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外国人と風俗店,入管法と風俗営業法違反

2025-05-09

外国人を雇って無許可で風俗店を営業したらどうなる?―経営者の刑事責任と外国人スタッフの退去リスク

外国人を雇って風俗店を営業する場合、法律上どんなリスクがあるのでしょうか。
特に、無許可で営業した場合には、経営者は風俗営業法違反で重い刑事責任を問われ、さらに外国人従業員にも退去強制(強制送還)の可能性が生じます。
実際に、外国人スタッフを雇った無許可営業店が摘発され経営者が逮捕された事例も報告されています。
本記事では、具体的な事例や関連法令を交えながら、外国人を雇用した無許可営業のリスクについて、経営者の目線で分かりやすく解説します。

1. 無許可営業と風俗営業法の基本知識

風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(いわゆる風営法)は、キャバクラやホストクラブから性感マッサージ店まで、性風俗に関わる営業を幅広く規制する法律です。
風営法では無許可営業が禁止されており、風俗店を営業するには店舗ごとに都道府県公安委員会の許可を受けなければなりません (風営法違反で逮捕される可能性はある?罪状や刑罰を解説 | 刑事事件相談弁護士ほっとライン)。
許可を得ずに営業すれば法律違反となり、後述する通り厳しい刑事罰の対象です。
なお、たとえ「マッサージ店」「メンズエステ」などと称していても、実質的に性的サービスを提供していれば風営法上の風俗営業に該当します。
外国人を雇用する場合であっても、許可が不要になることは当然ながらありません。

2. 事例(外国人を雇って無許可で営業していたチャイエスに警察が介入し逮捕された事例)

外国人を雇って無許可営業をしていた違法風俗店が摘発された事例があります。
例えば2020年11月、東京・日暮里の中国エステ店(いわゆる「チャイエス」)に警察の強制捜査が入り、40代の日本人経営者と30代中国人店長の女が風営法違反容疑で逮捕されました。
同時に、その店で働いていた24~35歳のベトナム人女性従業員3名も現場で身柄を拘束され、不法就労や売春に関与した疑いで取り調べを受けています 。
この店では約30人もの外国人女性を抱え、月に1億円近い売上を上げていたと報じられており、無許可営業が大規模に行われていた典型例と言えるでしょう。

3. 無許可営業に対する刑事罰の内容

無許可で風俗店を営業すれば、経営者には厳しい刑事罰が科せられます。
風営法の罰則では、無許可営業は「2年以下の懲役または200万円以下の罰金」が規定されています (風営法違反で逮捕される可能性はある?罪状や刑罰を解説 | 刑事事件相談弁護士ほっとライン)。
実際の処分では、初犯なら執行猶予付き判決や罰金刑にとどまる場合もありますが、それでも前科がつき高額の罰金が併科されるリスクがあります。

また、外国人を本来の在留資格で認められている資格外で働かせていた場合には、入管法違反(不法就労助長罪)にも問われ、こちらも最大で3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金という重い罰則が科せられます。

不法就労助長罪の罰則は、上限が懲役5年・罰金500万円に引き上げられる予定です。
違反に対する姿勢は一段と厳しくなるでしょう。
さらに、店で実際に売春行為(本番行為)を行わせていた場合は、売春防止法違反にも該当し、追加の処罰対象となり得ます。

4. 外国人従業員の退去強制処分の可能性

無許可営業で働いていた外国人従業員には、強制退去(強制送還)の可能性が高まります。
警察による摘発時に外国人スタッフも逮捕された場合、入管法違反(資格外活動や不法滞在)で処罰を受けることになり、その後、入国管理局による退去強制手続きに移行します。
入管法24条には、資格外活動を専ら行っていた者や、不法就労罪で有罪となった者は退去強制の対象になると定められています (「留学」ビザで不法就労をしてしまった場合,どのような処罰を受けるのか | 入管,在留問題に強い弁護士事務所)。
基本的に、不法就労が発覚した外国人は在留資格が取り消され、日本からの退去を命じられます。
強制送還された場合、通常は5年間は日本に再入国できなくなり(場合によっては10年や無期限の場合もあります)、日本での生活基盤や仕事を失う重大な結果となります。

5. 弁護士ができる対応と弁護活動

無許可営業で逮捕・起訴された場合、早期に刑事弁護に精通した弁護士に依頼することが重要です。
弁護士は取調べ段階から経営者の権利を守り、必要に応じて警察・検察と交渉します。
風営法違反事件では、弁護士が違法性を認識していた程度や反省状況など有利な情状を主張し、不起訴処分や罰金刑にとどめるよう働きかけることができます。
外国人従業員についても、弁護士が入管当局に対し退去強制処分を避けられないか主張したり、在留特別許可の申請をサポートしたりすることが考えられます (「留学」ビザで不法就労をしてしまった場合,どのような処罰を受けるのか | 入管,在留問題に強い弁護士事務所)。
例えば、不法就労期間が短かったり、日本に家族がいるなどの事情があれば、情状を酌んで極力寛大な処分(起訴猶予や執行猶予付き判決)となるよう弁護活動を行います。
こうした弁護により、外国人本人が退去強制を免れる可能性がわずかながら生まれる場合もあります。

6. 経営者が取るべき予防策

最も重要なのは、風俗営業を営む際には必ず事前に公安委員会から営業許可を取得することです。
許可なしに営業するリスクは非常に高く、一度摘発されれば経営者生命を絶たれかねません。
また、外国人を雇用する場合は在留カードを確認するなど、適法に就労できる人材か厳格にチェックする必要があります。
留学生や技能実習生など、資格上風俗業で働けない外国人を決して雇わないよう徹底しましょう。
仮に本人から「大丈夫」と言われても、確認を怠れば経営者が不法就労助長罪に問われる可能性があります 。
不明な点があれば行政機関や専門家に相談し、法律に沿った営業形態・採用手続きを心掛けることが、経営者自身を守る最大の予防策です。

7. 事務所紹介(弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所)

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件を専門に取り扱う法律事務所です。
風営法違反や入管法違反を含む様々な刑事事件で豊富な実績があります。
外国人の案件にも精通した弁護士も在籍しており、言葉の壁がある場合でも安心です。
初回無料相談をご利用いただけますので、無許可営業でお困りの際や、摘発の不安がある場合にはお気軽にご相談ください。
逮捕前でも後でも、24時間365日体制でご相談を受け付けており、全国どこからでも迅速に対応いたします。
風俗店経営に関するお悩みや不安を抱えた方に寄り添い、最善の解決策をご提案できるよう尽力いたします。

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在留資格「定住者」の外国人が風適法(風営法)に違反してしまった場合

2025-05-06

【事例】
Aさんは,東京都内で,個室マッサージ店(いわゆるチャイエス)を営む経営者で,店舗型性風俗特殊営業許可を受けないで性的サービスの提供を行う甲という店舗でBさん(定住者)を働かせています。甲と言う店舗はAさんが3年前に立ち上げた店舗です。
ある日,利用客からの通報により,警察がAさんの店舗に来て,Aさんを逮捕しました。
なお,Aさんに前科や前歴はありません。

以上の事例を前提として,①Aさんが受ける刑事罰はどのようなものになるのか,②AさんとBさんは退去強制処分になるのかについて解説していきます。

(1)店舗型性風俗特殊営業の無許可営業の刑事罰

風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(以下,「風適法」と言います。)3条1項によれば,風俗店の営業を行うためには,都道府県公安委員会の許可を得なければならないとされています。
これに反して,営業許可を得ずに店舗を営業させた場合,風適法49条1号に基づき,2年以下の懲役若しくは200万円以下の罰金,又はその併科が予定されています。
今回のAさんの経営するいわゆるチャイエスのような店舗型性風俗特殊営業については,風適法2条6項2号の「個室を設け,当該個室において異性の客の性的好奇心に応じてその客に接触する役務を提供する営業」に該当するので,都道府県公安委員会の許可を得なければならないとされています。にもかかわらず,Aさんは営業許可を得ていないため,風適法の無許可営業罪として処罰されることになります。
風俗店の無許可営業の量刑は,①無許可営業の営業内容,②無許可営業の期間,③事後的に許可を得て営業するようにしているかなどによって決まります。
①の営業の内容が,キャバクラなどの客を遊興又は飲食させる内容とは異なり,性的サービスの提供に関わるものである場合は,重く見られます。
②の無許可営業の期間が長ければ重く見られます。
③の営業許可を取ることができるのであれば,有利な事情として見られます。

そのため,大まかな量刑傾向としては,執行猶予付きの有罪判決に罰金も併科されるのが多いのですが,暴力団が関わっている,犯罪収益の隠匿がある,未成年者を働かせているなどの重く見られる事情があれば,実刑になることもあります。
今回のAさんの場合,無許可営業の内容は店舗型性風俗特殊営業に関するものであり,3年前から無許可営業だったとのこと,後述するような事情により営業許可を得ることが難しいため,執行猶予付きの有罪判決に罰金刑が併科される可能性が高いです。

風営法違反事件についての詳しい解説はこちら

風営法・風適法違反

(2)退去強制処分になるか

入管法24条4号ヌによれば,「売春又はその周旋,勧誘,その場所の提供その他売春に直接関与がある業務に従事する者」は退去強制処分の対象になることが規定されています。
今回のAさんについては,いわゆるチャイエス店で性的サービスの提供を行っていたとなると,有罪判決を受けていたかどうかに関わらず,退去強制処分の対象となります。
また,Bさんについても,チャイエス店で勤務していたため,刑事罰を受けなくとも,入管法24条4号ヌに該当するとして,退去強制処分を受ける可能性があります。
入管法24条4号ヌの解釈としては,刑事罰を受けなくとも入管法24条4号ヌに該当すると判断される場合でも退去強制処分の対象となると考えられているためです。

(3)弁護士として出来ること

このような刑事処分と退去強制処分が予定されていることから,弁護士としては,①Aさんにとって有利な事情を裁判所に提供しなるだけ刑事罰を軽くするようにすること,②AさんやBさんの退去強制処分を争うことができます。
①については,Aさんの営業が比較的短期間であることや暴力団とは関係が無いことや,未成年者を働かせていないことなどを主張して,実刑を回避するよう対応することができます。
②については,AさんやBさんが日本に残るべき事情を探して,有利な事情を基に出入国管理局に対して在留特別許可を申請したり,不許可となった場合には退去強制処分の取り消しを求める訴訟を提起したりします。
このように,風適法違反の刑事罰,退去強制処分に対しては,弁護士をつけて対応することができますので,迅速に弁護士に相談することをお勧めします。

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不法入国者に対する処分と弁護士

2025-05-02

不法入国と入管法上の処罰・対応

不法入国とは、戦争や貧困から逃れるため、あるいは家族との暮らしを求めるためなど、様々な理由で人々が正規の手続きを経ずに日本に入国してしまう場合に生じる問題です。
本来、外国人が日本に入国するには有効なパスポートと査証(ビザ)が必要であり、それらを持たずに入国することは法律で禁じられています。
不法入国が発覚した場合、刑事上の処罰だけでなく、本国への強制送還(退去強制)といった厳しい措置がとられることがあります。
しかし、不法入国に至る背景には個人の切実な事情や人道上の理由が含まれることもあり、そのような場合には適切な法律上の対応が求められます。
本記事では、不法入国の定義や具体的事例、関連する法律の規定や手続、そしてその際に弁護士が果たす役割について、専門的な内容を分かりやすく解説します。

1. 不法入国とは何か(定義や典型例)

外国人が正規の手続きを踏まずに日本に入国する行為を一般に「不法入国」といいます。
入管法(出入国管理及び難民認定法)では、有効な旅券(パスポート)や査証(ビザ)を持たない者は日本に入国してはならないと定められています。
典型例として、パスポートやビザを所持せずに入国したり、他人名義のパスポートや偽造書類を使用して入国審査を通過したりするケースが挙げられます。
また、港や空港で入国審査を受けずに密かに上陸するいわゆる「密入国」も不法入国の一種です。
なお、正規に入国した後に在留期間を超えて滞在する「不法残留(オーバーステイ)」とは区別される概念です。
これらはいずれも入管法に違反する行為であり、重大な法的問題を引き起こします。

2. 事例(参考記事のAさんの事例を基に)

Aさんは15年前にブローカーの手配で興行ビザを取得し、来日した外国人です。
当時未成年だったAさんは、自分ではなく21歳のいとこの名義でパスポートを用意され、それを使って日本に入国しました。
Aさんはその後日本で働き始め、常連客だった日本人男性Bさんと知り合い半年後に結婚しました。
結婚して10年が経ち、夫Bさんとの間に2人の子(日本国籍)にも恵まれ、Aさんは日本で幸せな毎日を送っています。
しかしAさんは自分の本名と在留カード上の名前が違うという秘密を抱えていました。
いとこ本人から「自分の名前を返してほしい、でなければ入管に報告する」と迫られ、Aさんはこのままでは自分が他人名義で不法入国していた事実が発覚し、在留資格を失って強制送還されてしまうのではないかと不安に感じています。

3. 入管法上の位置づけと刑事罰

不法入国は入管法上の犯罪であり、発覚すれば刑事手続の対象となります。
入管法第70条第1項第1号により、不法入国をした者には3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金(またはその併科)という罰則が規定されています。
特に不法入国については公訴時効(刑事訴追の時効)が適用されず、長期間経過後に発覚した場合でも起訴される可能性があります。
量刑の傾向として、初犯で情状に酌むべき事情がある場合には執行猶予付きの判決となる例も見られますが、悪質な場合には実刑(服役)が科されることもあります。
いずれにせよ有罪となれば前科が付き、後述の退去強制の対象ともなるため、本人にとって極めて深刻な影響を及ぼします。

4. 退去強制処分とその例外

入管法第24条には退去強制(強制送還)となる事由が定められており、不法入国はその典型例として挙げられています。
そのため、不法入国が判明した外国人は、刑事処分の有無にかかわらず原則として日本から退去させられることになります。
退去強制となった場合、再入国禁止(一定期間または永続的な上陸拒否)の措置がとられます。もっとも、例外的に本人に特別な事情(例:日本に配偶者や子がおり日本で生活の本拠となっている場合)がある場合には、法務大臣の裁量で在留特別許可が与えられ、強制送還が免除される可能性があります。
また、難民申請を行った場合には審査が完了するまで送還は一時的に停止されるのが原則で、難民として保護すべき事情があれば送還は見合わされます。
ただし2023年の入管法改正により、3回目以降の難民申請中は送還停止の効力が認められない制度となりました。

5. 難民申請の制度と実際

難民認定申請は、迫害から逃れてきた外国人が難民として保護を求めるための制度です。
入管庁に難民認定の申請書を提出し、面接調査などの審査を経て認定の可否が判断されます。
申請中は前述のとおり強制送還が停止されますが、その審査基準は非常に厳格です。
日本では難民と認定されるケースが極めて少なく、認定率は国際的に見ても低水準となっています。
例えば2022年には難民と認定された人は過去最多でも約200人にとどまり、一方で1万人以上が難民不認定となりました。
難民と認められなかった場合、異議申立て(審査請求)や裁判で争うことも可能ですが、それでも認定に至る例は多くありません。
多くの申請者は結果的に在留を許可されないのが現状です。

6. 弁護士にできる対応とサポート

不法入国のケースでは、早期に弁護士の支援を受けることが不可欠です。
弁護士は刑事弁護人として依頼者の事情を丁寧に主張・立証し、処罰の軽減や回避を図ります。
例えば依頼者が難民に該当する場合には証拠を揃えて難民であることを主張し、入管法70条の2に基づき刑事罰の免除を求めることも可能です。
難民に該当しない場合でも、不法入国に至ったやむを得ない事情や日本での生活実態(家族関係や長期在住など)を訴え、執行猶予付き判決など寛大な処分を得られるよう尽力します。
さらに退去強制手続では、口頭審理や異議申立ての場面で日本での生活基盤や家族の存在、人権上の懸念など有利な事情を示し、在留特別許可が下りるよう働きかけます。
このように弁護士は法律の専門知識を駆使して、処罰と退去の両面で依頼者を守るために全力を尽くします。

7. 事務所紹介(弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所)

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件を専門に扱う法律事務所であり、不法入国など入管法が関係する事案の豊富な実績があります。
ビザ・在留手続に詳しい経験豊富な弁護士と行政書士が連携し、違法行為に対する刑事弁護から在留許可の申請まで一貫してサポートいたします。
英語・中国語・韓国語など外国語での対応も可能 (ビザ・在留資格の取得・更新は弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にお任せください)で、外国人の依頼者にも安心してご利用いただけます。
初回相談は無料で、365日24時間の緊急相談にも対応しており、依頼者の不安に迅速に寄り添う体制を整えています。
不法入国や入管法違反でお困りの際は、当事務所の専門チームにぜひご相談ください

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不法入国外国人は入管法上どう扱われるのか

2025-04-29

【事例】
Aさんは,甲国と乙国が戦争になってしまったことから,甲国を出発する豪華客船の貨物室に侵入し,日本に不法に入国した乙国民です。このような経緯で日本に入国したことから,日本に入国するための正当な旅券も無く,入国審査官からの上陸許可の証印などもありません。
Aさんは,このような経緯で,日本に入国していたため,何とか仕事を探そうとして,就職活動を行う際,身分証明書を示せなかったことから,警察官に通報され,不法入国外国人であることが判明しました。
このように不法入国した人が日本法で,刑事罰や退去強制処分を受けるかについて解説していきます。

(1)不法入国を行った場合の刑事罰について

入管法3条には,日本に入国できない外国人となるための要件が規定されています。それによれば,「有効な旅券を所持しない者」(入管法3条1項1号)又は,「入国審査官から上陸許可の証印…(中略)…を受けないで本邦に上陸する目的を有する者」(入管法3条1項2号)と規定されています。
そのため,豪華客船の貨物室にパスポートを持たずに侵入し,日本で降りるというような行為は,「有効な旅券を所持しない」(入管法3条1項1号)として,入管法3条に違反しているため,入管法70条1項1号の不法入国罪に該当するとして処罰されます。
入管法70条1項1号によれば,3年以下の懲役若しくは禁錮若しくは300万円以下の罰金又は,懲役若しくは禁錮及び罰金を併科することが予定されています。
この不法入国罪の量刑傾向としては,懲役1年6月執行猶予3年程度となる例が多いです。
ただし,不法入国期間が長期間にわたっている場合や,集団密航の先導者となっていたような場合には,重大な不法入国事案と見られ,これよりも重い刑が科される場合があります。
特に,集団密航の先導者となっていたような場合については,実刑となる事案が多いようです。
なお,後述しますが,難民と認定された場合には,刑が免除されます。

(2)退去強制処分となるか

退去強制処分になるかどうかについては,入管法24条1号に規定があります。
入管法24条1号によれば,「第3条の規定に違反して本邦に入った者」と規定されていることから,入管法3条に違反して不法入国を行った場合には,入管法24条1号に基づき,退去強制処分になります。
ただし,入管法61条の2に基づいて,難民認定がされた場合には,入管法61条の2の6第1項に基づいて,退去強制処分が行われないことになります。
この難民申請については,各地の出入国在留管理局に提出することによって行われます。
この出入国在留管理局で難民であるかどうかについての審査が行われ,難民であると認められた場合には,退去強制処分とならずに済みます。
ただし,日本における難民認定のハードルは高く,認められるのは簡単ではありません。
今回のAさんは,甲国と乙国の戦争中に甲国内にいた乙国民なので,難民と認められる可能性はあります。

(3)結論

このように,弁護士として出来ることとしては,①Aさんが難民申請を行った難民であることを主張して,刑の免除の判決を得ること,②難民であることを理由として,退去強制処分を避けることを目指して弁護活動を行っていくことになります。
このように,戦争などの理由で不法入国をしてしまった方が身近にいる場合,弁護士をつけて,難民申請を行い,不法入国罪の免除の判決を得ることや,退去強制処分を避けるよう活動することができますので,迅速に弁護士にご相談ください。

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留学生が特殊詐欺を起こしてしまった場合にどのような処分を受けるのか

2025-04-22

【事例】
Aさんは,留学の在留資格で日本に在留している留学生です。
ある日,SNSを見ていたところ,「軽作業の参加者募集」「日当一人5万円」と書かれている投稿があったことから,その投稿を行った人に連絡を取り,軽作業に加わることになりました。
その当日,「市役所の職員を名乗って,『レターパックを取りに来ました』と言うように,受取ったら,近くの公園に止めてある軽バンの人に渡すように,場所は指示するので,イヤホンマイクを着けていくように」と言われ,その通りに実行して,Bさんよりレターパックを受け取りました。
Bさん宅で受け取り,帰ろうとしたところ警察官に逮捕されました。
警察の話をよく聞くと,Aさんのしようとしていたとことは,特殊詐欺の受け子だったようで,Bさんは地方税の支払いのためとして300万円をレターパックに入れるよう言われていたとのことでした。
なお,Aさんに前科前歴はありません。

以上の事例を前提として,
①Aさんが受ける刑事罰はどのようになるか,②①の刑事罰によって退去強制処分になるかという点について解説していきます。

(1)特殊詐欺の刑事罰

このような,多数人が関わって公共機関の職員等を名乗って,被害者を信じ込ませ,現金などを要求し,現金などを騙し取る詐欺を一般に「特殊詐欺」と言います。
このような事件は,人を欺いて現金の交付を求めることから,刑法246条1項の詐欺罪に当たるとして,処罰されます。詐欺罪の法定刑は,10年以下の懲役が予定されています。
この特殊詐欺の量刑については,①被害金額はいくらなのか,②どのような立場で,特殊詐欺に関わったのか,③前科前歴はあるのか,④被害弁償を行ったのかによって決まります。

①については,金額が多ければ多いほど重く見られます。
②については,上位の立場から関わっていると見られれば,重く見られます。上位の立場と言うのは,特殊詐欺の全体的な計画を作った立場にあるとか,被害者に電話をかけ,金銭の受取役に指示を出すような立場のことを指します。
③については,前科前歴があれば,重く見られます。
④については,被害弁償を行って居れば,有利な事情として見られます。

一番重要な事情は,①の被害金額で,おおむね100万円を超えていて,被害弁償が行われていなければ実刑は避けられません。
また,被害金額が1000万円を超えていると,被害弁償を行ったとしても,実刑は避けられません。
一般に,特殊詐欺の被害金額は100万円を超えることが多く,前科前歴がなくとも実刑判決を受けてしまう例が多いです。

今回のAさんの件は,被害金額300万円の事件で,金銭の受け取り役として関わっていること,前科前歴がないという事情はありますが,被害金額が100万円を超えており,何もしないと実刑判決になる可能性が高い事案と言えます。

逮捕直後から早急に弁護士のアドバイスを受けて対応すべき事案と言えます。
特殊詐欺事案についての弁護活動はこちらでも解説しています

特殊詐欺の受け子 銀行協会職員になりすまし逮捕

(2)強制送還になるのか

退去強制処分になるか留学生の場合,退去強制処分になるかどうかは,入管法24条4号の2に規定があります。
入管法24条4号の2によれば,刑法第三十七章の罪により,懲役又は禁錮に処せられた場合には,退去強制処分になることが規定されています。
そのため,留学生が特殊詐欺に関わってしまい,有罪判決となった場合には,退去強制処分になることが予定されているということができます。

(3)弁護人として何ができるか

上記の通り,特殊詐欺を行った場合,実刑判決となり,退去強制処分となることが予想されます。
そのため,①何とか実刑判決を免れたり,②退去強制処分を避けるというための弁護活動を行っていく必要があります。
まず,①のための弁護活動を行うためには,特殊詐欺とはわからなかったなどの主張を行い無罪判決を得るか,起訴前に被害弁償を行い,不起訴を目指すということになります。
②のための弁護活動としては,無罪を目指すほかありません。仮に,執行猶予付きの有罪判決を受けたとしても,入管法24条4号の2に基づいて退去強制処分を受けてしまうので,日本に在留することは困難になります。

そのため,特殊詐欺については,起訴される前の段階から,弁護士をつけて対応することが望ましいということが言えます。

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日本人の配偶者が大麻事件で逮捕されたらどうなるのか?

2025-04-15

日本人の配偶者という在留資格で日本に滞在しているAさんは、友人からの紹介で大麻を使用していました。
ある日、道を歩いているときに職務質問を受け、所持していた大麻が発見され、大麻所持で現行犯逮捕されてしまいました。
以上を前提として

①Aさんが受ける刑事罰はどのようなものになるか
②①の刑事罰によってAさんは退去強制となることがあるか

以上の点について解説していきたいと思います。

⑴大麻所持の刑事罰

大麻を所持していた場合、従前は大麻取締法違反で処罰されていました。しかし、法改正により麻薬及び向精神薬取締法違反で処罰されることになりました。
なお、注意を要する点として、従来大麻使用が処罰されていなかったところ、改正法では大麻使用(施用)も処罰の対象となりました。
大麻所持の法定刑は、従前は5年以下の懲役でしたが、改正により7年以下の懲役となりました。若干法定刑が重くなったこととの関係で、今後の裁判では今までよりも量刑が重くなる可能性があります。
ただ、初犯の所持の場合は執行猶予付き判決ということで変わりがないのではないかと思います。

大麻

参考 大麻事件に対する刑事処分

⑵退去強制となるか

それでは、Aさんの刑事処分により退去強制となるかについて検討します。
退去強制事由については入管法24条に定めがあります。ただ、Aさんは日本人の配偶者資格ですので、在留資格としては別表第2の資格となります。
同条4の2には「別表第一の上欄の在留資格をもつて在留する者で、刑法第二編第十二章、第十六章から第十九章まで、第二十三章、第二十六章、第二十七章、第三十一章、第三十三章、第三十六章、第三十七章若しくは第三十九章の罪、暴力行為等処罰に関する法律第一条、第一条ノ二若しくは第一条ノ三(刑法第二百二十二条又は第二百六十一条に係る部分を除く。)の罪、盗犯等の防止及び処分に関する法律の罪、特殊開錠用具の所持の禁止等に関する法律第十五条若しくは第十六条の罪又は自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律第二条若しくは第六条第一項の罪により懲役又は禁錮に処せられたもの」という定めがあり、この条文に該当する場合には仮に執行猶予判決であったとしても退去強制となるように思われます。
しかし、先ほど述べた通り、Aさんは別表第2の資格ですから、この条文には該当しません。
しかし、4号チにある「昭和二十六年十一月一日以後に麻薬及び向精神薬取締法、大麻草の栽培の規制に関する法律(昭和二十三年法律第百二十四号)、あへん法、覚醒剤取締法、国際的な協力の下に規制薬物に係る不正行為を助長する行為等の防止を図るための麻薬及び向精神薬取締法等の特例等に関する法律(平成三年法律第九十四号)又は刑法第二編第十四章の規定に違反して有罪の判決を受けた者」には該当してしまいます。ここでは執行猶予付きか実刑であるか、それどころか罰金刑であるかどうかすら問わず、有罪の判決を受けた場合に退去強制事由になる旨が定められています。
そのため、Aさんが麻薬及び向精神薬取締法違反で有罪となった場合、直ちに退去強制事由に該当することになります。

在留特別許可について

⑶弁護活動

大麻所持だからと言って軽い犯罪だと考えてはいけません。日本国籍保有者にとっては執行猶予付き判決となり安易に考えいてる事件でも、外国籍の方にとっては退去強制となる危険な罪です。

ですから、薬物で検挙されたり、ご家族が薬物で検挙されたような場合には速やかに弁護士にご相談ください。
将来の在留資格更新を行ったり退去強制とならないようにするためにも、専門の弁護士にご依頼ください。

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事務所概要・アクセス

交通事故による前科が永住許可申請に影響を与えるか

2025-04-08

事例

日本人の配偶者という在留資格で日本に滞在しているAさんは、買い物の途中、交通事故を起こしてしまいました。
幸い、被害者の方のけがはそれほど重くないようです。

以上を前提として
①Aさんが受ける刑事罰はどのようなものになるか
②①の刑事罰によってAさんが永住権の申請をした際に問題にならないか
以上の点について解説していきたいと思います。

⑴過失運転致傷罪の刑事罰

車で交通事故を起こしたことにより、乗員(これはぶつかられた車の乗員だけではなく、ぶつかった、つまり自分が運転している車の乗員も含みます)や歩行者等に怪我をさせてしまったような場合には、自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律5条の過失運転致傷罪が成立します。
なお、事故を起こしてしまったのに現場から逃走したような場合にはより重いひき逃げの罪が成立しますし、お酒を飲んで事故を起こしたような場合には
危険運転致傷罪というより重い罪が成立する場合もあります。
Aさんの話に戻すと、不注意という過失により交通事故を起こし、怪我をさせてしまったAさんにはどのような刑罰が与えられるのでしょうか。
法律上定められている法定刑は「七年以下の懲役若しくは禁錮又は百万円以下の罰金に処する(以下略)」とされています。

一般的に交通事故の場合には①相手の方の怪我の程度②事故を起こした側の過失の程度③被害者の側の過失の程度④運転者の属性などを考慮して処分が決められています。
①については、、怪我の程度が重ければ重いほど、後遺症が残ればその影響が大きいほど罪が重くなります。
②については、飲酒や赤信号無視、スピード違反等、それ自体が犯罪になるようなで行為がきっかけで事故を起こしたような場合には罪が重くなります
③については、被害者が赤信号を無視している場合や、道路上で寝ている場合、横断禁止道路を横断している場合などに、運転者の罪が軽くなります。
④については、タクシーやバスの運転手、トラックドライバーなど職業として運転をしている方は、罪が重くなる傾向にあります。

Aさんの事故について考えると、Aさんは特に仕事などで運転していませんし、わき見というそれ自体が犯罪になるようなものではないことが原因で事故を起こしていますから、特に刑を重くすべき事情はありません。

反対に、被害者の方も、信号待ちをしていただけですから、被害者には過失がなく、Aさんの罪を軽くする理由もありません。
そのため、Aさんの処分は①の怪我の程度によっておおよその処分が決まってくると考えられます。

これについて明確に決まりがあるわけではありませんが、全治3日や1週間程度の怪我であれば起訴猶予処分(刑事罰を受けない)、全治3週間~1ヶ月以内程度であれば罰金、1ヶ月を越えるような重い怪我等であれば裁判を受け禁錮刑(ただし執行猶予付き)となることが予想されます。

事件別-交通違反・交通事故

参考 交通事故に対する弁護活動

⑵永住権を取得する際に影響が出るか

現在Aさんは「日本人の配偶者」という資格で在留しています。
この後、Aさんが「永住者」資格へ資格の変更を考えるとした場合、今回の罰金前科は何らかの影響が出るのでしょうか。
永住者については、入管法22条に定めがあり、要件は
①各号のいずれにも適合すること
 1号 素行が善良であること
 2号 独立の生計を営むに足りる技能を有すること
②その者の永住が日本国の利益に合すること
とされています。

永住者ビザ(永住許可)

しかし、「その者が日本人、永住許可を受けている者又は特別永住者の配偶者又は子である場合においては、次の各号に適合することを要しない」(入管法22条2項但書)とされています。このような場合には、上記の要件のうち①の要件は不要ということになります。
今回のケースでAさんは「日本人の配偶者」ということですから、この但書が適用されることになります。よってAさんが永住者の在留資格を得られるかどうかは、この②の要件を満たすことができるかどうかということにかかっています。

では、この「日本国の利益に合すること」(国益適合要件)を満たすといえるのはどのような場合でしょうか。
この点について、入管の審査要領においては

a 原則として引き続き10年以上日本に在留し、この期間のうち技能実習等を除く就労資格又は別表第2の資格を以て直近において引き続き5年以上っ在留していること
b 公的義務(納税、入管法上の手続きなど)を適正に履行していることを含め、法令を遵守していること
c 現に有している在留資格について、規定されている最長の在留期間をもって在留していること(例外有)
d 公衆衛生上の観点から有害となるおそれがないこと
e 著しく公益を害するおそれがないと認められること
f 在留特別許可又は上陸特別許可を受けた者の場合には一定の条件を満たすこと
g 原則として公共の負担となっていないこと

をポイントに審査されてることとなっています。
今回、刑罰を受けている場合には、eの要素が問題となります。
「日本国の法令に違反して、懲役・禁錮若しくは罰金に処せられたことがあること」は、eの要件を満たさない可能性が高いと言えます。但し、罰金については「その執行を終わり(中略)5年を経過し(中略)たときは、これに該当しない者」と考えられます(刑法34条の2)。
Aさんは日本人の配偶者であるため、「素行善良」の要件は問題となりません。しかし、国益適合要件は問題となりますので、前科の有無はこの場面で問題となります。
ただ、このeの要素を考慮する際には、罰金刑があるからといって一律に永住権を付与しないわけではなく、罰金刑を受けた原因やその金額などによって判断をされる傾向にあるようです。

今回のような交通事故の場合には、これがあるだけで直ちに永住権が付与されないと言われるまでのものとは考えられませんが、他の要素の兼ね合いで不許可となることも想定されます。
仮に永住申請が不許可となってしまった場合には、刑法34条の2に従い、罰金を納付した日から5年を経過したタイミングで、再び永住申請をしていただく必要があります。

以上,交通事故が永住申請に与える影響について解説をしました。

具体的な申請についてお困りの方は,こちらからご相談ください。

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技能実習生が死体遺棄事件を起こしてしまった場合

2025-04-01

【事例】
Aさんは技能実習生として,日本に在留する外国人です。
Aさんは。Bさんと知り合い,恋愛関係になったことから,Bさんとの間の子Cを妊娠しました。
しかし,Aさんは,技能実習生の友人から妊娠したり,出産すると解雇され,日本にいられなくなると聞かされたため,適切な産婦人科などへの通院をせず,結果的に死産をしてしまいました。
Aさんは死産しても,雇用先に報告せず,家の床下に3か月隠し続けました。
しかし,床下から,異臭がしていたことから,知り合いにCの死体を発見され,警察に通報され,Aさんは逮捕されました。
このような場合に,①どのような刑事処分を受けるか,②退去強制処分になるかについて解説していきます。

(1)どのような刑事処分を受けるのかについて

死産した後,胎児の遺体を放置し続けると,刑法190条の死体遺棄罪が成立します。
確かに,最高裁令和5年3月24日判決のように,約1日と9時間死産した遺体を段ボールに入れ,ガムテープで封をした事件について死体遺棄罪の成立を認めなかった事例はありますが,この事件は,①適切に葬らなかった時間が1日と9時間と短時間であること,②死体の梱包及び設置の状況に照らすと,死体の埋葬と相いれない行為を行っているということができないとして,無罪となっています。そのため,長時間埋葬しないことや死体を土に埋めるなどの死体の埋葬と相いれない行為については,死体遺棄罪が成立することになります。

報道:死体遺棄罪に問われた技能実習生に対して最高裁判所が無罪判決を言い渡した事案

死体遺棄罪で逮捕 執行猶予を目指す弁護活動

参考 死体遺棄罪で逮捕された場合の弁護活動について

今回のAさんの事件については,床下に3か月隠し続けており,適切に埋葬する意思が無いと推認されてしまうことから,死体遺棄罪が成立することになります。

このような,死体遺棄罪の量刑傾向については,多くの事件が殺人後の死体遺棄であったりする関係から,死体遺棄罪単独の量刑傾向を調べることは難しいのですが,①遺棄した死体の人数,②死体遺棄を続けていた期間,③バラバラ死体にするなど,死者に対する社会の宗教感情を害する程度が大きくないかなどによって判断されます。
①については,遺棄した死体の数が多ければ多いほど重く見られます。
②については,息を続けていた期間が長ければ長いほど重く見られます。
③については,バラバラ死体にするなどの事情があれば,重く見られます。
量刑傾向としては,死体遺棄罪単独であれば,執行猶予付きの有罪判決となる例が多いです。
しかし,殺人を行っているなどの事情がある場合や,バラバラ死体にして長期間死体を発見させないようにしていたなどの事情がある場合,実刑になる可能性があります。
今回のようなAさんのような事件の場合,遺棄した死体も1人分で,床下に遺棄し続けていた期間も3か月であり,バラバラ死体にするなどもしていないことから,概ね執行猶予付きの有罪判決となることが予想されます。

(2)退去強制になるかについて

技能実習生が妊娠,出産したという理由で退去強制になったり,職場から解雇されることはありません。
このことについては,出入国在留管理庁がホームページで公開しています。また,技能実習生が妊娠,出産したという事情で解雇した場合には職場が行政処分の対象になり得ることがかかれています。
そのため,入管法上の退去強制処分になるのかということが重要になります。
入管法24条4号の2には,永住等以外の在留資格について,一定の犯罪の場合で執行猶予付きであれ懲役刑を受けた場合には,退去強制処分になることが規定されていますが,入管法24条4号の2には,死体遺棄罪が含まれていません。
次に,入管法24条4号リの規定によれば,懲役1年以上の実刑判決を受けた場合に退去強制となる規定が問題となります。
そのため,死体遺棄罪によって,1年以上の実刑判決になった場合に入管法24条4号リの規定に基づいて退去強制処分となり得るということが言えます。
今回のAさんの事件ですと,執行猶予付きの有罪判決が予想されることから,この入管法24条4号リの規定に基づいて退去強制処分になることは考えにくいです。

(3)弁護士として出来ること

このような処分が予想されることから,弁護士としては,①死体遺棄罪のみであり,他の犯罪は成立しないことを主張して,殺人罪などの他の犯罪について不起訴とするように活動すること,②殺人罪が成立しないことなどから,死体遺棄罪の事件であり,執行猶予付きの有罪判決を求める活動をしていくことになります。
特に,死体遺棄罪に該当する事件を起こした場合,同時に殺人罪や保護責任者遺棄致死罪などの重い罪を疑われ,裁判員裁判などの重大な手続を経て判決が出る関係から,弁護士をつけることが大事になります。
そのため,死体遺棄罪に該当する事件に関わることになった場合には,迅速に弁護士に依頼することをお勧めします。

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外国籍少年が交通事故を起こしてしまった場合

2025-03-25

Aさんの息子は、家族滞在の資格で日本に滞在し、現在高校2年生です。お子さんは、バイク通学中、歩行者との間で交通事故を起こしてしまいました。
すぐに119番をし、救急搬送されたのですが、幸い被害者の方は全治1週間程度の軽いけがとのことでした。
このことで息子さんは何度か取り調べを受けています。

以上を前提として,

①息子さんが受ける手続きはどのようなものになるか
②①によって退去強制となることがあるか

以上の点について解説していきたいと思います。

⑴少年事件手続き

日本の刑事手続きにおいては、まずは20歳以上と20歳未満でその手続きが区別されます。
20歳以上は大人の手続きとなり罰を受けるのに対し、20歳未満の場合にはいったん少年手続きに進みます。
20歳未満の人が刑事事件を起こした場合には、全ての事件が家庭裁判所に送られることになっています。
この家庭裁判所の手続きでは、18歳、19歳の「特定少年」と、18歳未満の少年で再び区別されることになっています
特定少年でも、それ以外の少年でも、家庭裁判所で「検察官送致決定」というものを受けると、大人と同じ手続きに戻り、刑事罰を受けることになります。
これに対し、少年院送致、保護観察、児童自立支援施設送致、不処分等の決定は、いずれも刑事罰ではなく少年特有の保護処分という扱いとなります。

未成年者と交通違反・交通事故

参考 少年事件と交通事故について

今回の息子さんの場合、高校2年生の年齢であれば、通常通り家庭裁判所に事件が送致されます。また、特定少年ではないと予想されるため、おそらく保護処分となることが予想されますが、
その程度は、これまでの前歴や、家庭環境、補導歴といった、事件以外の要素も考慮して決定されることとなっています。
交通事故の場合、18,19歳等であれば検察官送致されることも珍しくありません。
それは、「過失」という態様が、少年特有の問題を有していないケースが多いからです。
ただ、それ以下の年齢の場合や、過失の態様の中で要保護性をうかがわせるような事情がある場合には、通常通り,保護処分となると思われます。

⑵退去強制となるか

それでは、家庭裁判所の処分により退去強制となるかについて検討します。
入管法で、少年の退去強制事由を定めているのは、24条4号のトです。
同号は「少年法(昭和二十三年法律第百六十八号)に規定する少年で昭和二十六年十一月一日以後に長期三年を超える懲役又は禁錮に処せられたもの」と定められています。
長期3年を超える場合、執行猶予付きの判決とすることができませんので、3年を超える実刑判決を受けた場合ということになります。大人の場合には、1年以上の実刑(同号リ)で退去強制となるとされていることから比べると少年の方が退去強制とするための要件が厳しいと言えます。
いずれにしても、保護処分の場合、刑事罰ではありませんから、仮に3年以上少年院送致をされるようなことがあったとしても、これは退去強制事由には当たらないということになります。
ですので、この方の事件の場合には、退去強制となることは通常考えられないと判断してよいように思われます。
しかし、18歳や19歳でより悪質な態様で事故を起こし、被害者を死亡させてしまった場合には、危険運転致死罪が適用され、3年を超える実刑判決となる可能性があります。
ですので、交通事故だからといってすべての場合で退去強制とならないというわけではありません。

⑶弁護活動

交通事故は、大人であってもなんらかの刑罰が科される可能性のある犯罪です。また、事故に付随して他の違反(無免許や飲酒)があればより重い処分となります。
被害者への被害弁償はもちろん必要ですが、それだけではなく将来の在留資格更新を行ったり、お子さんの更生のためにも、専門の弁護士にご依頼ください。

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技人国の在留資格の外国人が偽装結婚をしてしまった場合

2025-03-18

【事例】
Aさんは「技術・人文知識・国際業務」の在留資格で日本に在留している外国人です。
Aさんは日本で働いていたところ,日本での仕事を続けたいと思うようになり,何とかして在留資格を延長できないかと思うようになりました。そこで,在留資格を伸ばしたい外国人と独身の日本人とを在留期間延長のために一時的に結婚させるサービスを提供する会社甲を通じて,偽装結婚をすることを思いつくようになりました。
甲社に登録したところ,日本人のBさんを紹介され,Bさんと結婚する気が無いにもかかわらず,交際期間0日で,Bさんと会うことも無く,Bさんとの婚姻届けを役所に提出しました。Bさんと結婚した後は特に,Bさんと同居しているなどはしていませんでしたが,Bさんと結婚していることを理由として,在留資格を日本人配偶者とするよう変更を申請しました。しかし,AさんはBさんとの関係などについてうまく答えられなかったことから,偽装結婚が疑われ,調べたところ,偽装結婚であることが判明したため,Aさんは逮捕されてしまいました。

このような事件の場合,①どのような刑事処分を受けるのか,②退去強制処分となるのかについて解説していきます。

(1)偽装結婚を行った場合の刑事罰

偽装結婚を行い,婚姻届けを役所に提出し,受理された場合には,刑法157条1項の公正証書原本不実記載罪が問題となります。
公正証書原本不実記載罪は,「公務員に対し虚偽の申し立てをして,登記簿,戸籍簿その他の権利若しくは義務に関する公正証書の原本に不実の記載をさせ,又は権利若しくは義務に関する公正証書の原本として用いられる電磁的記録に不実の記載をさせた」場合に成立するとされます。偽装結婚というのは,役所の職員に対して,婚姻届を提出し,戸籍簿に結婚の事実を記載させるため,この公正証書原本不実記載罪に当たる罪になるとされます。
また,この偽装結婚の結果できた戸籍を示して在留資格の変更の申し立てをした場合,内容虚偽の公文書を誰かに見せることになるので,虚偽の公文書を「行使」したといえ,刑法158条1項の虚偽公文書行使罪も問題になります。
この公正証書原本不実記載罪と虚偽公文書行使罪の法定刑については,どちらも5年以下の懲役又は50万円以下の罰金が予定されています。
これら罪で有罪になった場合,量刑相場はだいたい決まっており,前科のない外国人であったとしても執行猶予付きの懲役刑の有罪判決となることが予想されます。そのため,今回のAさんについても執行猶予付きの懲役刑の有罪判決を受けることが予想されます。

偽装結婚の事案に対する解決事例

【解決事例】偽装結婚の幇助で逮捕 不起訴処分を獲得した事例

 

(2)退去強制事由となるか

技人国の在留資格の外国人が偽装結婚を行い,公正証書原本不実記載罪と虚偽公文書行使罪に当たる行為を行った場合には,退去強制事由になります。
このことは,入管法24条4号の2に根拠規定があります。入管法24条4号の2によれば,技人国などの在留資格で日本に在留する外国人が刑法第17章の公文書偽造関係の罪で有罪となり,懲役刑の判決を受けた場合(執行猶予付きの有罪判決を含む)には退去強制事由となることが規定されています。
そのため,今回のAさんのように偽装結婚を行い,執行猶予付きの懲役刑となった場合には,退去強制処分を受ける可能性があります。

また,刑事罰を受けなかったとして偽装結婚を利用して日本人配偶者のビザを取得した場合,「偽りの方法」によって査証(ビザ)等を受けたことになり,それ自体が退去強制事由となってしまいます。

(3)弁護士として何ができるのか

このような処分が予想されることから,弁護士としては,①(本当は結婚する気が合った等の事情がある場合,)結婚する気があったため,虚偽の申し立てではないということを主張して,不起訴や無罪を目指すことや,②特別在留許可の申し立てを行うなどして,日本に在留できるよう働きかけることが考えられます。
特に①のように,刑事事件で争っていくというような事情がある場合,どのように否認するのか,どのように取調べに対応するのかが重要になってきますので,迅速に弁護士に相談することをお勧めします。

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