Archive for the ‘外国人と刑事事件’ Category

永住者が性的姿態等撮影罪(盗撮)をしてしまった場合

2025-03-04

【事例】

Aさんは,永住者の資格で日本に在留している外国人です。
Aさんは,数年前から週に一回くらいの頻度で女子高校生のスカートの中をスマートフォンで盗撮し,撮影した画像を自宅のパソコンの「昆虫図鑑」という名前のフォルダに保管,保存していました。
ある日,これまでと同様に無音カメラアプリを使ってスカートの中にスマートフォンを差し入れ,撮影したところ,自分の背後にいた男性に見つかり,逮捕されてしまいました。
なお,Aさんに前科はありません。

このような場合に,①どのような刑事処分になるのか,②退去強制処分になってしまうのかについて解説していきます。

(1)性的姿態等撮影罪の刑事罰

性的姿態等撮影罪というのは,性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の映像に係る電磁的記録の消去等に関する法律2条1項各号に規定される罪で,簡単に言えば盗撮行為を取り締まる法律です。

これまで盗撮に対しては各都道府県の条例が適用されるのみでしたが,法改正によって「盗撮罪」が法律として規定されました。

この規定によれば,盗撮行為を行った場合には3年以下の懲役又は300万円以下の罰金が予定されています。
このような犯罪が成立した場合の量刑については,①何回同様の行為を行ったのか,②どのような手段で盗撮を行ったのか,③前科があるか,④示談はしたのかなどによって判断されます。
①については,同様の行為を行った回数が多いほど,重く見られます。
②については,靴の中に小型カメラを隠し,盗撮するなど巧妙な手段であれば,重く見られます。
③については,同種の前科があれば,重く見られます。
④については,示談が成立する場合,被疑者に有利に見られます。
今回のAさんの事例の場合,同様の行為を行っていることが不利な事情になります。しかし,前科が無いこと,巧妙な手段によるものではないという不利にはならない事情があります。
そのため,今回のAさんの事件については,罰金刑を受ける可能性が高い事件であるということが言えます。
また,示談をするということも考えられますが,起訴前に示談が成立した場合,不起訴処分となる可能性があります。

(2)退去強制になるのか

Aさんは永住者であることから,入管法24条4号リに基づき,懲役1年を超える実刑判決を受けた場合でなければ退去強制処分になることはありません。
そのため,今回の前科のないAさんが退去強制処分を受けることは考えにくいです。
しかし,刑事処分を受けた後も繰り返し盗撮を行うと,実刑判決を受けることが考えられます。

盗撮と前科①

(3)弁護士として出来ること

このような刑事処分を受けることから,弁護士としては,①取調べの際には他の画像について詳しいことを話さないことをアドバイスすること,②示談交渉を行い,不起訴処分を求めることが考えられます。
①というのは,取調べの際には覚えていないことを覚えていたというような形で話してしまい,より被疑者にとって不利益な判断をされる可能性があります。そのため,取調べのアドバイスとして,他の画像について詳しい子をと話さないようにすることが重要になります。

②というのは,起訴前に示談を成立させた場合,被害回復が済んでいることを理由として,不起訴処分となる可能性があります。この際の示談交渉を弁護士が行うということができます。示談交渉というのは,弁護士が介入した方がスムーズに進みますので,示談交渉をしたいということであれば,弁護士に依頼する方が良いと考えられます。
このように対応できることから,取調べに当たってのアドバイスを求めたい,示談をしてほしいということであれば,迅速に弁護士に依頼することをお勧めします。

具体的なお問い合わせはこちらからどうぞ

お問い合わせ

 

留学生が危険運転致傷事故を起こしてしまったら

2025-02-25

【事例】

Aさんは,「留学」の在留資格で,日本の大学に通っています。また,日本の大学の自動車サークルに加入しています。
Aさんは,自動車サークルのサークル説明会の際に,新入生Bさんを連れて,山道を自動車で走行していました。その際,山道の急カーブを高速でドリフトすることになっていたことから,左方向に曲がるきついカーブ(制限速度30キロ)に時速80キロで侵入し,ドリフト走行しようとしたところ,上手く曲がることができずに,自動車を木にぶつけてしまい,同乗していた新入生Bさんに全治6カ月の骨折をさせてしまいました。
このような事件を起こしたことから,Aさんは警察に逮捕されてしまいました。

以上を前提として,
①Aさんが受ける刑事罰はどのようなものか
②①の刑事罰によって,Aさんは退去強制処分を受けるか
以上の点について解説していきます。

(1)危険運転致傷罪の刑事罰

Aさんの事件については,自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律2条2号の危険運転致傷罪が成立するかどうかが問題となります。
その規定によれば,①その進行を制御することが困難な高速度で自動車を走行させたこと,②それによって,人を負傷させたということが言えなければなりません。
一般に,「その進行を制御することが困難な高速度」と認められるかが問題になりますが,これは,制限速度や道路の状況(直進かカーブか乾いているか湿っているかなど),運転者の技能,ブレーキを踏んでいたかなどから判断されます。
そのため,制限速度を超えていたからといって簡単に危険運転と認められるわけではありません。
今回のAさんの事例の場合制限速度が30キロで,カーブもきついカーブであること,カーブに侵入した際の速度も50キロオーバーの時速80キロであることなどから,「その進行を制御することが困難な高速度」と認められる可能性があります。
これによって,Bさんを怪我させていることから,危険運転致傷罪が成立する可能性があります。

参考記事 危険運転致傷罪で逮捕された場合

危険運転致傷罪で逮捕

この場合の刑事罰ですが,自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律2条2号によれば,危険運転致傷罪については,15年以下の懲役刑が予定されています。
このような危険運転致傷罪の具体的な刑罰を決める際には,①被害者はどのようなけがをしたのか,②被害者の人数は何人か,③運転態様が悪質ではないか,④保険に加入していたかや,被害弁償を行ったかが量刑を決めるうえでの考慮要素になります。

①については,ケガが重ければ重いほど,重く見られます。
②については,被害者となる人数が多ければ多いほど,重く見られます。
③については,赤信号無視や制限速度違反の程度,はみだし運転など交通ルールに反していると考えられれば考えられるほど,重く見られます。
④については,被害弁償を行って居たり,保険に入っていれば有利な事情になります。

今回のAさんは,Bさんに全治6カ月のけがを与えていること,制限速度を50キロもオーバーしてカーブに入っていることが不利な事情として存在し,被害者が一人であることが有利な事情として存在します。また,Aさんが自動車保険に入っているかは不明ですが,入っていたり,被害弁償が済んでいれば有利な事情として見られます。
このような危険運転致傷罪の量刑傾向としては,執行猶予付きの有罪判決となるケースが多いです。よほど運転態様が悪質であったり,被害者が多数である場合に実刑が選択される可能性があります。
今回のAさんのようなケースでは,どちらかといえば執行猶予付きの有罪判決が選択されるような事件であると考えられます。

(2)退去強制となるのか

それでは,Aさんが,刑事処分を受けた場合に退去強制になるか解説します。
退去強制事由については入管法24条に定めがあります。ただ、Aさんは留学ですので、在留資格としては別表第1の資格となります。

同条4号の2には「別表第一の上欄の在留資格をもつて在留する者で、刑法第二編第十二章、第十六章から第十九章まで、第二十三章、第二十六章、第二十七章、第三十一章、第三十三章、第三十六章、第三十七章若しくは第三十九章の罪、暴力行為等処罰に関する法律第一条、第一条ノ二若しくは第一条ノ三(刑法第二百二十二条又は第二百六十一条に係る部分を除く。)の罪、盗犯等の防止及び処分に関する法律の罪、特殊開錠用具の所持の禁止等に関する法律第十五条若しくは第十六条の罪又は自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律第二条若しくは第六条第一項の罪により懲役又は禁錮に処せられたもの」という定めがあり、この条文に該当する場合には仮に執行猶予判決であったとしても退去強制となります。

この中に,危険運転致傷罪が挙げられていることから,執行猶予付きの有罪判決となった場合でも退去強制処分を受ける可能性があります。
なお,自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律5条は掲げられていないことから,自動車運転過失致傷罪で執行猶予付きの有罪判決となったとしても,退去強制処分を受けることはありません。

(3)弁護活動

このような処分が予想されることから,弁護士としては,①危険運転致傷罪の成立を争い,過失運転致傷罪としてより軽い罪として認めてもらうか,②被害弁償等を行い,不起訴などにしてもらうよう活動することが考えられます。
①については,例えば,時速80キロでも自動車を制御することができたこと,運転に慣れていたため,事故を起こさずに進行できると考えたことを主張することが考えられます。このような主張をした場合,罪を軽くすることと,退去強制事由に該当しないということを主張することにもつながります。
また,②については,確かに,被害弁償を行って不起訴にするというのは可能性は低いかもしれませんが,不起訴になる可能性があり,不起訴になると,前科が付かず,退去強制事由になることもなく終わるかもしれないというメリットがあります。

どちらの手段を取るとしても,弁護士による迅速な対応が求められますので,このような危険運転致傷罪を疑われている場合には迅速に弁護士に相談されることをお勧めします。

お問い合わせはこちらからどうぞ。

お問い合わせ

留学生が薬物事件で逮捕されてしまった場合

2025-02-11

事例

留学生のAさんは、同じ大学の留学生である友人から、ある日気分が良くなる薬を勧められました。
確かにその薬を使用すると、気分が落ち着くのですが、不安になったAさんが内容を尋ねると、いわゆる大麻であることが分かりました。
しかしその心地よさが忘れられなくなったAさんは、何度も大麻を使用し、ある日大麻を持って街を歩いているところを警察官に職務質問され、大麻取締法違反の罪で逮捕されてしまいました。

以上を前提として
①Aさんが受ける刑事罰はどのようなものになるか
②①の刑事罰によってAさんは退去強制となることがあるか
以上の点について解説していきたいと思います。

⑴大麻所持の刑事罰

Aさんは大麻を所持していました。日本では大麻所持は違法とされていますので、Aさんの行為は大麻取締法違反の大麻所持となります。
大麻所持の罰則は、麻薬及び向精神薬取締法66条に記載があり、「ジアセチルモルヒネ等以外の麻薬を、みだりに、製剤し、小分けし、譲り渡し、譲り受け、又は所持した者(第六十九条第四号若しくは第五号又は第七十条第五号に規定する違反行為をした者を除く。)は、七年以下の懲役に処する。」
とされています。
Aさん自身大麻を所持していた認識はありますので、犯罪が成立することに争いはありませんが、そのような場合、Aさんにどのような処分となるのかが問題となります。
大麻所持の場合、初犯であっても裁判となる可能性が高い類型の犯罪です。ただ、いきなり刑務所に行くのではなく、執行猶予付き判決となることが予想されます。
⑵はこれを前提として検討していくことにします。

⑵退去強制となるか

それでは、Aさんの刑事処分により退去強制となるかについて検討します。
退去強制事由については入管法24条に定めがあります。Aさんの在留資格は技術・人文知識・国際業務ですので、在留資格としては別表第1の資格となります。
同条4項チには「昭和二十六年十一月一日以後に麻薬及び向精神薬取締法、大麻取締法、あへん法、覚醒剤取締法、国際的な協力の下に規制薬物に係る不正行為を助長する行為等の防止を図るための麻薬及び向精神薬取締法等の特例等に関する法律(平成三年法律第九十四号)又は刑法第二編第十四章の規定に違反して有罪の判決を受けた者」という定めがあります。
要するに、薬物に関連する法律で有罪の判決を受けたものについては退去強制事由とするというものです。
まず、有罪の判決ですので、執行猶予付きであるかどうかは問われません。実刑判決でなくても退去強制事由となります。
また、今回は関係ありませんが、たとえ罰金刑であっても有罪の判決に変わりはありませんので退去強制事由となることと、別表第二の資格であっても退去強制事由となることにも注意が必要です。
ですので、このままではAさんは退去強制となりますので、在留特別許可を狙う必要性があります。

⑶弁護活動

既に述べた通り、本件では有罪の判決を受けてしまうと退去強制となってしまう可能性が極めて高いという事案です。
何とか退去強制を回避するためには2通りの方向性での弁護活動が考えられます。

①起訴猶予を目指す方向

大麻所持を認め、反省の意を示し、再犯防止の具体的な取り組みを行うなどして、何とか起訴猶予処分を得る方法が考えられます。
覚醒剤事件であればこの方向は相当困難ですが、大麻所持の場合には起訴猶予となることもないわけではないようです。ですので、検察官に働きかけを行い、
何とか処分を回避するということが考えられます。

②故意を否認する方向性

有罪となるためには、犯罪が成立しなければならないところですが、犯罪の成立のためには客観的に犯罪が成立しているだけではなく、犯人に「故意」が必要となります。
故意の内容については様々な見解があるところですが、今回のようなケースでいえば「自分が持っているものが何らかの違法薬物である」という認識が
あるかどうかというところになります。
所持に至る経緯や携帯電話の内容などを踏まえて検討されるところですが、故意を否認するためには何よりも黙秘を行うことが大切です。黙秘権を行使しせず何らかの供述をしてしまえば、
否認は困難になっていきます。

①②のいずれの活動を行うにも、初動が大切です。①の場合、再犯防止計画の策定には通常時間を要しますから、いち早く家族などの方に連絡を取れるように働きかけを行い、取り組みの準備をしていくことが必要となります。
②の場合、一番最初に作成される弁解録取書の内容がどのようなものになるかが大切です。最初に罪を認めてしまった場合、後からこれを覆すためには相当大変です。ですので、最初からきっちりと取調べへ対応し、不用意に供述したり調書を作成することの内容にする必要があります。

参考記事 薬物事件の弁護活動について

逮捕されてしまったら

退去強制を回避するためには、不起訴になることをまず考えなければいけません(なお、不起訴になったとしても在留資格の更新に影響が生じる場合があります)。

ですので、ご家族や知人が逮捕されてしまった場合には、速やかに経験のある弁護士に依頼をすることが必要です。

お問い合わせはこちらからどうぞ。

お問い合わせ

偽造在留カードを所持・行使したらどうなるのか

2025-02-04

【事例】

Aさんは日本で働くために特定技能の在留資格で日本に滞在している外国人です。
在留期限が近くなり,もう少し日本にいたいと思ったことから,永住の在留カードを持てないかと思いました。そこで,在留カードを偽造できる友人に依頼し,永住の在留カードを作ってもらいました。
そのような在留カードを持っていたところ,次の職場で在留カードを見せることとなり,次の職場の雇用主に見せました。しかし,雇用主が在留カードに違和があることに気付き,雇用主が警察に通報しました。
なお,偽造カードであることを見抜かれたのは在留期間内であったため,オーバーステイとはなっていませんでした。
このような場合に,どのような①刑事処分を受けるのか,②退去強制処分を受けることになるのかについて解説します。

参考報道 偽造在留カード行使の疑い 40歳のインドネシア人を逮捕 NHK佐賀NewsWeb

(1)偽造在留カード所持・行使の刑事罰

偽造在留カードを所持していた場合の刑事罰を受ける根拠は,入管法73条の4に根拠があります。
入管法73条の4によれば,「行使の目的で,偽造又は変造の在留カードを所持した」場合に偽造在留カード所持罪が成立することが規定されており,5年以下の懲役又は50万円以下の罰金が予定されています。
偽造在留カードを誰かに見せた場合,偽造在留カード行使罪の問題になります。
偽造在留カード行使罪は,入管法73条の3第2項に根拠規定があります。
入管法73条の3第2項によれば,「偽造又は変造の在留カードを行使」した場合に成立するとされています。この「行使」というのは,簡単に言えば,誰かに見せることです。
偽造在留カード行使については,1年以上10年以下の懲役刑が予定されています。
偽造在留カード所持・行使については量刑相場がだいたい決まっており,大体懲役1年程度で執行猶予付きの判決が予定されています。

(2)退去強制事由になるか

偽造在留カードの所持・行使については,退去強制事由になります。
偽造在留カードの所持・行使を行った場合については,入管法24条3号の5イ,ハに規定があります。入管法24条3号の5イによれば,「行使の目的で、在留カード若しくは日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法第七条第一項に規定する特別永住者証明書(以下単に「特別永住者証明書」という。)を偽造し、若しくは変造し、又は偽造若しくは変造の在留カード若しくは特別永住者証明書を提供し、収受し、若しくは所持すること。」,入管法24条3号の5ハによれば,「偽造若しくは変造の在留カード若しくは特別永住者証明書又は他人名義の在留カード若しくは特別永住者証明書を行使すること。」が退去強制事由となることが規定されています。

(3)弁護人として何ができるか

このような処分が考えられることから,弁護士としては,①(知らずに偽造在留カードを持っていたという事情があれば)偽造在留カードと知らずに持っていたため,不起訴や無罪を求めること,②在留特別許可などによって日本に在留できるようにすることが考えられます。
特に①については,偽造在留カードを手に入れてしまった経緯,偽造在留カードであると気づかなかった理由などを主張して,偽造在留カード所持・行使の故意が無いと主張することになります。
このように,偽造在留カードを所持していた場合に犯罪が成立しなかったり,日本に残れる可能性がありますので,在留カードに関して事件を起こした場合には,弁護士に相談することをお勧めします。

お問い合わせはこちらからどうぞ。

お問い合わせ

留学生のピッキング防止法違反

2025-01-28

【事例】

Aさんは「留学」の資格で日本に在留している人です。
Aさんは,自宅でのパソコンの組み立てに必要があったことから,マイナスドライバーを含んだ工具セットを購入し,所持していました。ある日,友人にパソコンの組み立てを手伝ってほしいといわれたことから,工具セットをカバンに入れ,友人宅に向かっていました。しかし,友人宅に向かう最中に警察官に呼び止められ,所持品検査をされ,マイナスドライバーを含んだ工具セットがカバンから出てきたことから,工具セットを警察に取り上げられ,今後警察の取り調べに応じるよう言われてしまいました。

このような事例の場合に,①どのような刑事処分を受けるのか,②退去強制になってしまうのかについて解説していきます。

(1)マイナスドライバーなどの所持の刑事罰

特殊解錠用具の所持の禁止等に関する法律(以下,「ピッキング防止法」といいます)4条の「指定侵入工具」については,2条3号に定義規定があり,政令に定められたドライバーが対象となることが規定されています。そのため,ピッキング防止法の施行令2条1号を参照すると,①先端が平らで,その幅が0.5センチメートル以上であること,②長さ(柄を取り付けた時の長さ)が15センチメートル以上であることの両方を充たすドライバーが規制対象になっています。
このようなドライバーを隠匿して所持していた場合,ピッキング防止法4条,16条違反として,1年以下の懲役又は50万円以下の罰金になることが予定されています。

このようなドライバー所持を理由とするピッキング防止法違反の量刑傾向については,前科がない人であれば,おおむね罰金で終わります。しかし,侵入盗を行っていることが疑われる場合など,重く見られるような事情がある場合,前科が無くとも執行猶予付きの有罪判決になる可能性もあります。

今回のAさんの事例の場合,マイナスドライバーの形状がどのようなものなのか明らかではありませんが,ピッキング防止法の規制対象となる形状であるとは考えられます。
ただし,Aさんとしては,友人に頼まれたから,マイナスドライバーを含んだ工具セットを持っていることを正当な理由として主張することが考えられます。この主張について所持する正当な理由と考えられた場合,ピッキング防止法違反の罪は成立しないと考えられます。(ただし,この主張を信用してもらえないなどで犯罪が認められる場合もあります。)

事件解説 空き巣の犯罪

空き巣の犯罪

(2)退去強制処分になるか

入管法24条4号の2によれば,別表第一の在留資格(留学など)で在留する人が,ピッキング防止法15条,16条違反により,懲役刑以上の判決(執行猶予付きの有罪判決を含む)を受けてしまった場合,退去強制処分の対象となることが規定されています。
そのため,Aさんの事件の場合,ピッキング防止法違反の事実が認められ,かつ,執行猶予付きの懲役刑以上の重い刑罰を受けることになった場合,退去強制処分となる可能性があります。
このように,退去強制処分となる可能性があるといえます。

(3)弁護士として出来ること

そのため,今回のAさんの事件については,①友人のパソコンの組み立てという「正当な理由」があったこと,②ピッキング防止法違反の罪になるとしても,罰金刑であるべきことを弁護人をつけて主張し,ピッキング防止法違反の罪の成立を否定したり,ピッキング防止法違反の罪に当たるとしても,罰金で終わらせるよう交渉することが考えられます。
このように,ピッキング防止法違反の罪に当たって前科をつけられないようにするため,ピッキング防止法違反の罪に当たるとしても,退去強制処分を受けないために早期に弁護士をつけて,弁護活動を行うことが考えられますので,速やかに弁護士をつけて,弁護活動を受けることをお勧めします。

お問い合わせはこちらからどうぞ。

お問い合わせ

留学生がストーカー行為規制法違反をしてしまうとどうなるのか

2025-01-20

【事例】

Aさんは,留学の在留資格で日本に在留している大学生です。
大学の後輩のBと付き合っていたところ,振られたことから,よりを戻したくなり,「また,考え直そう」「もう一度会いたい」とメール何度もを送り,Bさんが帰宅する際も後をつけ,家で待ち構えることを繰り返してしまいました。
このように,家につけていたことから,Bさんに通報され,駆け付けた警察官によって現行犯逮捕されてしまいました。
なお,Aさんに前科はありません。

このような事件を起こした場合に,
①Aさんはどのような刑事処分を受けるのか
②退去強制となるのか
という二点について解説していきます。

(1)ストーカー規制法違反の刑事罰

ストーカー行為等の規制等に関する法律18条によれば,「ストーカー行為をした者は,1年以下の懲役又は100万円以下の罰金」になることが規定されています。
この「ストーカー行為」というのは,ストーカー規制法2条4項に定義があり,「ストーカー行為」には,ストーカー規制法2条1項の「つきまとい等」が含まれており,ストーカー規制法2条1項1号につきまとい,待ち伏せの規制が規定されており,3号に面会要求の規制が規定されています。
また,ストーカー規制法2条4号にこの「ストーカー行為」の定義によれば,この「つきまとい等」などを反復して行ったといえなければならないとされています。
ストーカー規制法違反の刑罰の重さは,①何回同様のことを行ったのか,②被害者に対して危害を加えるような行為であるか,③被害者に対して示談や被害弁償を行っているかによって判断されます。

①については,同様の行為を繰り返していればいるほど,重く見られます。
②については,危害を加えるような言動があれば,重く見られます。
③については,被害弁償を行っていれば,有利な事情となります。

今回のAさんの事例の場合,AさんはBさんの家まであとをつけたり,家で待ち構えているため,ストーカー規制法2条1項1号のつきまといや待ち伏せを行っているといえます。AさんはBさんに「会いたい」等の内容を記載したメールを送っていることから,ストーカー規制法2条1項3号の面会要求を行ったということが言えます。
また,これらの行為について,Aさんは繰り返し行っているので,反復して行ったということも出来ます。しかし,危害を加えるような言動をしていません。
そのため,今回のAさんの行為については,重くとも執行猶予付きの有罪判決となる可能性があり,罰金で終わる可能性もあります。

参考 ストーカー規制法について

ストーカー規制法違反

(2)入管関係でどのような処分がされるのか

退去強制事由に当たるかどうかについては,入管法24条に規定があります。
「留学」での在留資格の関係については,入管法24条4号の2に特別な規定があります。しかし,ストーカー規制法違反については,この入管法24条4号の2に挙げられていませんので,執行猶予でも退去強制になるということはありません。
そのため,入管法24条4号リに基づいて,懲役1年以上の実刑判決を受けた場合に退去強制になります。
今回のAさんの事例の場合,重くとも,執行猶予付きの有罪判決が予定されていますので,退去強制になることは考えられません。
しかし,ストーカー規制法違反の前科が残りますので,在留期間の更新などの際に不利益に考慮されます。

(3)弁護士として出来ること

このような刑罰や退去強制処分が予想されることから,弁護士としては,①示談を行い,被害回復を行うこと,②在留期間更新の際に在留期間更新を認めるよう交渉することが考えられます。
例えば,①については,起訴前に被害者と示談し,検察官と交渉して不起訴にするよう働きかけることが考えられます。
また,②についても,在留期間更新について交渉することで,在留期間更新を認めてもらえる可能性があります。

このように,留学の資格でストーカー規制法違反事件を起こした場合,迅速に弁護士に依頼することをお勧めします。

お問い合わせはこちらからどうぞ。

お問い合わせ

定住者がひき逃げ事件を起こしたらどうなるのか

2025-01-13

【事例】

Aさんは,日本で定住資格を持つ外国人です。日本での運転免許は取得しています。
ある日,住宅街で車を運転させていたところ,歩行者とすれ違い,ドアミラーを歩行者に当ててしまいました。
そのさいに,音もなく自動車も揺れた感じがしなかったので,そのまま自動車を走らせていたのですが,コンビニに立ち寄った際に,ドアミラーが折りたたまれていることに気付き,ひき逃げの事実を認識しました。

その後,被害者がナンバープレートを覚えていたことから,Aさんが犯人だと分かり,警察がAさんの下に来て事情聴取を行うことになりました。
なお,被害者が怪我しているのかは分かりません。また,Aさんに前科前歴はありません。

このような場合に,①どのような刑事処分を受けるのか,②入管法上の処分はどうなるのかについて解説していきます。

(1)ひき逃げの刑事罰

道路交通法72条1項によれば,交通事故(物損,人身事故どちらの場合でも)があった場合,被害者に対する救護義務と警察に対する報告義務が発生します。
特に,人が怪我をして,被害者に対する救護を行わなかったという場合には,道路交通法117条2項に基づき,5年以下の懲役又は,100万円以下の罰金が科されます。
ただし,被害者に怪我等が無いことを確認して,警察に対する報告義務を怠ったというだけだった場合,道路交通法119条1項17号に基づき,3月以下の懲役又は5万円以下の罰金が科せられます。

なお,被害者が実はけがをしていたという場合,ひき逃げに加えて,自動車運転過失致傷罪などが成立することになります。
そのため,ひき逃げ事件の量刑としては,①どのような義務を怠ったのか,②どのようにぶつかったのか,③被害者は怪我をしているのか,④保険等は契約しているのかが重要になります。
①については,被害者に対する救護義務を怠ったといえる場合には,道路交通法上重く見られます。
②については,ひき逃げまでにぶつかる態様が明らかに事故を起こしているといえる場合,重く見られます。
③については,被害者が怪我をしていた場合,自動車運転過失致傷が成立する関係から,重く見られます。
④については,保険等の契約があり,被害者に対する示談や被害弁償が見込まれる場合,有利に判断されます。
量刑傾向としては,被害者に怪我がなく,単なる救護義務違反,報告義務違反であれば,罰金になる可能性が高いです。しかし,被害者が怪我をしており,ひき逃げをしたということになった場合,執行猶予付きの有罪判決となる可能性が高いです。

ただし,事故を起こしたと認識していなかったため,ひき逃げの故意が無いとして,無罪になる可能性もあります。
特に,低速でぶつかり,人に当たったのか当たっていないのかその場では分からないような事件については,故意が無いとして不起訴や無罪になる例もあります。

参考記事 ひき逃げ事件を起こした場合の刑事弁護

ひき逃げ・当て逃げ

 

(2)入管法上の処分

退去強制になるかについては,入管法24条リにおいて,一年以上の実刑判決となった場合に,退去強制処分となることが規定されています。
そのため,前科のない人が,ひき逃げ事件を起こしたときに,交通死亡事故でも起こさない限りは,実刑判決となることは考えられません。
また,定住者の場合,在留資格更新の際に,「素行不良者でないか」という点が考慮されるため,ひき逃げ事件を起こしたという前科やどのような刑罰を受けたのかという前科が考慮されます。そのため,場合によっては,在留期限更新を拒絶される可能性があります。

(3)弁護人として出来ること

このような刑罰や,入管法上の処分が予定されるため,弁護人としては,①事故を起こした事実に気付かなかったため,故意が無いと主張すること,②このようなひき逃げの前科前歴があっても,在留期限の更新は認められるべきであると主張することが考えられます。

①については,ぶつかるまでの運転の態様,ぶつかった際に揺れたとか,音が出たかという事実について主張することによって,事故に気付かなかったこと,気付きようも無かったことを主張し不起訴,無罪をねらうことができます。
②については,在留期間更新の際に,ひき逃げの事実があっても,在留資格の更新が認められるべきであると主張することが考えられます。

このように,ひき逃げの事件であったとしても,有利な事情を主張することによって,より有利な刑罰を目指したり,入管法上も有利な判断がされる可能性がありますので,迅速に弁護士に依頼されることをお勧めします。

ご相談のお問い合わせはこちらからどうぞ。

お問い合わせ

経営管理ビザの人が不同意わいせつで退去強制となるか

2025-01-06

「経営、管理」の在留資格で日本に滞在しているAさんは、ある日,道路を通行中の女性にいきなり抱き付き、背後から胸をもむ不同意わいせつ事件を起こしました。
数ヶ月後、Aさんは警察により逮捕されてしまいました。
このとき,
①Aさんが受ける刑事罰はどのようなものになるか
②①の刑事罰により退去強制になることはあるのか
③Aさんとしてできることはあるのか
以上の点について解説していきたいと思います。

⑴不同意わいせつの刑事罰

Aさんの起こした事件は「不同意わいせつ」と呼ばれるものに該当する可能性が高いと言えます。
不同意わいせつ罪の法定刑は、6月以上10年以下の懲役となっていますが、具体的な刑罰は、わいせつ行為の程度や回数、被害者の処罰感情などにより決められます。
典型的な不同意わいせつ事件であれば、前科前歴がなければ執行猶予付き判決となるものも多数あります。

参考事例 不同意わいせつ罪に対する弁護活動

【事例解説】路上の不同意わいせつ事件(後編)

 

⑵退去強制事由となるか

刑事事件と退去強制が関わる条項は、いくつかありますが、代表的なものは入管法24条の
4号チ 薬物事件で有罪判決を受けた者
4号リ 1年以上の実刑判決を受けた者
4号の2 窃盗などの事件で有罪判決を受けた者(別表第1の資格に限る)
となっています。
今回の事件であれば、不同意わいせつは薬物事件でもありませんし、執行猶予付き判決になれば4号リにも該当しません。
また、4号の2に該当するようなこともありません。
そのため、不同意わいせつ罪で有罪判決を受けたとしても、直ちに退去強制となることはなさそうです。
しかし、仮に退去強制とならなくても、在留資格の更新を受けられるかどうかは別問題です。
在留資格の更新時には素行が善良であることが求められていますが、有罪判決を受けた場合には素行善良の要件に問題が生じ、在留資格の更新がされない場合があります。
このような場合、在留資格が更新できず、期限が到来してしまうと、オーバーステイ状態となり、退去強制事由に該当してしまいます。

⑶Aさんはどうすればよいか

不同意わいせつ罪で逮捕された場合、最初は家族であっても面会できません面会することができません。
逮捕されてから2日程度は、弁護士以外が面会できない状況になりますので、家族としても状況の把握などが困難です。
また、仮に釈放されたとしても、捜査が継続して、場合によっては刑事罰を受けてしまうことは上述の通りです。
逮捕された場合には警察からの連絡を受けてすぐに、在宅事件の場合でもできる限り早く、弁護士に相談し、被害者の方への謝罪や入管への対応などを検討する必要があります。
在留資格の不更新の決定が出てしまってからとなると、在留特別許可を得る方法以外が困難となり、取りうる手段が減ってしまいます。
まだ処分が出る前、色々な対策を講じることができる時期に、弁護士にご相談ください。

ご相談のお問い合わせはこちらからどうぞ。

お問い合わせ

定住者が無免許運転で捕まるとどうなるのか

2024-12-30

【事例】

実際の事件をもとにしたフィクションです
Aさんは,定住者の資格で日本に在留している外国人です。自動車学校に2,3回行って,めんどくさくなって免許証を取っていない関係から,自動車運転免許証は持っていません。
Aさんがある日,スーパーに買い物に行っていたところ,停車中の自動車(誰も乗っていない)に自分の車を当ててしまうというトラブルを起こしてしまいました。そのため,被害者に警察を呼ばれたところ,Aさんの無免許の事実が発覚してしまいました。
なお,Aさんに前科はありません。

このような事例の場合に,①どのような刑事処分を受けるのか,②退去強制処分を受けないか,在留資格更新に影響はないのかについて解説していきます。

(1)無免許運転の刑事罰

道路交通法84条1項によれば,自動車を運転するためには,自動車運転免許を取得する必要があり,自動車運転免許証を持たずに自動車を運転すると,道路交通法117条の2の2第1項1号の無免許運転罪を理由に処罰されます。
この刑の重さですが,3年以下の懲役又は50万円以下の罰金刑が予定されています。
量刑を左右する事情としては,①どのくらいの頻度で自動車を運転しているか,②無免許で運転して実際に事故を起こしたか,③自動車を処分したかなどが考慮されます。
①については,多く運転しているということであれば,事件について重く見られる事情になります。
②については,事故を起こしたということであれば,重く見られる事情になります。
③については,自動車を処分したら,反省している,再犯可能性が低いということで,軽く見られる事情になります。
量刑傾向としては,前科のない人の無免許運転の場合,罰金刑になることが多いです。あまりにも繰り返しているようですと,執行猶予付きの有罪判決となる可能性もあります。

参考記事 無免許運転に対する罰則

無免許運転をしてしまったら

(2)入管法上の処分について

退去強制処分を受ける可能性については,入管法24条4号リによれば,1年以上の実刑判決を受けた場合に,退去強制処分になることが規定されています。
そのため,前科のない人が,無免許運転を行って,実刑判決になることは考えにくいため,Aさんが,今回の事件ですぐに退去強制処分になることは考えにくいです。ただし,この後も,無免許運転を繰り返していると,実刑判決となり,退去強制処分となる可能性があります。
定住者の資格の場合,在留資格の更新の際には,「素行不良でないか」ということが問題になります。

そのため,無免許運転をしたという前歴や,罰金刑などを受けたという前科については,在留資格更新の際に不利益に考慮されます。
場合によっては,在留期間の更新が拒絶される可能性もあります。

(3)弁護人として出来ること

このような刑罰や不利益処分が予定されるため,弁護士としては,①有利な情状があるため,軽い刑罰を目指していくこと,②在留期間の更新を求めることを行っていく必要があります。
①については,自動車を頻繁には運転していないことを主張することで,より有利な刑罰を目指していくということが考えられます。なるだけ,執行猶予付きの有罪判決とならないよう活動していくことが考えられます。
②については,在留資格の更新の際に,無免許運転の事情があっても,在留資格の更新を認めるよう説得することが考えられます。

このように,無免許運転の事件であったとしても,有利な事情を主張することによって,より有利な刑罰を目指したり,在留資格の更新を認めてもらうということはできますので,迅速に弁護士に依頼することをお勧めします。

ご相談のお問い合わせはこちらからどうぞ。

お問い合わせ

外国籍の少年と闇バイト

2024-12-23

事例

Aさんの息子は、家族滞在の資格で日本に滞在し、現在高校2年生です。お子さんは、いわゆる闇バイトに手を出し、高齢者から現金をだまし取る詐欺に加担してしまいました。
何件か同じような詐欺に加わった後、ある被害者の家を尋ねたところ、待ち構えていた警察官に現行犯逮捕されてしまいました。
以上を前提として
①息子さんが受ける手続きはどのようなものになるか
②①によって退去強制となることがあるか
以上の点について解説していきたいと思います。

⑴少年事件手続き

日本の刑事手続きにおいては、まずは20歳以上と20歳未満でその手続きが区別されます。
20歳以上は大人の手続きとなり罰を受けるのに対し、20歳未満の場合にはいったん少年手続きに進みます。
20歳未満の人が刑事事件を起こした場合には、全ての事件が家庭裁判所に送られることになっています。
この家庭裁判所の手続きでは、18歳、19歳の「特定少年」と、18歳未満の少年で再び区別されることになっています
特定少年でも、それ以外の少年でも、家庭裁判所で「検察官送致決定」というものを受けると、大人と同じ手続きに戻り、刑事罰を受けることになります。
これに対し、少年院送致、保護観察、児童自立支援施設送致、不処分等の決定は、いずれも刑事罰ではなく少年特有の保護処分という扱いとなります。

今回の息子さんの場合、高校2年生の年齢であれば、通常通り家庭裁判所に事件が送致されます。また、特定少年ではないと予想されるため、おそらく保護処分となることが予想されますが、
その程度は、これまでの前歴や、家庭環境、補導歴といった、事件以外の要素も考慮して決定されることとなっています。
特に特殊詐欺の場合には、被害額が高額になるケースがほとんどです。多くのケースでは数百万円から数千万円をだまし取ってから捕まっており、最終的に少年院送致となることも多い事例です。

参考記事 少年が闇バイトに関わってしまった場合

https://shounenjiken-bengosi.com/tag/%E9%97%87%E3%83%90%E3%82%A4%E3%83%88/

⑵退去強制となるか

それでは、家庭裁判所の処分により退去強制となるかについて検討します。
入管法で、少年の退去強制事由を定めているのは、24条4号のトです。同号は「少年法(昭和二十三年法律第百六十八号)に規定する少年で昭和二十六年十一月一日以後に長期三年を超える懲役又は禁錮に処せられたもの」
と定められています。
長期3年を超える場合、執行猶予付きの判決とすることができませんので、3年を超える実刑判決を受けた場合ということになります。大人の場合には、1年以上の実刑(同号リ)で退去強制となるとされていることから比べると少年の方が退去強制とする要件が厳しいと言えます。
いずれにしても、保護処分の場合、刑事罰ではありませんから、仮に3年以上少年院送致をされるようなことがあったとしても、これは退去強制事由には当たらないということになります。
ですので、この方の事件の場合には、退去強制となることは通常考えられないと判断してよいように思われます。
しかし、18歳や19歳で同じような事件を起こし、捕まえに来た被害者を突き飛ばしてけがをさせてしまったような場合には、強盗致傷となる可能性もあり、そうなってしまうと原則検察官送致となり、刑事罰を受けることになります。
強盗致傷の法定刑は無期又は6年以上の懲役ですので、極めて重い罪です。

⑶弁護活動

特殊詐欺は、大人であってもかなり重い刑罰が科される犯罪です。また、1件だけではなく複数の事件に関わっていることが大半で、捜査も長期化しやすい傾向にあります。
被害者への被害弁償はもちろん必要ですが、それだけではなく将来の在留資格更新を行ったり、お子さんの更生のためにも、専門の弁護士にご依頼ください。

ご相談のお問い合わせはこちらからどうぞ。

お問い合わせ

« Older Entries

トップへ戻る

03-5989-0843電話番号リンク 問い合わせバナー