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日本人の配偶者等ビザで名誉毀損事件を起こしたら?在留資格への影響と対応を解説

Aさん(40歳、フランス国籍)は日本人の妻と結婚し、2018年から日本で暮らしています。ある日、SNS上の書き込みをめぐって知人から名誉毀損の告訴を受け、警察の捜査対象となりました。初めての刑事事件に戸惑うAさんは、「このまま日本にいられるのか」「退去強制になるのでは」と不安に感じています。
そこで本記事では、名誉毀損事件が在留に与える影響や対応方法について解説します。
1. 外国人が刑事事件を起こした場合に必ず問題になる2つの手続(刑事手続と入管手続の関係)
刑事手続と入管手続の2つが並行して問題になります。
刑事手続とは警察の捜査や裁判など犯罪に対する手続きで、入管手続とは在留資格(ビザ)に関する手続きです。これらは別個に進行し、互いに影響します。
刑事手続では逮捕・起訴・裁判を経て刑事処分が決まります。
一方、入管手続では刑事処分の結果に応じて退去強制(強制送還)が検討されます。退去強制とは、日本が法令や社会秩序の観点から在留を認めないと判断した外国人を、行政手続によって日本国外へ強制的に送還することです。
日本で正式な在留資格を持つ外国人は、逮捕・勾留された段階では在留資格自体を直ちに失うことはありません。しかし、有罪になり一定の条件に該当すると入管手続が動き、在留資格を失い強制送還される可能性があります。
つまり「刑事罰を受けるか」と「日本に住み続けられるか」は別の問題であり、両面に注意が必要です。
2. 強制送還(退去強制)とは何か(定義、処分別のリスク、在留特別許可)
退去強制(強制送還)とは、入管法に定められた手続きで、一定の条件下で外国人を強制的に本国へ送り返す処分のことです。
名誉毀損の場合、刑の重さ次第で退去強制手続の対象になるかが決まります。
処分別のリスク
一般に、刑事処分が重いほど退去強制のリスクが高まります。たとえば長期の拘禁刑などは退去強制事由に該当しやすく、入管当局が送還手続きを開始する可能性が高いです。一方、刑が軽微であれば直ちに強制送還とはならないケースもあります。
名誉毀損は比較的軽い犯罪類型であり、科される刑も軽い傾向があります。そのため軽微な刑罰(罰金刑や短い執行猶予付き判決など)の場合は、必ずしも強制送還の対象になるとは限りません。
逆に重い刑罰になった場合(例えば実刑で長期の拘禁刑など)は、退去強制手続開始のリスクが高まります。特に1年を超える拘禁刑が科された場合は、入管法上退去強制事由に該当しうるため注意が必要です。
在留特別許可
退去強制の条件に該当しても、一定の場合には在留特別許可が認められることがあります。在留特別許可とは、本来は退去すべき立場の外国人について、法務大臣の裁量で日本への在留を特別に許可する制度です。
例えば日本人の配偶者であったり日本に生活の本拠があったりする場合、人道的配慮から在留が許可されるケースがあります。
日本人の配偶者等のビザを持つ人は身分関係に基づく在留資格であるため、家族関係や生活実態が考慮され、在留特別許可が与えられる可能性が高まります。
もっとも、在留特別許可がもらえるかどうかは個別事情の総合判断ですので、「日本人と結婚しているから大丈夫」と安心せず、適切な対応が必要です。
3. 刑事処分別に見る在留資格への影響(不起訴、略式罰金、執行猶予、実刑)
不起訴(起訴猶予・嫌疑不十分など)
検察が起訴しなかった場合は、刑事上の前科がつかないため在留資格への直接の影響は基本的にありません。名誉毀損は被害者の告訴が必要な親告罪なので、被害者が告訴を取り下げれば不起訴となります。不起訴になれば退去強制事由には該当せず、現在の在留資格のまま日本に滞在できます。
略式罰金(罰金刑)
略式手続により罰金刑となった場合(例えば名誉毀損で罰金○○万円)は、有罪判決ではありますが比較的軽い処分です。
入管法24条の列挙する重大事由には該当せず、原則として直ちに退去強制とはなりません。在留資格はその時点では維持され、次回の在留期間更新まで継続します。ただし、更新審査の際に前科が考慮され、「素行に問題がある」と判断されると更新が不許可となる可能性があります。
罰金刑1回程度であれば直ちに在留資格取消とはなりにくいものの、今後の生活態度には十分注意が必要です。
執行猶予付き判決
名誉毀損事件が裁判にかかり、拘禁刑の判決が下っても執行猶予(一定期間刑の執行を猶予する措置)が付けば、刑務所に入らずに済みます。この場合も刑法上は有罪ですが、刑期の全部が猶予されているため、刑の重さとしては比較的軽微な扱いです。
執行猶予付き判決(刑期が1年以下の場合)であれば基本的に直ちに退去強制とはなりません。ただし有罪判決である以上、在留期間更新時には厳格に審査され、特に刑期が長め(例:拘禁刑2年執行猶予4年など)の執行猶予判決だと「素行不良」と見なされ更新許可が下りにくくなります。執行猶予中に再犯せず更生することが何より重要です。
実刑判決(拘禁刑など執行猶予なし)
執行猶予が付かず実刑となった場合は、刑務所に服役しなければなりません。刑期が終わると日本人と同様に刑務所から出られますが、その時点で在留資格が残っていなければ不法滞在となるため、通常は出所後すぐに入管施設に移送され、退去強制の手続きが進みます。
特に1年を超える拘禁刑が確定した場合は入管法上の退去強制事由に該当しやすく、服役中から入管による退去手続が進行することがあります。
名誉毀損で実刑判決が科されるのは非常に稀ですが、もし実刑となれば在留継続は極めて厳しい状況になるでしょう。
4. 退去強制を回避・軽減するために重要なポイント(生活実態、反省、示談、再犯可能性など)
日本での生活実態
日本人配偶者との安定した生活実態を示すことが何より重要です。夫婦が同居し円満に生活していること、日本で生計を立て社会に根ざしていることを証明できれば、入管当局に「日本での生活基盤」を強くアピールできます。
特に日本で生まれ育った子どもがいる場合や、長年日本に居住して母国での生活基盤を失っている場合は、人道的配慮の材料となり得ます。
深い反省と更生の意欲
名誉毀損をはじめ刑事事件を起こした後は、自身の行為に対する深い反省を示すことが大切です。反省文を書いたり被害者に謝罪したりして、更生への意欲を伝えましょう。本人が真摯に悔い改めている姿勢は、裁判所にも入管当局にも好印象を与えます。再犯の可能性が低い(二度と同じ過ちを犯さない)ことを客観的に示せれば、在留継続の望みは高まります。
被害者との示談
名誉毀損は被害者の意思が起訴に影響する犯罪(親告罪)です。被害者と早期に示談が成立し、許してもらえれば告訴取り下げや処罰感情の解消につながります。示談によって不起訴になったり、起訴されても処分が軽くなったりすれば、結果的に退去強制のリスクも大きく下がります。示談書には被害者の許しを得たことや再発防止を約束する内容を盛り込み、捜査機関や裁判所に提出できるようにします。
家族・周囲のサポート
日本人の配偶者や家族からのサポートも重要なポイントです。配偶者が嘆願書を書いてくれたり、裁判に情状証人として出廷してくれたりすれば、家庭環境の安定や更生への後押しを示せます。地域コミュニティでの評判や職場からの信頼なども含め、周囲の支援が厚いほど「社会的に更生できる」と判断されやすくなり、在留特別許可が認められる可能性も高まります。
5. 刑事事件後に在留資格は再取得できるのか(上陸拒否期間、将来の可能性、在留特別許可との違い)
上陸拒否期間
仮に退去強制となり強制送還された場合、その後一定期間は日本に再入国できません。この再入国禁止期間を上陸拒否期間といいます。
通常は5年間が基本ですが、過去に退去強制を受けていたり、犯罪の内容によっては10年またはそれ以上再入国が認められないケースもあります(麻薬など重大犯罪の場合は上陸拒否期間が延びる傾向があります)。名誉毀損のような比較的軽微な犯罪であれば、多くの場合は標準的な5年程度の上陸拒否期間となるでしょう。
将来の再取得の可能性
上陸拒否期間が経過すれば、再度日本人配偶者等の在留資格を取得できる可能性があります。例えば5年後に改めて在留資格認定証明書を申請し、日本に入国し直す道もゼロではありません。ただし、一度退去強制歴があると入管当局の審査は非常に厳しくなります。過去の前科や退去歴は記録に残るため、「なぜ再び日本で暮らす必要があるのか」「再度問題を起こさない保証はあるのか」といった点を厳格にチェックされます。再取得は可能でも容易ではないことを念頭に置きましょう。
在留特別許可との違い
在留特別許可は退去強制を免れて引き続き日本に残れる特例措置です。一方、再取得は一度国外退去した後に改めてビザを取り直すことです。
在留特別許可を得られれば退去そのものを回避でき、日本での生活を中断せずに済みます。これに対し退去強制となれば一旦国外退去するため、日本で築いた生活基盤(仕事や住居、家族との生活)が途切れてしまいます。さらに再入国後も過去の経緯から入管の監視が厳しくなる可能性があります。
つまり、可能であれば在留特別許可を得て退去強制を避ける方が、その後の生活再建も容易と言えます。
6. 外国人事件に強い弁護士へ早期に相談すべき理由
刑事処分と在留資格の専門的アドバイス
名誉毀損で捜査を受けた段階で、できるだけ早く弁護士に相談することが肝心です。特に外国人事件に強い弁護士であれば、刑事手続と入管手続の両面から適切なアドバイスができます。早期に相談すれば、今後の見通し(起訴の可能性や処分内容、それに伴う在留資格への影響)について具体的な説明を受けられ、不安を和らげることができます。
不起訴や処分軽減のための弁護活動
弁護士は依頼者が不起訴になるよう働きかけたり、起訴された場合でも罰金刑や執行猶予になるような弁護活動を行います。
名誉毀損事件では被害者との示談成立が極めて重要であり、弁護士が間に入ることでスムーズに交渉できるでしょう。刑事処分が軽く済めば退去強制のリスクも格段に減ります。「逮捕されたらすぐ弁護士」が鉄則です。
早期の適切な弁護によって在留資格を失わずに済んだ例も多くあります。
入管対応への知見
外国人事件に精通した弁護士は、入管への対応にも慣れています。必要に応じて弁護士が入管と連絡を取り、在留期間の更新手続きを代理申請(申請取次)したり、仮放免や在留特別許可の申請準備を進めたりできます。
たとえば捜査中に在留期限が来そうな場合、弁護士が代理で迅速に更新申請することでオーバーステイ(不法残留)を防ぎ、退去強制事由に該当しないようにすることも可能です。このように刑事弁護と入管実務の両面に対応できる弁護士に依頼することが、安全に日本にとどまる近道となります。
言語・文化面でのサポート
日本の刑事手続や法律用語は外国人本人やその家族には難解です。外国人事件に慣れた弁護士であれば、平易な言葉で手続きの流れを説明し、必要に応じて通訳や多言語のサポートも手配できます。文化の違いによる誤解が生じないよう配慮しながら、依頼者の主張や事情を日本の捜査機関・裁判所に適切に伝えてくれます。外国人だからこそ陥りやすい問題点を理解している弁護士に任せることで、安心感が得られるでしょう。
7. 事務所紹介(弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所の特徴)
刑事事件専門の法律事務所
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、その名の通り刑事事件に特化した法律事務所です。刑事弁護を専門に扱っているため、どんな刑事事件でも豊富な知識と経験があります。とりわけ外国人の刑事事件に力を入れており、外国人特有の問題にも精通しています。
在留資格に関する知識と実績
当事務所では入管手続にも詳しい弁護士が在籍し、「刑事事件×在留資格」の問題にワンストップで対応できる体制を整えています。実際に、外国人の依頼者が在留資格を失わずに済むよう全力を尽くす方針で日々取り組んでいます。刑事事件後の在留特別許可の取得や、オーバーステイ防止のための手続き代理など、数多くのサポート実績があります。
全国対応と相談のしやすさ
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は全国に支部を持ち、どこからでも相談しやすい体制です。土日祝日も相談受付を行っており、緊急の連絡にも迅速に対応します。初回の法律相談は無料で受け付けているため、「名誉毀損で捜査中だがどうすればいいか」といった不安をお持ちの方も気軽に問い合わせできます。
外国人の依頼者への配慮
当事務所では外国籍の依頼者やそのご家族にも安心してご相談いただけるよう、丁寧でわかりやすい説明を心がけています。必要に応じて通訳を手配し、英語対応なども可能です(※対応言語については事前にお問い合わせください)。文化や慣習の違いによるギャップにも配慮しながら、依頼者の権利と在留生活を守るため尽力いたします。
日本人の配偶者等のビザを持つ外国人が名誉毀損で捜査・処分を受けても、適切に対処すれば日本での生活を続けられる可能性があります。刑事手続と入管手続の双方に目を配り、早期に専門の弁護士へ相談して対応策を講じることが肝心です。大切なご家族と日本での暮らしを守るために、慌てず正しく行動しましょう。
日本人の配偶者ビザ保持者が万引き転売事件で摘発された場合の手続と在留への影響

導入
「日本人の配偶者等」という在留資格は、日本人と法律上の婚姻関係にある外国人や、その実子などに認められるもので、日本での就労活動に制限がなく、比較的安定した在留資格の一つとされています。
もっとも、この在留資格を有していても、刑事事件を起こした場合には、刑事手続だけでなく在留資格への影響も問題となります。
例えば、日本人配偶者ビザを持つ外国人が、万引きで盗んだ商品を海外に転売するグループに関与し、複数回にわたり量販店などで商品を盗み、これを海外に発送して利益を得ていたという事案で、窃盗の疑いにより摘発されたとします。
万引き事案は、一般的には比較的軽微な犯罪として処理されることも少なくありません。しかし、これに転売目的が加わり、反復継続して行われている場合には、営利性や組織性が強く評価され、事案の性質は大きく異なってきます。
結果として、刑事処分が重くなる可能性があるだけでなく、その後の在留資格への影響についても、単純な万引き事案に比べてはるかに重大な問題として扱われることになります。
そのため、このような事案では、日本では刑事手続(有罪・無罪や刑罰の内容を判断する手続)と、入管手続(在留資格の取消しや継続、退去強制の可否を判断する手続)が並行して問題となり、それぞれの手続の帰結が相互に大きな影響を及ぼし得ます。以下では、それぞれの手続がどのように進み、在留資格にどのような影響を及ぼすのかを順を追って説明します。
1. 刑事手続と入管手続の関係・影響範囲の違い
刑事手続と入管手続は目的も進め方も別個の制度です。
刑事手続とは、有罪か無罪かを判断し、有罪であればどのような刑罰(拘禁刑や罰金刑など)を科すかを決定する手続です。
他方、入管手続、特に退去強制手続は、「出入国管理及び難民認定法」に基づき、日本に在留することが適当でないと評価される外国人を国外に退去させるための行政手続です。
例えば、在留期間を超えて滞在するいわゆるオーバーステイの場合、刑事裁判を経ることなく、不法残留という事実のみで退去強制手続が進められることがあります。
このように、刑事処分は前科の有無や身体の自由に影響し、入管処分は日本での在留の可否そのものに影響するという点で、両者は明確に区別されます。
2. 刑事処分ごとの退去強制(強制送還)のリスク
刑事手続の結果によって、退去強制のリスクは大きく異なります。
まず、不起訴(起訴猶予など)となった場合には、有罪判決を受けていないため、それだけで直ちに退去強制事由に該当することは通常ありません。
次に罰金刑の場合ですが、窃盗のような一般的な財産犯においては、罰金刑のみを理由として直ちに退去強制事由に該当するわけではありません。ただし、薬物犯罪など一部の類型では、有罪判決それ自体で退去強制事由となる場合がある点には注意が必要です。
いずれにしても、罰金刑であっても前科が付く以上、後の在留資格更新等において不利に働く可能性は否定できません。
さらに、執行猶予付き判決については、有罪ではあるものの直ちに刑務所に収容されるわけではありません。また「日本人の配偶者等」の在留資格を有する者については、執行猶予付き判決のみで当然に退去強制の対象となるわけではありませんが、入管当局による在留継続の判断は厳しくなる傾向にあります。
これに対し、実刑判決を受けた場合には事情が大きく異なります。拘禁刑の期間が1年を超えると、在留資格の種類を問わず退去強制事由に該当します。もっとも、1年以下の実刑(例えば拘禁刑8月など)であっても、「日本人の配偶者等」の在留資格を有する者については、その後の在留継続を一層慎重に判断することになります。
3. 退去強制(強制送還)の仕組みと在留特別許可制度の概要
退去強制手続は、出入国在留管理庁が所管する行政手続です。刑事事件で有罪判決が確定すると、その内容を踏まえて、当該外国人が退去強制事由に該当するかが審査されます。
手続としては、まず違反調査が行われ、その後、入国審査官による認定、特別審理官による口頭審理、さらに不服があれば法務大臣への異議申出という段階を経て、最終的に退去強制令書が発付されるという流れになります。
もっとも、退去強制事由に該当すると判断された場合であっても、「在留特別許可」という制度があります。これは、本来であれば退去させるべき外国人について、法務大臣の裁量により例外的に在留を認める制度です。
日本人の配偶者である外国人は、日本国内に生活基盤や家族関係を有していることが多いため、個別事情によっては在留特別許可が認められる可能性があります。ただし、これは自動的に付与されるものではなく、本人や代理人弁護士が具体的事情を丁寧に主張・立証していく必要があります。
4. 刑事処分が在留期間の更新・永住許可・再入国に与える影響(配偶者ビザの場合)
刑事処分の内容は、「日本人の配偶者等」の在留資格の更新や、その後の永住許可申請などに大きな影響を及ぼします。
まず在留期間の更新については、前科がある場合、審査は明らかに厳格化します。とりわけ、罰金刑であっても窃盗のような故意犯による前科がある場合には、在留状況全体を踏まえて更新が許可されないリスクが現実に生じます。不起訴であれば影響は比較的限定的ですが、有罪判決を受けた場合には、その内容に応じて不利益が生じ得ると理解しておく必要があります。
次に永住許可については、「素行が善良であること」が要件とされており、一般に罰金刑以上の前科がある場合には、相当期間にわたり無違反の生活を継続するなどして信頼を回復しない限り、許可を得ることは極めて困難となります。
さらに、再入国との関係では、有罪判決後に出国した場合や退去強制となった場合には、一定期間の上陸拒否(再入国禁止)が課される点にも注意が必要です。
5. 在留特別許可を得るために考慮される事情(家族構成・反省・被害弁償・再犯リスクなど)
在留特別許可の可否は、個別具体的な事情を総合考慮して判断されます。
特に重視されるのは、日本人配偶者との婚姻関係の実態や安定性、同居の有無、婚姻期間、そして子どもの有無やその生活状況などの家族関係です。
日本で出生・成育した子どもがいる場合や、家族が日本に生活基盤を有している場合には、人道的観点から在留継続が認められる方向に働くことがあります。
また、本人の反省の程度や更生可能性も重要な要素です。被害弁償や示談の成立など、被害回復に向けた具体的な行動が取られているかどうかは、評価に大きく影響します。
これに対し、組織的・常習的で重大な犯行である場合や、再犯の可能性が高いと判断される場合には、在留特別許可が認められる可能性は大きく低下します。
6. 強制送還後の上陸拒否期間と将来的な再在留資格取得の可能性
万一、退去強制により日本国外に送還された場合には、その後一定期間、日本に再び入国することが制限されます。これを上陸拒否期間といいます。
この上陸拒否の期間は、刑事処分の内容などによって異なります。
例えば、拘禁刑に処せられた場合には、その刑期が1年以下であれば原則として5年間、1年を超える場合には、原則として期間の定めなく上陸が拒否されることになります。また、薬物犯罪など一定の類型についても、同様に無期限の上陸拒否となります。
退去強制と異なり、上陸拒否期間の判断は「実際に刑務所に収容されたかどうか(実刑か執行猶予か)」ではなく、「どのような刑に処せられたか」という点を基準に行われます。従って、執行猶予となったから上陸拒否されないことにはなりません。
例えば今回のケースでは、万引きを繰り返し、これを海外転売するという営利性・反復性が認められる事案であり、有罪判決により拘禁刑に処せられた場合には、その刑期が1年を超えるか否かによって、その後の上陸拒否の取扱いが大きく異なることになります。
すなわち、拘禁刑1年以下(例えば拘禁刑8月)であれば5年経過後に再度在留資格の申請を行う余地がありますが、拘禁刑が1年を超える場合(例えば拘禁刑1年6月)には、原則として将来にわたり日本への上陸が認められないという厳しい帰結となります。
もっとも、上陸拒否期間が経過したからといって自動的に再入国できるわけではありません。再び日本に入国するためには、改めて在留資格認定証明書の交付申請などを行い審査を受ける必要があり、その際には過去の前科や退去強制歴が重要な不利益事情として考慮されます。
なお、期間の定めなく上陸が拒否される場合であっても、例外的に上陸特別許可により入国が認められる制度自体は存在しますが、実務上認められるケースは極めて限定的です。
7. 専門の弁護士へ早期に相談する重要性と、誤った対応をした場合の不利益
本件のようなケースでは刑事事件と入管手続に精通した弁護士にできるだけ早く相談することが肝心です。外国人の刑事事件では、日本人の場合と違い在留資格への影響を見据えた対応が求められます。早期に専門家のサポートを受ければ、捜査段階から不用意な供述を避けたり、被害者との示談成立を急ぐなど、在留資格に不利とならないための戦略を立てることができます。
逆に対応が遅れたり誤った判断をすると、たとえば在留期限内に適切な手続をしない・反省の意思を示し損ねる・入管対応を誤るなどして、退去強制を防ぐチャンスを失いかねません。
実際、配偶者ビザの更新などを自力で行おうとして失敗し、在留継続が困難になる例もあります。そのような不利益を避けるためにも、専門性の高い弁護士や行政書士に早めに相談し、適切な対策を講じることが何より重要です。
永住者が建造物侵入罪で捜査・処分を受けたときの在留への影響

永住者として日本で家族と暮らすAさんは、深夜に立入禁止のテナントビルへ入ったとして建造物侵入罪で警察の取調べを受けました。
逮捕はされていませんが、突然の呼び出しに、会社にも事情を話せずにいます。
罰金で終わるのか、裁判になるのかだけでなく、永住者でも強制送還の対象になるのではないか、海外出張の後に戻れなくなるのではないかと不安が募っています。
(事例はフィクションです。)
今後の対応次第で結果は変わります。
この記事では、永住者が建造物侵入罪の当事者になった場合に、刑事手続と入管手続を分けて整理し、退去強制の見通しと再入国リスク、そして取るべき対応を説明します。
刑事手続と入管手続が別々に進むという大前提
刑事手続と入管手続は別のルールで進みます。
刑事手続で「不起訴」や「無罪」になっても、入管側で別の判断がされる余地があります。
刑事手続は、警察・検察が捜査し、検察が起訴するか不起訴にするかを決め、起訴された場合は裁判所で有罪か無罪かが判断される流れです。
起訴する権限は検察庁の検察官にあり、不起訴には「嫌疑がない・証拠が足りない」だけでなく、事情を踏まえて起訴を見送る判断も含まれます。
一方で入管手続は、刑罰を科すための手続ではありません。
「日本に在留を続けてよいか」「出国させるべきか」を行政として判断する手続です。
そのため、刑事裁判の結論とは別に、事実関係や本人の事情を材料にして評価されることがあります。
退去強制の意味と建造物侵入罪でのリスクの見方
退去強制とは、入管が「日本から出国しなさい」と命じ、必要があれば強制送還する行政手続です。
退去強制は入管法に定められた「退去強制事由」に当てはまるかどうかで判断されます。
こうした出入国・在留の実務を担うのが出入国在留管理庁です。
建造物侵入罪は、他人が管理する建物に、正当な理由なく立ち入る行為が問われる犯罪で、法定刑は3年以下の拘禁刑または10万円以下の罰金です。
拘禁刑は、刑務所に入ることを命じる刑罰です。
退去強制のリスクは、「有罪か無罪か」だけでなく、「どんな刑事処分になったか」で段階的に変わります。
特に重要なのは、最終的に拘禁刑が言い渡されるのか、そして実際に刑務所に入る形(実刑)になるのかという点です。
入管法は、無期または1年を超える拘禁刑に処せられた場合(ただし執行猶予の場合は除く)を、退去強制事由の一つとして定めています。
整理すると、建造物侵入罪で不起訴や罰金にとどまる場合は、この「1年超の実刑」という基準には当たりません。
執行猶予付きの場合は、「1年超の実刑」の退去強制事由にはあたりませんが、判決内容によって入管での評価が割れやすく、再入国のリスクも含めて注意が必要です。
実刑で期間が1年を超える場合は退去強制事由に該当するため、リスクは最も高まります。
ただし、退去強制の対象になる可能性があっても、必ず送還されるとは限りません。
「在留特別許可」という、例外的に日本での在留を認める制度があります。
在留特別許可は、在留を希望する理由や家族状況、素行、人道的配慮の必要性などを総合的に見て、法務大臣が個別に判断します。
一方で、在留特別許可は例外的な措置なので、必ずしも認められるとは限りません。
不起訴・罰金・執行猶予・実刑で変わる永住者への影響
永住者の在留期間は無期限で、在留期間の更新手続は不要です。
ただし、在留カードには有効期間があり、16歳以上の永住者は交付から7年で更新が必要です。
再入国は、出国前に再入国許可を得るか、条件を満たす場合はみなし再入国許可で出国する形になります。
みなし再入国許可の有効期間は原則として出国の日から1年です。
再入国許可には1回限りのものと、有効期間内なら数次有効のものがあり、有効期間は最長5年です。
ここでは、永住者の「永住者としての地位の維持」「再入国」だけに絞って整理します。
①不起訴の場合
不起訴とは、検察官が起訴(裁判にかけること)をしない処分です。刑事裁判が開かれず、刑罰も科されないため、退去強制事由の「1年超の実刑」にはあたりません。
ただし、入管手続は刑事手続と別に進むため、捜査で把握された事情が不利に評価される可能性は残ります。
②略式罰金の場合
略式罰金とは、正式な公判を開かず、簡易な書面の手続で罰金を科される刑事処分です。
罰金で終わるなら、退去強制事由の「1年超の実刑」にはあたりません。
一方で、罰金は無罪ではなく有罪の結論なので、入管が「素行」を評価する場面ではマイナス材料になり得ます。
③執行猶予付き判決の場合
執行猶予とは、拘禁刑を言い渡しつつ、一定期間その執行を待ってもらい、その期間中犯罪を犯すことがなければ刑務所に入ることはなくなるという制度です。
刑事手続上は有罪ということになります。
入管の退去強制事由では「無期または1年を超える拘禁刑、ただし執行猶予の場合は除く」が基準になっており、執行猶予付きかどうかで結論が分かれることがあります。
この段階で注意が必要となってくるのが再入国です。
入管法は、「日本または外国の法令に違反して、1年以上の拘禁刑に処せられたことがある」場合を上陸拒否事由として定めています。
ここでは、執行猶予の有無は問題とされていません。
そのため、永住者であっても、判決内容次第では、海外に一度出ると再入国時に上陸を拒否されるリスクがあります。
④実刑判決の場合
刑務所に入ることとなり、しかも期間が1年を超えると、退去強制事由に該当することになります。
退去強制になれば永住者としての地位も維持できず、日本に生活基盤があっても離れざるを得なくなる危険があります。
退去強制を回避・軽減するために重要な実務ポイント
「1年超の実刑」などの退去強制事由に該当してしまった場合、永住者の場合でも「個別事情の積み重ね」で結果が変わります。
在留特別許可は、在留を希望する理由、家族状況、素行、人道的配慮の必要性などを総合評価する枠組みです。
永住者であること自体は、日本で長く生活してきた実績を示しやすい点でプラスに働き得ます。
そのうえで、在留年数、家族との同居実態、仕事や住居の安定、地域での生活の根付きなどを、資料と説明で具体化することが重要です。
建造物侵入罪の特性として、被害者側は「建物の管理が侵害された」「不安を感じた」という害を被る点があります。
すべき対応としては、建物管理者への謝罪、必要に応じた被害回復(できれば示談)、再接近を避ける約束、再犯防止のための監督や環境改善などが挙げられます。
そして最も大切なのは、刑事手続と入管手続を同時に見据えることです。
刑事側での処分が軽くなるほど、退去強制の入り口に立たずに済む可能性が上がります。
退去強制後に再び日本に来られるかと上陸拒否期間
上陸拒否期間とは、退去強制で出国した後、一定期間は日本に上陸できないというルールです。
期間は原則5年で、事情により10年になる場合もあります。
この期間が経過した後は、再び上陸を申請する余地はあります。
ただし、上陸は入国審査で判断されるため、「期間が経過すれば必ず入れる」というわけではありません。
外国人事件に強い弁護士へ早期に相談すべき理由
永住者の建造物侵入事件に限った話ではありませんが、刑事手続と入管手続の両方を視野に入れて対応しないと「日本に住み続ける」という目的を達成しにくいことがあります。
退去強制は刑事手続とは別の行政手続で、刑事手続が終わってから対応すればいいと思っていると手遅れになることがあります。
ポイントは、主に二つです。
一つ目は、刑事処分が重くなり、1年超の実刑に近づくほど退去強制の危険が上がることです。
二つ目は、執行猶予でも判決内容によっては、海外に出た後の再入国が難しくなる危険がある点です。
弁護士が早期に関与すると、刑事事件では不起訴や罰金で終わるための方針を立て、必要な対応を進めやすくなります。
同時に、入管で評価されやすい事情を整理し、在留特別許可が問題になる局面でも説明材料を整えられます。
結果は個別事情で変わりますが、早い段階に対応するほど選択肢が残りやすいのが実務です。
当事務所では無料法律相談を行っています。
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定住者が建造物侵入罪で捜査されたときの在留への影響と強制送還を避けるための対応

ある日、定住者として日本で暮らすAさんが、立入禁止と表示のある建物に入ったとして建造物侵入罪の疑いで事情聴取を受けました。
「不起訴なら大丈夫なのか」。
「罰金でも日本にいられるのか」。
「家族と離れ離れになって強制送還されるのではないか」。
Aさんの結末は、刑事手続だけでなく入管手続への対応次第で変わる可能性があります。
この記事では、定住者が建造物侵入罪で問題になった場合の、在留への影響、退去強制の仕組み、将来の再入国の見通しを整理します。
要点まとめ
結論として、建造物侵入罪では「刑事手続」と「入管手続」が別々に動くため、刑事事件が軽く終わっても在留面の不安がゼロにはなりません。
建造物侵入事件の場合、退去強制のリスクが大きく上がるのは、無期または1年を超える拘禁刑の実刑が確定した場面です。
一方で、不起訴や罰金、執行猶予であっても、定住者の在留期間更新や将来の永住許可の審査では「素行」が重視され、説明資料の質が結果を左右しやすいです。
退去強制手続の中では、在留特別許可という「例外的に日本に残る道」が問題になりますが、必ず認められる制度ではありません。
さらに、退去強制後の再来日には「上陸拒否期間」が関わり、刑の内容によっては期間で解決しない上陸拒否事由が残る点に注意が必要です。
刑事手続と入管手続が同時並行で進む
建造物侵入罪の捜査は刑事事件ですが、在留が続けられるかどうかは入管手続で別途判断されます。
刑事手続では、検察官が起訴するか不起訴にするかを決めます。
不起訴は「裁判にかけない」という判断であり、刑事裁判が開かれない点が特徴です。
退去強制手続となる場面では、有罪か無罪か、有罪としてどのような刑となるかが問題となります。しかし、今後も在留資格を更新し続けられるかという点では、入管側は「有罪か無罪か」だけで機械的に在留を決めるわけではありません。
在留期間更新の判断要素として「素行が不良でないこと」が掲げられ、刑事手続を受けたこと自体が消極要素になり得ると整理されています。
したがって、不起訴でも「何が起きたのか」「再発の不安がないか」を説明できないと、更新や将来の永住許可で不利に働く可能性があります。
刑事手続と入管手続の流れを、全体像として見ると次のようになります。
flowchart LR
A[建造物侵入罪の疑いで発覚] –> B[警察の捜査・取調べ]
B –> C[検察官が起訴/不起訴を決定]
C –> D[不起訴]
C –> E[略式罰金]
C –> F[公判請求]
F –> G[判決: 執行猶予 / 実刑]
A –> H[入管当局が情報を把握]
H –> I[退去強制手続の検討・進行]
I –> J[在留特別許可の検討]
J –> K[在留継続 / 退去強制]
退去強制とは何か
退去強制とは「一定の要件に当たる外国人に対し、日本から出国するよう命じる行政手続」です。
刑事裁判の「刑罰」とは目的も手続も別であり、刑事事件が終わっても退去強制が問題になることがあります。
退去強制手続は、違反調査、違反審査、口頭審理、裁決といった段階で進むことが示されています。
建造物侵入罪との関係では、退去強制が特に問題になりやすいラインがあります。
建造物侵入罪は、正当な理由なく人が管理する建物に侵入する行為を処罰の対象とするもので、法定刑は3年以下の拘禁刑または10万円以下の罰金です。
ここで重要なのは、入管法上、無期または1年を超える拘禁刑に処せられた場合に退去強制事由となり得る、という枠組みです。
つまり、建造物侵入罪でも、量刑が「1年を超える実刑」まで重くなると、退去強制リスクが一気に現実化します。
そして、退去強制の局面では「在留特別許可」が中心論点になります。
在留特別許可は、法務大臣が、在留を希望する理由や家族関係、素行など複数の事情を総合して判断する仕組みとして明示されています。
ただし、在留特別許可は「必ず許可される権利」ではなく、個別事情で結論が分かれます。
また近時の制度として、退去強制令書が発付された後は、在留特別許可の申請ができない旨の規定が置かれています。
刑事処分別に見る定住者の在留への影響
建造物侵入罪では「退去強制になるかどうか」は実刑の長さが核心であり、さらに「定住者として生活を続けられるか」は更新審査での説明内容が核心になります。
以下の表は、刑法130条の法定刑と、入管法上の退去強制事由・在留審査の考え方を前提に整理した目安です。
| 刑事手続の結論 | 退去強制のリスク(建造物侵入罪) | 定住者の在留期間更新への影響 | 永住許可(将来)の影響 | 再入国(出国時)の注意点 |
| 不起訴 | 原則として「1年超の拘禁刑の実刑に処せられた」に当たらない | 事情説明の質で差が出る | 「素行」評価の説明が重くなる | 再入国許可を取らずに出国すると在留資格が消滅 |
| 略式罰金 | 同上 | 「素行」面で消極評価になり得る | 罰金歴の扱いが問題化し得る | 同上 |
| 執行猶予 | 同上 | 更新は可能性が残るが慎重 | 申請時期・説明の組立てが重要 | 同上 |
| 実刑 | 1年超の実刑で退去強制の要件を満たす。反対に1年以下の実刑であれば要件を満たさない | 更新以前に退去強制が前面化し得る | 退去強制の場合は申請以前に離日 | 上陸拒否期間や上陸拒否事由が問題化 |
次に、それぞれをもう少し具体化します。
不起訴の場合
刑事裁判にならないため、刑罰は科されません。
このため「1年を超える拘禁刑に処せられた」という類型には当たりません。
ただし、定住者の在留期間更新は、法務大臣が「引き続き在留を認めることが適当か」を判断する仕組みです。
その判断要素として素行が位置付けられている以上、捜査に至った経緯や再発防止を説明できないと、更新審査で消極に働き得ます。
略式罰金の場合
略式裁判は、検察官の請求に基づき、簡易裁判所が正式裁判を開かず、罰金や科料を科す簡易手続です。
建造物侵入罪は罰金刑が法定されているため、事案によっては略式罰金で終わることがあります。
罰金は「拘禁刑」ではないため、1年超の拘禁刑を前提とする退去強制類型には直結しにくいです。
一方で、在留期間更新や永住許可では、法律上またはガイドライン上「素行」が重視されるため、罰金であっても説明負担は残ります。
執行猶予の場合
執行猶予は、有罪判決を出しつつ、一定期間、刑の執行を猶予する制度です。
入管法の退去強制事由は、定住者の刑罰法令違反が問題となった場合は、実刑となったときに限定されています(薬物事犯などは除く)
そのため、執行猶予付き判決であれば、直ちに退去強制に結び付くわけではありません。
ただし「有罪」である以上、定住者の更新審査や将来の永住許可で、どのように更生状況を示すかが重要になります。
実刑の場合
実刑とは、猶予が付かず、刑事施設に収容されて刑が執行される形を指します。
建造物侵入罪でも、量刑が1年を超える拘禁刑となって確定すると、退去強制事由に該当します。
この局面では、刑事手続の弁護方針がそのまま在留可否に直結しやすいため、「1年を超える実刑を避ける」ことが最重要目標になります。
また、再入国の観点では重要な基本があります。
再入国許可(みなし再入国許可を含む)を受けずに出国すると、その時点で在留資格と在留期間が消滅します。
みなし再入国許可の有効期間は、原則として出国の日から1年で、在留期限が先に来る場合は在留期限までとされています。
退去強制を回避・軽減するために重要なポイント
結論として、退去強制を避ける現実的な道は「刑事処分を重くしないこと」と「在留特別許可が検討される局面に備えて、個別事情を積み上げること」です。
在留特別許可の判断では、在留を希望する理由、家族関係、素行、在留期間、退去強制の理由となった事実などを総合考慮することが明示されています。
つまり、一つの事情だけで決まるのではなく、プラス材料とマイナス材料の「全体評価」になります。
定住者に特有の観点としては、そもそも定住者は「法務大臣が特別な理由を考慮し、一定の在留期間を指定して居住を認める」枠組みである点が重要です。
したがって、生活基盤の安定や法令順守の継続が、審査上の説得力になりやすいです。
建造物侵入罪の特性に即して、入管で評価されやすいポイントを実務的にまとめます。
まず、刑事手続側で目標を明確にします。
退去強制リスクの境目が「1年を超える拘禁刑の実刑」にある以上、そこを越えない結果を現実的に目指すことが在留面では決定的に重要です。
次に、入管手続を見据えて「説明の材料」を準備します。
在留特別許可では、家族関係や生活状況、素行、再発可能性の低さを、証拠で示すことが基本動作になります。
実務チェックリストを置きます。
早いほど有利になりやすい項目です。
- 取調べ対応を「刑事」と「在留」の両面で設計する。
- 侵入に至った経緯を、時系列で矛盾なく整理する。
- 管理者側に対する謝罪と、再発防止策を具体化する。
- 生活基盤を裏付ける資料を早期に集める。
- 在留特別許可の「申請できるタイミング」を外さない。
弁護士が実務で準備することの多い「主張の柱」と「資料の例」を挙げます。
特定の書式のひな形ではなく、どのような材料をどう組み立てるかのイメージです。
- 経緯説明
どの時点で、誰の管理下の建物に、どのように立ち入ったのかを整理します。
「正当な理由」の有無に触れつつ、争点があるなら争点を限定します。 - 反省と再発防止
「二度と同じことをしない」を抽象語で終わらせず、具体策に落とします。
例えば、関係場所に近づかない行動設計や、生活リズムの是正など、実行可能性を示します。 - 生活基盤の立証
定住者としての居住実態、就労状況、収入、住居、社会的つながりを資料で示します。 - 家族事情の整理
同居家族の有無、扶養の実態、家族の生活への影響を、感情ではなく事実で提示します。 - 在留継続の必要性
「なぜ日本に残る必要があるのか」を、仕事・家族・生活の観点で立体的に説明します。
刑事事件後に定住者を再取得できるのか
結論として、退去強制になった場合でも将来の再来日が「絶対に不可能」とは限りませんが、「上陸拒否期間」と「上陸拒否事由」の両方を分けて考える必要があります。
上陸拒否期間とは、退去強制など一定の事情がある人について、原則として日本への上陸を拒否する期間を指します。
退去強制を受けた場合、法律上「退去した日から五年」や「退去した日から十年」と整理される類型があります。
ただし、ここで終わりではありません。
入管法には「日本国または外国の法令に違反して、1年以上の拘禁刑等に処せられたことがある者」は上陸できない、という上陸拒否事由があります。
この類型は「何年経てば自動的に解消する」という性質ではなく、結果として長期にわたり再来日のハードルとなり得ます。
したがって、建造物侵入罪で最も厳しいシナリオは次の組合せです。
「1年を超える実刑が確定して退去強制に至る」ことです。
この場合、退去強制の問題に加え、上陸拒否事由そのものが残ってしまう可能性が高まります。
在留特別許可は「本来は退去すべき局面でも、例外的に日本での在留を認める」判断です。
これに対して、退去強制後の査証の再取得は「いったん出国した上で、上陸の可否からやり直す」話です。
定住者は、法務大臣が特別な理由を考慮して在留期間を指定する枠組みであるため、再取得の局面でも事情の再整理が必要になります。
外国人事件に強い弁護士へ早期に相談すべき理由
結論として、定住者×建造物侵入罪の組合せは「刑事の量刑ライン」と「入管の裁量判断」が交差するため、早期に専門家が全体設計するほど結果が改善しやすい類型です。
とくに、退去強制リスクの境目が「1年を超える実刑」である以上、刑事弁護の初動が在留結果を左右します。
また、在留特別許可は「主張と証拠の積み上げ」が核心であり、場当たり的対応では弱くなりがちです。
さらに、退去強制令書発付後は在留特別許可の申請ができないというルールがあるため、間に合わない対応は致命傷になり得ます。
弁護士が関与する実益は、次の点にあります。
刑事側では、処分の見通しを踏まえ、在留にとって致命的になりやすい結果を避ける方針を立てます。
入管の手続きの側では、法律が掲げる考慮要素に沿って、事情を「評価される形」に翻訳し、資料で裏付けます。
そして、出国や再入国許可の扱いなど、在留資格が消滅する落とし穴を避ける助言ができます。
建造物侵入罪で捜査されても、必ず退去強制になるわけではありません。
一方で、「軽い処分だから安心」と決めつけて準備を怠ると、更新や将来の永住許可で不利が残ることがあります。
不安がある段階ほど、刑事と入管を一体で見て、早めに戦略を固めることが重要です。
永住者が公務執行妨害罪で捜査・処分を受けたときの在留への影響と退去強制リスク

永住者のAさんは、路上で警察官に職務質問を受けた際に動転し、警察官の腕を振り払ったことで公務執行妨害罪の疑いで取調べを受けました。
「このまま日本に住み続けられるのか。」「強制送還されるのではないか。 」と本人も家族も不安になりました。
Aさんの処分の内容と今後の対応次第で、結果が変わる余地があります。
この記事では、永住者が公務執行妨害罪で捜査・処分を受けた場合の在留への影響、退去強制の対象になり得る場面、そして将来の再入国可能性を整理します。
刑事手続と入管手続は別々に進みます
結論として、刑事手続で「どう処分されたか」と、入管手続で「在留を続けられるか」は、同じ判断で決まるとは限りません。
刑事手続は、警察の捜査と検察官の判断、裁判所の裁判によって進みます。
一方で入管手続は、在留を続けられるか、退去強制にするかを行政として判断する流れです。
特に重要なのは、刑事手続が進行中でも、退去強制の手続を進められる場面が法律上想定されている点です。
つまり、刑事事件が終わるまで入管が必ず待ってくれる、という発想は危険です。もっとも、実務上は、刑事手続が先行する場合が多いです。
「不起訴なら安心。」「無罪なら何も起きない。 」と考えたくなる気持ちは自然です。
ただ、入管手続は刑事裁判と目的が違い、事実関係の整理や説明が別枠で求められることがあります。
また、出国しようとしたときに、一定の場合は出国確認が一時的に留保され得る仕組みもあります。
退去強制とは何かと在留特別許可の考え方
退去強制とは、一定の要件に当てはまる外国人に対して、日本からの出国を命じる行政手続です。
刑事裁判で有罪か無罪かを決める手続とは別に、入管手続として判断されます。
退去強制になりやすいかどうかは、「どんな刑事処分になったか」が大きく影響します。
永住者が公務執行妨害罪で起訴され、有罪になった場合の法定刑は、「3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金」です。
公務執行妨害罪は「公務員の職務に対する暴行または脅迫」という性質のため、行為の態様が重いほど刑事処分も重くなりやすく、結果として入管上のリスクも上がりやすい構造です。
入管法上、退去強制の判断に直結しやすい線引きの一つが、「無期または一年を超える拘禁刑」かどうかです。
この類型では、全部の執行猶予が付いた場合などは除外される扱いになっています。
そのため、公務執行妨害罪でも「1年超の実刑になるか」「全部執行猶予で収まるか」は、在留の見通しに直結し得ます。
ここで必ず知っておきたいのが「在留特別許可」です。
在留特別許可は、本来は退去強制となる方向の事案でも、個別事情を踏まえて例外的に日本での在留を認める仕組みです。
永住者であることは、在留特別許可を検討する場面で法律上明示されている事情の一つです。
ただし「必ず許可される制度」ではなく、最終的には裁量で「許可できる」とされている点に注意が必要です。
刑事処分別にみる永住者の在留カードの更新と再入国への影響
永住者の在留への影響を考えるときは、在留カードの更新と再入国の場面を分けて考えると整理しやすいです。
永住者の在留カードは、原則として交付日から7年が有効期間とされています。
再入国については、再入国許可を申請して得る形と、要件を満たすと「みなし」で許可を受けた扱いになる形があります。
それでは、不起訴・略式罰金・執行猶予付き判決・実刑判決で、入管上の見通しがどう変わりやすいかを、永住者という前提で説明します。
不起訴の場合の見通し
不起訴は、検察官が裁判所に起訴しないと決める処分です。
刑事手続としては裁判に進まないため、「どんな刑を科すか」という局面自体が生じません。
この場合、公務執行妨害罪で「無期または1年を超える拘禁刑」に処せられることを前提とした退去強制類型には通常当たりません。
一方で、刑事手続と入管手続は別枠で進み得るため、事実関係の説明や、再発防止の示し方が重要になることがあります。
再入国の面では、渡航のタイミングに注意が必要です。
出国確認が一時的に留保され得る規定があり、手続上の制約が生じ得ますことがあります。
略式罰金の場合の見通し
略式手続は、公開の法廷での審理ではなく書面審理で、裁判所が「略式命令」を出す簡便な手続です。
略式命令で科せる刑罰は、100万円以下の罰金または科料に限られます。
罰金で確定した場合でも、「無期または1年を超える身柄刑」という類型そのものには当たりません。
そのため、退去強制リスクの観点では、少なくとも「1年超の実刑」を前提とする退去強制類型には直結しませんので、永住者が公務執行妨害罪で略式罰金となった場合、通常は退去強制事由には直結しません。
ただし、公務執行妨害罪は暴行または脅迫を要件とするため、行為態様が重いと判断されれば、略式ではなく正式裁判になり得る点は押さえてください。
再入国の場面では、渡航前に「再入国許可が必要か」「みなし再入国許可で足りるか」を確認し、手続を誤らないことが重要です。
執行猶予付き判決の場合の見通し
執行猶予は、一定の条件を満たすと、刑の執行を一定期間猶予できる制度です。
刑法上は、猶予期間を1年以上5年以下の範囲で定める仕組みが示されています。
入管法上の「無期または1年を超える拘禁刑」の類型では、刑の全部の執行猶予が付いたときは除外されることが明示されています。
この点は、永住者の在留への影響を考えるうえで重要です。
もっとも、執行猶予であっても「公務執行妨害罪で有罪になった」という事実は残ります。
そのため、再発防止の具体策や、生活の安定、家族の事情などを整理して、在留特別許可の判断材料として示せる形にしておくことが大切です。
再入国については、出国日から1年を原則とする「みなし再入国許可」の枠を超える渡航なら、事前の再入国許可が必要になります。
実刑判決の場合の見通し
実刑は、判決後に実際に身柄拘束を受けて刑務所に入ることを意味します。
公務執行妨害罪の法定刑は3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金で、事案によっては実刑になる可能性が否定できません。
入管法上、「無期または1年を超える拘禁刑」に該当し、かつ全部執行猶予ではない場合は、退去強制の判断に直結しやすくなります。
この局面では、在留特別許可を得られるかどうかが最大の焦点になります。
永住者であること自体は、在留特別許可の検討枠組みに明記されている事情です。
また、刑事手続や刑の執行と並行して、退去強制手続が進み得ることも、現実のリスクとして理解しておく必要があります。
退去強制を回避・軽減するために重要なポイント
結論として、目指すべき方向は「刑事処分を軽くすること」と「入管に出すべき事情を早い段階から積み上げること」の両方です。
在留特別許可は、永住者であるから自動的に認められる制度ではなく、個別事情の総合評価です。
永住者という性質に照らすと、次のような事情が「日本での生活の根付き」を示す情報になり得ます。
- 長年の在留実績があること
- 家族がいることや、家族の生活が日本に固定されていること
- 住居や仕事が安定していること
- これまでの在留状況が適正であること
公務執行妨害罪の特性を踏まえると、入管で見られやすい焦点は「暴行または脅迫の程度」と「再発防止の具体性」になりやすいです。
たとえば、当時の状況を丁寧に説明し、なぜ動転したのかを説得的に説明できるようにします。
そのうえで、同じ状況でも暴力的な反応をしないための具体策を示します。
公務執行妨害罪は、公務員の職務に対する暴行または脅迫が問題になります。
そのため、謝罪の意思表示や、必要に応じた賠償など「責任を取る姿勢」を形にすることが、刑事面でも入管面でも意味を持ちます。
ここは感情論ではなく、証拠として残る形に整えることが重要です。
刑事手続と入管手続を同時に見据える必要がある理由は、「刑事での結果が入管の入口要件になり得る」からです。
特に「1年を超える実刑」かどうかは、退去強制リスクを大きく動かします。
弁護士が早期に関与すると、刑事面では処分の見通しを立て、入管面では提出すべき事情を時系列で整理し、矛盾なく説明できる体制を作りやすくなります。
退去強制後に在留資格は再取得できるのか
結論として、退去強制になっても「将来が必ず閉ざされる」とは限りません。
ただし、退去強制のあと一定期間は、日本への上陸が認められない期間が設けられています。
この期間は、初めて退去強制された場合は原則として5年、過去にも退去強制がある場合は原則として10年とされています。
したがって、退去強制が現実化した場合は「いつから再入国を目指せるか」を年単位で設計する必要があります。
在留特別許可と上陸拒否期間は、位置づけが異なります。
在留特別許可は、退去強制の手続の中で例外的に日本での在留を認める判断です。
上陸拒否期間は、退去強制でいったん出国したあとに、一定期間は上陸できないという入口側の制約です。
外国人事件に強い弁護士へ早期に相談すべき理由
結論として、永住者の公務執行妨害罪は「刑事の出口」と「入管の出口」を同時に設計しないと、取り返しがつかない不利益が生じ得ます。
特に、退去強制リスクが上がりやすい境目として「1年を超える実刑」かどうかがあり、刑事弁護の方針が在留の見通しを左右します。
また、再入国許可やみなし再入国許可の理解が不十分なまま出国し、結果として帰国手続が複雑化することもあり得ます。
さらに、捜査や公判の段階で「何を証拠として残すか」を誤ると、在留特別許可の判断材料が薄くなりかねません。
専門家が関与すれば、刑事面では不起訴や罰金、執行猶予の可能性を具体的に見立て、入管面では将来の審査で評価されやすい事情を一貫した形で提出しやすくなります。
過度に悲観せず、早い段階で正しい手順に乗せることが、結果を変える現実的な方法です。
事務所紹介
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事弁護の実務を軸に、外国人の在留への影響まで一体で見通す弁護に注力しています。
公務執行妨害罪は、事実関係の整理と再発防止の示し方で、処分の方向が変わり得る類型です。
同時に、入管では「1年を超える実刑」かどうかが在留の分岐点になり得るため、刑事と入管の両方を視野に入れた初動が重要です。
ご本人とご家族の生活を守るために、必要な事実と資料を漏れなく整え、見通しをご説明することを大切にしています。
定住者が公務執行妨害罪で捜査・処分を受けたときの在留への影響と今後の見通し

日本で生活する定住者のAさんは、深夜、警察官から職務質問を受けた際に口論となり、警察官の腕を振り払うなどの行為をしたとして、公務執行妨害罪の疑いで捜査を受けることになりました。
逮捕はされなかったものの、取調べを受ける状況となり、「このまま日本に住み続けられるのか」「強制送還されるのではないか」と、本人だけでなく家族も強い不安を感じています。
このようなケースでは、刑事事件の結果だけで在留資格の結論が自動的に決まるわけではありません。
刑事手続と入管手続は別の制度として運用されており、同じ事案でも判断の観点が異なります。
この記事では、定住者の方が公務執行妨害罪を疑われた場合に、日本での在留にどのような影響があり得るのかについて、
- 在留資格への影響
- 退去強制のリスク
- 将来の在留更新や永住許可の見通し
といった点を、結論から分かりやすく整理します。
刑事手続と入管手続が別々に進む理由
まず押さえておきたい重要な点は、刑事手続と入管手続は、別のルールに基づいて進むということです。
刑事事件では、警察の捜査の後、検察官が証拠を検討し、起訴するか不起訴にするかを決定します。
また、逮捕・勾留が行われるか、在宅のまま捜査が進むかなど、手続の進み方も事案によって異なります。最終的な処分が決まるまで、数か月程度かかることも珍しくありません。
一方、在留資格の更新や変更などは、出入国在留管理庁による行政手続であり、法務大臣が「引き続き日本での在留を認めるのが適当か」を判断する制度です。
また、退去強制も刑事裁判とは別の行政手続として行われます。
そのため、刑事事件で軽い処分となった場合でも、在留に関する問題が完全に消えるとは限りません。
逆に、刑事事件が問題になったとしても、必ず退去強制になるとは限らず、個別事情を踏まえた判断が行われます。
「不起訴なら安心」と思われがちですが、実務上は必ずしもそうとは言い切れません。
在留資格の更新や変更の審査では、単に有罪か無罪かだけでなく、
- 日常生活における法令遵守状況
- 社会生活上の問題行動の有無
- 今後の再発可能性
といった素行(ふだんの行い)を含む総合的な評価が行われることがあります。
また、将来の永住許可の審査でも、「素行が善良であること」が審査基準の一つとして示されています。
そのため、刑事事件の内容やその後の生活状況が、在留審査に影響する可能性は残ります。
退去強制の意味と在留特別許可
退去強制とは、一定の要件に該当する外国人について、日本から出国するよう命じ、国外へ送還する行政手続です。
これも刑事裁判とは別の制度として運用されています。
刑事事件の結果は、退去強制の判断において重要な要素になりますが、それだけで結論が機械的に決まるわけではありません。
公務執行妨害罪は、職務を行っている公務員に対して暴行または脅迫を加え、公務の執行を妨害した場合に成立する犯罪です。
法定刑は、3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金とされています。
下記のような刑事処分の違いによって、在留への影響の大きさも一般的には次のように変わります。
不起訴の場合
不起訴の場合は、有罪判決が確定しないため、前科にはなりません。
そのため、直ちに退去強制の問題になることは通常考えにくいといえます。
もっとも、在留資格の更新などの審査では、事件の経緯やその後の生活状況が確認される可能性があるため、再発防止の説明などが重要になる場合があります。
略式罰金の場合
略式罰金は、有罪が認定され、罰金刑が科される処分です。
簡易裁判所での略式手続により、公判を開かずに書面審理で罰金刑が科される仕組みですが、有罪判決である点には変わりありません。
そのため、在留資格の更新や永住許可の審査では、素行評価の観点から不利な事情として扱われる可能性があります。
執行猶予付き判決の場合
執行猶予付き判決は、拘禁刑が言い渡されつつも、一定期間別の犯罪をしなければ、刑務所に収容されないこととなる、社会内で更生を図る制度です。
ただし、拘禁刑の有罪判決が言い渡されている点は重く評価される可能性があり、在留資格の更新や永住許可の審査では慎重な判断がされることがあります。
実刑判決の場合
実刑判決となると、刑務所への収容を伴う刑が確定します。
特に1年以上の拘禁刑が確定した場合には、退去強制事由に該当します。この場合、在留資格の維持が難しくなり、退去強制が現実的な問題となります。
在留特別許可という制度
ここで重要になるのが「在留特別許可」という制度です。
在留特別許可とは、本来は退去強制すべき事情がある場合であっても、
- 日本での生活状況
- 家族関係
- 在留期間
- 社会生活への影響
などを総合的に考慮し、例外的に日本での在留を認める制度です。
もっとも、これは権利として当然に認められるものではなく、法務大臣の裁量による個別判断となります。
したがって、刑事事件の内容だけでなく、その後の生活状況や再発防止策など、さまざまな事情が総合的に評価されることになります。
刑事処分別にみる定住者の在留更新・永住許可・再入国への影響
同じ公務執行妨害罪であっても、刑事事件の処分の内容によって、その後の在留への影響の現れ方は変わります。
ここでは、在留資格の更新、永住許可、再入国の3つの観点から整理します。
不起訴の場合
不起訴の場合、検察官が起訴しない判断をするため、有罪判決はなく、前科にもなりません。
そのため、直ちに在留資格を失うような事態になる可能性は通常高くありません。
もっとも、在留資格の更新審査では「素行が善良であること」が前提とされるため、事件の経緯やその後の生活状況が確認されることがあります。
そのため、
- 事件の経緯をどのように説明するか
- 再発防止のためにどのような生活改善をしているか
といった点を整理しておくことが実務上重要になります。
永住許可申請でも「素行善良」が審査基準とされているため、不起訴となった場合でも、将来に向けて生活状況の安定性や再発防止の取り組みを具体的に示すことが望ましいといえます。
再入国については、在留資格を保ったまま一時的に出国する場合、通常は次のいずれかの制度を利用します。
- 再入国許可(事前に入管から許可を取得
- みなし再入国許可(有効なパスポートと在留カードを所持し、1年以内に再入国する場合)
みなし再入国許可は出国日から1年以内に再入国することが条件で、この期間を過ぎると在留資格は失われます。
また、在留期間の満了日が1年より早い場合は、その満了日までに再入国する必要があります。
そのため、刑事事件の処理中や在留更新の時期が近い場合には、安易な出国が思わぬ不利益につながることもあるため注意が必要です。
略式罰金の場合
略式罰金は、簡易裁判所の略式手続により、公開の法廷を開かずに書面審理で罰金刑が科される制度です。
ただし、これはあくまで正式な有罪判決であり、刑罰として罰金の納付義務が生じます。
定住者の在留資格更新では、素行が善良であることが許可の前提とされているため、刑事処分を受けた事実は消極的事情として評価され得ます。
特に、更新時期が近い場合には、事件の内容やその後の生活状況について説明を求められる可能性があります。
永住許可申請でも、素行の審査は重要な要素です。
そのため、判決後の生活態度や再発防止の取り組みなどを具体的に示すことが、審査への影響を考えるうえで重要になります。
執行猶予付き判決の場合
執行猶予付き判決は、拘禁刑が言い渡されながらも、一定期間その執行を猶予し、社会内で更生する機会を与える制度です。
ただし、在留資格の審査においては、拘禁刑の有罪判決が言い渡されているという事実自体が重く評価される可能性があります。
その結果、
- 在留資格の更新が慎重に判断される
- 更新が認められても在留期間が短くなる
といった形で影響が出ることがあります。
また、永住許可の審査では、一般に「素行が善良であること」などが審査基準として示されています。
そのため、執行猶予判決がある場合には、
- 事件後の生活状況
- 再発防止の具体的な取り組み
- 社会生活の安定性
などを具体的に説明できるかが重要になります。
再入国については、執行猶予期間中に長期間出国することが、生活の安定性や更生状況の評価に影響する可能性もあります。
また、刑事手続や在留更新のタイミングと重なると手続が複雑になることもあるため、渡航の必要性や時期について慎重に検討する必要があります。
実刑判決の場合
実刑判決が確定すると、刑務所への収容が伴うため、日本での生活基盤を維持すること自体が難しくなります。
また、在留資格の更新や永住許可の前提となる生活状況が大きく変わるため、退去強制が現実的な問題として検討される可能性が高くなります。
さらに、公務執行妨害罪は公務員の職務に対する暴行・脅迫が問題となる犯罪であるため、入管の審査では、素行や再犯可能性の観点から慎重に評価される傾向があります。
退去強制に至った場合には、一定期間または無期限の上陸拒否期間が設定され、日本に入国できなくなる可能性があります。
退去強制の回避・影響軽減に向けた実務ポイント
退去強制を回避できるか、あるいは影響をどこまで軽減できるかは、個別事情の積み重ねによって判断されます。
在留特別許可の判断では、主に次のような事情が考慮されます。
- 日本での在留期間
- 家族関係
- 生活基盤の安定性
- これまでの在留状況
- 事件の内容や再発可能性
これらは「一つ当てはまれば必ず許可される」というものではなく、プラス要素とマイナス要素を総合的に比較して判断されます。
定住者の場合、日本で長く生活し、仕事や家族など生活基盤が形成されていることが多いため、その事情を丁寧に整理することが重要になります。
具体的には、
- 在留期間の長さ
- 安定した就労状況
- 家族の生活への影響
- 生活態度の改善
といった点を、資料と説明の両方で一貫して示す必要があります。
また、公務執行妨害罪の事案では、当日の状況や行為に至った経緯を整理し、再発防止策を具体的に示すことも重要です。
この類型では、相手方が警察官など公務員であるため、示談が成立しないケースも少なくありません。
そのため、謝罪の意思や賠償の意思をどのような方法で示すかについても、手続に沿った対応が求められます。
刑事事件後の再入国と在留再取得
退去強制となった場合でも、制度上は将来の再来日が完全に不可能になるわけではありません。
ただし、その際に大きな壁となるのが上陸拒否期間です。
退去強制や一定の出国手続が行われた場合には、一定期間または無期限、日本への上陸が認められない期間が設定されます。
この期間の長さは事案の内容などによって異なるため、退去強制の可能性がある段階では、自分がどの類型に該当し得るのかを具体的に確認することが重要になります。
これに対して、在留特別許可は、退去強制に該当する事情がある場合でも、例外的に日本での在留を認める制度です。
そのため、退去強制の可能性がある場合には、将来の再入国を考える前に、日本で在留を継続できる可能性を最大限検討することが重要になります。
外国人事件に強い弁護士へ早期相談が重要な理由
定住者が公務執行妨害罪で捜査を受けた場合、問題は刑事事件だけにとどまりません。
その後の在留資格の維持や更新、将来の永住許可などにも影響する可能性があります。
実務上よく見られる不利益としては、例えば次のようなケースがあります。
- 刑事事件は早く終わったが、在留資格更新で問題が生じた
- 有罪判決後に出国したところ、日本に再入国できなくなった
- 在留特別許可を検討すべき時期を逃してしまった
在留資格の更新は、法務大臣が在留継続を適当と判断する場合に許可される制度です。
そのため、準備が遅れるほどリスク管理が難しくなります。
また、再入国許可を取らずに出国すると在留資格が消滅する可能性もあり、「一度帰国して落ち着こう」という判断が、結果として日本での生活を失う原因になることもあります。
弁護士が早期に関与することで、
- 刑事事件での主張や対応の整理
- 在留資格審査で重視される事情の整理
- 提出資料や説明内容の一貫性の確保
といった点を同時に整えることができます。
不安を抱えたまま手続が進むほど、説明や書類の内容に矛盾が生じやすくなります。
そのため、早い段階で全体像を整理することが、日本で生活を続けられる可能性を守るうえで重要になります。
永住者が背任事件に関与した場合の在留資格と退去強制リスク

刑事手続と入管手続は別に進む
外国籍の方が日本で犯罪に関与すると、二つの手続が問題となります。
一つは警察・検察官・裁判所が扱う「刑事手続」。
もう一つは出入国在留管理庁が扱う退去強制(強制送還)等の「入管手続」で、刑事とは別個の行政手続です。
重要なのは、刑事で「不起訴」になった、あるいは「無罪」だったとしても、入管側が別の観点(在留審査、再入国審査、素行評価など)で不利益判断をする余地が残る点です。
【手続の進行イメージ(概略)】
事件発生
├─ 刑事:警察の捜査 →(逮捕)→ 検察官への送致 →(勾留)→ 起訴(公判/略式)/不起訴 →判決・処分確定
│
└─ 入管:情報把握 → 退去強制事由の該当性検討 →(収容・仮放免)→ 審査/口頭審理/異議→ 退去強制 or 在留特別許可(例外的に在留を認める)
この「別レーン構造」を前提に、通常は先に進行する刑事手続において、後の入管対応も見据えた刑事弁護を受けることが重要です。
退去強制とは何か
退去強制(強制送還)は、「退去強制事由」に該当する外国人について、法定手続を経て日本からの退去を強制できる制度です。
退去強制事由の中には、日本に在留する外国籍の方が刑事罰を受けた場合に該当し得るものがあります。
背任(刑法247条)は財産犯罪の一類型で、法定刑は「5年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金」です。同じ性質の事件でも、入管上の結論は「どの在留資格か」と「どの刑事処分か」で大きく変わります。
処分別にみる影響
下表は、背任事件で典型的に起こり得る処分ごとに、永住者を中心に入管リスクを整理したものです。
退去強制(入管法24条)、上陸拒否(入管法5条)、永住許可の要件としての「素行善良」(入管法22条)を軸に整理しています。
| 刑事上の結論 | 永住者の在留資格 | 就労系・留学等(別表第一)の在留資格 | 共通の注意点(将来の在留手続) |
| 不起訴(嫌疑なし/嫌疑不十分/起訴猶予等) | 「有罪判決」を前提とする退去強制ルートには直結しない。 | 同左。ただし更新・変更の審査で素行・経緯が問われ得る。 | 「不起訴=完全に影響なし」とは言い切れない(後に影響することがあり得る)。 |
| 罰金刑 | 罰金では入管法24条4号リ(無期・1年超)に該当せず、判決確定だけでは退去強制事由にはならない。 | 罰金では24条4号リや24条4号の2(拘禁刑)に該当せず、判決確定だけでは退去強制事由にならないが、更新・変更で不利評価の可能性。 | 前科は重い検討要素になり得る。 |
| 執行猶予付き判決(拘禁刑だが刑務所には行かない) | 刑に執行猶予が付く場合、退去強制事由から除外される取扱いが明示されている(24条4号リ)。 | 別表第一の在留資格で、刑法の一定章(背任を含む章)の罪により拘禁刑の判決を言い渡され確定すると、刑期や執行猶予の有無を問わず退去強制事由となる(24条4号の2)。 | 罰金より重い前科として重い検討要素になり得る。 |
| 実刑(拘禁刑で服役) | 無期または1年を超える実刑は退去強制事由となる(24条4号リ)。 | 同様(加えて、別表第一の在留資格は永住者より退去強制事由となる判決の範囲が広い)。 | 退去強制事由に該当し、後は「在留特別許可(例外的に在留を認める)」の問題となる。 |
背任は刑法上「第三十七章(詐欺及び恐喝の罪)」に位置付けられています。
この章の罪は、永住者など“身分系”か、就労など“活動系”かで、同じ執行猶予付き判決だったとしても、退去強制事由にあたるか否かが大きく変わる点が重要ポイントです。
永住者が入管手続において被る不利益
有罪判決の確定により被る不利益についてですが、永住者は「在留期間の更新」が前提ではないため、一般の就労ビザなどのように“更新審査で落ちる”形では表に出にくい一方で、次の局面でリスクがあります。
第一に、退去強制手続に入るかどうか(入管法24条該当性)。
第二に、出国後に日本へ戻れるか(上陸拒否:同法5条)。
上陸拒否は「日本国又は日本国以外の国の法令に違反して、1年以上の拘禁刑又はこれに相当する刑に処せられたことのある者」(入管法5条1項4号)も対象にしており、この条文上は執行猶予の有無は関係ありません。
出国にあたって、在留期間満了前に日本に再入国するという前提で再入国の許可を得られた場合など、特例としてこの上陸拒否事由だけでは上陸を拒否されないこともありますが、再入国の許可を必ず取れるという保証はありませんし、他の事情も併せた総合考慮で上陸を拒否されることもあり得ます。
つまり、永住者が日本国内で退去強制に至らず在留を継続できたとしても、出国を伴う場面(仕事の海外出張、親族の葬儀など)で、再上陸がの可否が問題となる可能性があります。
退去強制を避ける・リスクを軽減するための実務ポイント
退去強制は「原則は退去、例外として在留特別許可」という構造で説明されることが多く、例外を狙うわけですから、在留特別許可を得るための積極要素を十分に主張立証するとともに、消極要素を過大に扱われないための主張立証もしっかりとすることが重要です。
背任事件では、刑事手続で重視されやすいのが「犯情(動機・経緯、行為の悪質性、被害結果)」と「被害の回復(示談等)」です。
こういった要素は、刑事手続だけでなく、在留特別許可の場面でも判断材料となり得ます。
また、在留特別許可の場面では「家族関係」「在留期間」「在留の必要性」「素行」「退去強制事由の内容」等が総合考慮され得ることが、ガイドラインで整理されています。
裁判例でも、在留特別許可は考慮要素の一つとして婚姻等が扱われるにとどまり、個別事情の積み上げが不可欠だと読み取れるものがあります。
退去強制後の再入国の壁
退去強制でいったん出国させられると、その後は「上陸拒否期間」との闘いになります。
たとえば退去強制歴がある場合、類型により「5年」「10年」といった上陸拒否期間が定められています。
また、出国命令(退去強制より軽い制度)で出国した場合は「1年」とされます。
ただし、これらの“年限”とは別に、「1年以上の拘禁刑に処せられたことがある」こと自体も上陸拒否事由になり得るため、単純に年数経過で簡単に日本に戻れると考えるのは危険です。
実際は、上陸拒否の特例(上陸拒否事由があっても、一定の場合に“その事由のみでは拒否しない”枠組み)が適用されることがありますが、この特例は法務大臣の裁量の範疇なので、上陸できるかの結果は読めないことも多いです。
早期に外国人事件に強い弁護士へ相談すべき理由
背任事件では、刑事手続においては、会社・取引先との関係、会計資料、職務権限の範囲など、争点が複雑化しやすいという難しさがあり、入管手続においては、刑事処分の結果と「どの在留資格か」によって退去強制事由にあたるかが変わります。
また、刑事弁護の“勝ち筋”(不起訴、略式罰金、執行猶予など)を狙う過程で、将来の在留・再入国に不利な事実認定や説明(供述調書、謝罪文の記載、弁償の形式など)を残してしまうと、後から修正が困難になることがあります。
とりわけ、就労などの別表第1の在留資格では「背任で執行猶予」でも退去強制に結び付く可能性があるため、早い段階から入管手続を見込んだ弁護方針が不可欠です。
永住者でも、国内で退去強制に至らなくても“出国後に戻れない”という形で生活基盤が揺らぐこともあり得ます。
「今後の在留については刑事が落ち着いたら考える」では遅い場面があります。
※本稿は2026年2月4日時点の公開資料に基づく一般的解説で、個別事案の結論を断定するものではありません。
永住者の外国人が飲酒運転で検挙されたときの在留への影響と見通し

【事例】
Aさんは日本で永住権を取得し、家族と同居しながら会社員として働いていました。
ある日、同僚との飲み会でビールや焼酎を飲んだ後、「家が近いから大丈夫」と考えて自家用車を運転しました。
帰宅途中、信号待ちでふらつくような動きを不審に思った警察官に呼び止められ、呼気検査を受けました。
その結果、呼気1リットル中0.25ミリグラムのアルコールが検出され、酒気帯び運転として現行犯逮捕されました。
Aさんは「永住だから国外退去にはならないはず」と考えていましたが、会社への連絡や家族への影響に加え、今後の在留への影響も心配になりました。
飲酒運転
飲酒運転は、道路交通法65条で禁止され、酒酔い運転は「5年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金」、酒気帯び運転は「3年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金」とされています。
酒気帯び運転は、呼気1リットル中0.15mg以上(0.25mg未満/以上で行政処分が分かれる)といった数値基準があり、酒酔い運転は数値に限らず「正常な運転ができないおそれがある状態」を指す整理が一般的です。
ただし、外国人の場合は「刑事の結末」だけでなく、在留に関する行政判断(入管手続)が別途進む可能性があるため、家族の生活設計に直結する不安が生じやすい領域です。
本記事では、在留資格「永住者」の方とご家族を主対象に、①刑事手続と入管手続の関係、②退去強制(強制送還)リスク、③不起訴・罰金・執行猶予・実刑ごとの見通し、④事件後の在留や再入国の可能性を、実務で使われる判断枠組みに沿って弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
刑事手続と入管手続は別の手続
外国人が犯罪に関わると、原則として「刑事手続(警察・検察・裁判所)」と「入管手続(在留管理・退去強制)」という二つの手続が並走します。
入管手続は、出入国在留管理庁が担う行政手続で、刑事裁判の有罪・無罪とは別に、入管法が定める「退去強制事由」に当たるかを審査する構造になっています。
そのため、たとえば不起訴になった場合でも、在留関連の審査(将来の永住申請、在留資格変更、再入国時の審査など)で「素行」や生活状況が見られる余地は残り得ます。
一方で、退去強制は法律上の要件(退去強制事由)が必要で、単に「検挙された」「逮捕された」というだけで直ちに退去強制が確定するわけではありません。
手続の流れ(概念図)
【刑事】
検問・事故 → 捜査 → 送致 → 起訴/不起訴 → 裁判 → 判決確定
【入管】
情報把握 → 違反調査 → 違反審査 → 口頭審理(請求があれば) → 異議申出(不服があれば) → 裁決 → 退去強制令書の執行/在留特別許可
両者の接点になりやすいのは、「刑の確定」や「在留特別許可を目指す局面」で、刑事側の対応(示談、反省、再犯防止)が入管側の評価材料にもなり得ます。
退去強制と退去強制令書の基本
退去強制(いわゆる強制送還)は、入管法が定める退去強制事由に該当すると認定された場合に、退去強制令書によって日本からの退去を強制する行政処分です。
飲酒運転(道路交通法違反)との関係で確認すべきポイントは、「退去強制事由(刑罰法令違反)のどれに当たり得るか」です。
永住者の飲酒運転で典型的に問題になるのは、入管法24条の「無期又は一年を超える拘禁刑」を受けた場合などの類型であり、さらに「刑の全部の執行猶予」や「一部執行猶予で実刑部分が1年以下」は除外されます。
ここでいう「拘禁刑」は、従来の「懲役・禁錮」に相当する刑の呼び方として用いられています。
つまり、永住者の飲酒運転は「罰金」や「執行猶予」で終わる限り、条文上は直ちに“自動的に退去強制”となる場面は一般には多くありませんが、実刑で1年超になると退去強制事由に該当してしまいます。
刑事処分別にみる永住者の在留リスク
下記の表は、飲酒運転(道路交通法違反)で想定される代表的な刑事処分と、永住者の在留への影響を「法定リスク」と「実務上の見通し」に分けて整理したものです。
| 刑事上の結論(例) | 退去強制の法定リスク(永住者) | 実務上の留意点(在留・再入国・将来申請) |
| 不起訴 (嫌疑不十分・起訴猶予など) |
直ちに退去強制事由になりにくい | 事故状況・前歴次第で、将来の審査(永住申請・帰化等)で「素行」説明が必要になることがある |
| 略式罰金(罰金刑) | 原則として、罰金のみで直ちに退去強制事由になりにくい | 「前科」が残るため、将来の審査で不利要素として扱われ得る (交通違反の累積も含め説明が重要) |
| 執行猶予付き拘禁刑 (全部執行猶予等) |
入管法24条の一般類型では除外される構造 | 永住者でも、生活態度・再犯防止の具体策が乏しいと、その後の行政判断で厳しく評価され得る |
| 実刑(拘禁刑)で1年超 | 退去強制事由に該当し得る | 退去強制手続に入る場合があり、在留特別許可を目指す局面になり得る |
また、退去強制事由に該当しない場合でも、更新・変更などの許可判断が厳しくなることがあるので、注意が必要です。
永住者だからこその注意点
永住者は在留期間が無期限で、一般的な就労ビザのような「在留期間更新」を定期的に行う仕組みではありません。
ただし、在留カードには有効期間があり、永住者(16歳以上)は「交付日から7年」とされています。
誤解されやすい点ではありますが、「永住=何があっても在留が絶対に守られる」という意味ではなく、一定の場合には退去強制の対象になり得ます。
近年の制度改正との関係では、「永住許可の取消し」の議論が注目されましたが、法務省・入管庁のQ&Aでは、取消しの対象となる刑罰法令違反は一定の重大な故意犯に限られ、道路交通法はその対象に含まれないこと、また罰金は要件(拘禁刑)を満たさないことが明示されています。
その一方で、同Q&Aは「永住者であっても、1年を超える実刑に処せられた場合は、罪名等にかかわらず退去強制事由に該当して退去強制される場合がある」とも述べており、重い実刑は別ルートでリスクが残ります。
再入国については、「みなし再入国許可」で出国した場合の有効期限は原則1年であり、期限切れによる搭乗拒否等のトラブルが起き得るため、在留カード・再入国の期限管理も重要です。
退去強制を避けるための現実的なポイント
飲酒運転が在留問題に発展するかどうかは、「刑事処分の重さ」と「入管が評価する事情(家族・生活・再犯防止)」の組合せで動くことが多いです。
特に永住者の場合、在留特別許可(日本に残るための例外的許可)の検討場面で、永住者であること自体が考慮対象として位置付けられています。
在留特別許可の判断では、在留希望理由、家族関係、素行、入国経緯、在留期間・法的地位、退去強制の理由となった事実、人道上の配慮の必要性、内外の諸情勢等を考慮する枠組みが示されています。したがって「早い段階からの弁護活動」が、入管対応にも直結しやすいです。
典型的には、被害がある事件なら謝罪と賠償(可能なら示談)、家族の生活実態(扶養・同居・子の養育)、職場での再発防止策、アルコール依存が疑われる場合の治療・通院、免許返納や運転禁止の誓約などが、資料として積み上がるほど評価材料になり得ます。
事件後の在留資格の再取得と再入国の見通し
万一、退去強制となった場合は「日本に再入国できない期間(上陸拒否期間)」が問題になります。
日本法令外国語訳DBの条文(入管法5条関連)では、退去強制で出国した場合に「5年」または「10年」、出国命令で出国した場合に「1年」といった整理が示されています。
ここに加えて、入管法5条には「日本国又は日本国以外の法令に違反して、一年以上の拘禁刑(等)に処せられたことのある者」は上陸できない、という類型もあり、こちらは期間限定とは書かれていません。
そのため、飲酒運転が重い判決(たとえば1年以上の拘禁刑)に至った場合は、退去強制の有無とは別に、再入国自体のハードルが上がり得る点は要注意です。
他方で、まだ日本にいる段階で退去強制手続に入った場合は、「在留特別許可」を目指す余地が残ることがあります。
在留特別許可は、例外的な制度である一方、退去強制事由がある人でも許可により退去強制されない場合があります。
外国人事件に強い弁護士へ早期相談する意義
外国人の飲酒運転は、「刑事事件としての最適解」と「在留を守るための最適解」が必ずしも一致しないことがあります。
入管手続には、口頭審理の請求期限が原則「通知を受けた日から3日以内」とされるなど、短い期限が存在し、初動の遅れが取り返しにくい場面があります。
また、在留特別許可で重視され得る事情(家族関係、生活実態、素行、再犯防止)を「刑事の段階から」整えておくほど、後段の入管判断に耐える記録になりやすいです。
逆に、反省や再発防止の説明が弱いまま刑事手続が終わると、退去強制事由に当たらない場合でも、その後の在留関連の許可判断で厳しい評価を受ける実例もあります。
「正しい順番で、必要な資料を、必要なタイミングで出す」ことが結果を左右し得る分野だからこそ、外国人事件の経験がある弁護士にできるだけ早く相談する価値があります。
強盗致傷に至る万引き抵抗事案と永住者の在留への影響

【想定事例】
仕事帰りの夜、30代の外国籍男性Aさんは、いつものように自宅近くのコンビニエンスストアに立ち寄りました。
Aさんは日本に長く暮らしており、「永住者」の在留資格を持っています。日本語での会話にも特に不自由はなく、日本での生活が日常になっていました。
その日、Aさんは飲み物や軽食を手に取りましたが、出来心で会計をせずにそのまま店を出てしまいます。金額にすれば千円程度の、いわゆる万引きです。
店の外に出たところで、異変に気付いた店員がAさんを呼び止めました。
「お客様、ちょっとお待ちください」
その瞬間、Aさんの頭をよぎったのは、「警察を呼ばれたらどうなるのだろう」「在留資格は大丈夫だろうか」という不安でした。
パニック状態の、Aさんはとっさに店員の手を振り払い、体を押して逃げようとしました。
すると、押された店員はバランスを崩して転倒し、腕や足を打ってけがをしてしまいました。
Aさんはそのまま現場を離れましたが、後日、防犯カメラの映像などから身元が判明し、警察の捜査を受けることになりました。
このような事件が起きると、本人だけでなく、ご家族も「このまま日本で生活を続けられるのか」という強い不安を抱きやすくなります。
しかし、事件後の初動対応を誤らず、刑事手続と入管手続の双方を見据えた動きを取ることで、処分内容や在留の結論が変わる余地は残されています。
なお、本記事は、あくまで一般的な判断の枠組みを整理したものであり、実際の結論は個別の事実関係や在留歴などによって変わり得ます。
刑事手続と入管手続は別の線路で進みます
外国人が犯罪で検挙された場合、退去強制事由に該当すると、刑事手続とは別に、行政手続として退去強制手続が進む可能性があります。
そのため、刑事事件で「不起訴」や「無罪」となった場合であっても、入管の側では、在留の可否(次回の更新・在留資格の変更・在留特別許可など)が別途問題となることがあります。
また、実務上は、刑事手続では釈放となった場合でも、その後、直ちに入管収容(収容令書・退去強制令書)へ切り替わるケースがあります。
「刑事で外に出られた=自宅に帰れる」とは限らない点には注意が必要です。
【刑事】逮捕 → 勾留 → 起訴/不起訴 → 起訴の場合:裁判 → 判決
⇩
【入管】違反調査<収容/監理> → 審査 → 口頭審理 → 違反認定/不認定 →
違反認定の場合:退去強制(送還) または 在留特別許可(在留継続)
退去強制の基本構造と刑罰の見方
万引き(窃盗)の直後に、「逮捕を免れる目的」などで暴行や脅迫を加えた場合、その行為は「事後強盗」(刑法238、236条)として評価され得ます。
さらに、その暴行によって店員が負傷した場合には、「強盗致傷」となり、無期または6年以上の拘禁刑が法定されています(刑法240条)。
一方、退去強制(いわゆる強制送還)は、一定の外国人を法律に基づき国外へ退去させる行政措置です。
退去強制事由は入管法24条に列挙されており、類型ごとに要件が異なります。全体像は、概ね次のように整理できます。
退去強制事由(入管法24条)
├ 入管法違反型(不法入国・不法残留など)
├ 刑罰法令違反型(一定の刑に処せられた場合)
└ その他(売春関与、難民認定の取り消しなど)
→ 手続 → 退去強制令書 / 在留特別許可
刑罰法令違反に関する退去強制は、次の二つに分けると分かりやすいです。
第一に、在留資格を問わず適用され得る「無期または1年を超える拘禁刑」に関する類型です。実刑の場合ですので、執行猶予の場合は問題ありません。もっとも、薬物事犯の場合などは、例外的に、在留資格に関わらず「有罪」となった時点で(執行猶予だとしても)退去強制の対象となります。
第二に、一定の在留資格を持つ人(永住者は対象外です)について、窃盗や強盗などの一定の犯罪類型で「拘禁刑に処せられたもの」を退去強制事由とする類型です。これは、執行猶予の場合でも対象となってしまいます。
また、退去強制等で日本から出国した外国人で、「1年以上の拘禁刑に処せられたことのある者」は、原則として日本への上陸を拒否されることになります。
そのため、仮に国外退去となった後の再入国については、別のハードルが生じることになります。
処分別にみる在留への影響
結論としては、「刑事処分が軽いほど在留リスクは下がる傾向にあるものの、ゼロにはならない」というのが実情です。
在留期間更新や在留資格変更は、「適当と認めるに足りる相当の理由」があるかどうかを、事案や事情から総合的に判断するとされており、この中で刑事トラブルは消極的要素となりやすいのが実情です。
| 刑事上の結論 | 退去強制リスク | 更新・変更 | 永住許可申請 | 再入国・再上陸 |
| 不起訴 | 低 | 不許可要因になり得る | 素行要件で不利 | 可能 |
| 略式罰金 | 低~中 | 不許可要因になり得る | 素行要件で強く不利 | 可能 |
| 執行猶予付き拘禁刑 | 中~高 | 厳しい
就労許可は特に |
原則かなり厳しい | 上陸拒否が問題化 |
| 実刑(特に1年超) | ほぼ確実 | 極めて厳しい | ほぼ見込みにくい | 収監+強制送還
+上陸拒否 |
在留資格タイプ別の注意点
同じ刑事処分であっても、在留資格のタイプによって、退去強制に結び付く条文が異なります。
大きく分けると、身分・地位に基づく別表第二(永住者、日本人の配偶者等、定住者など)と、活動に基づく別表第一(就労、留学など)で、リスクの現れ方が異なります。
身分・地位型の場合、日本での生活実体(婚姻関係、子の監護、居住の定着性など)が積極的要素として評価されやすい傾向があります。
もっとも、本件想定のように強い暴力や負傷結果を伴う事件では、消極的要素として重く評価され得ます。
一方、活動型の場合は、「拘禁刑に処せられたもの」という文言で退去強制に直結し得る点が特徴です。
なお、「特別永住者」については別の法制度が適用されるため、ここでいう「永住者」とは区別して考える必要があります。
想定事例は実際にどのような流れで進むのか
ここまで読んで、「実際には、事件後に何が起きるのか」「どの時点で在留が問題になるのか」と疑問に思われた方も多いと思います。
そこで、先ほどのAさんの想定事例を前提に、事件発生後の一般的な流れを整理してみます。
① 事件発生直後:警察対応と身柄の扱い
Aさんのケースでは、店員がけがをしているため、単なる万引きではなく、強盗致傷の疑いで捜査が進む可能性があります。
その場合、防犯カメラの映像、被害届、被害者の診断書などをもとに、後日、警察から事情聴取の連絡が来たり、状況次第では逮捕されることもあります。
逮捕された場合、最初の数日は警察署で取り調べを受け、その後、検察官に送致されます。
ここで勾留が決まると、最大で20日程度、身体拘束が続くことになります。
② 刑事手続の判断:不起訴か、起訴か
捜査の結果を踏まえて、検察官が起訴するかを判断します。
この判断においては、
・被害の程度
・被害者との示談の有無
・本人の反省状況
・前科前歴の有無
などが総合的に考慮されます。
仮に不起訴となれば、刑事裁判は開かれず、前科にもなりません。
一方、起訴された場合には、裁判が行われ、有罪か無罪か、どのような刑罰が科されるかが決まります。
③ 刑事とは別に動き出す「入管」の手続
刑事手続とは別に、入管手続が動き出す可能性があります。
実務上は、例えば、保釈など刑事事件で釈放された直後に、入管による収容手続へ切り替わるケースも珍しくありません。
この段階で問題となるのが、「退去強制事由に該当するかどうか」「在留特別許可が認められる余地があるか」といった点です。
ここで重要なのは、Aさんが「永住者」であるという点です。
不起訴となった場合
不起訴の場合、刑罰に処せられていないため、刑罰を理由とする退去強制事由には該当しません。
このため、少なくとも刑事的には、退去強制の対象となる可能性はありません。
起訴されたが無罪となった場合
無罪判決が確定した場合も、刑罰に処せられていない以上、退去強制事由には該当しません。
罰金刑となった場合
罰金刑の場合も、「拘禁刑に処せられた」とはいえないため、永住者については、刑罰を理由とする退去強制事由には該当しません。
執行猶予付きの拘禁刑となった場合
執行猶予付き判決の場合、「拘禁刑に処せられた」とはいえるものの、永住者については、執行猶予であれば直ちに退去強制事由に該当するわけではありません。
実刑となった場合(量刑が1年以下)
実刑判決を受けた場合、在留への影響は一気に大きくなります。
もっとも、拘禁刑が1年以下の場合には、刑罰を理由とする退去強制事由に直ちに該当しないケースもあります。例えば、本件が「強盗致傷」ではなく「窃盗と傷害」として起訴された場合、Aさんは1年以下の拘禁刑となる可能性もあります。
本事案では、Aさんは永住者であるため、1年以下の拘禁刑判決であれば、実刑となっても、退去強制事由には該当しないことになります。
※もっとも、暴力性が高く、被害結果も重大な事件の場合、日本の公安を害する行為であると評価され、別途在留の可否が問題とされる可能性は残ります。
実刑となった場合(量刑が1年を超える)
拘禁刑が1年を超える実刑判決となった場合、永住者であっても、刑罰を理由とする退去強制事由に該当します。
この場合、収監後に退去強制手続が進み、刑期終了後に、日本から強制送還されるリスクが現実化します。
また、送還後の再入国についても、「1年以上の拘禁刑に処せられたこと」が重く影響し、再び日本に戻ることは容易ではありません。
④ 在留の判断に影響するポイント
Aさんが本件で1年以上の拘禁刑の実刑判決を受け、退去強制事由に該当することとなってしまった場合、次に在留特別許可の申請を検討します。在留特別許可とは、強制送還となってしまう人が、今回は特別に強制送還とはせず、日本に在留できるよう特別な許可を国に求めることができる制度です。
在留特別許可の判断では、刑事処分の結果だけでなく、
・日本での居住年数
・家族関係(配偶者や子の有無)
・仕事や生活の安定性
・事件後の対応(被害者への謝罪、再犯防止策)
といった事情も考慮されます。
そのため、事件直後の対応が、その後の在留判断に影響することになります。
退去強制を避ける・軽減するための実務ポイント
在留特別許可のガイドラインでは、積極要素と消極要素を比較衡量し、単一の要素で機械的に結論を出さないこととされています。
もっとも、在留特別許可制度は、退去強制の例外的・恩恵的措置であり、その判断は国の広い裁量に委ねられる枠組みとなっています。
在留特別許可について、評価されやすい事情としては、
①被害者対応(謝罪、治療費等の負担、示談の成立など)
②再犯防止策(就労状況、家族の支援体制など)
③生活実体(日本での居住年数、扶養家族、地域との結び付き)
といった点が挙げられます。
本件のように「盗み+暴力+負傷」が絡む事案では、示談の有無が刑事処分だけでなく、入管における評価にも影響し得ます。
そのため、初動段階で被害者にどう対応するかには、大きな意味があります。
事件後の再取得と再入国の現実
退去強制によって送還された場合、日本に再び戻るには、「上陸拒否期間」と「上陸拒否事由」を区別して理解する必要があります。
一般的には、退去強制(初回)で5年、再度の場合で10年、出国命令の場合で1年と整理されています。
ただし、入管法5条の上陸拒否事由として「1年以上の拘禁刑に処せられたことのある者」に該当すると、上陸拒否の期限は無期限となります。
制度上は上陸特別許可などの例外も用意されていますが、在留特別許可と同様に、あくまで個別事情の総合判断であり、楽観的な見通しはできません。
外国人事件に強い弁護士へ早期相談すべき理由
この類型の事件は、窃盗から事後強盗、さらに強盗致傷へと罪名が一気に重くなり得る点で、刑事上の見立てが在留の見通しを直撃します。
加えて、退去強制手続が刑事手続とは別の線で進むため、刑事の結論だけを見ても、在留の最終的な結論を読み切ることは困難です。
特に、在留特別許可は行政裁量が広く、自分だけでの対応には限界があります。
だからこそ、事件の早い段階で、「刑事で何を目指すのか」と「入管で何を積み上げるのか」を同時に設計することが重要になります。
現実的で合理的な選択肢を広げるためにも、弁護士への早期の相談の価値は大きいといえるでしょう。
永住者の外国人が日本で詐欺事件を起こした場合の在留資格と退去強制のリスク

日本で生活する外国人が刑事事件を起こしてしまった場合、刑事手続きと入管手続きが別々に進むことを理解することが大切です。刑事事件が不起訴や執行猶予となっても、入管法に基づく審査は別に行われます。
このコラムでは、永住者の方が詐欺罪に問われた場合を例に、在留資格への影響や強制送還の危険性、再び日本に滞在するためのポイントを分かりやすく解説します。
1.外国人が刑事事件を起こした場合に問題になる2つの手続
刑法は「日本国内で罪を犯したすべての者」に適用されると定め、外国人も日本人と同じ刑事手続きに服します。
しかし外国人の場合、刑事手続きとは別に入管法上の手続きが進む点が特徴です。退去強制は行政処分であり、不起訴や執行猶予が付いた場合でも在留資格の更新が難しくなることがあります。このため、事件の結果が入管手続きにどう影響するかを早い段階で確認することが重要です
2.強制送還(退去強制)とは何か
退去強制とは、法務大臣が外国人の在留を認めないと判断したときに日本国外へ退去させる行政手続きです。
入管法24条は、無期または一年を超える拘禁刑の実刑に処せられた者をなど退去強制事由と規定し、この条文では執行猶予を受けた者が除外されています。
しかし、入管法別表第一の在留資格に該当する者が窃盗罪や詐欺罪など一定の罪で有罪となった場合、刑の期間や執行猶予の有無にかかわらず退去強制の対象とされます。一方、退去強制後の再入国は禁止期間が設けられており、初回は5年、再度の退去や逃亡者は10年、出国命令で出国した場合は1年と定められています。
3.刑事処分別に見る在留資格への影響
刑事処分の内容によって在留資格への影響は大きく異なります。
不起訴処分になれば在留資格は直ちに失われないものが多いですが、次回の更新審査では嫌疑をかけられた事実が考慮され、審査が厳しくなることがあります。罰金刑はそれだけで退去強制の対象とされているわけではありませんが、詐欺罪には罰金刑が規定されておらず、法定刑は十年以下の拘禁刑のみです。執行猶予付き判決や1年以下の実刑判決の場合、永住者・日本人の配偶者等・永住者の配偶者等・定住者の在留資格では退去強制事由に該当しませんが、就労系や留学などの在留資格では多くの犯罪で退去強制事由となります。一方、1年を超える実刑判決を受けると、すべての在留資格で退去強制事由となります。
別表第一の在留資格者は執行猶予判決でも退去強制となる可能性が高いことを理解しておきましょう。
4.在留資格の種類ごとの注意点
日本の在留資格は、身分や地位に基づく「身分系」と就労や活動内容に基づく「就労系」などに分けられます。
身分系には永住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等、定住者が含まれ、職種に制限がないため比較的安定しています。これらの資格を持つ場合は、1年以下の実刑や執行猶予付き判決では退去強制事由に該当せず、仮に有罪の判決を受けた場合であっても在留資格の更新が認められる余地があります。
一方、就労系の資格(技術・人文知識・国際業務、技能実習など)や留学・家族滞在などは活動内容を理由として在留を許可されているため、詐欺罪など別表第一で列挙された犯罪で有罪判決を受けると、刑の長さや執行猶予の有無にかかわらず退去強制となり得ます。
自分の在留資格がどの分類に当たるかを確認し、刑事処分の見通しと合わせて対応することが重要です。
5.退去強制を回避・軽減するために重要なポイント
退去強制を避けるためには、不起訴処分を得ることや刑を軽減すること、勾留期間内に在留更新手続きを済ませることが効果的です。
特に外国人事件では住居不定や逃亡の懸念から勾留が長期化しやすいため、早期に弁護士が介入して被害者との示談を成立させることが有効とされています。示談交渉では被害者へ謝罪文を準備し、必要に応じて母国語で用意した訳文を添えるなど配慮が必要です。詐欺罪のような財産犯では被害弁償の程度が処分に大きく影響するため、家族や友人の支援を得ながら早めに示談金を準備することが望まれます。
6.刑事事件後に在留資格は再取得できるのか
退去強制処分を受けると、原則として5年間は日本への再入国が認められず、再度の退去や逃亡歴がある場合は10年間に延長されます。出国命令制度を利用した場合は再入国禁止期間が1年に短縮されますが、犯罪歴や退去強制事由が他にある場合には適用されません。また、言い渡された刑期が1年以下の場合の再入国禁止期間は5年ですが、1年を超える場合や薬物事件では再入国禁止が無期限となる例もあります。
退去強制の対象者でも、法務大臣の裁量で在留を認める「在留特別許可」があります。許可の判断では、家族関係や生活基盤、犯罪歴、被害弁償の有無などが総合的に考慮されます。
家族が日本に住んでいる場合や日本で生活を続ける必要性が高い場合には、専門家と協力して在留特別許可や上陸拒否期間短縮の申請を検討することが重要です。
7.外国人事件に強い弁護士へ早期に相談すべき理由(事務所紹介)
刑事事件と入管手続きは別々の制度ですが、結果は相互に影響します。早期に刑事事件に強い弁護士に相談し、処分の軽減を目指すことが退去強制を避ける最善の方法です。弁護士は捜査段階から証拠収集や示談交渉を行い、勾留中でも在留更新の手続きを進めるなど入管対応を視野に入れた活動を行います。
また、在留特別許可や再入国申請には専門的な知識と経験が必要であり、手続きに不備があると取り返しのつかない結果を招きかねません。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件と入管手続きに精通した弁護士がそろっており、無料相談を行っています。永住者の方やそのご家族が不安を抱えたときは、早めに専門家へ相談し、適切な対応で将来の在留への影響を最小限に抑えましょう。
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