Archive for the ‘外国人と刑事事件’ Category
偽造在留カードを所持・行使したらどうなるのか
【事例】
Aさんは日本で働くために特定技能の在留資格で日本に滞在している外国人です。
在留期限が近くなり,もう少し日本にいたいと思ったことから,永住の在留カードを持てないかと思いました。そこで,在留カードを偽造できる友人に依頼し,永住の在留カードを作ってもらいました。
そのような在留カードを持っていたところ,次の職場で在留カードを見せることとなり,次の職場の雇用主に見せました。しかし,雇用主が在留カードに違和があることに気付き,雇用主が警察に通報しました。
なお,偽造カードであることを見抜かれたのは在留期間内であったため,オーバーステイとはなっていませんでした。
このような場合に,どのような①刑事処分を受けるのか,②退去強制処分を受けることになるのかについて解説します。
参考報道 偽造在留カード行使の疑い 40歳のインドネシア人を逮捕 NHK佐賀NewsWeb
(1)偽造在留カード所持・行使の刑事罰
偽造在留カードを所持していた場合の刑事罰を受ける根拠は,入管法73条の4に根拠があります。
入管法73条の4によれば,「行使の目的で,偽造又は変造の在留カードを所持した」場合に偽造在留カード所持罪が成立することが規定されており,5年以下の懲役又は50万円以下の罰金が予定されています。
偽造在留カードを誰かに見せた場合,偽造在留カード行使罪の問題になります。
偽造在留カード行使罪は,入管法73条の3第2項に根拠規定があります。
入管法73条の3第2項によれば,「偽造又は変造の在留カードを行使」した場合に成立するとされています。この「行使」というのは,簡単に言えば,誰かに見せることです。
偽造在留カード行使については,1年以上10年以下の懲役刑が予定されています。
偽造在留カード所持・行使については量刑相場がだいたい決まっており,大体懲役1年程度で執行猶予付きの判決が予定されています。
(2)退去強制事由になるか
偽造在留カードの所持・行使については,退去強制事由になります。
偽造在留カードの所持・行使を行った場合については,入管法24条3号の5イ,ハに規定があります。入管法24条3号の5イによれば,「行使の目的で、在留カード若しくは日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法第七条第一項に規定する特別永住者証明書(以下単に「特別永住者証明書」という。)を偽造し、若しくは変造し、又は偽造若しくは変造の在留カード若しくは特別永住者証明書を提供し、収受し、若しくは所持すること。」,入管法24条3号の5ハによれば,「偽造若しくは変造の在留カード若しくは特別永住者証明書又は他人名義の在留カード若しくは特別永住者証明書を行使すること。」が退去強制事由となることが規定されています。
(3)弁護人として何ができるか
このような処分が考えられることから,弁護士としては,①(知らずに偽造在留カードを持っていたという事情があれば)偽造在留カードと知らずに持っていたため,不起訴や無罪を求めること,②在留特別許可などによって日本に在留できるようにすることが考えられます。
特に①については,偽造在留カードを手に入れてしまった経緯,偽造在留カードであると気づかなかった理由などを主張して,偽造在留カード所持・行使の故意が無いと主張することになります。
このように,偽造在留カードを所持していた場合に犯罪が成立しなかったり,日本に残れる可能性がありますので,在留カードに関して事件を起こした場合には,弁護士に相談することをお勧めします。
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留学生のピッキング防止法違反
【事例】
Aさんは「留学」の資格で日本に在留している人です。
Aさんは,自宅でのパソコンの組み立てに必要があったことから,マイナスドライバーを含んだ工具セットを購入し,所持していました。ある日,友人にパソコンの組み立てを手伝ってほしいといわれたことから,工具セットをカバンに入れ,友人宅に向かっていました。しかし,友人宅に向かう最中に警察官に呼び止められ,所持品検査をされ,マイナスドライバーを含んだ工具セットがカバンから出てきたことから,工具セットを警察に取り上げられ,今後警察の取り調べに応じるよう言われてしまいました。
このような事例の場合に,①どのような刑事処分を受けるのか,②退去強制になってしまうのかについて解説していきます。
(1)マイナスドライバーなどの所持の刑事罰
特殊解錠用具の所持の禁止等に関する法律(以下,「ピッキング防止法」といいます)4条の「指定侵入工具」については,2条3号に定義規定があり,政令に定められたドライバーが対象となることが規定されています。そのため,ピッキング防止法の施行令2条1号を参照すると,①先端が平らで,その幅が0.5センチメートル以上であること,②長さ(柄を取り付けた時の長さ)が15センチメートル以上であることの両方を充たすドライバーが規制対象になっています。
このようなドライバーを隠匿して所持していた場合,ピッキング防止法4条,16条違反として,1年以下の懲役又は50万円以下の罰金になることが予定されています。
このようなドライバー所持を理由とするピッキング防止法違反の量刑傾向については,前科がない人であれば,おおむね罰金で終わります。しかし,侵入盗を行っていることが疑われる場合など,重く見られるような事情がある場合,前科が無くとも執行猶予付きの有罪判決になる可能性もあります。
今回のAさんの事例の場合,マイナスドライバーの形状がどのようなものなのか明らかではありませんが,ピッキング防止法の規制対象となる形状であるとは考えられます。
ただし,Aさんとしては,友人に頼まれたから,マイナスドライバーを含んだ工具セットを持っていることを正当な理由として主張することが考えられます。この主張について所持する正当な理由と考えられた場合,ピッキング防止法違反の罪は成立しないと考えられます。(ただし,この主張を信用してもらえないなどで犯罪が認められる場合もあります。)
(2)退去強制処分になるか
入管法24条4号の2によれば,別表第一の在留資格(留学など)で在留する人が,ピッキング防止法15条,16条違反により,懲役刑以上の判決(執行猶予付きの有罪判決を含む)を受けてしまった場合,退去強制処分の対象となることが規定されています。
そのため,Aさんの事件の場合,ピッキング防止法違反の事実が認められ,かつ,執行猶予付きの懲役刑以上の重い刑罰を受けることになった場合,退去強制処分となる可能性があります。
このように,退去強制処分となる可能性があるといえます。
(3)弁護士として出来ること
そのため,今回のAさんの事件については,①友人のパソコンの組み立てという「正当な理由」があったこと,②ピッキング防止法違反の罪になるとしても,罰金刑であるべきことを弁護人をつけて主張し,ピッキング防止法違反の罪の成立を否定したり,ピッキング防止法違反の罪に当たるとしても,罰金で終わらせるよう交渉することが考えられます。
このように,ピッキング防止法違反の罪に当たって前科をつけられないようにするため,ピッキング防止法違反の罪に当たるとしても,退去強制処分を受けないために早期に弁護士をつけて,弁護活動を行うことが考えられますので,速やかに弁護士をつけて,弁護活動を受けることをお勧めします。
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留学生がストーカー行為規制法違反をしてしまうとどうなるのか
【事例】
Aさんは,留学の在留資格で日本に在留している大学生です。
大学の後輩のBと付き合っていたところ,振られたことから,よりを戻したくなり,「また,考え直そう」「もう一度会いたい」とメール何度もを送り,Bさんが帰宅する際も後をつけ,家で待ち構えることを繰り返してしまいました。
このように,家につけていたことから,Bさんに通報され,駆け付けた警察官によって現行犯逮捕されてしまいました。
なお,Aさんに前科はありません。
このような事件を起こした場合に,
①Aさんはどのような刑事処分を受けるのか
②退去強制となるのか
という二点について解説していきます。
(1)ストーカー規制法違反の刑事罰
ストーカー行為等の規制等に関する法律18条によれば,「ストーカー行為をした者は,1年以下の懲役又は100万円以下の罰金」になることが規定されています。
この「ストーカー行為」というのは,ストーカー規制法2条4項に定義があり,「ストーカー行為」には,ストーカー規制法2条1項の「つきまとい等」が含まれており,ストーカー規制法2条1項1号につきまとい,待ち伏せの規制が規定されており,3号に面会要求の規制が規定されています。
また,ストーカー規制法2条4号にこの「ストーカー行為」の定義によれば,この「つきまとい等」などを反復して行ったといえなければならないとされています。
ストーカー規制法違反の刑罰の重さは,①何回同様のことを行ったのか,②被害者に対して危害を加えるような行為であるか,③被害者に対して示談や被害弁償を行っているかによって判断されます。
①については,同様の行為を繰り返していればいるほど,重く見られます。
②については,危害を加えるような言動があれば,重く見られます。
③については,被害弁償を行っていれば,有利な事情となります。
今回のAさんの事例の場合,AさんはBさんの家まであとをつけたり,家で待ち構えているため,ストーカー規制法2条1項1号のつきまといや待ち伏せを行っているといえます。AさんはBさんに「会いたい」等の内容を記載したメールを送っていることから,ストーカー規制法2条1項3号の面会要求を行ったということが言えます。
また,これらの行為について,Aさんは繰り返し行っているので,反復して行ったということも出来ます。しかし,危害を加えるような言動をしていません。
そのため,今回のAさんの行為については,重くとも執行猶予付きの有罪判決となる可能性があり,罰金で終わる可能性もあります。
(2)入管関係でどのような処分がされるのか
退去強制事由に当たるかどうかについては,入管法24条に規定があります。
「留学」での在留資格の関係については,入管法24条4号の2に特別な規定があります。しかし,ストーカー規制法違反については,この入管法24条4号の2に挙げられていませんので,執行猶予でも退去強制になるということはありません。
そのため,入管法24条4号リに基づいて,懲役1年以上の実刑判決を受けた場合に退去強制になります。
今回のAさんの事例の場合,重くとも,執行猶予付きの有罪判決が予定されていますので,退去強制になることは考えられません。
しかし,ストーカー規制法違反の前科が残りますので,在留期間の更新などの際に不利益に考慮されます。
(3)弁護士として出来ること
このような刑罰や退去強制処分が予想されることから,弁護士としては,①示談を行い,被害回復を行うこと,②在留期間更新の際に在留期間更新を認めるよう交渉することが考えられます。
例えば,①については,起訴前に被害者と示談し,検察官と交渉して不起訴にするよう働きかけることが考えられます。
また,②についても,在留期間更新について交渉することで,在留期間更新を認めてもらえる可能性があります。
このように,留学の資格でストーカー規制法違反事件を起こした場合,迅速に弁護士に依頼することをお勧めします。
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定住者がひき逃げ事件を起こしたらどうなるのか
【事例】
Aさんは,日本で定住資格を持つ外国人です。日本での運転免許は取得しています。
ある日,住宅街で車を運転させていたところ,歩行者とすれ違い,ドアミラーを歩行者に当ててしまいました。
そのさいに,音もなく自動車も揺れた感じがしなかったので,そのまま自動車を走らせていたのですが,コンビニに立ち寄った際に,ドアミラーが折りたたまれていることに気付き,ひき逃げの事実を認識しました。
その後,被害者がナンバープレートを覚えていたことから,Aさんが犯人だと分かり,警察がAさんの下に来て事情聴取を行うことになりました。
なお,被害者が怪我しているのかは分かりません。また,Aさんに前科前歴はありません。
このような場合に,①どのような刑事処分を受けるのか,②入管法上の処分はどうなるのかについて解説していきます。
(1)ひき逃げの刑事罰
道路交通法72条1項によれば,交通事故(物損,人身事故どちらの場合でも)があった場合,被害者に対する救護義務と警察に対する報告義務が発生します。
特に,人が怪我をして,被害者に対する救護を行わなかったという場合には,道路交通法117条2項に基づき,5年以下の懲役又は,100万円以下の罰金が科されます。
ただし,被害者に怪我等が無いことを確認して,警察に対する報告義務を怠ったというだけだった場合,道路交通法119条1項17号に基づき,3月以下の懲役又は5万円以下の罰金が科せられます。
なお,被害者が実はけがをしていたという場合,ひき逃げに加えて,自動車運転過失致傷罪などが成立することになります。
そのため,ひき逃げ事件の量刑としては,①どのような義務を怠ったのか,②どのようにぶつかったのか,③被害者は怪我をしているのか,④保険等は契約しているのかが重要になります。
①については,被害者に対する救護義務を怠ったといえる場合には,道路交通法上重く見られます。
②については,ひき逃げまでにぶつかる態様が明らかに事故を起こしているといえる場合,重く見られます。
③については,被害者が怪我をしていた場合,自動車運転過失致傷が成立する関係から,重く見られます。
④については,保険等の契約があり,被害者に対する示談や被害弁償が見込まれる場合,有利に判断されます。
量刑傾向としては,被害者に怪我がなく,単なる救護義務違反,報告義務違反であれば,罰金になる可能性が高いです。しかし,被害者が怪我をしており,ひき逃げをしたということになった場合,執行猶予付きの有罪判決となる可能性が高いです。
ただし,事故を起こしたと認識していなかったため,ひき逃げの故意が無いとして,無罪になる可能性もあります。
特に,低速でぶつかり,人に当たったのか当たっていないのかその場では分からないような事件については,故意が無いとして不起訴や無罪になる例もあります。
(2)入管法上の処分
退去強制になるかについては,入管法24条リにおいて,一年以上の実刑判決となった場合に,退去強制処分となることが規定されています。
そのため,前科のない人が,ひき逃げ事件を起こしたときに,交通死亡事故でも起こさない限りは,実刑判決となることは考えられません。
また,定住者の場合,在留資格更新の際に,「素行不良者でないか」という点が考慮されるため,ひき逃げ事件を起こしたという前科やどのような刑罰を受けたのかという前科が考慮されます。そのため,場合によっては,在留期限更新を拒絶される可能性があります。
(3)弁護人として出来ること
このような刑罰や,入管法上の処分が予定されるため,弁護人としては,①事故を起こした事実に気付かなかったため,故意が無いと主張すること,②このようなひき逃げの前科前歴があっても,在留期限の更新は認められるべきであると主張することが考えられます。
①については,ぶつかるまでの運転の態様,ぶつかった際に揺れたとか,音が出たかという事実について主張することによって,事故に気付かなかったこと,気付きようも無かったことを主張し不起訴,無罪をねらうことができます。
②については,在留期間更新の際に,ひき逃げの事実があっても,在留資格の更新が認められるべきであると主張することが考えられます。
このように,ひき逃げの事件であったとしても,有利な事情を主張することによって,より有利な刑罰を目指したり,入管法上も有利な判断がされる可能性がありますので,迅速に弁護士に依頼されることをお勧めします。
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経営管理ビザの人が不同意わいせつで退去強制となるか
「経営、管理」の在留資格で日本に滞在しているAさんは、ある日,道路を通行中の女性にいきなり抱き付き、背後から胸をもむ不同意わいせつ事件を起こしました。
数ヶ月後、Aさんは警察により逮捕されてしまいました。
このとき,
①Aさんが受ける刑事罰はどのようなものになるか
②①の刑事罰により退去強制になることはあるのか
③Aさんとしてできることはあるのか
以上の点について解説していきたいと思います。
⑴不同意わいせつの刑事罰
Aさんの起こした事件は「不同意わいせつ」と呼ばれるものに該当する可能性が高いと言えます。
不同意わいせつ罪の法定刑は、6月以上10年以下の懲役となっていますが、具体的な刑罰は、わいせつ行為の程度や回数、被害者の処罰感情などにより決められます。
典型的な不同意わいせつ事件であれば、前科前歴がなければ執行猶予付き判決となるものも多数あります。
⑵退去強制事由となるか
刑事事件と退去強制が関わる条項は、いくつかありますが、代表的なものは入管法24条の
4号チ 薬物事件で有罪判決を受けた者
4号リ 1年以上の実刑判決を受けた者
4号の2 窃盗などの事件で有罪判決を受けた者(別表第1の資格に限る)
となっています。
今回の事件であれば、不同意わいせつは薬物事件でもありませんし、執行猶予付き判決になれば4号リにも該当しません。
また、4号の2に該当するようなこともありません。
そのため、不同意わいせつ罪で有罪判決を受けたとしても、直ちに退去強制となることはなさそうです。
しかし、仮に退去強制とならなくても、在留資格の更新を受けられるかどうかは別問題です。
在留資格の更新時には素行が善良であることが求められていますが、有罪判決を受けた場合には素行善良の要件に問題が生じ、在留資格の更新がされない場合があります。
このような場合、在留資格が更新できず、期限が到来してしまうと、オーバーステイ状態となり、退去強制事由に該当してしまいます。
⑶Aさんはどうすればよいか
不同意わいせつ罪で逮捕された場合、最初は家族であっても面会できません面会することができません。
逮捕されてから2日程度は、弁護士以外が面会できない状況になりますので、家族としても状況の把握などが困難です。
また、仮に釈放されたとしても、捜査が継続して、場合によっては刑事罰を受けてしまうことは上述の通りです。
逮捕された場合には警察からの連絡を受けてすぐに、在宅事件の場合でもできる限り早く、弁護士に相談し、被害者の方への謝罪や入管への対応などを検討する必要があります。
在留資格の不更新の決定が出てしまってからとなると、在留特別許可を得る方法以外が困難となり、取りうる手段が減ってしまいます。
まだ処分が出る前、色々な対策を講じることができる時期に、弁護士にご相談ください。
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定住者が無免許運転で捕まるとどうなるのか
【事例】
実際の事件をもとにしたフィクションです
Aさんは,定住者の資格で日本に在留している外国人です。自動車学校に2,3回行って,めんどくさくなって免許証を取っていない関係から,自動車運転免許証は持っていません。
Aさんがある日,スーパーに買い物に行っていたところ,停車中の自動車(誰も乗っていない)に自分の車を当ててしまうというトラブルを起こしてしまいました。そのため,被害者に警察を呼ばれたところ,Aさんの無免許の事実が発覚してしまいました。
なお,Aさんに前科はありません。
このような事例の場合に,①どのような刑事処分を受けるのか,②退去強制処分を受けないか,在留資格更新に影響はないのかについて解説していきます。
(1)無免許運転の刑事罰
道路交通法84条1項によれば,自動車を運転するためには,自動車運転免許を取得する必要があり,自動車運転免許証を持たずに自動車を運転すると,道路交通法117条の2の2第1項1号の無免許運転罪を理由に処罰されます。
この刑の重さですが,3年以下の懲役又は50万円以下の罰金刑が予定されています。
量刑を左右する事情としては,①どのくらいの頻度で自動車を運転しているか,②無免許で運転して実際に事故を起こしたか,③自動車を処分したかなどが考慮されます。
①については,多く運転しているということであれば,事件について重く見られる事情になります。
②については,事故を起こしたということであれば,重く見られる事情になります。
③については,自動車を処分したら,反省している,再犯可能性が低いということで,軽く見られる事情になります。
量刑傾向としては,前科のない人の無免許運転の場合,罰金刑になることが多いです。あまりにも繰り返しているようですと,執行猶予付きの有罪判決となる可能性もあります。
(2)入管法上の処分について
退去強制処分を受ける可能性については,入管法24条4号リによれば,1年以上の実刑判決を受けた場合に,退去強制処分になることが規定されています。
そのため,前科のない人が,無免許運転を行って,実刑判決になることは考えにくいため,Aさんが,今回の事件ですぐに退去強制処分になることは考えにくいです。ただし,この後も,無免許運転を繰り返していると,実刑判決となり,退去強制処分となる可能性があります。
定住者の資格の場合,在留資格の更新の際には,「素行不良でないか」ということが問題になります。
そのため,無免許運転をしたという前歴や,罰金刑などを受けたという前科については,在留資格更新の際に不利益に考慮されます。
場合によっては,在留期間の更新が拒絶される可能性もあります。
(3)弁護人として出来ること
このような刑罰や不利益処分が予定されるため,弁護士としては,①有利な情状があるため,軽い刑罰を目指していくこと,②在留期間の更新を求めることを行っていく必要があります。
①については,自動車を頻繁には運転していないことを主張することで,より有利な刑罰を目指していくということが考えられます。なるだけ,執行猶予付きの有罪判決とならないよう活動していくことが考えられます。
②については,在留資格の更新の際に,無免許運転の事情があっても,在留資格の更新を認めるよう説得することが考えられます。
このように,無免許運転の事件であったとしても,有利な事情を主張することによって,より有利な刑罰を目指したり,在留資格の更新を認めてもらうということはできますので,迅速に弁護士に依頼することをお勧めします。
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外国籍の少年と闇バイト
事例
Aさんの息子は、家族滞在の資格で日本に滞在し、現在高校2年生です。お子さんは、いわゆる闇バイトに手を出し、高齢者から現金をだまし取る詐欺に加担してしまいました。
何件か同じような詐欺に加わった後、ある被害者の家を尋ねたところ、待ち構えていた警察官に現行犯逮捕されてしまいました。
以上を前提として
①息子さんが受ける手続きはどのようなものになるか
②①によって退去強制となることがあるか
以上の点について解説していきたいと思います。
⑴少年事件手続き
日本の刑事手続きにおいては、まずは20歳以上と20歳未満でその手続きが区別されます。
20歳以上は大人の手続きとなり罰を受けるのに対し、20歳未満の場合にはいったん少年手続きに進みます。
20歳未満の人が刑事事件を起こした場合には、全ての事件が家庭裁判所に送られることになっています。
この家庭裁判所の手続きでは、18歳、19歳の「特定少年」と、18歳未満の少年で再び区別されることになっています
特定少年でも、それ以外の少年でも、家庭裁判所で「検察官送致決定」というものを受けると、大人と同じ手続きに戻り、刑事罰を受けることになります。
これに対し、少年院送致、保護観察、児童自立支援施設送致、不処分等の決定は、いずれも刑事罰ではなく少年特有の保護処分という扱いとなります。
今回の息子さんの場合、高校2年生の年齢であれば、通常通り家庭裁判所に事件が送致されます。また、特定少年ではないと予想されるため、おそらく保護処分となることが予想されますが、
その程度は、これまでの前歴や、家庭環境、補導歴といった、事件以外の要素も考慮して決定されることとなっています。
特に特殊詐欺の場合には、被害額が高額になるケースがほとんどです。多くのケースでは数百万円から数千万円をだまし取ってから捕まっており、最終的に少年院送致となることも多い事例です。
https://shounenjiken-bengosi.com/tag/%E9%97%87%E3%83%90%E3%82%A4%E3%83%88/
⑵退去強制となるか
それでは、家庭裁判所の処分により退去強制となるかについて検討します。
入管法で、少年の退去強制事由を定めているのは、24条4号のトです。同号は「少年法(昭和二十三年法律第百六十八号)に規定する少年で昭和二十六年十一月一日以後に長期三年を超える懲役又は禁錮に処せられたもの」
と定められています。
長期3年を超える場合、執行猶予付きの判決とすることができませんので、3年を超える実刑判決を受けた場合ということになります。大人の場合には、1年以上の実刑(同号リ)で退去強制となるとされていることから比べると少年の方が退去強制とする要件が厳しいと言えます。
いずれにしても、保護処分の場合、刑事罰ではありませんから、仮に3年以上少年院送致をされるようなことがあったとしても、これは退去強制事由には当たらないということになります。
ですので、この方の事件の場合には、退去強制となることは通常考えられないと判断してよいように思われます。
しかし、18歳や19歳で同じような事件を起こし、捕まえに来た被害者を突き飛ばしてけがをさせてしまったような場合には、強盗致傷となる可能性もあり、そうなってしまうと原則検察官送致となり、刑事罰を受けることになります。
強盗致傷の法定刑は無期又は6年以上の懲役ですので、極めて重い罪です。
⑶弁護活動
特殊詐欺は、大人であってもかなり重い刑罰が科される犯罪です。また、1件だけではなく複数の事件に関わっていることが大半で、捜査も長期化しやすい傾向にあります。
被害者への被害弁償はもちろん必要ですが、それだけではなく将来の在留資格更新を行ったり、お子さんの更生のためにも、専門の弁護士にご依頼ください。
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留学生が公務執行妨害で逮捕されてしまった場合
【事例】
留学生の資格で在留しているAさんが,B市市役所で住民票を移そうとしていました。しかし,Aさんは,市役所職員から,「申請のための資料が足りない」と言われたことから,怒り,市役所職員につかみかかり,「どういうことだ,これでいいだろ」と声を荒げて怒ってしまいました。
そのため,B市職員に警察官を呼ばれ,警察官に現行犯逮捕されてしまいました。
なお,Aさんに前科はありません。
このような事例の場合に,①Aさんはどのような刑罰を受けるのか,②退去強制処分となるのかという二点について解説していきます。
(1)公務執行妨害罪の刑事罰
刑法95条によれば,「公務員が職務を執行するに当たり,これに対して暴行または脅迫を加えた」場合に成立します。
この場合の刑罰として,「3年以下の懲役又は,50万円以下の罰金」が予定されています。
公務執行妨害罪の重さは,①暴行の強度,②公務が妨害された程度,③前科の有無,④被害弁償を済ませたかによって決まります。
①については,暴行の程度が強度であれば,重く見られます。公務員を殴ったり,蹴ったりすると重く見られます。
②については,どのくらい妨害されたかによって決まります。長時間仕事を離れなければならないような場合,重く見られます。
③については,前科があれば重く見られます。
④については,被害弁償を行って居れば,有利に見てもらえます。
今回のAさんについては,掴みかかるという暴行を行っている点が重く見られます。公務を妨害した時間は分かりませんが,前科が無いことは有利な事情になり,被害弁償も行えば有利な事情として見てもらえます。
このような場合,Aさんは重くとも,執行猶予付きの有罪判決となり,場合によっては,罰金刑で終わる可能性があります。
(2)入管関係でどのような処分が下されるか
入管法24条4号の2に掲げる罪名として,公務執行妨害罪は規定されていないことから,公務執行妨害罪で執行猶予付きの有罪判決となったとしても退去強制処分を受けることはありません。
しかし,懲役1年以上の実刑判決となった場合には,入管法4号リに基づいて,退去強制処分の対象となります。
今回のAさんの場合,前科が無く,重くとも執行猶予付きの有罪判決になることが予想されていることから,退去強制になることは予想されません。
ただし,たとえ退去強制されないとしても,次の更新の際には不利な事情として扱われることになります。長期間,日本での滞在を希望する場合には刑事事件についても不起訴処分となっている方が,ビザの更新の点では不利益が少ないものとなります。
(3)弁護士として出来ること
このような刑罰が予想されることから,弁護士としては,①早期の身柄解放を求めること,②不起訴になるよう求めることが考えられます。
①については,今回の事件の場合,Aさんは逮捕されていることから,勾留をしないよう求めたり,勾留に対して準抗告を行うことによって,早期の身柄解放を求めることになります。
②については,このような事件の場合,示談を成立させることで,不起訴となる可能性があります。
このように,留学生が,公務執行妨害罪に当たる行為を行ってしまった場合には,迅速に弁護士に相談して,対応してもらうことが適切です。
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留学生が窃盗を犯してしまった場合
【事例】
留学の資格で在留しているAさんは,大学の友人から「いい仕事がある」と誘われて,駐車場に止めてある自動車の自動ロックを解除し,自動車販売会社に運搬し販売する活動をしていました。
しかし,ある日駐車場に止めてある自動車のドアロックを解除し,エンジンをかけ,自動車(中古車販売価格100万円)を運転しようとしていたところ,自動車の持ち主に発見され,警察を呼ばれ,逮捕されてしまいました。
なお,Aさんに前科はありません。
このような事件の場合に,
①Aさんはどのような刑事処分を受けるのか
②退去強制処分となるのか
という以上の二点について解説していきます。
(1)窃盗罪の刑事罰
刑法235条によれば,「他人の財物を窃取」した場合,「10年以下の懲役又は50万円以下の罰金」に処されることが予定されています。
なお,自動車窃盗の場合には,窃盗未遂ではないかということが争われるのですが,自動車に乗り込み,エンジンをかけるなどの容易に持ち出せるような状態にした場合に,窃盗未遂ではなく,窃盗既遂になります。
今回の事例の場合,Aさんは,エンジンをかけ,自動車を運転しようとしている状態にしているため,窃盗未遂にはならず,窃盗既遂罪が成立します。
窃盗罪の刑罰の重さは,①被害金額,②被害点数,③私的空間に立ち入るような態様のものか,④被害弁償は済んでいるかによって判断されます。
①については,被害金額が高ければ高いほど,重く見られます。
②については,被害点数が多ければ多いほど,重く見られます。
③については,カバンの中や車の中に侵入するなどの事情があれば,重く見られます。
④については,被害弁償が行われれば,事件について軽く見られます。
今回のAさんについては,被害金額100万円,被害点数1点,自動車に立ち入る形態の犯行であることが,Aさんの事件を重く見る事情になります。一方,Aさんが被害弁償を行った場合には,Aさんに有利な事情になります。
しかし,被害金額が100万円を超え,自動車内に入っての犯行であることから,Aさんに前科が無くても,執行猶予付きの有罪判決になる可能性があります。
(2)入管関係でどのような処分がされるのか
退去強制事由に当たるかどうかは,入管法24条に規定されています。
「留学」での在留資格の関係については,入管法24条4号の2に特別な規定があります。入管法24条4号の2によれば,別表第一の上欄の在留資格をもって在留する者で,刑法第36章の罪により懲役又は禁錮に処せられた場合に退去強制事由に該当するとされています。
そのため,たとえ,執行猶予付きの有罪判決になったとしても,退去強制事由に該当します。
今回のAさんの事件は,自動車窃盗で,執行猶予付きの有罪判決になる可能性が高いことから,退去強制処分を受けることが予想されます。
(3)弁護士として出来ること
このような刑罰や退去強制処分が予想されることから,弁護士としては,①有利な事情があることから,不起訴処分を求めること,②退去強制処分を避けるよう主張することが考えられます。
例えば,①については,起訴前に被害者と示談し,被害届の取下げなどを認めてもらい,検察官と交渉し不起訴処分を求めることが考えられます。
②の主張はなかなか難しいのですが,自動車を盗むよう脅されていたなどの事情があれば,退去強制処分を免れる主張につながる可能性があります。
このように,留学の在留資格で窃盗事件を起こしてしまった場合,迅速に弁護士に依頼することが適切です。
永住者が威力業務妨害罪で検挙されてしまった場合
【事例】(フィクションです)
Aさんは永住者の資格で日本に在留している外国人で,プロ野球の球団Vのファンです。
これまでは,業務妨害と言われるような行為をしたことはありませんでした。
ある日,Aが試合に負けてしまったことから,ふがいなさに腹が立ち,VのスポンサーであるB新聞に「Vにアメリカからスラッガーを入れて大型補強しろ,でなければVの球場に爆弾を仕掛けるぞ」と書いたはがきを100通送りつけました。
このような脅しがあったことから,B新聞からVに連絡を送り,Vの球場に警備員を多数配置させざるを得なくなりました。
このように,混乱を起こしたことから,Aさんは警察に呼ばれ,事件について検察庁に送検されました。
この場合に
①Aさんはどのような刑事処分を受けるのか
②退去強制となる可能性はあるのか
について解説していきます。
(1)威力業務妨害罪の刑事処分について
Aさんは,VやB社の社員や関係者を怯えさせる文言のあるはがきを100通送り,VやB社の業務に混乱をもたらしていることから,威力業務妨害罪が成立します。
参考:威力業務妨害罪の解説
刑事罰の重さですが,刑法234条の威力業務妨害罪が成立する場合,3年以下の懲役又は50万円以下の罰金が規定されています。
威力業務妨害罪の罪の重さは,①どのような行為をしたのか,②その結果どのような混乱が発生したのか,③どのくらいの財産的被害が発生したのか,④被害回復は行っているのか,⑤何回同様の行為を行っているのかによって判断されます。
①については,何度も繰り返すような形で行う悪質な態様であれば,重く見られます。
②については,混乱を収めるのに時間がかかるようなものや広範囲に混乱が発生するような事件であれば重く見られます。
③については,会社などに経済的な損害が発生した場合に,その金額が高くなれば高くなるほど重く見られます。
④については,経済的な損害を埋め合わせるだけの被害回復を行った場合,有利な事情として見られます。
⑤については,同様の業務妨害行為を繰り返し行っている場合に,重く見られます。
今回のAさんの件ですが,100通ものはがきを送っていること,Vの球場における混乱を発生させていること,Vの球場において警備員を多数配置しなければならなくなったことや,B新聞社による無用な連絡をさせたことなどによる損害が考えられますので,これらの事情については重く見られます。
一方,被害回復を行っているかどうかは分かりませんが,V及びBに対して被害弁償がなされれば,有利な事情として見られます。また,Aさんはこれまでに業務妨害と言われる行為をしていないので,その点についても有利に見られます。
こういった事情があることから,Aさんのしたような事件については,執行猶予付きの有罪判決となる例が多く見られます。
(2)入管関係でどのような処分がされるのか
入管法24条4号リによれば,懲役1年を超える実刑判決となった場合に退去強制処分となることが規定されています。
今回のAさんの場合,執行猶予付きの有罪判決が予想されるので,入管法24条4号リの事由に当たることは考えられませんが,前科がある,非常に悪質であり,実刑が相当といえるような事件である場合,実刑判決を受ける可能性がありますので,事前に刑事事件・入管事件に強い専門家・弁護士に相談しておくこと重要です。
(3)弁護士として出来ること
このような刑罰や,退去強制処分に関する処分が予想されることから,弁護士としては,①有利な事情があることから,執行猶予判決を求めること,②示談をするなどして不起訴を求めることが考えられます。
例えば,①の方法としても,Aさんに前科が無いなどの有利な事情を集めて,裁判所に提出することで,執行猶予判決になるよう進めることができます。
②の方法としては,起訴される前に,示談を行い事件については解決したとして,不起訴を求めることが考えられます。
このように,威力業務妨害罪当たる行為をして警察から事情聴取を受けたり,逮捕された場合には,弁護士に迅速に依頼して,対応してもらうことが適切です。
威力業務妨害罪など,刑事事件でお困りのことがある方やご家族の方は,弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所までご相談ください。
外国人の方の在留資格・ビザ問題までまとめてご相談いただけます。
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