Archive for the ‘外国人と刑事事件’ Category

ひったくりで強制送還?強盗致傷として扱われた場合のビザ・在留資格問題

2025-06-28

ある国から留学で日本に来たAさんは、で日本国内で生活していました。
ある日お金に困ったAさんは、路上でひったくりをして遊ぶ金を手に入れようと考え、夜遅くに道路を通行中の男性の背後から忍び寄り、
持っていた財布等が入ったバッグをひったくりました。しかし、その際被害者が抵抗したため、被害者が転んでしまい、被害者に全治10日間の
擦過傷(すり傷)が生じてしまいました。
この件で、後日Aさんが逮捕されてしまいました。

このとき
①Aさんが受ける刑事罰はどのようなものになるか
②①の刑事罰により、Aさんは退去強制処分となるか

以上の点について解説していきたいと思います。

⑴強盗致傷罪の刑事罰

Aさんは、ひったくりを行い、その際に人をけがさせてしまいました。
このような場合には引っ張った力の強さなどにもよりますが、強盗致傷罪が成立します。
強盗致傷罪の法定刑は、無期又は6年以上の懲役と極めて重い罪となっています。
これほど重い罪の強盗致傷罪ですが、具体的な刑期は、奪った財産の金額や、その際に生じた怪我の程度などを考慮して決定されます。

Aさんの場合、生じさせた怪我は全治10日とそれほど重いものではないですが、財布の中に多くの金銭が入っているような場合には、より罪が重くなっていきます。
また、強盗致傷罪は、刑が減軽されなければ最低懲役6年となっています。ですのでこのままだとAさんには相当重い刑罰が予想されます。

ひったくり事件についてはこちらの解説も。

ひったくり

⑵退去強制となるか

留学の資格は、入管法の別表第1に記載されている資格です。そのため、入管法24条4号の2の適用があり、たとえ執行猶予でも退去強制となります。
先程述べた通り、強盗致傷罪は極めて重い罪ですから、そのまま罪が軽減されたとしても、起訴されてしまうと問題です。ですので、このままいけばAさんは
退去強制となり、日本国外へ送還されることになります。

⑶弁護活動

さて、先述の通り、強盗致傷罪で刑事罰を受けてしまうと、退去強制となり、日本国内に留まれない可能性が極めて高いことを指摘しました。
このような場合、何とか日本国内に留まりたいというようなときは、以下のような弁護活動が考えられます

①被害者の方と示談を行う

検察庁は、全ての刑事事件について起訴をし、刑事処分を求めるのではなく、被害者の意向等の事情を踏まえ、一定の事件を起訴猶予(不起訴)としています。
最終的な処分を決定する際、被害者の方がどの程度処罰意向を持っておられるか、被害回復がなされたかどうかは大きな考慮要素となります。
出来る限り刑事処分を軽減するためにも、被害者の方との示談交渉は不可欠です。

②適用される罪名を争う

強盗致傷罪が成立するためには、法律上いくつかの要件をクリアする必要があります。ただ、最初強盗致傷で逮捕されたような事件でも、最終的に起訴されて
窃盗罪と傷害罪という形になることはそう珍しいものではありません。窃盗罪と傷害罪で起訴されたような場合には、怪我の程度や被害金額にもよりますが、
強盗致傷と異なり実刑になる可能性がそれほど高いという罪名ではありません。
全ての事件でこのような罪名の変更がなされるわけではありませんが、取調べにきちんと対応することで対処可能な場合も存在します。

いずれにしても、強盗致傷罪が発生した場合、警察はほぼ確実に犯人を逮捕します。
逮捕されると、引き続いて勾留となりますが、逮捕・勾留期間を併せても最大23日間しか捜査期間はありません。
そして、勾留期限の最終日に検察官は起訴不起訴を決定しますから、どのような弁護活動を行うとしてもそれほど時間はありません。

在留資格をお持ちの方が強盗致傷で逮捕された場合には、速やかに弁護士に依頼をし、適切な弁護活動を受ける必要があります。

具体的な事件についてはこちらからお問い合わせください。

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経営管理の外国人が万引き事件を起こすとどうなるか

2025-06-21

【事例※フィクションです】

Aさんは、「経営管理」の在留資格で、日本に滞在している外国人です。
ある日、Aさんは、経営している会社の経営がうまくいかないストレスから、近くのコンビニエンスストアで栄養剤(100円程度)のドリンクを手に取り、ドリンクを持ったままレジを通さないで店を出てしまいました。
Aさんが店を出ていく様子は、店長に見られておりAさんが店を出たところで、店長につかまり、警察を呼ばれてしまいました。
なお、今回のAさんには前科前歴となるような事件はありませんでした。
このような事件の場合に、①どのような刑事処分を受けるのか、②退去強制処分になるのかについて解説していきます。

(1)窃盗の刑事罰

万引きは、窃盗罪として処罰されます。窃盗罪は、刑法235条に根拠があります。
刑法235条によれば、「他人の財物を窃取した」場合に窃盗罪が成立します。

この窃盗罪の量刑としては、10年以下の懲役又は、50万円以下の罰金が予定されています。

窃盗罪の刑罰の重さは、①被害額はいくらなのか、②盗んだ態様は巧妙なものなのか、③何回同様の事件を起こしているのか、④被害弁償を行っているのかによって決まります。
①については、被害金額が高ければ高いほど、重く見られます。
②については、隠したりするなど巧妙な手段である場合は重く見られます。
③については、何回も万引きを繰り返していると重く見られます。
④については、被害弁償を行っているという事情がある場合、有利な事情として見られます。

今回のAさんの事例の場合、被害金額は100円程度と大きくはありません。
また、盗品のドリンクを持ったまま店を出ていることから、巧妙な態様によるものとは言えません。今回のAさんについては前科がなく初犯として処分を受けることになります。

被害弁償を行ったかどうかは不明ですが、被害弁償を行えば有利な事情として見られます。

今回のAさんの場合、万引き事件としては、初犯で被害金額も少ないことから、窃盗事件の中でも中程度から軽度の部類に入ると思われます。
そのため、処分としては重くても罰金刑程度で終わる可能性が高いでしょう。
ただし、ストレスなどから同様の万引き事件を繰り返してしまうと、前科が多いということで執行猶予付きの有罪判決となり、さらには、実刑判決を受ける可能性があります。

万引き事件に対する弁護活動についてはこちらもご覧ください

万引き

(2)入管関係でどのような処分がされるか

「経営管理」の在留資格の人が退去強制となるかどうかについては、入管法24条4号の2に根拠があります。
この規定は「別表第一の上欄の在留資格をもつて在留する者で、刑法第二編第十二章、第十六章から第十九章まで、第二十三章、第二十六章、第二十七章、第三十一章、第三十三章、第三十六章、第三十七章若しくは第三十九章の罪、暴力行為等処罰に関する法律第一条、第一条ノ二若しくは第一条ノ三(刑法第二百二十二条又は第二百六十一条に係る部分を除く。)の罪、盗犯等の防止及び処分に関する法律の罪、特殊開錠用具の所持の禁止等に関する法律第十五条若しくは第十六条の罪又は自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律第二条若しくは第六条第一項の罪により懲役又は禁錮に処せられたもの」と規定されているため、窃盗罪について、懲役刑(執行猶予付きの判決を含む)となった場合に、退去強制処分となることが規定されています。

そのため、窃盗罪で罰金刑となった場合は退去強制処分の対象にはなりません。
しかし、罰金刑となったとしても、窃盗罪の前科として残る関係から、在留期間の更新の際に不利益に考慮されます。

(3)弁護士としてできること

このような刑罰や入管手続きにおける不利益があることから、弁護士としては、①被害弁償を行い、被害回復を行い、不起訴を目指すこと、②在留期間の更新の罪に不利益が出ないよう交渉することが考えられます。

このように活動することで、窃盗罪の前科が付かないようにできたり、在留期間更新がされず日本に居られなくなるという事態を回避することができます。
窃盗事件を起こしてしまった場合や警察から取調べを受けているという場合、家族が警察で取調べを受けている等という場合には、迅速に弁護士に依頼することをお勧めします。

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大学教授が交通事故を起こした場合,ビザの更新はできるのか?

2025-06-14

※事例はフィクションです

「教授」の在留資格で日本に滞在しているAさんは、適法な運転免許証を所持し、自家用車を保有していました。
ある日、Aさんは、自動車で帰宅中、周囲の景色に気を取られてしまったことが原因で、信号待ちをしている前の車にぶつかってしまいました。
前方の車には運転手が1名乗車しており、運転手が怪我をしてしまいました。Aさんはすぐに110番と119番をし、駆け付けた警察官により捜査が行われました。

このとき
①Aさんが受ける刑事罰はどのようなものになるか
②①の刑事罰は、Aさんの在留期間の更新時に影響があるか、若しくは退去強制処分となるか

以上の点について解説していきたいと思います。

⑴過失運転致傷の刑事罰

Aさんは、わき見をしてしまったことにより前方不注視となり、交通事故を起こしてしまいました。
車で交通事故を起こしたことにより、乗員(これはぶつかられた車の乗員だけではなく、ぶつかった、つまり自分が運転している車の乗員も含みます)や歩行者等に怪我をさせてしまったような場合には、
自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律5条の過失運転致傷罪が成立します。
なお、今回のAさんはすぐに110番等をしていますので問題ありませんが、事故を起こしてしまったのに現場から逃走したような場合にはより重いひき逃げの罪が成立しますし、お酒を飲んで事故を起こしたような場合には危険運転致傷罪というより重い罪が成立する場合もあります。

Aさんの話に戻すと、不注意という過失により交通事故を起こし、怪我をさせてしまったAさんにはどのような刑罰が与えられるのでしょうか。
法律上定められている法定刑は「七年以下の懲役若しくは禁錮又は百万円以下の罰金に処する(以下略)」とされています。
一般的に交通事故の場合には①相手の方の怪我の程度②事故を起こした側の過失の程度③被害者の側の過失の程度④運転者の属性などを考慮して処分が決められています。

①については、怪我の程度が重ければ重いほど、後遺症が残ればその影響が大きいほど罪が重くなります。
②については、飲酒や赤信号無視、スピード違反等、それ自体が犯罪になるようなで行為がきっかけで事故を起こしたような場合には罪が重くなります
③については、被害者が赤信号を無視している場合や、道路上で寝ている場合、横断禁止道路を横断している場合などに、運転者の罪が軽くなります。
④については、タクシーやバスの運転手、トラックドライバーなど職業として運転をしている方は、罪が重くなる傾向にあります。

Aさんの事故について考えると、Aさんは特に仕事などで運転していませんし、わき見というそれ自体が犯罪になるようなものではないことが原因で事故を起こしていますから、特に刑を重くすべき事情はありません。

反対に、被害者の方も、信号待ちをしていただけですから、被害者には過失がなく、Aさんの罪を軽くする理由もありません。
そのため、Aさんの処分は①の怪我の程度によっておおよその処分が決まってくると考えられます。

これについて明確に決まりがあるわけではありませんが、全治3日や1週間程度の怪我であれば起訴猶予処分(刑事罰を受けない)、全治3週間~1ヶ月以内程度であれば罰金、1ヶ月を越えるような重い怪我等であれば裁判を受け禁錮刑(ただし執行猶予付き)となることが予想されます。

交通事故に対する刑事罰についてはこちらもご覧ください

交通事故・交通違反と刑事事件

 

⑵「教授」の在留資格について

在留期間の更新は「更新を適当と認めるに足りる相当の理由があるとき」(出入国管理及び難民認定法21条2項)に認められますが、この認定にあたっては、出入国在留管理庁によるガイドラインがあります。

このガイドラインによると、在留期間の更新が許可されるのは
1 行おうとする活動が申請に係る入管法別表に掲げる在留資格に該当すること
2 法務省令で定める上陸許可基準等に適合していること(別表第1の2の表又は第4の表に掲げる在留資格の下欄に掲げる活動を行おうとする者)
3 現に有する在留資格に応じた活動を行っていたこと
4 素行が不良でないこと
5 独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有すること
6 雇用。動労条件が適正であること
7 納税義務を履行していること
8 入管法に定める届出等の義務を履行していること

とされています。

このうち4の部分には「素行については,善良であることが前提となり,良好でない場合には消極的な要素として評価され,具体的には,退去強制事由に準ずるような刑事処分を受けた行為,不法就労をあっせんするなど出入国在留管理行政上看過することのできない行為を行った場合は,素行が不良であると判断されることとなります。」との記載がなされています。

まず、「教授」の在留資格は、入管法上別表第1の1の表に記載がある在留資格です。そのため、法務省令に定める上陸許可基準等に適合するという要件は問題となりません。

今回の場合、ガイドラインに記載されている「素行が不良でないこと」が問題となります。そして、「退去強制事由に準ずるような刑事処分を受けた」場合には素行不良であると判断されることになるため、退去強制事由に準ずるような刑事処分であるかどうかを検討していくことになります。

それでは刑罰法令違反が退去強制事由となるかどうかを考えていきます。別表第1の在留資格の場合、入管法等在留関係の法律以外の刑罰法令が問題となる退去強制事由には、入管法24条4号リと同法24条4号の2があります。
入管法24条4号リは、「無期又は一年を超える懲役若しくは禁錮に処せられた者。ただし、刑の全部の執行猶予の言渡しを受けた者及び刑の一部の執行猶予の言渡しを受けた者であつてその刑のうち執行が猶予されなかつた部分の期間が一年以下のものを除く。」とするものです。

この4号リで問題とされるのは、仮に禁錮であっても実刑となった者、つまり執行猶予付きの判決を受けた場合は除かれています。過失運転致傷罪で実刑の判決となるのは余程被害が大きい(被害者が亡くなる)とか、過失の程度が大きい場合だけですので、典型的な交通事故ではこれに該当しない可能性の方が高いと思われます。

次に、24条4号の2ですが、こちらは一定の犯罪で懲役又は禁錮に処せられた場合に退去強制事由となるものです。24条4号リとの違いは、罪名の違いがあるものの、執行猶予付きの判決であっても退去強制事由となる点にあります。ただ、Aさんが問題視されている過失運転致傷は、この列挙された犯罪に含まれていませんから、これには該当しません。

最後に、次に、Aさんの処分が退去強制事由に「準ずる」刑事処分とまで評価されることがあるかどうかが問題となります。この点について、定住者告示3号等に該当する者の素行要件についての審査要領では「日本国又は日本国以外の国の法令に違反して、懲役、禁錮若しくは罰金又はこれらに相当する刑(道路交通法違反による罰金又はこれに相当する刑を除く。以下同じ。)に処せられたことがある者(以下略)」とされています。

この審査要領は一般の在留期間の更新にも該当すると考えられます。そのため、Aさんについても同じように考えることになりますが、かっこ書きで除外されているのは「道路交通法違反による罰金又はこれに相当する刑」となっており、過失運転致傷は明示的に挙げられていません。

そのため、過失運転致傷罪で素行善良要件を満たすかどうかについては明確に決まりません。起訴猶予処分であれば問題にならない可能性高い一方、罰金や禁錮刑となった場合には素行善良要件を満たさないと判断されるケースもあります。
だからといってこの事故のことを秘して在留期間更新申請を行うことはできませんので、入管当局に正直に説明し、二度と運転しないこと等の誓約を行い在留許可の更新を求める方がよいと思われます。

⑶示談交渉

さて、先述の通り、過失運転致傷罪で刑事罰を受けてしまうと、在留期間の更新ができなくなる可能性を指摘しました。
しかし、この罪の場合、怪我の程度がそれほど大きいものでなければ、検察官が最終的な刑事処分を決定してしまうより前に被害者の方と示談を行い、被害者の方からお許しいただければ
起訴猶予処分となる可能性があります。
ただ、任意保険や自賠責保険では、ここまでの示談交渉は行ってくれない可能性が極めて高いです。保険会社が行うのはあくまでも損害の賠償のみであり、被害者の方から許してもらうような示談交渉までは話をしないことが通常です。

そのため、在留期間の更新を許可してもらう可能性を少しでも高めるためには、弁護士に依頼し、交通事故の被害者との間で示談交渉を行ってもらう必要があります。もちろん交通事故の場合には相手方の連絡先などを警察官から知らされる場合が多いですが、当事者同士で話し合うとトラブルになることが多いため、お勧めはできません。また、検察官が刑事処分を決めてから示談をしても、処分自体が無くなるわけではありませんから、示談は検察官が処分を決めるまでに行う必要があります。

在留資格を持っている状態で交通事故を起こしてしまった場合には、期間の更新のためいち早く弁護士にご相談ください。

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「経営・管理」の外国人が窃盗により逮捕されたらどうなるか

2025-06-07

「経営、管理」の在留資格で日本に滞在しているAさんは、スーパーで万引きをしてしまいました。
数ヶ月後、Aさんは警察により逮捕されてしまいました。
このとき
①Aさんが受ける刑事罰はどのようなものになるか
②①の刑事罰により退去強制になることはあるのか
③Aさんとしてできることはあるのか
以上の点について解説していきたいと思います。

窃盗に対する刑の重さ

窃盗罪は刑法235条に定めがある罪で、その法定刑は10年以下の懲役又は50万円以下の罰金となっています。
10年以下と極めて重い罪になっていますが、これは被害額によって法定刑の区分がないからです。1000円から1万円位の万引きであれば、10年の懲役等を受けることは通常
考えられません。

窃盗罪の具体的な刑罰を決める際には、①被害額がいくらであるか②どのような目的で盗んだか③被害回復がなされているか④何回目の検挙であるかが大きな考慮要素となります。

①まず被害額ですが、これは単純に多ければ多いほど重くなるということになります。ただ、1000円と1万円で比較すると1万円のほうが10倍悪いという単純なものではありません。
②目的ですが、自分で使用する目的などが通常だと思われますが、転売目的や組織的な窃盗だと重く見られます。
③窃盗罪は財産に関する犯罪です。ですので、財産的な補填が被害者になされているかどうかも重要です。
④最後に、万引きのような事件の場合これが大きな問題となってくるのですが、何回目の検挙であるかも重要です。いくら被害額が少なく、被害回復がなされていたとしても、何度も何度も
検挙されているような状況では、処分を軽減することにも限度が生じます。一般的な感覚の通りですが、通常は1回目より2回目が、2回目より3回目が、3回目より4回目が重い処分となります。

また、前回と今回の間隔(何年程度空いているか)も重要です。これがあまりに近いということになると、常習性が疑われて、より重い処分となります。
そこでAさんの刑事罰ですが、1回目の検挙であれば被害回復を行っていれば起訴猶予となる可能性も十分あります。ただ、2回目であれば罰金、3回目であれば執行猶予付きの判決という形でどんどん重くなってきます。また、たとえ100円の万引きであっても、執行猶予付き判決中や猶予期間満了後すぐにやってしまうと、刑務所に行く実刑判決となる可能性が相当高いと言えます。

今回は、一例として罰金になったことを想定して検討していきます。

窃盗罪に関する具体的な弁護活動はこちらで詳しく解説しています。

https://settou-bengosi.com/

退去強制事由となるか

刑事事件と退去強制が関わる条項は、いくつかありますが、代表的なものは入管法24条の

4号チ 薬物事件で有罪判決を受けた者
4号リ 1年以上の実刑判決を受けた者
4号の2 窃盗などの事件で懲役または禁錮の判決を受けたもの

となっています。

今回の事件であれば、4号の2に該当します。

そのため、窃盗罪で罰金となったとしても、ただちに4号の2に該当するわけではありません。

しかし、仮に退去強制とならなくても、在留資格の更新を受けられるかどうかは別問題です。
在留資格の更新時には素行が善良であることが求められていますが、有罪判決を受けた場合には素行善良の要件に問題が生じ、在留資格の更新がされない場合があります。
このような場合、在留資格が更新できず、期限が到来してしまうと、オーバーステイ状態となり、退去強制事由に該当してしまいます。

Aさんはどうすればよいか

窃盗罪で逮捕された場合、最初は家族であっても面会できません面会することができません。
逮捕されてから2日程度は、弁護士以外が面会できない状況になりますので、家族としても状況の把握などが困難です。
また、仮に釈放されたとしても、捜査が継続して、場合によっては刑事罰を受けてしまうことは上述の通りです。
窃盗罪は被害者のいる犯罪です。

事実間違いないという場合には、逮捕された場合には警察からの連絡を受けてすぐに、在宅事件の場合でもできる限り早く、弁護士に相談し、被害者の方への謝罪や
入管への対応などを検討する必要があります。

在留資格の不更新の決定が出てしまってからとなると、在留特別許可を得る方法以外が困難となり、取りうる手段が減ってしまいます。

まだ処分が出る前、色々な対策を講じることができる時期に、弁護士にご相談ください。

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永住者が強盗傷人罪を起こしてしまった,強制送還されるのか

2025-05-30

【事例】
Aさんは、永住資格を持つ外国人です。前科前歴はありません。
ある日、友人B(日本人)が金に困っていたことから、カードショップに侵入しガラスケースをハンマーでたたき割り、その中のカードを奪い転売することを話し合い、その日の夜に実行することにしました。
AさんとBさんがカードショップに侵入し、ガラスケースを破壊したところ、防犯用のブザーが鳴ってしまいました。二人ともブザーが鳴っても、数分間は警察などは来ないだろうと思ってトレカを約500万円分ほどカバンに入れていましたが、すぐに夜間作業していたカードショップの店長に見つかって、Aさんは手をつかまれてしまいました。
このように、手をつかまれてしまったことから、手に持っていたハンマーで、店長の顔を殴って全治2週間のけがをさせ、店長の手を振り払い、逃走しました。
しかし、店長につかまるなどして、逃走するまで時間がかかったことから、逃走中に警察に見つかり、逮捕されてしまいました。

このような事例の場合に①Aさんはどのような刑事処分を受けるのか、②退去強制処分を受けるのかについて解説していきます。

強盗傷人により逮捕された場合,強制送還になってしまうのか

(1)強盗傷人罪に対する刑事処分

強盗傷人罪に対しては,刑法240条の定めがあり,法定刑(法律上,有罪の場合に科せられる刑の重さ)としては無期懲役又は6年以上の懲役刑が定められています。
強盗傷人罪は、強盗をするために暴行・脅迫を用いて、人をけがさせた場合に成立する犯罪です。
今回の事件の場合、500万円分のトレカを奪い逃走するために店長を殴り、けがをさせているため、強盗傷人罪に該当する行為を行ったということが言えます。
また、強盗傷人罪は法定刑として無期懲役刑が予定されていますので、裁判員裁判法2条1項1号に基づき、裁判員裁判対象事件になります。

強盗傷人に関する解説記事はこちら

【GW中も即日対応可能】強盗傷人罪で南警察署に逮捕

強盗傷人罪の量刑は、①被害金額、②けがの程度、③前科の有無、④被害弁償などによって決まります。

①については、被害金額が多ければ多いほど重く見られます。
②については、けがの程度が重ければ重いほど重く見られます。
③については、前科があれば、重く見られます。
④については、被害弁償を行っていれば、有利な事情として見られます。

今回のAさんの事件の場合、被害金額が約500万円と多額で、全治2週間のけがをさせていることから、これらの事情が重く見られる事情になります。一方、前科前歴がないことや、示談をすれば示談をしたという事情が有利な事情として見られます。

そのうえで、今回のAさんの事件は約500万円もの被害が発生している強盗傷人事件であることから、示談等がなければ6~10年ほどの実刑判決が予想されます。

(2)退去強制処分を受けるか

Aさんは、永住者ですので、入管法24条4号リに該当するかどうかが問題となります。入管法24条4号リによれば、1年以上の実刑判決となった場合には退去強制処分となることが規定されています。
今回のAさんの事件は情状が悪く、実刑判決が予想されることから、Aさんに対しては、退去強制処分となる可能性があります。

(3)弁護士にできること

このような処分が予想されることから、弁護士にできることとしては、①被害者に対して示談を行い、刑事裁判で有利な判決を得ること、②裁判員裁判に対応して、何とか執行猶予判決を得ることで、退去強制を回避することが考えられます。

①の被害者への示談については、起訴前に行えば場合によっては、不起訴で終わる可能性があります
②の裁判員裁判対応については、起訴されている以上なかなか難しいですが、被害弁償をしたことなどを主張して、執行猶予付きの有罪判決をもらうよう対応することが考えられます。

このように、弁護士を入れて示談等を迅速に行うことで、裁判所や入管から有利な判断を得られる可能性がありますので、強盗に関するような事件を起こしてしまった場合には、迅速に弁護士に相談することをお勧めします。

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定住者が大麻事件を起こした場合,在留期間の更新ができるか

2025-05-23

Aさんは、20年前、B国から日本に来ました。
Aさんの祖父が日本国籍を持っていたため、Aさんは日本で仕事をしようと考えました。
Aさんは、日系三世に当たるため、「定住者」の在留資格で入国し、仕事をしていました。

ある日、Aさんが路上を歩いていたところ、職務質問を受け、持っていた大麻草が発見されてしまいました。

このとき
①Aさんが受ける刑事罰はどのようなものになるか
②①の刑事罰によりAさんは在留期間の更新ができるか
以上の点について解説していきたいと思います。

⑴大麻所持の刑事罰

大麻を所持していた場合、従前は大麻取締法違反で処罰されていました。しかし、法改正により麻薬及び向精神薬取締法違反で処罰されることになりました。
なお、注意を要する点として、従来大麻使用が処罰されていなかったところ、改正法では大麻使用(施用)も処罰の対象となりました。

大麻に関する法改正についての記事はこちら

12月12日より大麻使用の規制開始 麻薬取締法で規制

大麻所持の法定刑は、従前は5年以下の懲役でしたが、改正により7年以下の懲役となりました。若干法定刑が重くなったこととの関係で、今後の裁判では今までよりも量刑が重くなる可能性があります。
ただ、初犯の所持の場合は執行猶予付き判決ということで変わりがないのではないかと思います。

⑵在留期間の更新

在留期間の更新は「更新を適当と認めるに足りる相当の理由があるとき」(出入国管理及び難民認定法21条2項)に認められますが、この認定にあたっては、出入国在留管理庁によるガイドラインがあります。

 このガイドラインによると、在留期間の更新が許可されるのは

1 行おうとする活動が申請に係る入管法別表に掲げる在留資格に該当すること
2 法務省令で定める上陸許可基準等に適合していること(別表第1の2の表又は第4の表に掲げる在留資格の下欄に掲げる活動を行おうとする者)
3 現に有する在留資格に応じた活動を行っていたこと
4 素行が不良でないこと
5 独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有すること
6 雇用。動労条件が適正であること
7 納税義務を履行していること
8 入管法に定める届出等の義務を履行していること

とされています。

このうち4の部分には「素行については,善良であることが前提となり,良好でない場合には消極的な要素として評価され,具体的には,退去強制事由に準ずるような刑事処分を受けた行為,不法就労をあっせんするなど出入国在留管理行政上看過することのできない行為を行った場合は,素行が不良であると判断されることとなります。」との記載がなされています。

まず、「定住者」の在留資格は、入管法上別表第2の表に記載がある在留資格です。
そのため、法務省令に定める上陸許可基準等の問題は生じません。

今回の場合、ガイドラインに記載されている「素行が不良でないこと」が問題となります。そして、「退去強制事由に準ずるような刑事処分を受けた」場合には素行不良であると判断されることになるため、退去強制事由に準ずるような刑事処分であるかどうかを検討していくことになります。
それでは刑罰法令違反が退去強制事由となるかどうかを考えていきます。別表第2の在留資格の場合、入管法等在留関係の法律以外の刑罰法令が問題となる退去強制事由には、入管法24条4号チがあります。

入管法24条4号チは、「昭和二十六年十一月一日以後に麻薬及び向精神薬取締法、大麻草の栽培の規制に関する法律(昭和二十三年法律第百二十四号)、あへん法、覚醒剤取締法、国際的な協力の下に規制薬物に係る不正行為を助長する行為等の防止を図るための麻薬及び向精神薬取締法等の特例等に関する法律(平成三年法律第九十四号)又は刑法第二編第十四章の規定に違反して有罪の判決を受けた者」とするものです。この4号チで問題とされるのは、いわゆる薬物事件で、罰金、執行猶予、懲役を問わず有罪となった場合には退去強制事由に該当します。大麻所持の場合執行猶予付き判決の可能性が高いと考えられますので、このままであれば退去強制事由に該当します。

そのため、大麻所持罪で素行善良要件を満たすかどうかについては、素行善良要件を満たさないと判断される可能性が高いと考えられます。
だからといってこの事件のことを秘して在留期間更新申請を行うことはできませんので、入管当局に正直に説明し、再犯をしないこと等の誓約を行い在留許可の更新を求める方がよいと思われます。
先述の通り、大麻所持罪で刑事罰を受けてしまうと、退去強制となる可能性があり、日本国内に留まれない可能性があることを指摘しました。
このような場合、何とか日本国内に留まりたいというようなときは、被害者との示談が重要です。

検察庁は、全ての刑事事件について起訴をし、刑事処分を求めるのではなく、一定の事件を起訴猶予(不起訴)としています。
最終的な処分を決定する際、再犯の可能性や所持していた量は大きな考慮要素となります。
出来る限り刑事処分を軽減するためにも、検察官との交渉は不可欠です。

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地下銀行業務を行った場合の処分

2025-05-16

銀行法違反に対する処分

【事例】
Aさんは,経営管理のビザで日本にいるα国籍の外国人で,普段は,レストランを経営しています。
ある日,Aさんは,レストランに来店する技能実習生から,α国に働いた金を安く送金する仕組みは無いかと聞かれたため,α国にある自分の会社の社員に相談したところ,地下銀行の手段があるといわれました。その方法年は,技能実習生が預けたお金を日本のレストランで預かり,α国の会社に金を預かったことを連絡し,お金を動かせるよう連絡する方法を思いつき,その通りに技能実習生の給料を預かり,α国にいる技能実習生の家族にお金を送金していました。
このような活動をしていたことから,技能実習生のうわさを聞き付けた警察官がAさんのレストランを訪れ,Aさんを銀行法違反で逮捕しました。

以上の事例を前提として,①Aさんが受ける刑事罰はどのようなものになるのか,②Aさんは退去強制処分となるのかについて解説していきます。

(1)地下銀行業務を行った場合の刑事罰

地下銀行を行って刑事罰を受けるのは,銀行法に基づく免許を受けること無く,送金や為替取引といった銀行にしかできない業務を行っているからです。

銀行法4条1項によれば,銀行業は免許を受けた場合でなければ営むことができないことが規定されています。この「銀行業」というのは,銀行法2条2項に規定されている「預金又は定期預金の受け入れと資金の貸付又は手形の割引とを併せて行うこと」,「為替取引を行うこと」が規定されています。

日本で給料を預かって,外国に送金する仕組みを作ることは,このうちの「為替取引を行う」ということに該当するので,このような送金の仕組みは銀行法2条2項にいう「銀行業」に該当し,銀行法4条1項の許可が必要になります。

銀行法4条1項に違反した場合には,銀行法61条1号に基づき,3年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金又はこれらの併科が予定されています。
地下銀行を行った場合の量刑傾向については,他の犯罪の資金を隠すために無許可の銀行業務を行っていた場合などについては重く見られますが,そういった目的が無い場合,大体2年以下の懲役に対して執行猶予が付けられる執行猶予付きの懲役刑判決に数百万円の罰金刑が併科される有罪判決が下される傾向にあります。

今回のAさんの事例のような場合,地下銀行業務のみを行ったような事例ですので,Aさんの受ける刑罰としては,大まかに懲役2年以下に執行猶予が付き数百万円の罰金刑を受ける有罪判決になることが予想されます。

関連:犯罪収益移転防止法に対する刑罰とは

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(2)退去強制処分になるかどうか

強制送還されてしまう可能性は?

入管法24条4号の2には,銀行法違反が含まれていないため,銀行法違反により有罪判決となったことを理由として,退去強制処分を受けることはありません。
ただし,1年以上の実刑判決となった場合,入管法24条4号リに基づいて,退去強制処分を受けることはあります。

また,在留資格の更新の際にこのような地下銀行業務を行ったことが不利な事情として見られ,在留資格更新が上手くいかないことがあります。

(3)弁護士に出来ること

このような刑事処分が予定されていることから,弁護士としては,①銀行法違反の中でも悪情状と言えるような事情が無いとしてなるだけ有利な判決を受けるよう刑事裁判で主張したり,②在留資格の更新の際に在留資格の更新を受けるべき事情を主張して在留資格の更新を得ることができるよう動くことが考えられます。

このような活動が出来るので,銀行法違反で逮捕されたり,捜査を受けているという場合には,迅速に弁護士に相談することをお勧めします。

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外国人と風俗店,入管法と風俗営業法違反

2025-05-09

外国人を雇って無許可で風俗店を営業したらどうなる?―経営者の刑事責任と外国人スタッフの退去リスク

外国人を雇って風俗店を営業する場合、法律上どんなリスクがあるのでしょうか。
特に、無許可で営業した場合には、経営者は風俗営業法違反で重い刑事責任を問われ、さらに外国人従業員にも退去強制(強制送還)の可能性が生じます。
実際に、外国人スタッフを雇った無許可営業店が摘発され経営者が逮捕された事例も報告されています。
本記事では、具体的な事例や関連法令を交えながら、外国人を雇用した無許可営業のリスクについて、経営者の目線で分かりやすく解説します。

1. 無許可営業と風俗営業法の基本知識

風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(いわゆる風営法)は、キャバクラやホストクラブから性感マッサージ店まで、性風俗に関わる営業を幅広く規制する法律です。
風営法では無許可営業が禁止されており、風俗店を営業するには店舗ごとに都道府県公安委員会の許可を受けなければなりません (風営法違反で逮捕される可能性はある?罪状や刑罰を解説 | 刑事事件相談弁護士ほっとライン)。
許可を得ずに営業すれば法律違反となり、後述する通り厳しい刑事罰の対象です。
なお、たとえ「マッサージ店」「メンズエステ」などと称していても、実質的に性的サービスを提供していれば風営法上の風俗営業に該当します。
外国人を雇用する場合であっても、許可が不要になることは当然ながらありません。

2. 事例(外国人を雇って無許可で営業していたチャイエスに警察が介入し逮捕された事例)

外国人を雇って無許可営業をしていた違法風俗店が摘発された事例があります。
例えば2020年11月、東京・日暮里の中国エステ店(いわゆる「チャイエス」)に警察の強制捜査が入り、40代の日本人経営者と30代中国人店長の女が風営法違反容疑で逮捕されました。
同時に、その店で働いていた24~35歳のベトナム人女性従業員3名も現場で身柄を拘束され、不法就労や売春に関与した疑いで取り調べを受けています 。
この店では約30人もの外国人女性を抱え、月に1億円近い売上を上げていたと報じられており、無許可営業が大規模に行われていた典型例と言えるでしょう。

3. 無許可営業に対する刑事罰の内容

無許可で風俗店を営業すれば、経営者には厳しい刑事罰が科せられます。
風営法の罰則では、無許可営業は「2年以下の懲役または200万円以下の罰金」が規定されています (風営法違反で逮捕される可能性はある?罪状や刑罰を解説 | 刑事事件相談弁護士ほっとライン)。
実際の処分では、初犯なら執行猶予付き判決や罰金刑にとどまる場合もありますが、それでも前科がつき高額の罰金が併科されるリスクがあります。

また、外国人を本来の在留資格で認められている資格外で働かせていた場合には、入管法違反(不法就労助長罪)にも問われ、こちらも最大で3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金という重い罰則が科せられます。

不法就労助長罪の罰則は、上限が懲役5年・罰金500万円に引き上げられる予定です。
違反に対する姿勢は一段と厳しくなるでしょう。
さらに、店で実際に売春行為(本番行為)を行わせていた場合は、売春防止法違反にも該当し、追加の処罰対象となり得ます。

4. 外国人従業員の退去強制処分の可能性

無許可営業で働いていた外国人従業員には、強制退去(強制送還)の可能性が高まります。
警察による摘発時に外国人スタッフも逮捕された場合、入管法違反(資格外活動や不法滞在)で処罰を受けることになり、その後、入国管理局による退去強制手続きに移行します。
入管法24条には、資格外活動を専ら行っていた者や、不法就労罪で有罪となった者は退去強制の対象になると定められています (「留学」ビザで不法就労をしてしまった場合,どのような処罰を受けるのか | 入管,在留問題に強い弁護士事務所)。
基本的に、不法就労が発覚した外国人は在留資格が取り消され、日本からの退去を命じられます。
強制送還された場合、通常は5年間は日本に再入国できなくなり(場合によっては10年や無期限の場合もあります)、日本での生活基盤や仕事を失う重大な結果となります。

5. 弁護士ができる対応と弁護活動

無許可営業で逮捕・起訴された場合、早期に刑事弁護に精通した弁護士に依頼することが重要です。
弁護士は取調べ段階から経営者の権利を守り、必要に応じて警察・検察と交渉します。
風営法違反事件では、弁護士が違法性を認識していた程度や反省状況など有利な情状を主張し、不起訴処分や罰金刑にとどめるよう働きかけることができます。
外国人従業員についても、弁護士が入管当局に対し退去強制処分を避けられないか主張したり、在留特別許可の申請をサポートしたりすることが考えられます (「留学」ビザで不法就労をしてしまった場合,どのような処罰を受けるのか | 入管,在留問題に強い弁護士事務所)。
例えば、不法就労期間が短かったり、日本に家族がいるなどの事情があれば、情状を酌んで極力寛大な処分(起訴猶予や執行猶予付き判決)となるよう弁護活動を行います。
こうした弁護により、外国人本人が退去強制を免れる可能性がわずかながら生まれる場合もあります。

6. 経営者が取るべき予防策

最も重要なのは、風俗営業を営む際には必ず事前に公安委員会から営業許可を取得することです。
許可なしに営業するリスクは非常に高く、一度摘発されれば経営者生命を絶たれかねません。
また、外国人を雇用する場合は在留カードを確認するなど、適法に就労できる人材か厳格にチェックする必要があります。
留学生や技能実習生など、資格上風俗業で働けない外国人を決して雇わないよう徹底しましょう。
仮に本人から「大丈夫」と言われても、確認を怠れば経営者が不法就労助長罪に問われる可能性があります 。
不明な点があれば行政機関や専門家に相談し、法律に沿った営業形態・採用手続きを心掛けることが、経営者自身を守る最大の予防策です。

7. 事務所紹介(弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所)

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件を専門に取り扱う法律事務所です。
風営法違反や入管法違反を含む様々な刑事事件で豊富な実績があります。
外国人の案件にも精通した弁護士も在籍しており、言葉の壁がある場合でも安心です。
初回無料相談をご利用いただけますので、無許可営業でお困りの際や、摘発の不安がある場合にはお気軽にご相談ください。
逮捕前でも後でも、24時間365日体制でご相談を受け付けており、全国どこからでも迅速に対応いたします。
風俗店経営に関するお悩みや不安を抱えた方に寄り添い、最善の解決策をご提案できるよう尽力いたします。

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在留資格「定住者」の外国人が風適法(風営法)に違反してしまった場合

2025-05-06

【事例】
Aさんは,東京都内で,個室マッサージ店(いわゆるチャイエス)を営む経営者で,店舗型性風俗特殊営業許可を受けないで性的サービスの提供を行う甲という店舗でBさん(定住者)を働かせています。甲と言う店舗はAさんが3年前に立ち上げた店舗です。
ある日,利用客からの通報により,警察がAさんの店舗に来て,Aさんを逮捕しました。
なお,Aさんに前科や前歴はありません。

以上の事例を前提として,①Aさんが受ける刑事罰はどのようなものになるのか,②AさんとBさんは退去強制処分になるのかについて解説していきます。

(1)店舗型性風俗特殊営業の無許可営業の刑事罰

風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(以下,「風適法」と言います。)3条1項によれば,風俗店の営業を行うためには,都道府県公安委員会の許可を得なければならないとされています。
これに反して,営業許可を得ずに店舗を営業させた場合,風適法49条1号に基づき,2年以下の懲役若しくは200万円以下の罰金,又はその併科が予定されています。
今回のAさんの経営するいわゆるチャイエスのような店舗型性風俗特殊営業については,風適法2条6項2号の「個室を設け,当該個室において異性の客の性的好奇心に応じてその客に接触する役務を提供する営業」に該当するので,都道府県公安委員会の許可を得なければならないとされています。にもかかわらず,Aさんは営業許可を得ていないため,風適法の無許可営業罪として処罰されることになります。
風俗店の無許可営業の量刑は,①無許可営業の営業内容,②無許可営業の期間,③事後的に許可を得て営業するようにしているかなどによって決まります。
①の営業の内容が,キャバクラなどの客を遊興又は飲食させる内容とは異なり,性的サービスの提供に関わるものである場合は,重く見られます。
②の無許可営業の期間が長ければ重く見られます。
③の営業許可を取ることができるのであれば,有利な事情として見られます。

そのため,大まかな量刑傾向としては,執行猶予付きの有罪判決に罰金も併科されるのが多いのですが,暴力団が関わっている,犯罪収益の隠匿がある,未成年者を働かせているなどの重く見られる事情があれば,実刑になることもあります。
今回のAさんの場合,無許可営業の内容は店舗型性風俗特殊営業に関するものであり,3年前から無許可営業だったとのこと,後述するような事情により営業許可を得ることが難しいため,執行猶予付きの有罪判決に罰金刑が併科される可能性が高いです。

風営法違反事件についての詳しい解説はこちら

風営法・風適法違反

(2)退去強制処分になるか

入管法24条4号ヌによれば,「売春又はその周旋,勧誘,その場所の提供その他売春に直接関与がある業務に従事する者」は退去強制処分の対象になることが規定されています。
今回のAさんについては,いわゆるチャイエス店で性的サービスの提供を行っていたとなると,有罪判決を受けていたかどうかに関わらず,退去強制処分の対象となります。
また,Bさんについても,チャイエス店で勤務していたため,刑事罰を受けなくとも,入管法24条4号ヌに該当するとして,退去強制処分を受ける可能性があります。
入管法24条4号ヌの解釈としては,刑事罰を受けなくとも入管法24条4号ヌに該当すると判断される場合でも退去強制処分の対象となると考えられているためです。

(3)弁護士として出来ること

このような刑事処分と退去強制処分が予定されていることから,弁護士としては,①Aさんにとって有利な事情を裁判所に提供しなるだけ刑事罰を軽くするようにすること,②AさんやBさんの退去強制処分を争うことができます。
①については,Aさんの営業が比較的短期間であることや暴力団とは関係が無いことや,未成年者を働かせていないことなどを主張して,実刑を回避するよう対応することができます。
②については,AさんやBさんが日本に残るべき事情を探して,有利な事情を基に出入国管理局に対して在留特別許可を申請したり,不許可となった場合には退去強制処分の取り消しを求める訴訟を提起したりします。
このように,風適法違反の刑事罰,退去強制処分に対しては,弁護士をつけて対応することができますので,迅速に弁護士に相談することをお勧めします。

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不法入国者に対する処分と弁護士

2025-05-02

不法入国と入管法上の処罰・対応

不法入国とは、戦争や貧困から逃れるため、あるいは家族との暮らしを求めるためなど、様々な理由で人々が正規の手続きを経ずに日本に入国してしまう場合に生じる問題です。
本来、外国人が日本に入国するには有効なパスポートと査証(ビザ)が必要であり、それらを持たずに入国することは法律で禁じられています。
不法入国が発覚した場合、刑事上の処罰だけでなく、本国への強制送還(退去強制)といった厳しい措置がとられることがあります。
しかし、不法入国に至る背景には個人の切実な事情や人道上の理由が含まれることもあり、そのような場合には適切な法律上の対応が求められます。
本記事では、不法入国の定義や具体的事例、関連する法律の規定や手続、そしてその際に弁護士が果たす役割について、専門的な内容を分かりやすく解説します。

1. 不法入国とは何か(定義や典型例)

外国人が正規の手続きを踏まずに日本に入国する行為を一般に「不法入国」といいます。
入管法(出入国管理及び難民認定法)では、有効な旅券(パスポート)や査証(ビザ)を持たない者は日本に入国してはならないと定められています。
典型例として、パスポートやビザを所持せずに入国したり、他人名義のパスポートや偽造書類を使用して入国審査を通過したりするケースが挙げられます。
また、港や空港で入国審査を受けずに密かに上陸するいわゆる「密入国」も不法入国の一種です。
なお、正規に入国した後に在留期間を超えて滞在する「不法残留(オーバーステイ)」とは区別される概念です。
これらはいずれも入管法に違反する行為であり、重大な法的問題を引き起こします。

2. 事例(参考記事のAさんの事例を基に)

Aさんは15年前にブローカーの手配で興行ビザを取得し、来日した外国人です。
当時未成年だったAさんは、自分ではなく21歳のいとこの名義でパスポートを用意され、それを使って日本に入国しました。
Aさんはその後日本で働き始め、常連客だった日本人男性Bさんと知り合い半年後に結婚しました。
結婚して10年が経ち、夫Bさんとの間に2人の子(日本国籍)にも恵まれ、Aさんは日本で幸せな毎日を送っています。
しかしAさんは自分の本名と在留カード上の名前が違うという秘密を抱えていました。
いとこ本人から「自分の名前を返してほしい、でなければ入管に報告する」と迫られ、Aさんはこのままでは自分が他人名義で不法入国していた事実が発覚し、在留資格を失って強制送還されてしまうのではないかと不安に感じています。

3. 入管法上の位置づけと刑事罰

不法入国は入管法上の犯罪であり、発覚すれば刑事手続の対象となります。
入管法第70条第1項第1号により、不法入国をした者には3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金(またはその併科)という罰則が規定されています。
特に不法入国については公訴時効(刑事訴追の時効)が適用されず、長期間経過後に発覚した場合でも起訴される可能性があります。
量刑の傾向として、初犯で情状に酌むべき事情がある場合には執行猶予付きの判決となる例も見られますが、悪質な場合には実刑(服役)が科されることもあります。
いずれにせよ有罪となれば前科が付き、後述の退去強制の対象ともなるため、本人にとって極めて深刻な影響を及ぼします。

4. 退去強制処分とその例外

入管法第24条には退去強制(強制送還)となる事由が定められており、不法入国はその典型例として挙げられています。
そのため、不法入国が判明した外国人は、刑事処分の有無にかかわらず原則として日本から退去させられることになります。
退去強制となった場合、再入国禁止(一定期間または永続的な上陸拒否)の措置がとられます。もっとも、例外的に本人に特別な事情(例:日本に配偶者や子がおり日本で生活の本拠となっている場合)がある場合には、法務大臣の裁量で在留特別許可が与えられ、強制送還が免除される可能性があります。
また、難民申請を行った場合には審査が完了するまで送還は一時的に停止されるのが原則で、難民として保護すべき事情があれば送還は見合わされます。
ただし2023年の入管法改正により、3回目以降の難民申請中は送還停止の効力が認められない制度となりました。

5. 難民申請の制度と実際

難民認定申請は、迫害から逃れてきた外国人が難民として保護を求めるための制度です。
入管庁に難民認定の申請書を提出し、面接調査などの審査を経て認定の可否が判断されます。
申請中は前述のとおり強制送還が停止されますが、その審査基準は非常に厳格です。
日本では難民と認定されるケースが極めて少なく、認定率は国際的に見ても低水準となっています。
例えば2022年には難民と認定された人は過去最多でも約200人にとどまり、一方で1万人以上が難民不認定となりました。
難民と認められなかった場合、異議申立て(審査請求)や裁判で争うことも可能ですが、それでも認定に至る例は多くありません。
多くの申請者は結果的に在留を許可されないのが現状です。

6. 弁護士にできる対応とサポート

不法入国のケースでは、早期に弁護士の支援を受けることが不可欠です。
弁護士は刑事弁護人として依頼者の事情を丁寧に主張・立証し、処罰の軽減や回避を図ります。
例えば依頼者が難民に該当する場合には証拠を揃えて難民であることを主張し、入管法70条の2に基づき刑事罰の免除を求めることも可能です。
難民に該当しない場合でも、不法入国に至ったやむを得ない事情や日本での生活実態(家族関係や長期在住など)を訴え、執行猶予付き判決など寛大な処分を得られるよう尽力します。
さらに退去強制手続では、口頭審理や異議申立ての場面で日本での生活基盤や家族の存在、人権上の懸念など有利な事情を示し、在留特別許可が下りるよう働きかけます。
このように弁護士は法律の専門知識を駆使して、処罰と退去の両面で依頼者を守るために全力を尽くします。

7. 事務所紹介(弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所)

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件を専門に扱う法律事務所であり、不法入国など入管法が関係する事案の豊富な実績があります。
ビザ・在留手続に詳しい経験豊富な弁護士と行政書士が連携し、違法行為に対する刑事弁護から在留許可の申請まで一貫してサポートいたします。
英語・中国語・韓国語など外国語での対応も可能 (ビザ・在留資格の取得・更新は弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にお任せください)で、外国人の依頼者にも安心してご利用いただけます。
初回相談は無料で、365日24時間の緊急相談にも対応しており、依頼者の不安に迅速に寄り添う体制を整えています。
不法入国や入管法違反でお困りの際は、当事務所の専門チームにぜひご相談ください

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