年十一月一日以後に無期又は一年を超える懲役若しくは禁錮に処せられた者。ただし、刑の全部の執行猶予の言渡しを受けた者及び刑の一部の執行猶予の言渡しを受けた者であつてその刑のうち執行が猶予されなかつた部分の期間が一年以下のものを除く。」については適用がありますから、1年以上の実刑判決を受けた場合には退去強制事由に該当します。
先ほども述べたところですが、万引きだからといって実刑判決とならないというものではありません。何度も繰り返していた場合にはいずれ実刑判決となってしまいます。
このようになれば退去強制事由に該当してしまっていますし、何度も繰り返し刑事罰を受けていますから在留特別許可を得ることもできないと思われます。
なお,在留特別許可に関するガイドラインはこちらに掲載されています。
弁護活動
万引きだからと言って軽い犯罪だと考えてはいけません。実刑判決を受けることもある重大な犯罪です。
また、最初は出来心でやっていたとしても、いつしかやめられなくなり、何度検挙されても繰り返すという方も多数おられます。
ですから、万引きで検挙されたり、ご家族が万引きで検挙されたような場合には速やかに弁護士にご相談ください。
被害店舗への被害弁償はもちろん必要ですが、それだけではなく将来の在留資格更新を行ったり退去強制とならないようにするためにも、専門の弁護士にご依頼ください。
コロナ後,ウーバーイーツで配達をする外国人はどうなった?
当サイトで,以前,外国人のウーバーイーツでの稼働における問題点について解説をしました。
その後,緊急事態宣言が解除されたり,外国籍の方の出入国が緩和されたりと,情勢が変わってきています。
また,その頃,ウーバーイーツジャパンが不法就労助長の疑いにより書類送検されたという報道もありました。
日経新聞報道 https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUE2225K0S1A620C2000000/
現在のウーバーイーツにおける外国人の就労の状況について見てみます。
稼働できるビザが大幅に変更
現在,ウーバーイーツジャパンのHPによると配達員として登録ができる外国籍の方の在留資格は大幅に限定されています。
配達員として働けるのは,次の在留資格の方のみです。
・永住者
・永住者の配偶者等
・日本人の配偶者等
・定住者
・特定活動(ワーキングホリデー)
基本的に,就労が無制限の在留資格の方のみが登録できることとなっているようです。
そもそも,在留資格は日本での活動内容に応じた種類で認められるものであり,就労系の在留資格の場合にはどのような職種で働くかによって,認められるビザの種類が変わることになります。ウーバーイーツのような配送業については基本的には就労系の在留資格(就労ビザ)が認められておらず,適法なビザを持っている人が法律上可能な範囲内でのみ稼働できるということになります。
そして,これまでは留学生や特定活動のビザを持っている方のうち「資格外活動許可」を受けた人が働いているというケースが多く見られたようです。
しかし,資格外活動として「雇われる」ことはできますが,事業をすることまではできません。ウーバーイーツの配達員は,その事業形態が「アルバイト」ではなく業務委託の形態であったため特に問題となったようです。時間拘束がないため稼働時間を正確に把握することが困難で,また,仕事をする/しないということも配達員の自由にゆだねられていたことも,「雇用契約ではない」という見方の理由の一つにあったと思われます。
外国人を雇う時の注意点
外国人を雇い入れる際には,在留資格と就労の可否の確認を徹底しなければなりません。
在留カードやパスポートを確認しなかった/見たけれども大丈夫だと思っていたという場合であっても,責任を逃れることはできません。
本来働いてはいけない外国人の人を雇って働かせていた場合,不法就労助長罪(出入国管理法73条の2違反)に問われてしまいます。
3年以下の懲役又は300万円以下の罰金が科せられる可能性があり,出入国管理法違反の事案の中でも悪質な事案として見られることが多い事案です。
外国人の雇用についてご不安なことがある方は一度ご相談ください。
脅迫で逮捕されたらどうなるのか,強制送還される可能性はあるのか
(事例はフィクションです)
Aさん(外国籍,日本人の配偶者等・3年)はある時,日本に在留している外国人コミュニティー内でお金の貸し借りからトラブルになってしまいました。
Aさんは知人に,お金を返してもらおうと思ってつい強い口調になってしまい,これに怯えた被害者の方が警察に相談したところ,Aさんは脅迫の犯人として原宿警察署で逮捕されてしまいました。
Aさんの家族は,これからどうなるのか不安に思い刑事事件に強い弁護士事務所に相談することにしました。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では逮捕された方の下へ弁護士を派遣する初回接見サービスを行っています。
弊所の東京支部から原宿警察署までの初回接見費用は3万5530円(接見日当3万3000円,交通費2530円)です。
原宿警察署で逮捕されてしまったという外国人の方,そのご家族やご友人の方は「無料相談・出張相談」までお問い合わせください。
脅迫罪による逮捕
脅迫罪は刑法222条1項に定められている犯罪です。
脅迫罪
生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者は、2年以下の拘禁刑又は30万円以下の罰金に処する。
人を「脅迫した」場合に成立する犯罪です。Aさんのように「お金を貸した/返済してほしい」という立場であっても,言動があまりに強すぎた場合,脅迫に該当する可能性があります。
上記の事例のように,知人同士での間柄の事件の場合,事件の蒸し返しや不当な働きかけをすることを疑われるため,逮捕されてしまうという事例が多くあります。
また,事件を起こしてしまったことを争わなかった場合,被害者と示談ができなければ起訴されてしまい,有罪の判決を受けてしまいます。
脅迫罪で起訴されてしまった場合,前科がなかったとしても懲役刑が科されてしまう可能性もあります。懲役刑が科されると,外国籍の方の場合,在留資格に大きな影響があります。
在留資格への不利益を一番に避けるためには,起訴されないための弁護活動,すなわち被害者との示談交渉が重要です。
不起訴処分となれば,脅迫罪の場合,直ちに強制送還となる可能性を最小限まで引き下げることができます。
脅迫罪の示談交渉についてお困りの方は,「無料相談・出張相談」までお問い合わせください。
退去強制とは
日本から外国人の方を強制送還する手続きのことを,正式には「退去強制」と言います。
退去強制手続きは主に
- 理由となる事実の発生(例:オーバーステイ,不法就労,虚偽の申請,犯罪歴などなど)
- 入国警備員による調査
- 入国審査官による審査
- (場合によっては)法務大臣による裁決
という4つの段階を踏まえて進められていくことになります。
退去強制の理由となる理由が発生した場合,そのことを入国管理局が知ることで調査が実施されます。調査の結果は全て,入国審査官へ引き継がれて「強制送還をすることが適法かどうか」の審査がなされます。審査の結果を踏まえて,強制送還が最終的に決定されることになります。
強制送還をする,という審査がなされた後,決定に不服がある場合には異議を申し出て口頭審理,法務大臣の裁決へと手続きが進みます。
口頭審理,法務大臣の裁決を踏まえて,最終的に強制送還をするか,在留特別許可をするか,それとも強制送還をしないか,といった決定が下されることになるのです。
刑事事件を起こしてしまった外国人の方が強制送還されるかどうかという点や,審査手続きの流れについて細かく解説します。
退去強制の理由になる事実
入管法上,刑事事件と関連して強制送還される場合というのは,次のような場合です。
- 一定の入管法によって処罰された場合
- 一定の旅券法に違反して懲役,禁錮刑に処せられた場合(資格外活動の場合,罰金だけでもアウト!)
- 麻薬取締法,覚醒剤取締法,大麻取締法などの薬物事件で有罪判決を受けた場合
- 一定の刑法犯で懲役,禁錮刑に処せられた場合(執行猶予がついてもアウト!)
- どの法律違反であっても,「1年を超える実刑判決」を受けた場合
執行猶予が付いたとしても強制送還になってしまう刑法犯は,代表的には次のようなものです。
-
- 住居侵入罪
- 公文書/私文書偽造罪
- 傷害罪,暴行罪
- 窃盗罪,強盗罪
- 詐欺罪,恐喝罪
これらの罪の場合,たとえ執行猶予付きの判決であったとしても,裁判が確定すると強制送還の対象となります。一定の刑法犯で懲役刑,禁錮刑に処せられたとして強制送還されるのは,入管法の別表1に該当する在留資格をもって日本に滞在している外国人の方です。入管法の別表1に該当する在留資格とは,こちらのページで列挙されています。
在留資格の一覧についてはこちらです。
何かしらの犯罪で逮捕されてしまった,というだけでは強制送還の対象とはなっていません。ですが,逮捕,勾留に引き続いて「公判請求」,つまり,「起訴」がなされてしまうと有罪の判決が言い渡される可能性が極めて高く,有罪の判決を受けると内容によっては強制送還されてしまう可能性があるということです。
特に,薬物事件や入管法違反については,「悪質な事案」として入管法でも厳しく扱われており,強制送還されやすくなっています。逆に,一般刑法の違反の場合には,「その罪名や言い渡された刑の内容によっては強制送還される」という定め方になっています。
Aさんの事例の場合,日本人の配偶者のビザであり,かつ,脅迫罪による懲役刑ということであれば直ちに強制送還とまでなる可能性は高くありません。
Aさんの立場でいうと,「1年を超える懲役刑」を科された場合に,強制送還となります。
入国警備官による調査
刑事事件を起こしてしまったことが強制送還の理由となってしまった場合,刑事手続きが終了した後,近くの各地方出入国在留管理局に呼び出された上で,入国警備官による調査を受けることになります。
この時の調査の内容は,「退去強制をするべき事実が発生したかどうか」ということに限られます。そのため,調査での一番の調査事項は,
- 一定の入管法によって処罰されたかどうか
- 一定の旅券法に違反して懲役,禁錮刑に処せられたかどうか
- 麻薬取締法,覚醒剤取締法,大麻取締法などの薬物事件で有罪判決が確定したかどうか
- 一定の刑法犯で懲役,禁錮刑に処せられたかどうか
- どの法律違反であっても,「1年を超える実刑判決」を受けたかどうか
という点になります。そして,これらの事実のほとんどは,刑事裁判の結果を基に認定がなされます。
裁判で事実を争っていない場合にはそのまま「強制送還の理由あり」という認定になってしまうでしょう。
裁判で争っていた場合,または入管の手続きになってから初めて事実を争うという場合,改めて証拠を提出したり詳細な主張を行ったりする必要があります。
入国審査官による審査
入国警備官が調査した内容は,そのまま入国審査官へと引き継がれていきます。そして入国審査官が対象となる外国人の方と面談(interview)を行い,審査を実施します。
審査の対象となるのも上に書かれた調査事項と同様です。
なお,強制送還の理由となる事実に加えて,日本での生活や仕事のこと,家族のこと,財産のこと等も一緒に質問されることがあります。
これは,強制送還の理由になる事実があったとしても,在留特別許可をするかどうか,という判断で考慮される事情になります。
審査が終わると強制送還の理由になる事実があったか/なかったか,という点についての判断がなされ,「事実があった」と認定されると一時的に入管の施設に収容されてしまいます。
元々オーバーステイだった場合には,そのまま収容が続いてしまうことが多くあります。
一方で,審査が終わるまでは一応在留資格をもって日本に在留していたという方の場合,一時的に収容の手続きがなされたとしても,すぐに「仮放免」といって,保証金を払うことで釈放される場合もあります。仮放免の解説はこちらです。
入国審査官による審査が不服であった場合,強制送還の理由になる事実があったとしても,さらに日本での在留を希望する場合には,その後の口頭審理という手続きを行うことになります。
口頭審理とは何か?
口頭審理とは,入国審査官が「退去強制事由がある」と判断をしたことに対して,特別審査官が再度審査をするという手続きのことです。
退去強制になるまでには,
- 理由となる事実の発生(例:オーバーステイ,不法就労,虚偽の申請,犯罪歴などなど)
- 入国警備員による調査
- 入国審査官による審査
- (場合によっては)法務大臣による裁決
という段階がありますが,「口頭審理」という手続きは,この3と4のちょうど間にある手続です。
口頭審理では,入国審査官の判断が間違っていたかどうか,が審理の対象になります。
そのためまずは,強制送還の理由となった事情について再度細かく質問を受け,その後,日本での在留に関する質問をされます。ですが,口頭審理でのインタビューは,法務大臣の裁決という手続きに進む前の,最後のインタビュー手続きです。
そのため,口頭審理の場では,違反審査に関する事だけでなく,在留特別許可を認めるかどうかの判断で重要となる部分の『聞き取り』も行われることになっています。
ただ,あくまで「聞き取り」を行うだけですので,事実に間違いがない限りは,口頭審理の結果については,「元の審査に誤りはなかった」と判断されることになります。
口頭審理の後も,引き続き日本での在留を希望するという場合には,異議の申立てをして,法務大臣の裁決を求めることになります。
口頭審理のポイントとなるのは,『法務大臣による裁決前の最後のインタビューである』という点です。
法務大臣の裁決
入国警備官による調査から始まって,強制送還に関する最後の手続きが法務大臣の裁決という手続きです。
この手続では面談などはなく,口頭審理の結果を踏まえて在留特別許可をするかどうかについて,書面による審査が実施されます。
法務大臣の裁決では,それまでの手続きにおける間違いがないかどうかという点の審査に加えて,在留特別許可をするかどうかという最も重要な点についての審査が行われます。
在留特別許可をするかどうかについては,入管における判断の透明性を確保するという観点から,ガイドラインが公開されています。
そのガイドラインの大枠は,次のようなものになります。
- 積極要素
日本人の子か特別永住者の子である
日本人か特別永住者との間に生まれた未成年の子を育てていて親権を持っていること等
日本人化特別永住者との間に法律上有効な婚姻が成立している
⇒日本と外国人とが,家族関係を持つレベルで接着していること
- 消極要素
重大犯罪によって刑に処せられた
出入国管理行政の根幹を犯す違反をした
反社会性の高い違反をした
⇒日本に在留させることが日本にとって不利益が特に大きい場合
最終的には様々な事情を総合して判断することにはなりますが,これらの積極要素/消極要素を中心にして,過去の事例なども参考にしながら,在留特別許可をするかどうかの判断がなされます。
まとめ
Aさんの事例では「1年を超える懲役刑」となった場合には強制送還になってしまう可能性が高くありますが,Aさんの事情を考慮すると,在留特別許可をもらえる可能性もあります。
また,すぐに強制送還にならないとしても,次回の在留期間の更新の際に不利な事情となってしまいます。日本に残って生活を続けたいと希望する場合には刑事の手続の中で早急に示談をして不起訴処分を獲得することが重要です。
強制送還に関する手続きについて,弁護士等に一度ご相談された方が良いでしょう。
酔っぱらって警察官を殴ってしまった?!公務執行妨害罪をすると技術,人文知識,国際業務のビザはどうなるのか
(事例はフィクションです)
外国籍のAさん(技術・人文知識・国際業務ビザ)は,会社の飲み会の帰り道で職務質問を受けました。
Aさんは何も違法なことはしていませんでしたが,楽しい飲み会の帰り道で職務質問をされたことで気分が悪くなり,警察官と喧嘩になってしまいました。
そして,つい気が大きくなってしまったAさんは,警察官の胸を手で強く付き,頭を叩いてしまいました。Aさんは公務執行妨害の現行犯として逮捕されてしまいました。
Aさんの逮捕の連絡を受けた同僚のBさんは,Aさんがどうなってしまうのか心配になり弁護士に相談することにしました。
公務執行妨害罪
公務執行妨害罪とは,公務員に対して直接/間接的な有形力を行使したり,脅迫したりすることで成立する犯罪です。
平たく言うと,公務員に対する暴力や脅しが公務執行妨害罪に当たります。Aさんのように,身体を押す,叩くという行為であっても,十分に公務執行妨害罪になります。
過去の判例では,公務員に向かって1回石を投げたけれども命中しなかった,という事案について公務執行妨害罪が成立するとされた事例があります(昭和33年9月30日最高裁判所判決)。
公務執行妨害罪については3年以下または50万円以下の罰金が定められています。
逮捕された後の対応
Aさんのように,公務執行妨害罪で逮捕されてしまった外国人の方には以下のようなリスクが生じるため,早期の対応が必要です。
在留期間がきれてオーバーステイになる:
逮捕されてしまうと,外部との連絡が一切できなくなってしまいます。
そのため,在留期間の更新間際のタイミングだった場合には更新手続きが十分に行えない可能性があります。逮捕されていても,法律上,ビザの手続きをすることは可能ですが,書類の準備等できることは大幅に制限されてしまうでしょう。
在留期間の更新,ビザの変更が不許可になる:
逮捕されてその後の刑罰が科されてしまった場合,前科がついてしまいます。罰金刑だけであっても,また,外国人の方であっても,日本での前科がついてしまいます。
そうなると,仮に在留期間の更新や他のビザへの変更を申請したとしても,「素行が不良である」という理由で許可されない可能性があります。
強制送還される:
Aさんの場合,公務執行妨害罪によって1年を超える実刑判決を受けてしまった場合,強制送還の対象になってしまいます。
また,仮に実刑判決を受けなかったとしても,更新が認められなかったり別の在留資格への変更が認められなかったりして,結局オーバーステイとなってしまったり,帰国を余儀なくされてしまう場合があります。
強制送還手続きについてはこちらでも解説しています。
刑事事件における対応は
公務執行妨害罪で外国人の方が逮捕されてしまった場合,早急に必要なのは身柄解放活動と処分軽減のための弁護活動です。
公務執行妨害罪によって逮捕されてしまった場合,逮捕から48時間以内に検察庁に送られ,また72時間以内に裁判所に送られます。
これは,逮捕に続く,10日間,最長20日間続く勾留という手続きに関するものです。この「勾留」がついてしまうのか,それとも釈放されるのかによって,その後のビザを守るための活動に大きな違いが出てきます。
逮捕直後に周りの方の協力を得て,釈放のための弁護活動を行うことによって,早期の身体解放が認められる場合があります。
また,処分軽減のための取調べ対応や示談交渉も重要です。
特に,公務執行妨害事件の場合,被害者が警察官や市役所の職員等,公務員になります。国家,地方を問わず,公務員という職業の性質上,示談交渉は通常の事件と比べると難航する場合がほとんどです。場合によっては示談のための連絡を一切断られてしまうこともあります。
示談交渉をうまく進めることができれば,前科が付かず事件を解決できる可能性が上がり,前科が付かなければ在留資格への影響は最小限度にとどめることもできるのです。
日本に在留している外国人の方が刑事事件によって逮捕されてしまった場合,日本人の事件の場合と比べてより対処すべき問題が多く山積しています。
外国人の方が逮捕されてしまった事件でお困りの方は,刑事事件と入管事件の両方に経験のある,弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所までご相談ください。
逮捕された方の下へ弁護士を派遣する,初回接見サービスも行っています。
こちらからもお問い合わせいただけます。
永住者が強盗致傷事件を起こすと日本に入国できなくなるのか?
両親が外国籍であるものの、日本で生まれ育ったAさんは、永住権を保有した状態で日本国内で生活していました。
ある日お金に困ったAさんは、路上でひったくりをして遊ぶ金を手に入れようと考え、夜遅くに道路を通行中の男性の背後から忍び寄り、
持っていた財布等が入ったバッグをひったくりました。しかし、その際被害者が抵抗したため、被害者が転んでしまい、被害者に全治10日間の
擦過傷(すり傷)が生じてしまいました。
この件で、後日Aさんが逮捕されてしまいました。
このとき
①Aさんが受ける刑事罰はどのようなものになるか
②①の刑事罰により、Aさんは退去強制処分となるか
以上の点について解説していきたいと思います。
強盗致傷罪の刑事罰
Aさんは、ひったくりを行い、その際に人をけがさせてしまいました。
このような場合には引っ張った力の強さなどにもよりますが、強盗致傷罪が成立します。
強盗致傷罪の法定刑は、無期又は6年以上の懲役と極めて重い罪となっています。
これほど重い罪の強盗致傷罪ですが、具体的な刑期は、奪った財産の金額や、その際に生じた怪我の程度などを考慮して決定されます。
Aさんの場合、生じさせた怪我は全治10日とそれほど重いものではないですが、財布の中に多くの金銭が入っているような場合には、より罪が重くなっていきます。
また、強盗致傷罪は、刑が減軽されなければ最低懲役6年となっています。ですのでこのままだとAさんには相当重い刑罰が予想されます。
退去強制となるか
永住者の資格は、入管法の別表第2に記載されている資格です。そのため、入管法24条4号の2の適用はありませんから、執行猶予でも退去強制となるわけではありません。
しかし、別表第2に記載された資格であっても、入管法24条4号リの適用はありますから、無期又は1年以上の懲役(実刑判決)に処せられた場合には退去強制となります。
先程述べた通り、強盗致傷罪は極めて重い罪ですから、そのまま判決を受けてしまうと1年以上の実刑判決となる可能性は相当高いと言えます。ですので、このままいけばAさんは退去強制となり、日本国外へ送還されることになります。
弁護活動
さて、先述の通り、強盗致傷罪で刑事罰を受けてしまうと、退去強制となり、日本国内に留まれない可能性が極めて高いことを指摘しました。
このような場合、何とか日本国内に留まりたいというようなときは、以下のような弁護活動が考えられます
①被害者の方と示談を行う
検察庁は、全ての刑事事件について起訴をし、刑事処分を求めるのではなく、被害者の意向等の事情を踏まえ、一定の事件を起訴猶予(不起訴)としています。
最終的な処分を決定する際、被害者の方がどの程度処罰意向を持っておられるか、被害回復がなされたかどうかは大きな考慮要素となります。
出来る限り刑事処分を軽減するためにも、被害者の方との示談交渉は不可欠です。
②罪名を落とすようにする
強盗致傷罪が成立するためには、法律上いくつかの要件をクリアする必要があります。ただ、最初強盗致傷で逮捕されたような事件でも、最終的に起訴されて
窃盗罪と傷害罪という形になることはそう珍しいものではありません。窃盗罪と傷害罪で起訴されたような場合には、怪我の程度や被害金額にもよりますが、
強盗致傷と異なり実刑になる可能性がそれほど高いという罪名ではありません。
全ての事件でこのような罪名の変更がなされるわけではありませんが、取調べにきちんと対応することで対処可能な場合も存在します。
いずれにしても、強盗致傷罪が発生した場合、警察はほぼ確実に犯人を逮捕します。
逮捕されると、引き続いて勾留となりますが、逮捕・勾留期間を併せても最大23日間しか捜査期間はありません。
そして、勾留期限の最終日に検察官は起訴不起訴を決定しますから、どのような弁護活動を行うとしてもそれほど時間はありません。
在留資格をお持ちの方が強盗致傷で逮捕された場合には、速やかに弁護士に依頼をし、適切な弁護活動を受ける必要があります。
「経営・管理」ビザの人が傷害事件を起こすと更新ができなくなる?
「経営・管理」の在留資格で日本に滞在しているAさんは、ある日お店で飲酒をした後、繁華街で通行人とトラブルとなりました。
お酒を飲んで酔っていたAさんは、つい手が出てしまい、通行人に対して数発殴る暴行を加えてしまい、通行人に全治3週間のけがを負わせて
しまいました。
このとき
①Aさんが受ける刑事罰はどのようなものになるか
②①の刑事罰は、Aさんの在留期間の更新時に影響があるか、若しくは退去強制処分となるか
以上の点について解説していきたいと思います。
傷害罪の刑事罰
Aさんは、暴行を加え、人に対してけがをさせてしまいました。
このような場合には刑法第204条の傷害罪が成立します。なお、暴行を加えたものの、被害者がけがをしなかったような場合が暴行罪となります。
傷害罪の法定刑は、15年以下の懲役又は50万円以下の罰金です。
ただ、「けが」といってもその程度は様々です。
暴行を加え、結果として人を死亡させてしまったような場合には傷害致死罪というより重い罪が成立しますが、死亡するに至らない場合は傷害罪となります。
そのため、意識が戻らず、植物人間のような状態であったとしても傷害の罪に問われます。
反対にかすり傷くらいの極めて軽微なけがであったとしても、けがはけがですので傷害罪となります。
そのため、傷害事件を起こしてどのような刑事罰を受けるかは、被害者に生じたけがの重さが大きな考慮要素となります。
おおよその目安ですが、被害者が骨折以上のけがをしたような場合には、正式な裁判となり、懲役刑となる可能性が出てきます。
診断書上1ヶ月以内のけがであれば、罰金刑で済むということも十分考えられます。
今回のAさんの場合は、全治3週間のけがということですので、Aさんが初犯であれば罰金刑となるものと思われます。
「経営・管理」の在留資格について
在留期間の更新は「更新を適当と認めるに足りる相当の理由があるとき」(出入国管理及び難民認定法21条2項)に認められますが、この認定にあたっては、出入国在留管理庁によるガイドラインがあります。
このガイドラインによると、在留期間の更新が許可されるのは
1 行おうとする活動が申請に係る入管法別表に掲げる在留資格に該当すること
2 法務省令で定める上陸許可基準等に適合していること(別表第1の2の表又は第4の表に掲げる在留資格の下欄に掲げる活動を行おうとする者)
3 現に有する在留資格に応じた活動を行っていたこと
4 素行が不良でないこと
5 独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有すること
6 雇用。動労条件が適正であること
7 納税義務を履行していること
8 入管法に定める届出等の義務を履行していること
とされています。
このうち4の部分には「素行については,善良であることが前提となり,良好でない場合には消極的な要素として評価され,具体的には,退去強制事由に準ずるような刑事処分を受けた行為,不法就労をあっせんするなど出入国在留管理行政上看過することのできない行為を行った場合は,素行が不良であると判断されることとなります。」との記載がなされています。
まず、「経営・管理」の在留資格は、入管法上別表第1の2の表に記載がある在留資格です。
「経営・管理」の在留資格についてはこちらでも解説をしています。
そのため、法務省令に定める上陸許可基準等に適合する必要があります。
この上陸許可基準は公表されていますが、概ね事業所が存在することや資本金等の額についての定めが記載されています。ですので、仮に傷害罪によって処罰されたからといって上陸許可基準に該当しないというものではありません。
今回の場合、ガイドラインに記載されている「素行が不良でないこと」が問題となります。
そして、「退去強制事由に準ずるような刑事処分を受けた」場合には素行不良であると判断されることになるため、退去強制事由に準ずるような刑事処分であるかどうかを検討していくことになります。
それでは刑罰法令違反が退去強制事由となるかどうかを考えていきます。別表第1の在留資格の場合、入管法等在留関係の法律以外の刑罰法令が問題となる退去強制事由には、入管法24条4号リと同法24条4号の2があります。
まず、入管法24条4号リは、「無期又は一年を超える懲役若しくは禁錮に処せられた者。ただし、刑の全部の執行猶予の言渡しを受けた者及び刑の一部の執行猶予の言渡しを受けた者であつてその刑のうち執行が猶予されなかつた部分の期間が一年以下のものを除く。」とするものです。この4号リで問題とされるのは、仮に禁錮であっても実刑となった者、つまり執行猶予付きの判決を受けた場合は除かれています。傷害罪で実刑の判決となるのは余程被害が大きい(被害者が植物人間となるなど)場合がほとんどですので、今回はこれには該当しません。
次に、24条4号の2ですが、こちらは一定の犯罪で懲役又は禁錮に処せられた場合に退去強制事由となるものです。
24条4号リとの違いは、罪名の違いがあるものの、執行猶予付きの判決であっても退去強制事由となる点にあります。Aさんが問われる「傷害罪」は、刑法の第27章「傷害の罪」の中に含まれています。
そのため、Aさんが傷害罪で懲役刑を受けた場合、たとえ執行猶予がついた判決であったとしても退去強制事由となってしまいます。
この点、初犯であり、全治3週間程度であれば懲役刑が選択されることは多くないと思われますので、ひとまずこの点もクリアできると思われます。
最後に、次に、Aさんの処分が退去強制事由に「準ずる」刑事処分とまで評価されることがあるかどうかが問題となります。この点について、定住者告示3号等に該当する者の素行要件についての審査要領では「日本国又は日本国以外の国の法令に違反して、懲役、禁錮若しくは罰金又はこれらに相当する刑(道路交通法違反による罰金又はこれに相当する刑を除く。以下同じ。)に処せられたことがある者(以下略)」とされています。
この審査要領は一般の在留期間の更新にも該当すると考えられます。そのため、Aさんについても同じように考えることになりますが、かっこ書きで除外されているのは「道路交通法違反による罰金又はこれに相当する刑」となっており、窓外は明示的に挙げられていません。ただ、交通事故のような過失により人にけがをさせた事案と比べて、傷害罪は故意にけがをさせる罪ですから、より慎重な判断がなされると思われます。
そのため、傷害罪で素行善良要件を満たすかどうかについては明確に決まりません。起訴猶予処分であれば問題にならない可能性高まる一方、罰金や禁錮刑となった場合には素行善良要件を満たさないと判断されるケースもあります。だからといってこの事件のことを秘して在留期間更新申請を行うことはできませんので、入管当局に正直に説明し、二度と運転しないこと等の誓約を行い在留許可の更新を求める方がよいと思われます。
ご相談のお問い合わせはこちらからどうぞ
示談交渉
さて、先述の通り、傷害罪で刑事罰を受けてしまうと、在留期間の更新ができなくなる可能性を指摘しました。
しかし、この罪の場合、怪我の程度がそれほど大きいものでなければ、検察官が最終的な刑事処分を決定してしまうより前に被害者の方と示談を行い、被害者の方からお許しいただければ
起訴猶予処分となる可能性があります。
ただ、傷害保険などの保険に加入していたとしても、被害者からお許しを得るような示談交渉は通常行われません。
そのため、在留期間の更新を許可してもらう可能性を少しでも高めるためには、弁護士に依頼し、被害者との間で示談交渉を行ってもらう必要があります。傷害事件の場合には、警察も
被害者の名前や連絡先を開示してくれないことがほとんどですし、仮に知ることができたとしても、当事者同士で話し合うとトラブルになることが多いため、お勧めはできません。
また、検察官が刑事処分を決めてから示談をしても、処分自体が無くなるわけではありませんから、示談は検察官が処分を決めるまでに行う必要があります。
在留資格を持っている状態で傷害事件を起こしてしまった場合には、期間の更新のためいち早く弁護士にご相談ください。
交通事故を起こした後の在留期間の延長は認められるのか,「技術・人文知識・国際業務」ビザについて解説
(事例はフィクションです)
「技術・人文知識・国際業務」の在留資格で日本に滞在しているAさんは、適法な運転免許証を所持し、自家用車を保有していました。
ある日、Aさんは、自動車で帰宅中、周囲の景色に気を取られてしまったことが原因で、信号待ちをしている前の車にぶつかってしまいました。
前方の車には運転手が1名乗車しており、運転手が怪我をしてしまいました。Aさんはすぐに110番と119番をし、駆け付けた警察官により事故の対応が行われました。
このとき
- Aさんが受ける刑事罰はどのようなものになるか
- 刑事罰は、Aさんの在留期間の更新時に影響があるか、若しくは退去強制処分となるか
以上の点について解説していきたいと思います。
過失運転致傷の刑事罰
Aさんは、わき見をしてしまったことにより前方不注視となり、交通事故を起こしてしまいました。
車で交通事故を起こしたことにより、乗員(これはぶつかられた車の乗員だけではなく、ぶつかった、つまり自分が運転している車の乗員も含みます)や歩行者等に怪我をさせてしまったような場合には、自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律5条の過失運転致傷罪が成立します。
なお、今回のAさんはすぐに110番等をしていますので問題ありませんが、事故を起こしてしまったのに現場から逃走したような場合には、より重いひき逃げの罪が成立しますし、お酒を飲んで事故を起こしたような場合には危険運転致傷罪というより重い罪が成立する場合もあります。
Aさんの話に戻すと、不注意という過失により交通事故を起こし、怪我をさせてしまったAさんにはどのような刑罰が与えられるのでしょうか。
法律上定められている法定刑は「七年以下の懲役若しくは禁錮又は百万円以下の罰金に処する」とされています。
一般的に交通事故の場合には①相手の方の怪我の程度②事故を起こした側の過失の程度③被害者の側の過失の程度④運転者の属性などを考慮して処分が決められています。
①については、怪我の程度が重ければ重いほど、後遺症が残ればその影響が大きいほど罪が重くなります。
②については、飲酒や赤信号無視、スピード違反等、それ自体が犯罪になるようなで行為がきっかけで事故を起こしたような場合には罪が重くなります
③については、被害者が赤信号を無視している場合や、道路上で寝ている場合、横断禁止道路を横断している場合などに、運転者の罪が軽くなります。
④については、タクシーやバスの運転手、トラックドライバーなど職業として運転をしている方は、罪が重くなる傾向にあります。
Aさんの事故について考えると、Aさんは特に仕事などで運転していませんし、わき見というそれ自体が犯罪になるようなものではないことが原因で事故を起こしていますから、特に刑を重くすべき事情はありません。
反対に、被害者の方も、信号待ちをしていただけですから、被害者には過失がなく、Aさんの罪を軽くする理由もありません。
そのため、Aさんの処分は①の怪我の程度によっておおよその処分が決まってくると考えられます。
これについて明確に決まりがあるわけではありませんが、全治3日や1週間程度の怪我であれば起訴猶予処分(刑事罰を受けない)、全治3週間~1ヶ月以内程度であれば罰金、1ヶ月を越えるような重い怪我等であれば裁判を受け禁錮刑(ただし執行猶予付き)となることが予想されます。
「技術・人文知識・国際業務」の在留資格について
在留期間の更新は「更新を適当と認めるに足りる相当の理由があるとき」(出入国管理及び難民認定法21条2項)に認められますが、この認定にあたっては、出入国在留管理庁によるガイドラインがあります。
このガイドラインによると、在留期間の更新が許可されるのは
1 行おうとする活動が申請に係る入管法別表に掲げる在留資格に該当すること
2 法務省令で定める上陸許可基準等に適合していること(別表第1の2の表又は第4の表に掲げる在留資格の下欄に掲げる活動を行おうとする者)
3 現に有する在留資格に応じた活動を行っていたこと
4 素行が不良でないこと
5 独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有すること
6 雇用、労働条件が適正であること
7 納税義務を履行していること
8 入管法に定める届出等の義務を履行していること
とされています。
このうち4の部分には「素行については,善良であることが前提となり,良好でない場合には消極的な要素として評価され,具体的には,退去強制事由に準ずるような刑事処分を受けた行為,不法就労をあっせんするなど出入国在留管理行政上看過することのできない行為を行った場合は,素行が不良であると判断されることとなります。」との記載がなされています。
まず、「技術・人文知識・国際業務」の在留資格は、入管法上別表第1の2の表に記載がある在留資格です。
そのため、法務省令に定める上陸許可基準等に適合する必要があります。
この上陸許可基準は公表されていますが、概ね業務に関する事項や報酬についての定めが記載されています。
ですので、仮に過失運転致傷によって処罰されたからといって上陸許可基準に該当しないというものではありません。
今回の場合、ガイドラインに記載されている「素行が不良でないこと」が問題となります。そして、「退去強制事由に準ずるような刑事処分を受けた」場合には素行不良であると判断されることになるため、退去強制事由に準ずるような刑事処分であるかどうかを検討していくことになります。
それでは刑罰法令違反が退去強制事由となるかどうかを考えていきます。
別表第1の在留資格の場合、入管法等在留関係の法律以外の刑罰法令が問題となる退去強制事由には、入管法24条4号リと同法24条4号の2があります。
まず、入管法24条4号リは、「無期又は一年を超える懲役若しくは禁錮に処せられた者。ただし、刑の全部の執行猶予の言渡しを受けた者及び刑の一部の執行猶予の言渡しを受けた者であつてその刑のうち執行が猶予されなかつた部分の期間が一年以下のものを除く。」とするものです。
この4号リで問題とされるのは、仮に禁錮であっても実刑となった者、つまり執行猶予付きの判決を受けた場合は除かれています。過失運転致傷罪で実刑の判決となるのは余程被害が大きい(被害者が亡くなる)とか、過失の程度が大きい場合だけですので、典型的な交通事故ではこれに該当しない可能性の方が高いと思われます。
次に、24条4号の2ですが、こちらは一定の犯罪で懲役又は禁錮に処せられた場合に退去強制事由となるものです。24条4号リとの違いは、罪名の違いがあるものの、執行猶予付きの判決であっても退去強制事由となる点にあります。ただ、Aさんが問題視されている過失運転致傷は、この列挙された犯罪に含まれていませんから、これには該当しません。
最後に、次に、Aさんの処分が退去強制事由に「準ずる」刑事処分とまで評価されることがあるかどうかが問題となります。この点について、定住者告示3号等に該当する者の素行要件についての審査要領では「日本国又は日本国以外の国の法令に違反して、懲役、禁錮若しくは罰金又はこれらに相当する刑(道路交通法違反による罰金又はこれに相当する刑を除く。以下同じ。)に処せられたことがある者(以下略)」とされています。
この審査要領は一般の在留期間の更新にも該当すると考えられます。そのため、Aさんについても同じように考えることになりますが、かっこ書きで除外されているのは「道路交通法違反による罰金又はこれに相当する刑」となっており、過失運転致傷は明示的に挙げられていません。
そのため、過失運転致傷罪で素行善良要件を満たすかどうかについては明確に決まりません。起訴猶予処分であれば問題にならない可能性が高い一方、罰金や禁錮刑となった場合には素行善良要件を満たさないと判断されるケースもあります。
だからといってこの事故のことを秘して在留期間更新申請を行うことはできませんので、入管当局に正直に説明し、二度と運転しないこと等の誓約を行い在留許可の更新を求める方がよいと思われます。
技術・人文知識・国際業務の在留申請について必要な書類はこちらのページにまとめられています。
交通事故に関しては「日本人の配偶者等」の在留資格の場合についても解説をしています。
示談交渉について
先述の通り、過失運転致傷罪で刑事罰を受けてしまうと、在留期間の更新ができなくなる可能性を指摘しました。
しかし、この罪の場合、怪我の程度がそれほど大きいものでなければ、検察官が最終的な刑事処分を決定してしまうより前に被害者の方と示談を行い、被害者の方からお許しいただければ
起訴猶予処分となる可能性があります。
ただ、任意保険や自賠責保険では、ここまでの示談交渉は行ってくれない可能性が極めて高いです。保険会社が行うのはあくまでも損害の賠償のみであり、被害者の方から許してもらうような示談交渉までは話をしないことが通常です。
そのため、在留期間の更新を許可してもらう可能性を少しでも高めるためには、弁護士に依頼し、交通事故の被害者との間で示談交渉を行ってもらう必要があります。もちろん交通事故の場合には相手方の連絡先などを警察官から知らされる場合が多いですが、当事者同士で話し合うとトラブルになることが多いため、お勧めはできません。
また、検察官が刑事処分を決めてから示談をしても、処分自体が無くなるわけではありませんから、示談は検察官が処分を決めるまでに行う必要があります。
在留資格を持っている状態で交通事故を起こしてしまった場合には、期間の更新のためいち早く弁護士にご相談ください。
お問い合わせはこちらからどうぞ。
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