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日本人の配偶者等が業務上横領した場合の在留資格への影響

たとえば、日本人と結婚し、「日本人の配偶者等」の在留資格で日本に暮らすAさんが、勤務先の売上金を私的に流用したとして、業務上横領の捜査を受けたとします。会社は被害届を出し、Aさんは取調べを受けます。しかも、在留期間の満了も近づいています。
Aさんと家族には、すぐに大きな不安が生まれます。
「不起訴なら日本に残れるのか」「執行猶予でも更新できるのか」「強制送還になれば家族はどうなるのか」という不安です。結論は一つではなく、刑事処分の重さと、その後の対応で変わり得ます。
この記事では、日本人の配偶者等で在留する人が業務上横領の事件を起こしたときに、在留更新、永住、再入国、強制送還のリスクがどう動くのかを、できるだけ分かりやすく整理します。
刑事手続と入管手続の全体像
結論からいうと、刑事手続と入管手続は別です。
警察・検察・裁判所で進むのが刑事手続です。これとは別に、入管では、違反調査、違反審査、口頭審理、異議の申出、法務大臣の裁決という流れで、退去強制や在留の可否が判断されます。法務省資料も、退去強制手続は刑事手続とは別個の行政手続だと説明しています。
そのため、不起訴や無罪でも自動的に安心とはいえません。
在留期間の更新は、法務大臣が「相当の理由がある」と認める場合に限って許可され、入管は、在留の状況、在留の必要性、素行、生活状況、納税などを総合的に見ます。つまり、刑事事件の結論だけでなく、今の生活が安定しているか、説明に矛盾がないかも確認されます。
また、日本人の配偶者等は、仕事の種類ではなく、日本人の配偶者としての身分に基づく在留資格です。ですから、業務上横領の後は、仕事を失ったかどうかだけでなく、婚姻の実体、同居の状況、家計の安定、日本での生活基盤がより重要になります。
強制送還と在留特別許可
強制送還、正確には退去強制とは、ひとことでいえば、入管が日本からの出国を命じる行政手続です。出入国在留管理庁も、退去強制は、法律で定められた手続に従って国外に退去させる措置だと説明しています。刑事裁判で刑を決めることと、入管が日本に残れるかを決めることは、同じではありません。
退去強制の分岐点
日本人の配偶者等で在留する人にとって、業務上横領で退去強制が現実化するかどうかの大きな分岐点は、判決の重さです。業務上横領は、刑法253条で10年以下の拘禁刑とされています。他方、入管法上は、一般に、無期または1年を超える拘禁刑で、執行猶予が付かない判決が退去強制事由になります。つまり、不起訴はもちろん、執行猶予付き判決はこの一般条項の直接の対象外で、実刑でも1年を超えるかどうかが重要な境目になります。
なお、ここで一つ大事な点があります。業務上横領は法定刑に罰金刑がありません。
そのため、業務上横領のみで罰金刑となることはありません。
在留特別許可について
退去強制事由に当たれば、必ず出国になるわけではありません。
在留特別許可とは、本来は退去強制の対象であっても、例外として日本での在留を認める制度です。もっとも、出入国在留管理庁は、在留特別許可を例外的・恩恵的な措置と位置付け、退去強制事由に当たるなら、原則は退去強制だと説明しています。つまり、在留特別許可は必ず認められる制度ではありません。
在留特別許可では、在留を希望する理由、家族関係、生活状況、素行、退去強制の理由となった事実の反社会性などが個別に見られます。日本人との家族関係は有力なプラス事情になりますが、出入国在留管理庁のQ&Aも、日本人と結婚しているだけで必ず在留特別許可になるわけではないと明示しています。
処分別の在留影響
ここでは、読者が最も気になる在留更新・永住・再入国に絞って整理します。
在留更新では、素行や生活基盤が総合評価されます。永住では、日本人の配偶者等には年数面の特例がある一方で、永住ガイドラインは「罰金刑や拘禁刑などを受けていないこと」を重い要件として見ています。再入国でも、判決内容によっては、出国後に戻れなくなることがあります。なお、再入国許可は在留期間の範囲内で最長5年、みなし再入国許可は1年ですが、許可があるだけで安心とはいえません。
不起訴から実刑までの整理
不起訴
不起訴なら、有罪判決がないため、業務上横領を理由とする退去強制や上陸拒否は通常問題になりにくいです。もっとも、更新では、事件の経緯をどう説明するか、日本での婚姻生活が安定しているか、納税や家計に問題がないかが見られます。永住も直ちに不可能ではありませんが、申請時には、生活の安定と再発防止への取組を丁寧に示す必要があります。再入国は比較的維持しやすいですが、説明不足のまま出国するのは避けたいところです。
罰金
業務上横領では、罰金は通常想定しにくいです。理由は、刑法253条が罰金刑を置いていないからです。ですから、「罰金で軽く終わるはず」と見込んで、更新や渡航予定を組むのは危険です。この事件では、むしろ不起訴、執行猶予、実刑のどこに着地するかを前提に考えるべきです。
執行猶予付き判決
執行猶予が付けば、一般の退去強制事由に直ちに当たるわけではありません。
しかし、更新では素行不良のマイナス評価を受けやすく、永住ではかなり不利です。さらに、判決で言い渡された拘禁刑が1年以上であれば、出国後の再入国で上陸拒否事由が問題になります。再入国許可を持っていても、上陸審査が残るため、海外渡航は特に慎重に判断すべきです。
実刑判決
実刑は最も重い局面です。日本人の配偶者等であっても、一般に、1年を超える実刑になると退去強制事由が現実化しやすくなります。更新は当然厳しくなり、永住は大きく遠のきます。再入国も厳しくなります。というのも、退去強制後の5年または10年の上陸拒否期間に加え、1年以上の拘禁刑判決そのものが別の上陸拒否事由になり得るからです。実刑では、今の在留だけでなく、将来の来日可能性まで強く制約されます。
在留を守る実務対応
在留特別許可を目指す場面では、個別事情の積み上げが決定的です。
日本人の配偶者等では、婚姻の実体、同居の継続、在留年数、日本での生活基盤、家族への具体的な影響が、強いプラス事情になりやすいです。出入国在留管理庁も、日本人との家族関係や家族とともに生活する事情を考慮要素として挙げています。
そのうえで、業務上横領の特性に合わせた説明が必要です。業務上横領は、仕事上預かった財産を横領する犯罪です。つまり、信頼を裏切った点が重く見られます。だからこそ、入管実務では、反省の中身、被害回復の有無、返済計画、犯行に至った事情、家計管理の見直し、再発防止策が説得力を持ちやすいと考えられます。ガイドラインも、退去強制の理由となった事実の反社会性を評価するとしています。
大切なのは、刑事手続と入管手続を同時に見ることです。
被害回復の資料、家族の陳述書、同居や家計を示す資料、納税資料、今後の生活計画は、後から慌てて集めるより、早い段階でそろえた方が筋の通った説明になります。弁護士が関与すると、刑事事件での防御と、入管へ出す事情説明を矛盾なく整理しやすくなります。
再取得と早期相談の重要性
退去強制の後に問題になるのが、上陸拒否期間です。
これは、一定期間、日本に新たに入国できない期間のことです。初めて退去強制された場合は原則5年、過去にも退去強制歴がある場合は10年とされています。したがって、退去強制後でも、将来の再来日が絶対に不可能という意味ではありません。ただし、その期間が過ぎても、あらためて新しい上陸審査と在留審査を受け直す必要があります。
もっとも、業務上横領で1年以上の拘禁刑判決を受けた場合は、退去強制による5年・10年の問題とは別に、判決自体が上陸拒否事由になります。ここが、在留特別許可との大きな違いです。在留特別許可は、「今、日本での在留を続けられるか」をみる制度です。これに対し、退去後の再取得は、「いったん日本を離れた後、あらためて日本に入れるか」をみる手続です。似ているようで、まったく別の問題です。
日本人の配偶者等と業務上横領の組み合わせでは、執行猶予を確保できるか、被害回復をどこまで進められるか、そして出国のタイミングをどう判断するかで、結論がかなり変わります。対応を誤ると、更新不許可、永住の断念、出国後の再入国困難が重なります。だからこそ、不安を感じた段階で、外国人事件に強い弁護士へ早めに相談することが大切です。個別事情が大きい分、正しい対応で状況を動かせる余地もあります。
日本人の配偶者の背任事件 在留資格や強制送還への影響を解説

想定事例(※フィクション)
日本人の配偶者として日本で生活している外国人のAさんが、勤務先の取引で会社の利益よりも知人の利益を優先したのではないかと疑われ、背任で捜査を受けることになりました。Aさんは家族と日本で暮らしており、「不起訴でも在留は大丈夫なのか」「もし有罪になれば強制送還されるのではないか」と強く不安を感じています。結論はまだ決まっておらず、刑事手続と入管対応をどう進めるかで結果が変わる余地があります。
本記事では、日本人と婚姻して「日本人の配偶者等」で在留している方を前提に、背任事件が在留に与える影響を整理します。
刑事手続と入管手続は別
刑事手続と入管手続は別々に進みます。
刑事手続は、捜査、起訴又は不起訴、起訴されたら判決といった流れで、犯罪の嫌疑にどのような刑事処分をするかを決める手続です。
これに対し入管手続は、退去強制の対象になるか、日本に在留を続けられるかを判断する行政手続です。
入管法63条は、刑事手続が進んでいる場面でも、退去強制の手続を進められることを予定しています。そのため、不起訴や無罪でも「それで完全に安心」とは限りません。
在留期間更新は、法務大臣が「相当の理由」があるかを総合判断する仕組みで、在留の必要性、在留状況、素行などが見られます。さらに、日本人の配偶者等としての更新では、婚姻関係を示す戸籍謄本や、日本での滞在費用を証明する資料の提出が求められており、家族関係と生活基盤の説明も重要です。
強制送還の仕組み
強制送還とは、入管の退去強制手続によって、日本からの退去を命じることです。これは刑事裁判とは別に行われる行政手続で、入管法24条に当たるかどうかを軸に判断されます。実際の手続は、違反調査、違反審査、口頭審理、異議申出などを経て進みます。
背任は、他人のために事務を処理する立場の人が、任務に反する行為で本人に財産上の損害を与える犯罪で、現行法上の法定刑は5年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金です。
入管で大きな分かれ目になるのは、無期または1年を超える拘禁刑かどうかです。入管法24条は、無期または1年を超える拘禁刑に処せられたことを退去強制事由としています。一方で、全部執行猶予など一定の場合を除外しています。
したがって、背任の刑事手続が不起訴、罰金、執行猶予で終わる場合は、退去強制事由にはあたりませんが、1年を超える実刑なら退去強制の危険は一気に高まります。
もっとも、退去強制の対象になっても、必ず出国で終わるとは限りません。
入管法50条には在留特別許可があり、法務大臣は、在留を希望する理由、家族関係、素行、在留歴などを見て、例外的に日本での在留を認めることがあります。ただし、この許可は当然にもらえる制度ではありません。特に、1年を超える実刑など重い事案では、在留特別許可のハードルも高くなります。
処分別にみる在留への影響
不起訴の場合
退去強制事由にはならず、その後の在留期間更新への影響も比較的小さいです。
ただし、更新は総合判断ですので、刑事事件の前歴が問題にされた場合、背任の疑いが生じてから不起訴までの経緯をどう説明するかなどは重要です。永住許可も直ちに不可能とはいえませんが、事件直後の申請は許可のハードルが高くなるかもしれません。
罰金の場合
罰金は背任であり得る処分ですが、退去強制事由の「1年を超える実刑」には当たりません。
その後の在留期間更新は直ちに不可能とは限りませんが、更新審査ではマイナスとなってしまう可能性はあります。永住許可については、ガイドラインが「罰金刑や拘禁刑などを受けていないこと」を挙げているため、少なくとも直後の申請はかなり厳しくなります。
執行猶予付き判決の場合
執行猶予であれば、退去強制事由の「1年を超える実刑」には当たりません。
ただし、有罪判決そのものは重く見られます。その後の在留期間更新では罰金よりも不利になり、永住許可は当面厳しいと考えるべきです。
また、1年以上の拘禁刑であれば、執行猶予が付いたとしても上陸拒否事由に当たります。特例が適用されれば上陸できることもありますが、出国する場合、その後日本に戻って来られるか注意しなければいけません。
実刑判決の場合
実刑でも、1年を超えるかどうかで法的な位置づけが大きく変わります。1年を超える実刑なら退去強制事由に当たり、在留特別許可が得られなければ強制送還です。1年以下の実刑でも安全とはいえず、在留期間更新や永住許可の場面では非常に厳しい評価になりやすいです。
実刑レベルでは、在留特別許可を視野に入れた対応が中心になります。
在留特別許可で見られる事情
在留特別許可は、個別事情の総合考慮で決まります。日本人の配偶者等では、婚姻歴が長いこと、養育する子がいること、その他日本での生活基盤が安定していることが特に大切です。家族関係と生活の安定を資料で示せるかが重要になります。
背任事件では、被害の回復、示談、勤務先との関係修復、金銭管理の改善、再発防止策も重要です。背任は、任された立場で信頼を裏切ったことが問題になる犯罪だからです。反省を述べるだけでは足りず、被害者への対応状況、家族の支援、就労継続の見通しなどに関する資料をそろえて、「もう同じことをしない」と具体的に示す必要があります。刑事手続と入管手続は別々に動くため、弁護士が早期に入れば、供述や資料を両手続で矛盾なく整理しやすくなります。
退去強制後に再び日本に来られるか
退去強制の後に、すぐ日本へ戻れるわけではありません。上陸拒否期間という、一定期間、日本への上陸が認められないルールがあるからです。
退去強制が初回なら原則5年、過去にも退去強制歴があれば10年です。
上陸拒否期間が過ぎれば、法律上は再度の申請余地が生まれます。これは、いま日本に残るための在留特別許可とは別の話です。在留特別許可は現在の退去強制手続の中で日本に残れるかを判断する制度ですが、退去強制後の再上陸は、いったん出国した後に、上陸拒否期間の経過後、あらためて「日本人の配偶者等」などの在留資格で日本への上陸・在留を求める流れになります。
その際は、婚姻の実体、生活の安定、背任事件後にどう立て直したかなどが厳しく見られると考えるべきです。
早めに弁護士へ相談すべき理由
日本人の配偶者等と背任の組み合わせでは、見落としかねない分岐が多くあります。不起訴、罰金、執行猶予、実刑では退去強制事由となるかの位置づけが違いますし、在留期間更新、永住許可などへの影響の大きさも変わります。さらに、婚姻の実体、生活費の裏付け、税や保険の履行、被害回復の状況等に関する資料まで一体で整理しなければなりません。
対応を誤ると、不利な説明が固定される、必要資料が足りないなどといった不利益につながりかねません。逆に、外国人事件に強い弁護士が早く関与すれば、刑事処分の軽減を目指しつつ、入管で重視される家族事情や生活基盤関係の資料も整理し、結果が変わる余地を残せます。背任事件で日本に残れるか不安があるなら、早期相談がとても重要です。
日本人配偶者ビザの外国人が威力業務妨害で捜査された場合の在留資格への影響と退去強制・再取得の可能性

中国出身のAさんは、日本人の妻と結婚して在留資格「日本人の配偶者等」で日本に暮らしています。しかし、勤務先企業への不満から抗議の電話やFAXを繰り返したことで、警察から威力業務妨害の疑いで捜査を受けています。Aさんは「このまま逮捕され強制送還(強制退去)されるのでは」と不安に感じていますが、今後の対応次第では在留資格を守り、日本で家族と暮らし続けられるのでしょうか。
1. 外国人が刑事事件を起こした場合に必ず問題になる2つの手続
外国人が日本で刑事事件を起こした場合、「刑事手続」と「入管手続」という2つの手続が別々に進むことになります。
まず一つは、日本人と同様に警察による捜査・逮捕、検察による起訴、裁判所での裁判といった刑事手続です。日本の刑法は国内で犯罪を犯した者に適用されるため(刑法第1条)、外国人であっても日本人と同じ流れで罪を裁かれることになります。
もう一つは、刑事手続とは別に進む入管手続です。日本に在留する外国人には「出入国管理及び難民認定法(入管法)」の規定が適用されるため、処分の結果によって在留資格(ビザ)の継続や強制送還に関する判断が入管(出入国在留管理局)によって行われます。
たとえば、有罪判決を受けた場合でも、それだけで自動的に在留資格(ビザ)が取り消されたり国外退去になったりするわけではなく、罪名や判決内容、在留資格ごとに入管法上の「退去強制事由」に該当するかどうかかが異なります。
このように、刑事裁判での結果と在留資格の処遇は密接に関わりますが、法律上は別個の手続であることを理解しておく必要があります。
2. 強制送還(退去強制)とは何か
強制送還(退去強制)とは、入管法に定められた退去強制事由に該当する外国人に対し、日本からの退出を強制する手続です。一般には「強制送還」と呼ばれますが、法令上は退去強制といいます。
退去強制となる具体的な要件は入管法24条に列挙されており、不法入国・オーバーステイ(不法残留)など在留資格がない場合のほか、一定の犯罪行為で有罪判決を受けた場合などが含まれます。要件に該当すれば、現在有効な在留資格を持っている場合でも強制的に退去させられ、日本から出国しなければなりません。
退去強制の手続としては、まず入管当局による調査・収容が行われ、その後に審理を経て退去強制令書(Deportation Order)が発付されます。令書が発付されると原則的には本国送還が実行されます。
刑事事件で1年を超える実刑判決を受けた場合には、刑期を務め終えた時点で刑務所から出入国在留管理局に身柄が引き渡され、直ちに退去強制手続が開始されるのが通常です。1年を超える実刑判決の場合、在留資格の種類に関わらず、退去強制令書が発付されれば日本から退去しなければなりません。
強制送還と在留資格取消しの違い
なお、強制送還(退去強制)はあくまで「国外退去」を命じる手続であり、在留資格そのものを剥奪する在留資格取消し(入管法22条の4)とは異なります。在留資格の取消しは、虚偽申請や在留目的に反した活動などビザ取得・維持上の不正行為に対して行われる行政処分ですが、刑事事件による処分は通常こちらではなく退去強制手続で対処されます。
3. 刑事処分別に見る在留資格への影響(不起訴、略式罰金、執行猶予、実刑)
刑事事件の結果として考えられる処分ごとに、外国人の在留資格へどのような影響が及ぶかを見てみましょう。ここでは不起訴、略式罰金、執行猶予付き判決、実刑判決の4パターンに分けて解説します。
• 不起訴処分(起訴猶予など)
検察官が事件を起訴しない場合(不起訴)には、有罪判決自体が言い渡されないため、前科も付かず入管法上の退去強制事由に該当することもありません。
したがって、この場合は在留資格がただちに影響を受けることはなく、日本に引き続き在留できます。もちろん今後ビザ更新時に事件歴を問われる可能性はありますので、起訴猶予の場合には十分反省をしている必要があります。
不起訴にできるかどうかは刑事手続上非常に重要であり、不起訴獲得に向けた弁護活動(被害者との示談成立など)が在留資格を守る観点からも有効と言えるでしょう。
• 略式罰金(略式命令による罰金刑)
略式手続によって罰金刑の有罪判決を受けた場合、多くの犯罪では罰金刑それ自体は入管法上の退去強制事由には該当しません(罰金刑でも退去強制となる犯罪もあります)。
したがって、この時点で直ちに強制送還の対象となることはありません。ただし油断は禁物です。罰金刑であっても前科には変わりありませんので、次回の在留期間更新申請で不許可になる可能性は否定できません。入管のガイドラインでは「素行が不良でないこと」が在留継続の要件とされており、退去強制事由に準ずるような刑事処分(有罪歴)がある場合には素行不良と判断され、更新が消極視されることがあります。
つまり、罰金刑であっても、ビザの延長審査や永住許可申請ではマイナス評価となり得る点に注意が必要です。
• 執行猶予付き判決
執行猶予が付いた有罪判決(懲役刑・禁錮刑の言渡し)が確定した場合、その刑期を実際に服役する必要はありません。しかしながら在留資格への影響は、刑の長さや在留資格の種類によって異なります。
Aさんのような「日本人の配偶者等」や永住者・定住者などのビザを持つ場合は、判決の内容が執行猶予付きであったり刑期が1年以内であれば、基本的に退去強制事由とはなりません。
たとえば執行猶予3年付き拘禁刑1年の判決であれば、刑期1年かつ猶予付きですので、入管法24条の退去強制事由に該当せず強制送還は免れます。一方、就労ビザや留学ビザなど(入管法別表第一の在留資格)の場合には注意が必要です。これらの在留資格では、窃盗や傷害など一定の類型の刑法犯罪について執行猶予付き判決であっても退去強制の対象となると入管法で定められています。
つまり、「日本人の配偶者等」ビザでは執行猶予が付けばひとまず在留継続可能なのに対し、入管法別表第一の在留資格では執行猶予でも強制送還となるケースがある点に留意が必要です。
執行猶予付き判決の場合、退去強制事由に該当しなければ在留資格自体は直ちに取り消されたりはしません。
Aさんのケースでも、もし拘禁刑に執行猶予が付けば、刑事罰としては日本社会内での更生の機会が与えられるという趣旨から、その時点で強制送還とはならない可能性が高いです。ただし前述のとおり前科が付くことに変わりはなく、入管当局から素行不良と判断されれば在留期間の更新許可が下りないリスクがあります。執行猶予中は特に真摯に更生に努め、違反行為を繰り返さないことが肝心です。
• 実刑判決(執行猶予なしの拘禁刑)
執行猶予の付かない実刑判決を言い渡され確定すると、刑務所へ収容されることになります。この場合、刑期の長さが在留資格への影響を左右します。刑期が1年を超える実刑判決を受けた場合には、在留資格の種類を問わず退去強制事由に該当し、服役終了後に強制送還となります。
たとえば拘禁刑2年の実刑判決が確定したような場合、たとえ日本人の配偶者であっても退去強制の対象から逃れることはできません。逆に刑期が1年以内の実刑であれば、「日本人の配偶者等」や永住者などのビザであれば退去強制事由には該当しません。
もっとも、実刑判決が出るような事案では刑期が1年を上回ることも多く、また執行猶予が付かない重みを入管も重視します。Aさんのような配偶者ビザ保持者でも、実刑となれば強制送還の危機が高まると覚悟しなければなりません。
以上をまとめると、日本人配偶者等の在留資格を持つ外国人の場合は、比較的在留資格が手厚く守られており「罰金刑・執行猶予付き・1年以内の実刑」であれば直ちに強制退去とはならないケースが多くなっています。
一方でそれ以外の在留資格の外国人は、執行猶予判決や短期の実刑であっても退去強制となる場合が多い点が大きな違いです。
ただし繰り返しになりますが、退去強制を免れて在留資格が維持できたとしても、有罪判決を受けた事実自体が将来の在留継続を不安定にする要因となります。刑事処分が軽く済めばそれに越したことはありませんが、「在留資格があるから安心」と油断せず、次章以降で述べるような対策を講じることが重要です。
4. 退去強制を回避・軽減するために重要なポイント
Aさんのように刑事事件を起こしてしまった外国人が、何とか日本に残り在留資格を維持するためには、刑事手続と入管手続の両面で適切な対策を講じることが大切です。以下に退去強制を避けたり在留継続の望みをつなぐための重要ポイントを説明します。
• 早期に適切な刑事弁護活動を行う
在留資格への影響を最小化するには、まず刑事手続で可能な限り軽い結果を目指す必要があります。具体的には、不起訴や減刑を得るために被害者との示談成立や真摯な反省の意思表示に努めましょう。被害企業への謝罪文提出や損害賠償(修復)の実施は、検察官の起訴判断や裁判所の量刑に良い影響を与え得ます。結果として不起訴や罰金刑、執行猶予付き判決などに持ち込めれば、退去強制事由に該当しないか軽微となる可能性が高まります。早い段階で弁護士に依頼し、証拠の収集や示談交渉など専門的な弁護活動を開始することが肝要です。
• 家族・生活状況の情報を充実させる
入管手続では、その外国人が日本で引き続き生活することについての人道上・社会上の事情が考慮されます。日本人配偶者や未成年の日本国籍の子どもがいる場合、家族結合の重要性は大きなプラス要素です。Aさんの場合も、日本人の配偶者と安定した家庭を築いていること、生活の本拠が日本にあることを積極的に示す資料を揃えるべきです。例えば、婚姻関係の実態を示す写真アルバム、家計を共にしている証拠、地域社会での活動状況などを提出することで、「日本で生活を続ける相当の理由」を明らかにします。
これらは後述する在留特別許可の判断でも重視されるポイントです。
• 在留特別許可の制度を理解し準備する
仮に有罪判決によって退去強制事由に該当してしまった場合でも、「在留特別許可」という制度によって引き続き日本に在留できる可能性があります。
在留特別許可とは、退去強制手続に入った外国人について法務大臣の裁量で例外的に在留を認める制度で、家族関係や在留経緯など様々な事情を考慮して判断されます。退去強制事由に当てはまるからといって即座に希望を失う必要はなく、具体的事情次第では在留特別許可が下りる余地があります。そのためには、手続きにおいて有利な事情をしっかり主張・立証することが重要です。家族の嘆願書や雇用主からの陳情書、本人の反省文なども提出し、地域や家庭に根差して更生できることを訴えていきます。
• 専門家の助力を得て手続きを進める
刑事手続中から、将来の在留継続に向けた手を打っておくこともポイントです。例えば弁護士が、判決後を見据えた対策(在留特別許可の資料準備等)を早期に開始するケースもあります。
• 再犯防止と誠実な態度
最後に基本的なことですが、二度と違反を繰り返さないと示すことが何より大切です。執行猶予中であればなおさら、遵法意識の向上や更生プログラムへの参加など前向きな努力を見せましょう。入管当局は外国人の「素行」を重視します。反省の色がないと判断されれば在留特別許可はもちろん更新許可も得られません。Aさんも、事件後はカウンセリングを受けて衝動的な行為を抑制する訓練をするなど、再発防止策を講じていることを示せればプラスに働くでしょう。
以上のようなポイントを押さえて行動することで、退去強制を回避したり在留継続の可能性を高めたりすることができます。特に在留特別許可は「最後の望み」とも言える制度ですので、諦めずにできる限りの準備をして臨むことが重要です。もちろん、その過程では専門知識を持つ弁護士の力を借りることを強くお勧めします。
5. 刑事事件後に在留資格は再取得できるのか
万一、刑事事件の結果として在留資格を失った(例:強制送還されてしまった、在留期間更新が不許可となり出国した)場合、再び日本で在留資格を取得することは可能なのでしょうか。
結論から言えば可能性はありますが、一定の制限や条件があります。
まず、強制送還となった場合の再入国禁止期間について知っておきましょう。入管法では、一度退去強制された外国人に対し、一定期間日本への入国を認めない措置(上陸拒否事由)が定められています。
一般的には、初回の退去強制で5年間、情状が重い場合や再度の退去強制の場合は10年間は日本に入国できないと言われています。さらに、犯罪の種類や刑期によっては無期限の上陸拒否(事実上の永続的入国禁止)とされるケースもあります。例えば薬物犯罪で強制送還になった場合などは、原則は再入国不許可ですので、非常に厳しくなります。
では、この期間が経過すれば自動的に再度ビザを取得できるのかというと、必ずしも簡単ではありません。再取得には通常のビザ申請と同様に審査があり、過去の犯罪歴が考慮されます。たとえ5年・10年の入国禁止期間が明けたとしても、申請時に前科や強制退去歴が判明すれば、入管はその素行を厳しくチェックします。
日本人の配偶者ビザを再度申請する場合でも、「過去に日本で犯罪を犯しているが本当に更生して問題なく生活できるか」という点が審査で問われるでしょう。
一方で、上陸拒否期間中であっても特別に再入国が許可される制度も存在します。それが「上陸特別許可」(入管法第5条の特例措置)です。
上陸特別許可とは、上陸拒否事由(入国禁止)の対象者であっても、家族の状況など人道上の理由がある場合に例外的に入国を認める制度です。例えば、日本にいる配偶者や子どもと離ればなれになるのは人道上望ましくないと判断されれば、5年や10年の期間を待たずして再入国が認められるケースもあります。このように、配偶者との生活再建など強い事情がある場合には、在外公館(日本大使館・領事館)を通じて上陸特別許可を求める申請を検討すると良いでしょう。
もっとも、上陸特別許可を得るのは容易ではなく、法務大臣の広範な裁量に委ねられます。申請にあたっては、家族関係証明や身元保証書など数多くの資料を提出し、人道的配慮に値する十分な理由があることを主張しなければなりません。配偶者との関係や日本での更生状況、本人・配偶者の健康状態など、考え得る事情をできるだけ具体的に示す必要があります。専門家の支援を受けながら準備を進めることが望ましいでしょう。
まとめると、刑事事件によって一度在留資格を失っても、再取得の道が完全に閉ざされるわけではありません。一定期間経過後に通常のビザ申請をするか、上陸特別許可の制度を利用して早期の再入国を図るか、といった選択肢があります。ただし再チャレンジには過去の反省と信頼回復が不可欠です。再び日本で生活したいと願うなら、禁止期間中も含め真摯に更生に努め、家族とも協力して準備を進めましょう。
6. 外国人事件に強い弁護士へ早期に相談すべき理由
外国人が絡む刑事事件では、以上述べたように刑事手続と入管手続が密接に関わり合うため、早い段階からその両面に精通した弁護士に相談・依頼することが非常に重要です。専門の弁護士に早期相談すべき理由をいくつか挙げます。
• 的確な見通しと方針を立てられる
一般の方にとって、刑事裁判と在留資格審査の両方を見据えて行動するのは困難です。しかし経験豊富な弁護士であれば、「この在留資格なら執行猶予が付けば退去強制にならない」「この罪名だと有罪になれば強制送還は避けにくい」等、法的状況を正確に把握した上で最善策を提案できます。「この罪で有罪になったら強制送還されるのか?」といった疑問がある場合も、早めに専門の弁護士にご相談ください。在留資格によっては心配しなくてよい場合もありますし、早期に対応して適切な弁護活動を行うことで、日本に在留し続ける道が開けることもあります。
• 不起訴や執行猶予獲得のための戦略
刑事弁護に強い弁護士であれば、不起訴処分や減刑・執行猶予を勝ち取るための戦略を立ててくれます。特に外国人の場合、不起訴にできれば在留資格への直接影響を避けられるため、その価値は非常に高いです。また起訴された後でも執行猶予付き判決となるよう、被告人(外国人)の反省や更生の努力を裁判官に伝える弁論を展開するなど、専門的ノウハウがあります。
早期に相談すればするほど有利な証拠集めや示談交渉の時間も確保でき、結果的に在留資格を守ることにつながります。
• 入管対応のノウハウ
外国人事件に強い弁護士は、入管での手続についても豊富な知識があります。たとえば判決後の退去強制手続への対処法(口頭審理での主張準備など)も心得ています。一般の刑事弁護士の場合、判決が出た後の入管対応までは手が回らないこともありますが、外国人事件に精通した弁護士であれば刑事手続と並行して入管手続についてもサポートが可能です。
特に在留特別許可の申請には専門的な書類作成や主張が必要になるため、プロの助力が不可欠です。
• 言語・文化面でのサポート
これは事務所にもよりますが、外国人事件に慣れた弁護士事務所では英語対応はもちろん、必要に応じて通訳の手配などもスムーズです。外国人本人や家族とのコミュニケーションに配慮し、日本の制度を分かりやすく説明してくれるでしょう。日本語が十分でない方でも安心して自分の状況を伝えることができ、家族への情報伝達も適切に行ってもらえます。言葉の壁を理由に誤解や手続の遅れが生じるリスクを減らすためにも、経験豊富な弁護士の存在は大きな助けとなります。
以上のように、早期に専門家へ相談することで得られるメリットは計り知れません。特にAさんのケースでは、まだ捜査段階であるため今後の対応次第で結果を大きく好転させられる余地があります。逆に対応が遅れると、不起訴のチャンスを逃したり、入管への説明準備が間に合わなかったりするリスクがあります。「もしかすると強制送還になるのでは…」と不安がある方こそ、できるだけ早く専門家に相談し、最善の道を探ってください。
7. 事務所紹介
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、外国人の刑事事件と入管手続に強い法律事務所です。札幌・仙台・東京・千葉・横浜・名古屋・大阪・福岡など全国に拠点を構え、各地域で外国人案件に精通した弁護士が在籍しております。刑事事件を主に取り扱う法律事務所として培った豊富な経験を活かし、捜査段階から起訴後まで切れ目なくサポートいたします。
また当事務所の弁護士は入国在留手続申請取次の資格(届出)を有しており、ビザ・在留資格手続についても高度な知識と実績を備えています。刑事弁護と入管手続の両面からワンストップで対応できるため、例えば「起訴猶予を目指す活動」と「在留特別許可の準備」を同時並行で進めることも可能です。
実際に、これまで当事務所では多くの外国人の方々の刑事事件を手掛け、在留継続のための対策まで包括的に支援してきました。
日本人の配偶者として在留する方の事件はもちろん、留学生や就労ビザの方の事件にも対応し、不起訴や執行猶予の獲得、さらには退去強制手続における在留特別許可の許可事例もございます。経験豊富な弁護士が丁寧に対応し、依頼者様・ご家族様の不安を和らげることを心掛けております。
初回の法律相談は無料で承っており、24時間365日ご予約が可能です。
「威力業務妨害で捜査中だが在留資格が心配」「家族が逮捕されたが日本に残れるか不安」など、どんな些細なことでも構いません。ぜひ一度、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。私たちは依頼者様とそのご家族に寄り添い、日本でこれからも生活を続けられる未来を取り戻すために全力を尽くします。お気軽にお問い合わせいただければ幸いです。
日本人配偶者ビザで強盗事件を起こしたら?在留資格・強制送還への影響を解説

想定事例
中国人のAさんは日本人の妻と結婚し、「日本人の配偶者等」の在留資格で10年間日本に暮らしています。ある日、Aさんがコンビニ強盗の容疑で警察に逮捕されました。
Aさんの家族は、「刑務所に行くのか」「ビザはどうなるのか」「強制送還(きょうせいそうかん)されるのか」と不安に思っています。現在、Aさんは警察の取調べを受けており、家族は今後の刑事手続と在留資格への影響について頭を抱えています。
外国人が刑事事件を起こした場合に問題になる2つの手続
外国人が日本で刑事事件を起こすと、「刑事手続」と「入管手続」という2つの別個の手続が問題になります。
まず一つは警察・検察・裁判所による刑事手続であり、これは日本人の場合と同様に、犯罪の嫌疑に対して逮捕・勾留(又は在宅捜査)、起訴、裁判と進み、有罪なら刑罰が科されます。
もう一つは出入国在留管理庁(入管)による入管手続で、こちらは日本に在留してよいかを判断する行政手続です。刑事手続で有罪となった場合、その内容次第では入管法上の退去強制手続(強制送還の手続)が開始される可能性があります。
重要な点は、この2つの手続は別個に進行するということです。刑事裁判で有罪か無罪かに関係なく、入管法の定める退去強制事由(後述)に該当すれば、行政上の手続で強制送還が検討されます。たとえ刑事罰を受けなくても入管法違反(例:不法滞在)があれば退去強制の対象となりえるのです。
なお、逮捕・勾留されたからといって直ちに在留資格(ビザ)が失われることはありません。ただし、身柄拘束中に在留期間が切れてしまうと更新が難しくなる可能性があるため注意が必要です。外国人が事件を起こした場合、刑事弁護においても在留資格への影響を常に意識することが重要となります。
強制送還(退去強制)とは何か
強制送還(退去強制)とは、入管法に基づき「日本に在留させることが適当でない外国人」を強制的に本国等へ送還する手続です。
法律上の根拠は出入国管理及び難民認定法(入管法)第24条で、ここに強制送還の理由となる退去強制事由が具体的に列挙されています。典型例として、不法入国・不法滞在、資格外活動の重大な違反、一定の重大犯罪の有罪判決などが該当します。
強制送還は刑罰ではなく行政上の措置です。そのため、刑事罰で通常要件となる故意がなくても、客観的に入管法に違反していれば手続が進みます。
たとえば、在留期限をうっかり失念してオーバーステイしてしまった場合でも、法律上は退去強制の対象となりえます。
もっとも、退去強制手続には一定の手続保障も設けられており、入国審査官による違反調査の後、特別審理官による口頭審理、さらに異議を申出れば法務大臣による裁決の機会などが与えられます。また、収容期間中の仮放免(一時的な釈放)や、最終的に在留を例外的に認める在留特別許可の制度もあります。
要するに、強制送還とは「日本から退去させる」ための行政手続ですが、それに至るまでに法定のプロセスを経て、公平性や人道上の配慮も考慮される仕組みになっています。
刑事処分別に見る在留資格への影響
刑事事件の結果(刑事処分)がどうなるかによって、外国人の在留資格への影響は大きく異なります。以下では、不起訴・罰金・執行猶予付き判決・実刑判決の場合に分けて説明します。
不起訴(起訴猶予・嫌疑不十分など)
検察により不起訴処分となった場合は有罪判決が出ていないため、基本的に在留資格への直接の影響はありません。入管法上の退去強制事由にも該当しません。
ただし不起訴とはいえ検挙歴は残るため、将来的に在留資格更新や永住許可・帰化申請の審査では考慮される可能性があります。とはいえ、有罪による前科が付く場合に比べれば影響は格段に小さく、不起訴を得られれば在留資格維持の面では最善と言えます。
罰金刑
罰金刑とは比較的軽微な犯罪に科される金銭の支払いを命じる刑罰です。罰金のみで済んだ場合、入管法上の退去強制事由には通常該当しません。なぜなら退去強制の主な事由は後述するように拘禁刑の場合だからです。
ただし、犯罪の種類によっては注意が必要です。たとえば薬物犯罪の場合、たとえ刑が罰金であっても有罪となれば退去強制事由に該当しうる規定があります(後述)。一般的な窃盗や過失運転致傷などで罰金刑にとどまった場合は、直ちに在留資格が取り消されたり強制送還となることはないでしょう。
執行猶予付き判決
執行猶予(しっこうゆうよ)とは、拘禁刑を言い渡すものの、その刑の執行を一定期間猶予し、猶予期間中に犯罪を犯さなければ刑務所に入らずに済む制度です。執行猶予付きの有罪判決を受けた場合、原則は退去強制事由には該当しません。入管法24条には「無期または1年を超える拘禁刑に処せられた者(※執行猶予付きは除く)」との規定があり、これが外国人一般に適用される基本的な強制送還理由です。
つまり、執行猶予が付いた場合は退去強制の対象から除外されるのが原則です。たとえばAさんが強盗事件で拘禁刑3年執行猶予5年の判決を受ければ、刑期自体は「1年を超える拘禁刑」ですが執行猶予付きのため、この規定上は強制送還とはなりません。
ただし注意すべき例外もあります。薬物犯罪では、拘禁刑の執行猶予付き判決であっても退去強制の対象になると入管法に定められています。
また、Aさんは日本人配偶者等の在留資格ですが、もしこれが就労ビザ等(入管法別表第1の在留資格)であった場合には事情が異なります。
別表第1の在留資格の外国人が一定の犯罪(暴力犯罪や窃盗など)で拘禁刑に処せられた場合、たとえ執行猶予付きでも退去強制の対象となりえます。これは入管法24条4号の2という規定によるものです。
一方、日本人の配偶者等や永住者など別表第2の在留資格についてはこの規定は適用されません。
したがってAさんのように日本人配偶者ビザを持つ方であれば、執行猶予付き判決だと退去強制事由にはあたりません。それでも前科が付くこと自体は将来の在留審査にマイナスですので、執行猶予だからといって安心はできません。
実刑判決(拘禁刑の執行猶予なし)
いわゆる実刑となり刑務所に服役する判決を受けた場合、刑期の長さがポイントとなります。入管法は「無期又は1年を超える拘禁刑」の実刑に処された外国人を強制送還の対象と定めています。したがって拘禁刑の刑期が1年を超える実刑判決が確定した場合、原則として刑期満了後に強制送還となります。
具体例として、Aさんが強盗罪で拘禁刑5年の実刑判決を受けた場合、服役終了後に在留特別許可が認められない限り本国に送還される見込みが高いです。一方、実刑でも刑期が1年以下であった場合(例:拘禁刑10か月など)は、先述の規定上の「1年を超える」には該当しないため退去強制事由には当たりません。もっとも、強盗のような重大犯罪では1年以下の刑になることはないでしょう。
留意すべき特殊ケースとして、犯罪の種類による退去強制事由があります。先述の薬物犯罪では刑期に関係なく有罪判決が出れば強制送還となります。また売春に直接関係する業務への従事は、刑事裁判の結果を問わず退去強制の対象とされています。
まとめると、実刑判決で刑期が1年を超えれば退去強制となり、1年以下であれば退去強制とはならない、ただし例外はあるということです。
退去強制を回避・リスク軽減するために重要なポイント
重大な刑事事件では、在留資格へのダメージを最小限にするため早い段階からの対策が肝心です。強制送還を回避(そもそも退去強制事由に該当しない状態に)したり、やむを得ず退去強制事由となる場合でも影響を軽減するために、次のポイントが重要です。
不起訴を目指すこと
前述のとおり、不起訴になれば在留資格への直接の影響は避けられます。不起訴獲得のためには早期に弁護士を通じて被害者と示談を成立させることなどが有効です。
実際、外国人事件では有罪になれば執行猶予の有無に関係なく退去強制や更新不許可等のおそれが高まるため、不起訴処分を得ることが非常に大切とされています。不起訴のためにできる限りの弁護活動を受けられるようにしましょう。
在留期限の管理
逮捕・勾留中に在留期間の満了日が来てしまうケースでは注意が必要です。身柄拘束中でも可能な限り在留期間更新の申請を行い、オーバーステイの状態にならないようにします。仮に起訴され裁判中でも、在留期間中であれば更新申請は可能です。
しかし起訴後は更新許可が下りにくくなることもあるため、弁護士と相談し早めに手続きをしておくことが望ましいです。
在留期間を切らしてしまうとそれ自体が退去強制事由(不法残留)に該当してしまい、強制送還を回避するハードルが一気に上がってしまいます。
執行猶予判決の獲得
起訴を免れられなかった場合でも、次善の策として執行猶予付き判決を目指す意義は大きいです。日本人と違い外国人の場合は、有罪判決を受ければ執行猶予であっても安心できませんが、少なくとも入管法上の一般的な強制送還事由(無期または1年超の実刑)からは外れるため、在留継続の可能性が残ります。
執行猶予を得るには裁判で情状を酌んでもらう必要があります。初犯であること、被害者と示談が成立していること、深く反省して監督する家族もいて再犯のおそれが低いこと等、裁判官に執行猶予相当と判断してもらえる事情を丁寧に主張・立証します。
もっとも執行猶予は3年以下の言渡しでなければ付けられないところ、強盗罪は法定刑が5年以上なので、このままでは執行猶予は付けられず、法定刑を下げる酌量減軽というものが認められないといけないため、執行猶予のハードルは高いです。
被害者への真摯な対応
被害者のいる事件では、早期に謝罪と賠償を行い被害者の許し(宥恕(ゆうじょ))を得ることが重要です。被害者と示談が成立すれば、不起訴になったり執行猶予が付く可能性が高まります。
刑事処分が軽くなれば前述のとおり退去強制に該当しないか、あるいは在留特別許可が認められる余地も広がります。被害者対応は在留資格維持の観点からも非常に大切です。
専門家への早期相談
逮捕直後から外国人事件に詳しい弁護士に相談・依頼することで、退去強制を避けるための準備を迅速に始められます。不起訴や執行猶予を得てそもそも退去強制事由に該当しないようにすることに加え、
例えば、入管から身柄を拘束された場合に備えて仮放免申請の準備をしたり、後述する在留特別許可の申請資料を集め始めたりといった対策です。起訴後、有罪判決で退去強制事由に該当してしまった場合でも、口頭審理での主張や在留特別許可の申請によって日本に引き続き残れる可能性があります。
時間との勝負になりますので、一刻も早く専門家に相談することが肝心です。
以上のようなポイントを踏まえ、事件の段階ごとに最善を尽くすことで、強制送還を「避けられるものは避け、避けられない場合でも救済の道を探る」ことが可能になります。
刑事事件後に在留資格は再取得できるのか
もし残念ながら刑事事件により在留資格を失った場合、あるいは退去強制により一度国外へ送還された場合、再び日本に来て在留資格を取得することは可能なのでしょうか。
結論から言えば可能性はゼロではありませんが、厳しい条件があります。
まず、退去強制により国外退去となった場合、一定期間は日本に再入国できません。この期間を「上陸拒否期間」といい、通常は5年間と定められています。例えばAさんが強制送還された場合、原則として送還の日から5年は日本に来ることができません。
過去に不法滞在や退去強制歴が重ねてある人だと10年間に延びます。
一方、自ら出国命令制度を利用して自主的に出国したような場合は1年に短縮される制度もあります(ただしこれは主にオーバーステイなどの行政違反に適用されるもので、刑事事件で有罪になったケースでは通常利用できません)。
さらに問題なのは、重大な犯罪による有罪歴がある場合の扱いです。入管法は上陸拒否事由として「日本または他国の法律で1年以上の刑に処せられた者」を挙げており、この場合は期間の制限なく入国を拒否される対象となります。
例えばAさんが拘禁刑5年の実刑判決を受け送還された場合、その有罪歴自体が将来的にも日本入国を拒まれる要因となり、5年や10年経てば自動的に戻れるというものではありません。この「1年以上の刑」には執行猶予付き判決も含まれます。したがって、重大犯罪で有罪となった外国人は、たとえ退去強制後に年月が経過しても、再来日は非常に困難です。
もっとも、絶対に再入国できないわけではありません。入管法には上陸拒否期間中であっても特別な事情がある場合に入国を許可しうる「上陸特別許可」の制度があります。これは法務大臣の裁量で行われるもので、例えば日本にいる配偶者や子供と生活を共にする必要があるなど人道上または公益上の考慮すべき事情がある場合に、例外的に再入国が認められることがあります。
実務上は、日本人配偶者との婚姻関係や日本で生まれ育った子供の存在などがあるケースで上陸特別許可が検討されます。ただし、そのハードルは低くなく、過去の犯罪の内容・経過年数・反省状況、日本に残してきた家族の状況、生活基盤、さらには本国や日本の社会状況まで総合的に考慮されます。法務省・入管庁は許可事例・不許可事例を公表していますが、やはり家族の結びつきが強く反省と更生の見込みがある場合でも許可は例外的です。
仮に上陸拒否期間(原則5年)が経過した後であっても、過去に退去強制された事実は入管当局に把握されています。そのため、再度の在留資格認定証明書交付申請(ビザ申請)をしても慎重に審査され、許可が下りないケースも少なくありません。特に犯罪歴が重大であれば「本当に再来日させてよい人物か」と厳しく見られます。
ですから、退去強制後に再び日本で暮らしたいと考える場合は、専門家のサポートのもとで周到な準備をする必要があります。具体的には、日本に残る家族の嘆願書や身元保証、本人の反省文・誓約書、本国での更生状況を示す資料などを揃え、再入国が認められるだけの特別な事情を丁寧に主張していくことになります。
外国人事件に強い弁護士へ早期に相談すべき理由
外国人が刑事事件を起こした場合、上記のように刑事手続と入管手続が絡み合い、対応すべき課題が非常に増えます。そこで鍵となるのが、外国人事件を数多く扱った経験のある弁護士に早めに相談・依頼することです。
専門の弁護士であれば、逮捕直後の取調べ対応から不起訴獲得に向けた活動、起訴後の裁判での情状主張、さらには有罪判決後の退去強制手続への備えまで、一貫して的確なアドバイスと弁護活動を提供できます。在留資格の問題は刑事手続の段階から切り離せない重要事項です。
例えば「執行猶予判決を取れたから安心」と思っていたら入管法違反で執行猶予の有無を問わず強制送還となってしまった、という事態は避けねばなりません。専門弁護士は在留資格上のリスクを踏まえて戦略を立てられるため、在留資格を守る観点を盛り込んだ刑事弁護が可能です。
また、外国人の依頼者の場合、言葉や文化の違いからくる不安や誤解にも配慮が必要です。母国語で十分にコミュニケーションが取れないと、自分の状況を正確に伝えられず不利益を被るおそれがあります。外国人事件に対応している弁護士事務所であれば、必要に応じて通訳人を手配するなど、言語面でのサポートを受けられる場合があります。
さらに、外国人事件ではスピード対応も欠かせません。逮捕後は時間との勝負であり、初動が遅れると不起訴の可能性を逃したり、後の入管手続で十分な準備の時間がとれなくなったりします。外国人事件に精通した弁護士であれば、迅速に駆けつけ、初回面会(接見)や必要な申請をスピーディーに行えます。
当事務所では土日祝日や夜間でも無料相談・初回接見サービスの受付を行っており、緊急の依頼にも迅速に対応可能な体制を築いています。このような迅速な対応によって、早期に手を打てる事項(在留資格の更新申請、証拠収集、示談交渉など)は一刻も早く着手できます。
総じて、外国人の刑事事件では刑事と入管の両面に通じた専門家の助力が不可欠です。早期に適切な弁護士に相談することで、「刑事上の不利益の最小化」と「在留資格の防衛」という2つの目標に向けた戦略を立案・実行できるのです。Aさんの家族も、不安に思ったらできるだけ早く外国人事件に強い弁護士へ相談し、今後取り得る選択肢についてアドバイスを受けるべきでしょう。
事務所紹介(弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所)
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、外国人の刑事事件で今回のAさんのようなお悩みを抱える方にとって心強いパートナーです。当事務所の特徴と強みを以下にご紹介します。
刑事事件専門の豊富な実績
当事務所は刑事事件・少年事件に特化した法律事務所であり、所属弁護士全員が刑事弁護に専念しています。不起訴処分の獲得や身柄解放の経験も豊富です。元裁判官・元検察官など刑事手続の専門家も所属し、難しい事件にもチームで対応できる体制があります。
外国人事件に精通した体制
当事務所には外国人の刑事事件の弁護実績が豊富な弁護士が多数在籍しています。また外国の方からのご相談では、必要に応じて対応可能な通訳人を探し、言語面にも配慮しながら対応しています。入管業務に詳しい行政書士と連携し、在留特別許可申請やビザ手続のサポートも行っています。
365日24時間のスピード対応
刑事事件は時間との勝負であり、当事者やご家族の不安を一刻も早く解消するために年中無休・24時間体制で相談受付を行っています。突然の逮捕にも迅速に弁護士が初回接見に駆けつけ、夜間・休日でも無料相談のご予約が可能です。
全国主要都市に支部を展開し、地域を問わず迅速な現地対応が可能な点も当事務所の強みです。遠方のご家族からの依頼でも、各支部が連携して柔軟に対応し、案件に最適な弁護士チームを編成します。
依頼者に寄り添う姿勢
当事務所では初回相談は無料で承っており、経済的負担を気にせずご相談いただけます。「何から相談してよいかわからない」「弁護士に頼んでいいのか迷っている」といった段階でも遠慮なくお問い合わせください。
ご依頼後は担当弁護士が密な連絡と十分な説明を心掛け、依頼者やご家族に寄り添って事件解決に当たります。外国人の方にも安心して頂けるよう、母国語での報告や丁寧なフォローを徹底しています。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、以上のような体制で刑事弁護と入管対応の両面から全力サポートいたします。在留資格を持つ外国人の刑事事件でお困りの方は、ぜひ当事務所にご相談ください。早期の段階から介入することで、不起訴処分の獲得や強制送還の回避に向けた最善策を講じ、依頼者の権利と日本での生活を守るために尽力いたします。どうか一人で悩まず、専門家とともに最善の道を切り拓いていきましょう。
日本人の配偶者等ビザで名誉毀損事件を起こしたら?在留資格への影響と対応を解説

Aさん(40歳、フランス国籍)は日本人の妻と結婚し、2018年から日本で暮らしています。ある日、SNS上の書き込みをめぐって知人から名誉毀損の告訴を受け、警察の捜査対象となりました。初めての刑事事件に戸惑うAさんは、「このまま日本にいられるのか」「退去強制になるのでは」と不安に感じています。
そこで本記事では、名誉毀損事件が在留に与える影響や対応方法について解説します。
1. 外国人が刑事事件を起こした場合に必ず問題になる2つの手続(刑事手続と入管手続の関係)
刑事手続と入管手続の2つが並行して問題になります。
刑事手続とは警察の捜査や裁判など犯罪に対する手続きで、入管手続とは在留資格(ビザ)に関する手続きです。これらは別個に進行し、互いに影響します。
刑事手続では逮捕・起訴・裁判を経て刑事処分が決まります。
一方、入管手続では刑事処分の結果に応じて退去強制(強制送還)が検討されます。退去強制とは、日本が法令や社会秩序の観点から在留を認めないと判断した外国人を、行政手続によって日本国外へ強制的に送還することです。
日本で正式な在留資格を持つ外国人は、逮捕・勾留された段階では在留資格自体を直ちに失うことはありません。しかし、有罪になり一定の条件に該当すると入管手続が動き、在留資格を失い強制送還される可能性があります。
つまり「刑事罰を受けるか」と「日本に住み続けられるか」は別の問題であり、両面に注意が必要です。
2. 強制送還(退去強制)とは何か(定義、処分別のリスク、在留特別許可)
退去強制(強制送還)とは、入管法に定められた手続きで、一定の条件下で外国人を強制的に本国へ送り返す処分のことです。
名誉毀損の場合、刑の重さ次第で退去強制手続の対象になるかが決まります。
処分別のリスク
一般に、刑事処分が重いほど退去強制のリスクが高まります。たとえば長期の拘禁刑などは退去強制事由に該当しやすく、入管当局が送還手続きを開始する可能性が高いです。一方、刑が軽微であれば直ちに強制送還とはならないケースもあります。
名誉毀損は比較的軽い犯罪類型であり、科される刑も軽い傾向があります。そのため軽微な刑罰(罰金刑や短い執行猶予付き判決など)の場合は、必ずしも強制送還の対象になるとは限りません。
逆に重い刑罰になった場合(例えば実刑で長期の拘禁刑など)は、退去強制手続開始のリスクが高まります。特に1年を超える拘禁刑が科された場合は、入管法上退去強制事由に該当しうるため注意が必要です。
在留特別許可
退去強制の条件に該当しても、一定の場合には在留特別許可が認められることがあります。在留特別許可とは、本来は退去すべき立場の外国人について、法務大臣の裁量で日本への在留を特別に許可する制度です。
例えば日本人の配偶者であったり日本に生活の本拠があったりする場合、人道的配慮から在留が許可されるケースがあります。
日本人の配偶者等のビザを持つ人は身分関係に基づく在留資格であるため、家族関係や生活実態が考慮され、在留特別許可が与えられる可能性が高まります。
もっとも、在留特別許可がもらえるかどうかは個別事情の総合判断ですので、「日本人と結婚しているから大丈夫」と安心せず、適切な対応が必要です。
3. 刑事処分別に見る在留資格への影響(不起訴、略式罰金、執行猶予、実刑)
不起訴(起訴猶予・嫌疑不十分など)
検察が起訴しなかった場合は、刑事上の前科がつかないため在留資格への直接の影響は基本的にありません。名誉毀損は被害者の告訴が必要な親告罪なので、被害者が告訴を取り下げれば不起訴となります。不起訴になれば退去強制事由には該当せず、現在の在留資格のまま日本に滞在できます。
略式罰金(罰金刑)
略式手続により罰金刑となった場合(例えば名誉毀損で罰金○○万円)は、有罪判決ではありますが比較的軽い処分です。
入管法24条の列挙する重大事由には該当せず、原則として直ちに退去強制とはなりません。在留資格はその時点では維持され、次回の在留期間更新まで継続します。ただし、更新審査の際に前科が考慮され、「素行に問題がある」と判断されると更新が不許可となる可能性があります。
罰金刑1回程度であれば直ちに在留資格取消とはなりにくいものの、今後の生活態度には十分注意が必要です。
執行猶予付き判決
名誉毀損事件が裁判にかかり、拘禁刑の判決が下っても執行猶予(一定期間刑の執行を猶予する措置)が付けば、刑務所に入らずに済みます。この場合も刑法上は有罪ですが、刑期の全部が猶予されているため、刑の重さとしては比較的軽微な扱いです。
執行猶予付き判決(刑期が1年以下の場合)であれば基本的に直ちに退去強制とはなりません。ただし有罪判決である以上、在留期間更新時には厳格に審査され、特に刑期が長め(例:拘禁刑2年執行猶予4年など)の執行猶予判決だと「素行不良」と見なされ更新許可が下りにくくなります。執行猶予中に再犯せず更生することが何より重要です。
実刑判決(拘禁刑など執行猶予なし)
執行猶予が付かず実刑となった場合は、刑務所に服役しなければなりません。刑期が終わると日本人と同様に刑務所から出られますが、その時点で在留資格が残っていなければ不法滞在となるため、通常は出所後すぐに入管施設に移送され、退去強制の手続きが進みます。
特に1年を超える拘禁刑が確定した場合は入管法上の退去強制事由に該当しやすく、服役中から入管による退去手続が進行することがあります。
名誉毀損で実刑判決が科されるのは非常に稀ですが、もし実刑となれば在留継続は極めて厳しい状況になるでしょう。
4. 退去強制を回避・軽減するために重要なポイント(生活実態、反省、示談、再犯可能性など)
日本での生活実態
日本人配偶者との安定した生活実態を示すことが何より重要です。夫婦が同居し円満に生活していること、日本で生計を立て社会に根ざしていることを証明できれば、入管当局に「日本での生活基盤」を強くアピールできます。
特に日本で生まれ育った子どもがいる場合や、長年日本に居住して母国での生活基盤を失っている場合は、人道的配慮の材料となり得ます。
深い反省と更生の意欲
名誉毀損をはじめ刑事事件を起こした後は、自身の行為に対する深い反省を示すことが大切です。反省文を書いたり被害者に謝罪したりして、更生への意欲を伝えましょう。本人が真摯に悔い改めている姿勢は、裁判所にも入管当局にも好印象を与えます。再犯の可能性が低い(二度と同じ過ちを犯さない)ことを客観的に示せれば、在留継続の望みは高まります。
被害者との示談
名誉毀損は被害者の意思が起訴に影響する犯罪(親告罪)です。被害者と早期に示談が成立し、許してもらえれば告訴取り下げや処罰感情の解消につながります。示談によって不起訴になったり、起訴されても処分が軽くなったりすれば、結果的に退去強制のリスクも大きく下がります。示談書には被害者の許しを得たことや再発防止を約束する内容を盛り込み、捜査機関や裁判所に提出できるようにします。
家族・周囲のサポート
日本人の配偶者や家族からのサポートも重要なポイントです。配偶者が嘆願書を書いてくれたり、裁判に情状証人として出廷してくれたりすれば、家庭環境の安定や更生への後押しを示せます。地域コミュニティでの評判や職場からの信頼なども含め、周囲の支援が厚いほど「社会的に更生できる」と判断されやすくなり、在留特別許可が認められる可能性も高まります。
5. 刑事事件後に在留資格は再取得できるのか(上陸拒否期間、将来の可能性、在留特別許可との違い)
上陸拒否期間
仮に退去強制となり強制送還された場合、その後一定期間は日本に再入国できません。この再入国禁止期間を上陸拒否期間といいます。
通常は5年間が基本ですが、過去に退去強制を受けていたり、犯罪の内容によっては10年またはそれ以上再入国が認められないケースもあります(麻薬など重大犯罪の場合は上陸拒否期間が延びる傾向があります)。名誉毀損のような比較的軽微な犯罪であれば、多くの場合は標準的な5年程度の上陸拒否期間となるでしょう。
将来の再取得の可能性
上陸拒否期間が経過すれば、再度日本人配偶者等の在留資格を取得できる可能性があります。例えば5年後に改めて在留資格認定証明書を申請し、日本に入国し直す道もゼロではありません。ただし、一度退去強制歴があると入管当局の審査は非常に厳しくなります。過去の前科や退去歴は記録に残るため、「なぜ再び日本で暮らす必要があるのか」「再度問題を起こさない保証はあるのか」といった点を厳格にチェックされます。再取得は可能でも容易ではないことを念頭に置きましょう。
在留特別許可との違い
在留特別許可は退去強制を免れて引き続き日本に残れる特例措置です。一方、再取得は一度国外退去した後に改めてビザを取り直すことです。
在留特別許可を得られれば退去そのものを回避でき、日本での生活を中断せずに済みます。これに対し退去強制となれば一旦国外退去するため、日本で築いた生活基盤(仕事や住居、家族との生活)が途切れてしまいます。さらに再入国後も過去の経緯から入管の監視が厳しくなる可能性があります。
つまり、可能であれば在留特別許可を得て退去強制を避ける方が、その後の生活再建も容易と言えます。
6. 外国人事件に強い弁護士へ早期に相談すべき理由
刑事処分と在留資格の専門的アドバイス
名誉毀損で捜査を受けた段階で、できるだけ早く弁護士に相談することが肝心です。特に外国人事件に強い弁護士であれば、刑事手続と入管手続の両面から適切なアドバイスができます。早期に相談すれば、今後の見通し(起訴の可能性や処分内容、それに伴う在留資格への影響)について具体的な説明を受けられ、不安を和らげることができます。
不起訴や処分軽減のための弁護活動
弁護士は依頼者が不起訴になるよう働きかけたり、起訴された場合でも罰金刑や執行猶予になるような弁護活動を行います。
名誉毀損事件では被害者との示談成立が極めて重要であり、弁護士が間に入ることでスムーズに交渉できるでしょう。刑事処分が軽く済めば退去強制のリスクも格段に減ります。「逮捕されたらすぐ弁護士」が鉄則です。
早期の適切な弁護によって在留資格を失わずに済んだ例も多くあります。
入管対応への知見
外国人事件に精通した弁護士は、入管への対応にも慣れています。必要に応じて弁護士が入管と連絡を取り、在留期間の更新手続きを代理申請(申請取次)したり、仮放免や在留特別許可の申請準備を進めたりできます。
たとえば捜査中に在留期限が来そうな場合、弁護士が代理で迅速に更新申請することでオーバーステイ(不法残留)を防ぎ、退去強制事由に該当しないようにすることも可能です。このように刑事弁護と入管実務の両面に対応できる弁護士に依頼することが、安全に日本にとどまる近道となります。
言語・文化面でのサポート
日本の刑事手続や法律用語は外国人本人やその家族には難解です。外国人事件に慣れた弁護士であれば、平易な言葉で手続きの流れを説明し、必要に応じて通訳や多言語のサポートも手配できます。文化の違いによる誤解が生じないよう配慮しながら、依頼者の主張や事情を日本の捜査機関・裁判所に適切に伝えてくれます。外国人だからこそ陥りやすい問題点を理解している弁護士に任せることで、安心感が得られるでしょう。
7. 事務所紹介(弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所の特徴)
刑事事件専門の法律事務所
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、その名の通り刑事事件に特化した法律事務所です。刑事弁護を専門に扱っているため、どんな刑事事件でも豊富な知識と経験があります。とりわけ外国人の刑事事件に力を入れており、外国人特有の問題にも精通しています。
在留資格に関する知識と実績
当事務所では入管手続にも詳しい弁護士が在籍し、「刑事事件×在留資格」の問題にワンストップで対応できる体制を整えています。実際に、外国人の依頼者が在留資格を失わずに済むよう全力を尽くす方針で日々取り組んでいます。刑事事件後の在留特別許可の取得や、オーバーステイ防止のための手続き代理など、数多くのサポート実績があります。
全国対応と相談のしやすさ
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は全国に支部を持ち、どこからでも相談しやすい体制です。土日祝日も相談受付を行っており、緊急の連絡にも迅速に対応します。初回の法律相談は無料で受け付けているため、「名誉毀損で捜査中だがどうすればいいか」といった不安をお持ちの方も気軽に問い合わせできます。
外国人の依頼者への配慮
当事務所では外国籍の依頼者やそのご家族にも安心してご相談いただけるよう、丁寧でわかりやすい説明を心がけています。必要に応じて通訳を手配し、英語対応なども可能です(※対応言語については事前にお問い合わせください)。文化や慣習の違いによるギャップにも配慮しながら、依頼者の権利と在留生活を守るため尽力いたします。
日本人の配偶者等のビザを持つ外国人が名誉毀損で捜査・処分を受けても、適切に対処すれば日本での生活を続けられる可能性があります。刑事手続と入管手続の双方に目を配り、早期に専門の弁護士へ相談して対応策を講じることが肝心です。大切なご家族と日本での暮らしを守るために、慌てず正しく行動しましょう。
日本人の配偶者ビザ保持者が万引き転売事件で摘発された場合の手続と在留への影響

導入
「日本人の配偶者等」という在留資格は、日本人と法律上の婚姻関係にある外国人や、その実子などに認められるもので、日本での就労活動に制限がなく、比較的安定した在留資格の一つとされています。
もっとも、この在留資格を有していても、刑事事件を起こした場合には、刑事手続だけでなく在留資格への影響も問題となります。
例えば、日本人配偶者ビザを持つ外国人が、万引きで盗んだ商品を海外に転売するグループに関与し、複数回にわたり量販店などで商品を盗み、これを海外に発送して利益を得ていたという事案で、窃盗の疑いにより摘発されたとします。
万引き事案は、一般的には比較的軽微な犯罪として処理されることも少なくありません。しかし、これに転売目的が加わり、反復継続して行われている場合には、営利性や組織性が強く評価され、事案の性質は大きく異なってきます。
結果として、刑事処分が重くなる可能性があるだけでなく、その後の在留資格への影響についても、単純な万引き事案に比べてはるかに重大な問題として扱われることになります。
そのため、このような事案では、日本では刑事手続(有罪・無罪や刑罰の内容を判断する手続)と、入管手続(在留資格の取消しや継続、退去強制の可否を判断する手続)が並行して問題となり、それぞれの手続の帰結が相互に大きな影響を及ぼし得ます。以下では、それぞれの手続がどのように進み、在留資格にどのような影響を及ぼすのかを順を追って説明します。
1. 刑事手続と入管手続の関係・影響範囲の違い
刑事手続と入管手続は目的も進め方も別個の制度です。
刑事手続とは、有罪か無罪かを判断し、有罪であればどのような刑罰(拘禁刑や罰金刑など)を科すかを決定する手続です。
他方、入管手続、特に退去強制手続は、「出入国管理及び難民認定法」に基づき、日本に在留することが適当でないと評価される外国人を国外に退去させるための行政手続です。
例えば、在留期間を超えて滞在するいわゆるオーバーステイの場合、刑事裁判を経ることなく、不法残留という事実のみで退去強制手続が進められることがあります。
このように、刑事処分は前科の有無や身体の自由に影響し、入管処分は日本での在留の可否そのものに影響するという点で、両者は明確に区別されます。
2. 刑事処分ごとの退去強制(強制送還)のリスク
刑事手続の結果によって、退去強制のリスクは大きく異なります。
まず、不起訴(起訴猶予など)となった場合には、有罪判決を受けていないため、それだけで直ちに退去強制事由に該当することは通常ありません。
次に罰金刑の場合ですが、窃盗のような一般的な財産犯においては、罰金刑のみを理由として直ちに退去強制事由に該当するわけではありません。ただし、薬物犯罪など一部の類型では、有罪判決それ自体で退去強制事由となる場合がある点には注意が必要です。
いずれにしても、罰金刑であっても前科が付く以上、後の在留資格更新等において不利に働く可能性は否定できません。
さらに、執行猶予付き判決については、有罪ではあるものの直ちに刑務所に収容されるわけではありません。また「日本人の配偶者等」の在留資格を有する者については、執行猶予付き判決のみで当然に退去強制の対象となるわけではありませんが、入管当局による在留継続の判断は厳しくなる傾向にあります。
これに対し、実刑判決を受けた場合には事情が大きく異なります。拘禁刑の期間が1年を超えると、在留資格の種類を問わず退去強制事由に該当します。もっとも、1年以下の実刑(例えば拘禁刑8月など)であっても、「日本人の配偶者等」の在留資格を有する者については、その後の在留継続を一層慎重に判断することになります。
3. 退去強制(強制送還)の仕組みと在留特別許可制度の概要
退去強制手続は、出入国在留管理庁が所管する行政手続です。刑事事件で有罪判決が確定すると、その内容を踏まえて、当該外国人が退去強制事由に該当するかが審査されます。
手続としては、まず違反調査が行われ、その後、入国審査官による認定、特別審理官による口頭審理、さらに不服があれば法務大臣への異議申出という段階を経て、最終的に退去強制令書が発付されるという流れになります。
もっとも、退去強制事由に該当すると判断された場合であっても、「在留特別許可」という制度があります。これは、本来であれば退去させるべき外国人について、法務大臣の裁量により例外的に在留を認める制度です。
日本人の配偶者である外国人は、日本国内に生活基盤や家族関係を有していることが多いため、個別事情によっては在留特別許可が認められる可能性があります。ただし、これは自動的に付与されるものではなく、本人や代理人弁護士が具体的事情を丁寧に主張・立証していく必要があります。
4. 刑事処分が在留期間の更新・永住許可・再入国に与える影響(配偶者ビザの場合)
刑事処分の内容は、「日本人の配偶者等」の在留資格の更新や、その後の永住許可申請などに大きな影響を及ぼします。
まず在留期間の更新については、前科がある場合、審査は明らかに厳格化します。とりわけ、罰金刑であっても窃盗のような故意犯による前科がある場合には、在留状況全体を踏まえて更新が許可されないリスクが現実に生じます。不起訴であれば影響は比較的限定的ですが、有罪判決を受けた場合には、その内容に応じて不利益が生じ得ると理解しておく必要があります。
次に永住許可については、「素行が善良であること」が要件とされており、一般に罰金刑以上の前科がある場合には、相当期間にわたり無違反の生活を継続するなどして信頼を回復しない限り、許可を得ることは極めて困難となります。
さらに、再入国との関係では、有罪判決後に出国した場合や退去強制となった場合には、一定期間の上陸拒否(再入国禁止)が課される点にも注意が必要です。
5. 在留特別許可を得るために考慮される事情(家族構成・反省・被害弁償・再犯リスクなど)
在留特別許可の可否は、個別具体的な事情を総合考慮して判断されます。
特に重視されるのは、日本人配偶者との婚姻関係の実態や安定性、同居の有無、婚姻期間、そして子どもの有無やその生活状況などの家族関係です。
日本で出生・成育した子どもがいる場合や、家族が日本に生活基盤を有している場合には、人道的観点から在留継続が認められる方向に働くことがあります。
また、本人の反省の程度や更生可能性も重要な要素です。被害弁償や示談の成立など、被害回復に向けた具体的な行動が取られているかどうかは、評価に大きく影響します。
これに対し、組織的・常習的で重大な犯行である場合や、再犯の可能性が高いと判断される場合には、在留特別許可が認められる可能性は大きく低下します。
6. 強制送還後の上陸拒否期間と将来的な再在留資格取得の可能性
万一、退去強制により日本国外に送還された場合には、その後一定期間、日本に再び入国することが制限されます。これを上陸拒否期間といいます。
この上陸拒否の期間は、刑事処分の内容などによって異なります。
例えば、拘禁刑に処せられた場合には、その刑期が1年以下であれば原則として5年間、1年を超える場合には、原則として期間の定めなく上陸が拒否されることになります。また、薬物犯罪など一定の類型についても、同様に無期限の上陸拒否となります。
退去強制と異なり、上陸拒否期間の判断は「実際に刑務所に収容されたかどうか(実刑か執行猶予か)」ではなく、「どのような刑に処せられたか」という点を基準に行われます。従って、執行猶予となったから上陸拒否されないことにはなりません。
例えば今回のケースでは、万引きを繰り返し、これを海外転売するという営利性・反復性が認められる事案であり、有罪判決により拘禁刑に処せられた場合には、その刑期が1年を超えるか否かによって、その後の上陸拒否の取扱いが大きく異なることになります。
すなわち、拘禁刑1年以下(例えば拘禁刑8月)であれば5年経過後に再度在留資格の申請を行う余地がありますが、拘禁刑が1年を超える場合(例えば拘禁刑1年6月)には、原則として将来にわたり日本への上陸が認められないという厳しい帰結となります。
もっとも、上陸拒否期間が経過したからといって自動的に再入国できるわけではありません。再び日本に入国するためには、改めて在留資格認定証明書の交付申請などを行い審査を受ける必要があり、その際には過去の前科や退去強制歴が重要な不利益事情として考慮されます。
なお、期間の定めなく上陸が拒否される場合であっても、例外的に上陸特別許可により入国が認められる制度自体は存在しますが、実務上認められるケースは極めて限定的です。
7. 専門の弁護士へ早期に相談する重要性と、誤った対応をした場合の不利益
本件のようなケースでは刑事事件と入管手続に精通した弁護士にできるだけ早く相談することが肝心です。外国人の刑事事件では、日本人の場合と違い在留資格への影響を見据えた対応が求められます。早期に専門家のサポートを受ければ、捜査段階から不用意な供述を避けたり、被害者との示談成立を急ぐなど、在留資格に不利とならないための戦略を立てることができます。
逆に対応が遅れたり誤った判断をすると、たとえば在留期限内に適切な手続をしない・反省の意思を示し損ねる・入管対応を誤るなどして、退去強制を防ぐチャンスを失いかねません。
実際、配偶者ビザの更新などを自力で行おうとして失敗し、在留継続が困難になる例もあります。そのような不利益を避けるためにも、専門性の高い弁護士や行政書士に早めに相談し、適切な対策を講じることが何より重要です。
永住者が建造物侵入罪で捜査・処分を受けたときの在留への影響

永住者として日本で家族と暮らすAさんは、深夜に立入禁止のテナントビルへ入ったとして建造物侵入罪で警察の取調べを受けました。
逮捕はされていませんが、突然の呼び出しに、会社にも事情を話せずにいます。
罰金で終わるのか、裁判になるのかだけでなく、永住者でも強制送還の対象になるのではないか、海外出張の後に戻れなくなるのではないかと不安が募っています。
(事例はフィクションです。)
今後の対応次第で結果は変わります。
この記事では、永住者が建造物侵入罪の当事者になった場合に、刑事手続と入管手続を分けて整理し、退去強制の見通しと再入国リスク、そして取るべき対応を説明します。
刑事手続と入管手続が別々に進むという大前提
刑事手続と入管手続は別のルールで進みます。
刑事手続で「不起訴」や「無罪」になっても、入管側で別の判断がされる余地があります。
刑事手続は、警察・検察が捜査し、検察が起訴するか不起訴にするかを決め、起訴された場合は裁判所で有罪か無罪かが判断される流れです。
起訴する権限は検察庁の検察官にあり、不起訴には「嫌疑がない・証拠が足りない」だけでなく、事情を踏まえて起訴を見送る判断も含まれます。
一方で入管手続は、刑罰を科すための手続ではありません。
「日本に在留を続けてよいか」「出国させるべきか」を行政として判断する手続です。
そのため、刑事裁判の結論とは別に、事実関係や本人の事情を材料にして評価されることがあります。
退去強制の意味と建造物侵入罪でのリスクの見方
退去強制とは、入管が「日本から出国しなさい」と命じ、必要があれば強制送還する行政手続です。
退去強制は入管法に定められた「退去強制事由」に当てはまるかどうかで判断されます。
こうした出入国・在留の実務を担うのが出入国在留管理庁です。
建造物侵入罪は、他人が管理する建物に、正当な理由なく立ち入る行為が問われる犯罪で、法定刑は3年以下の拘禁刑または10万円以下の罰金です。
拘禁刑は、刑務所に入ることを命じる刑罰です。
退去強制のリスクは、「有罪か無罪か」だけでなく、「どんな刑事処分になったか」で段階的に変わります。
特に重要なのは、最終的に拘禁刑が言い渡されるのか、そして実際に刑務所に入る形(実刑)になるのかという点です。
入管法は、無期または1年を超える拘禁刑に処せられた場合(ただし執行猶予の場合は除く)を、退去強制事由の一つとして定めています。
整理すると、建造物侵入罪で不起訴や罰金にとどまる場合は、この「1年超の実刑」という基準には当たりません。
執行猶予付きの場合は、「1年超の実刑」の退去強制事由にはあたりませんが、判決内容によって入管での評価が割れやすく、再入国のリスクも含めて注意が必要です。
実刑で期間が1年を超える場合は退去強制事由に該当するため、リスクは最も高まります。
ただし、退去強制の対象になる可能性があっても、必ず送還されるとは限りません。
「在留特別許可」という、例外的に日本での在留を認める制度があります。
在留特別許可は、在留を希望する理由や家族状況、素行、人道的配慮の必要性などを総合的に見て、法務大臣が個別に判断します。
一方で、在留特別許可は例外的な措置なので、必ずしも認められるとは限りません。
不起訴・罰金・執行猶予・実刑で変わる永住者への影響
永住者の在留期間は無期限で、在留期間の更新手続は不要です。
ただし、在留カードには有効期間があり、16歳以上の永住者は交付から7年で更新が必要です。
再入国は、出国前に再入国許可を得るか、条件を満たす場合はみなし再入国許可で出国する形になります。
みなし再入国許可の有効期間は原則として出国の日から1年です。
再入国許可には1回限りのものと、有効期間内なら数次有効のものがあり、有効期間は最長5年です。
ここでは、永住者の「永住者としての地位の維持」「再入国」だけに絞って整理します。
①不起訴の場合
不起訴とは、検察官が起訴(裁判にかけること)をしない処分です。刑事裁判が開かれず、刑罰も科されないため、退去強制事由の「1年超の実刑」にはあたりません。
ただし、入管手続は刑事手続と別に進むため、捜査で把握された事情が不利に評価される可能性は残ります。
②略式罰金の場合
略式罰金とは、正式な公判を開かず、簡易な書面の手続で罰金を科される刑事処分です。
罰金で終わるなら、退去強制事由の「1年超の実刑」にはあたりません。
一方で、罰金は無罪ではなく有罪の結論なので、入管が「素行」を評価する場面ではマイナス材料になり得ます。
③執行猶予付き判決の場合
執行猶予とは、拘禁刑を言い渡しつつ、一定期間その執行を待ってもらい、その期間中犯罪を犯すことがなければ刑務所に入ることはなくなるという制度です。
刑事手続上は有罪ということになります。
入管の退去強制事由では「無期または1年を超える拘禁刑、ただし執行猶予の場合は除く」が基準になっており、執行猶予付きかどうかで結論が分かれることがあります。
この段階で注意が必要となってくるのが再入国です。
入管法は、「日本または外国の法令に違反して、1年以上の拘禁刑に処せられたことがある」場合を上陸拒否事由として定めています。
ここでは、執行猶予の有無は問題とされていません。
そのため、永住者であっても、判決内容次第では、海外に一度出ると再入国時に上陸を拒否されるリスクがあります。
④実刑判決の場合
刑務所に入ることとなり、しかも期間が1年を超えると、退去強制事由に該当することになります。
退去強制になれば永住者としての地位も維持できず、日本に生活基盤があっても離れざるを得なくなる危険があります。
退去強制を回避・軽減するために重要な実務ポイント
「1年超の実刑」などの退去強制事由に該当してしまった場合、永住者の場合でも「個別事情の積み重ね」で結果が変わります。
在留特別許可は、在留を希望する理由、家族状況、素行、人道的配慮の必要性などを総合評価する枠組みです。
永住者であること自体は、日本で長く生活してきた実績を示しやすい点でプラスに働き得ます。
そのうえで、在留年数、家族との同居実態、仕事や住居の安定、地域での生活の根付きなどを、資料と説明で具体化することが重要です。
建造物侵入罪の特性として、被害者側は「建物の管理が侵害された」「不安を感じた」という害を被る点があります。
すべき対応としては、建物管理者への謝罪、必要に応じた被害回復(できれば示談)、再接近を避ける約束、再犯防止のための監督や環境改善などが挙げられます。
そして最も大切なのは、刑事手続と入管手続を同時に見据えることです。
刑事側での処分が軽くなるほど、退去強制の入り口に立たずに済む可能性が上がります。
退去強制後に再び日本に来られるかと上陸拒否期間
上陸拒否期間とは、退去強制で出国した後、一定期間は日本に上陸できないというルールです。
期間は原則5年で、事情により10年になる場合もあります。
この期間が経過した後は、再び上陸を申請する余地はあります。
ただし、上陸は入国審査で判断されるため、「期間が経過すれば必ず入れる」というわけではありません。
外国人事件に強い弁護士へ早期に相談すべき理由
永住者の建造物侵入事件に限った話ではありませんが、刑事手続と入管手続の両方を視野に入れて対応しないと「日本に住み続ける」という目的を達成しにくいことがあります。
退去強制は刑事手続とは別の行政手続で、刑事手続が終わってから対応すればいいと思っていると手遅れになることがあります。
ポイントは、主に二つです。
一つ目は、刑事処分が重くなり、1年超の実刑に近づくほど退去強制の危険が上がることです。
二つ目は、執行猶予でも判決内容によっては、海外に出た後の再入国が難しくなる危険がある点です。
弁護士が早期に関与すると、刑事事件では不起訴や罰金で終わるための方針を立て、必要な対応を進めやすくなります。
同時に、入管で評価されやすい事情を整理し、在留特別許可が問題になる局面でも説明材料を整えられます。
結果は個別事情で変わりますが、早い段階に対応するほど選択肢が残りやすいのが実務です。
当事務所では無料法律相談を行っています。
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定住者が建造物侵入罪で捜査されたときの在留への影響と強制送還を避けるための対応

ある日、定住者として日本で暮らすAさんが、立入禁止と表示のある建物に入ったとして建造物侵入罪の疑いで事情聴取を受けました。
「不起訴なら大丈夫なのか」。
「罰金でも日本にいられるのか」。
「家族と離れ離れになって強制送還されるのではないか」。
Aさんの結末は、刑事手続だけでなく入管手続への対応次第で変わる可能性があります。
この記事では、定住者が建造物侵入罪で問題になった場合の、在留への影響、退去強制の仕組み、将来の再入国の見通しを整理します。
要点まとめ
結論として、建造物侵入罪では「刑事手続」と「入管手続」が別々に動くため、刑事事件が軽く終わっても在留面の不安がゼロにはなりません。
建造物侵入事件の場合、退去強制のリスクが大きく上がるのは、無期または1年を超える拘禁刑の実刑が確定した場面です。
一方で、不起訴や罰金、執行猶予であっても、定住者の在留期間更新や将来の永住許可の審査では「素行」が重視され、説明資料の質が結果を左右しやすいです。
退去強制手続の中では、在留特別許可という「例外的に日本に残る道」が問題になりますが、必ず認められる制度ではありません。
さらに、退去強制後の再来日には「上陸拒否期間」が関わり、刑の内容によっては期間で解決しない上陸拒否事由が残る点に注意が必要です。
刑事手続と入管手続が同時並行で進む
建造物侵入罪の捜査は刑事事件ですが、在留が続けられるかどうかは入管手続で別途判断されます。
刑事手続では、検察官が起訴するか不起訴にするかを決めます。
不起訴は「裁判にかけない」という判断であり、刑事裁判が開かれない点が特徴です。
退去強制手続となる場面では、有罪か無罪か、有罪としてどのような刑となるかが問題となります。しかし、今後も在留資格を更新し続けられるかという点では、入管側は「有罪か無罪か」だけで機械的に在留を決めるわけではありません。
在留期間更新の判断要素として「素行が不良でないこと」が掲げられ、刑事手続を受けたこと自体が消極要素になり得ると整理されています。
したがって、不起訴でも「何が起きたのか」「再発の不安がないか」を説明できないと、更新や将来の永住許可で不利に働く可能性があります。
刑事手続と入管手続の流れを、全体像として見ると次のようになります。
flowchart LR
A[建造物侵入罪の疑いで発覚] –> B[警察の捜査・取調べ]
B –> C[検察官が起訴/不起訴を決定]
C –> D[不起訴]
C –> E[略式罰金]
C –> F[公判請求]
F –> G[判決: 執行猶予 / 実刑]
A –> H[入管当局が情報を把握]
H –> I[退去強制手続の検討・進行]
I –> J[在留特別許可の検討]
J –> K[在留継続 / 退去強制]
退去強制とは何か
退去強制とは「一定の要件に当たる外国人に対し、日本から出国するよう命じる行政手続」です。
刑事裁判の「刑罰」とは目的も手続も別であり、刑事事件が終わっても退去強制が問題になることがあります。
退去強制手続は、違反調査、違反審査、口頭審理、裁決といった段階で進むことが示されています。
建造物侵入罪との関係では、退去強制が特に問題になりやすいラインがあります。
建造物侵入罪は、正当な理由なく人が管理する建物に侵入する行為を処罰の対象とするもので、法定刑は3年以下の拘禁刑または10万円以下の罰金です。
ここで重要なのは、入管法上、無期または1年を超える拘禁刑に処せられた場合に退去強制事由となり得る、という枠組みです。
つまり、建造物侵入罪でも、量刑が「1年を超える実刑」まで重くなると、退去強制リスクが一気に現実化します。
そして、退去強制の局面では「在留特別許可」が中心論点になります。
在留特別許可は、法務大臣が、在留を希望する理由や家族関係、素行など複数の事情を総合して判断する仕組みとして明示されています。
ただし、在留特別許可は「必ず許可される権利」ではなく、個別事情で結論が分かれます。
また近時の制度として、退去強制令書が発付された後は、在留特別許可の申請ができない旨の規定が置かれています。
刑事処分別に見る定住者の在留への影響
建造物侵入罪では「退去強制になるかどうか」は実刑の長さが核心であり、さらに「定住者として生活を続けられるか」は更新審査での説明内容が核心になります。
以下の表は、刑法130条の法定刑と、入管法上の退去強制事由・在留審査の考え方を前提に整理した目安です。
| 刑事手続の結論 | 退去強制のリスク(建造物侵入罪) | 定住者の在留期間更新への影響 | 永住許可(将来)の影響 | 再入国(出国時)の注意点 |
| 不起訴 | 原則として「1年超の拘禁刑の実刑に処せられた」に当たらない | 事情説明の質で差が出る | 「素行」評価の説明が重くなる | 再入国許可を取らずに出国すると在留資格が消滅 |
| 略式罰金 | 同上 | 「素行」面で消極評価になり得る | 罰金歴の扱いが問題化し得る | 同上 |
| 執行猶予 | 同上 | 更新は可能性が残るが慎重 | 申請時期・説明の組立てが重要 | 同上 |
| 実刑 | 1年超の実刑で退去強制の要件を満たす。反対に1年以下の実刑であれば要件を満たさない | 更新以前に退去強制が前面化し得る | 退去強制の場合は申請以前に離日 | 上陸拒否期間や上陸拒否事由が問題化 |
次に、それぞれをもう少し具体化します。
不起訴の場合
刑事裁判にならないため、刑罰は科されません。
このため「1年を超える拘禁刑に処せられた」という類型には当たりません。
ただし、定住者の在留期間更新は、法務大臣が「引き続き在留を認めることが適当か」を判断する仕組みです。
その判断要素として素行が位置付けられている以上、捜査に至った経緯や再発防止を説明できないと、更新審査で消極に働き得ます。
略式罰金の場合
略式裁判は、検察官の請求に基づき、簡易裁判所が正式裁判を開かず、罰金や科料を科す簡易手続です。
建造物侵入罪は罰金刑が法定されているため、事案によっては略式罰金で終わることがあります。
罰金は「拘禁刑」ではないため、1年超の拘禁刑を前提とする退去強制類型には直結しにくいです。
一方で、在留期間更新や永住許可では、法律上またはガイドライン上「素行」が重視されるため、罰金であっても説明負担は残ります。
執行猶予の場合
執行猶予は、有罪判決を出しつつ、一定期間、刑の執行を猶予する制度です。
入管法の退去強制事由は、定住者の刑罰法令違反が問題となった場合は、実刑となったときに限定されています(薬物事犯などは除く)
そのため、執行猶予付き判決であれば、直ちに退去強制に結び付くわけではありません。
ただし「有罪」である以上、定住者の更新審査や将来の永住許可で、どのように更生状況を示すかが重要になります。
実刑の場合
実刑とは、猶予が付かず、刑事施設に収容されて刑が執行される形を指します。
建造物侵入罪でも、量刑が1年を超える拘禁刑となって確定すると、退去強制事由に該当します。
この局面では、刑事手続の弁護方針がそのまま在留可否に直結しやすいため、「1年を超える実刑を避ける」ことが最重要目標になります。
また、再入国の観点では重要な基本があります。
再入国許可(みなし再入国許可を含む)を受けずに出国すると、その時点で在留資格と在留期間が消滅します。
みなし再入国許可の有効期間は、原則として出国の日から1年で、在留期限が先に来る場合は在留期限までとされています。
退去強制を回避・軽減するために重要なポイント
結論として、退去強制を避ける現実的な道は「刑事処分を重くしないこと」と「在留特別許可が検討される局面に備えて、個別事情を積み上げること」です。
在留特別許可の判断では、在留を希望する理由、家族関係、素行、在留期間、退去強制の理由となった事実などを総合考慮することが明示されています。
つまり、一つの事情だけで決まるのではなく、プラス材料とマイナス材料の「全体評価」になります。
定住者に特有の観点としては、そもそも定住者は「法務大臣が特別な理由を考慮し、一定の在留期間を指定して居住を認める」枠組みである点が重要です。
したがって、生活基盤の安定や法令順守の継続が、審査上の説得力になりやすいです。
建造物侵入罪の特性に即して、入管で評価されやすいポイントを実務的にまとめます。
まず、刑事手続側で目標を明確にします。
退去強制リスクの境目が「1年を超える拘禁刑の実刑」にある以上、そこを越えない結果を現実的に目指すことが在留面では決定的に重要です。
次に、入管手続を見据えて「説明の材料」を準備します。
在留特別許可では、家族関係や生活状況、素行、再発可能性の低さを、証拠で示すことが基本動作になります。
実務チェックリストを置きます。
早いほど有利になりやすい項目です。
- 取調べ対応を「刑事」と「在留」の両面で設計する。
- 侵入に至った経緯を、時系列で矛盾なく整理する。
- 管理者側に対する謝罪と、再発防止策を具体化する。
- 生活基盤を裏付ける資料を早期に集める。
- 在留特別許可の「申請できるタイミング」を外さない。
弁護士が実務で準備することの多い「主張の柱」と「資料の例」を挙げます。
特定の書式のひな形ではなく、どのような材料をどう組み立てるかのイメージです。
- 経緯説明
どの時点で、誰の管理下の建物に、どのように立ち入ったのかを整理します。
「正当な理由」の有無に触れつつ、争点があるなら争点を限定します。 - 反省と再発防止
「二度と同じことをしない」を抽象語で終わらせず、具体策に落とします。
例えば、関係場所に近づかない行動設計や、生活リズムの是正など、実行可能性を示します。 - 生活基盤の立証
定住者としての居住実態、就労状況、収入、住居、社会的つながりを資料で示します。 - 家族事情の整理
同居家族の有無、扶養の実態、家族の生活への影響を、感情ではなく事実で提示します。 - 在留継続の必要性
「なぜ日本に残る必要があるのか」を、仕事・家族・生活の観点で立体的に説明します。
刑事事件後に定住者を再取得できるのか
結論として、退去強制になった場合でも将来の再来日が「絶対に不可能」とは限りませんが、「上陸拒否期間」と「上陸拒否事由」の両方を分けて考える必要があります。
上陸拒否期間とは、退去強制など一定の事情がある人について、原則として日本への上陸を拒否する期間を指します。
退去強制を受けた場合、法律上「退去した日から五年」や「退去した日から十年」と整理される類型があります。
ただし、ここで終わりではありません。
入管法には「日本国または外国の法令に違反して、1年以上の拘禁刑等に処せられたことがある者」は上陸できない、という上陸拒否事由があります。
この類型は「何年経てば自動的に解消する」という性質ではなく、結果として長期にわたり再来日のハードルとなり得ます。
したがって、建造物侵入罪で最も厳しいシナリオは次の組合せです。
「1年を超える実刑が確定して退去強制に至る」ことです。
この場合、退去強制の問題に加え、上陸拒否事由そのものが残ってしまう可能性が高まります。
在留特別許可は「本来は退去すべき局面でも、例外的に日本での在留を認める」判断です。
これに対して、退去強制後の査証の再取得は「いったん出国した上で、上陸の可否からやり直す」話です。
定住者は、法務大臣が特別な理由を考慮して在留期間を指定する枠組みであるため、再取得の局面でも事情の再整理が必要になります。
外国人事件に強い弁護士へ早期に相談すべき理由
結論として、定住者×建造物侵入罪の組合せは「刑事の量刑ライン」と「入管の裁量判断」が交差するため、早期に専門家が全体設計するほど結果が改善しやすい類型です。
とくに、退去強制リスクの境目が「1年を超える実刑」である以上、刑事弁護の初動が在留結果を左右します。
また、在留特別許可は「主張と証拠の積み上げ」が核心であり、場当たり的対応では弱くなりがちです。
さらに、退去強制令書発付後は在留特別許可の申請ができないというルールがあるため、間に合わない対応は致命傷になり得ます。
弁護士が関与する実益は、次の点にあります。
刑事側では、処分の見通しを踏まえ、在留にとって致命的になりやすい結果を避ける方針を立てます。
入管の手続きの側では、法律が掲げる考慮要素に沿って、事情を「評価される形」に翻訳し、資料で裏付けます。
そして、出国や再入国許可の扱いなど、在留資格が消滅する落とし穴を避ける助言ができます。
建造物侵入罪で捜査されても、必ず退去強制になるわけではありません。
一方で、「軽い処分だから安心」と決めつけて準備を怠ると、更新や将来の永住許可で不利が残ることがあります。
不安がある段階ほど、刑事と入管を一体で見て、早めに戦略を固めることが重要です。
永住者が公務執行妨害罪で捜査・処分を受けたときの在留への影響と退去強制リスク

永住者のAさんは、路上で警察官に職務質問を受けた際に動転し、警察官の腕を振り払ったことで公務執行妨害罪の疑いで取調べを受けました。
「このまま日本に住み続けられるのか。」「強制送還されるのではないか。 」と本人も家族も不安になりました。
Aさんの処分の内容と今後の対応次第で、結果が変わる余地があります。
この記事では、永住者が公務執行妨害罪で捜査・処分を受けた場合の在留への影響、退去強制の対象になり得る場面、そして将来の再入国可能性を整理します。
刑事手続と入管手続は別々に進みます
結論として、刑事手続で「どう処分されたか」と、入管手続で「在留を続けられるか」は、同じ判断で決まるとは限りません。
刑事手続は、警察の捜査と検察官の判断、裁判所の裁判によって進みます。
一方で入管手続は、在留を続けられるか、退去強制にするかを行政として判断する流れです。
特に重要なのは、刑事手続が進行中でも、退去強制の手続を進められる場面が法律上想定されている点です。
つまり、刑事事件が終わるまで入管が必ず待ってくれる、という発想は危険です。もっとも、実務上は、刑事手続が先行する場合が多いです。
「不起訴なら安心。」「無罪なら何も起きない。 」と考えたくなる気持ちは自然です。
ただ、入管手続は刑事裁判と目的が違い、事実関係の整理や説明が別枠で求められることがあります。
また、出国しようとしたときに、一定の場合は出国確認が一時的に留保され得る仕組みもあります。
退去強制とは何かと在留特別許可の考え方
退去強制とは、一定の要件に当てはまる外国人に対して、日本からの出国を命じる行政手続です。
刑事裁判で有罪か無罪かを決める手続とは別に、入管手続として判断されます。
退去強制になりやすいかどうかは、「どんな刑事処分になったか」が大きく影響します。
永住者が公務執行妨害罪で起訴され、有罪になった場合の法定刑は、「3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金」です。
公務執行妨害罪は「公務員の職務に対する暴行または脅迫」という性質のため、行為の態様が重いほど刑事処分も重くなりやすく、結果として入管上のリスクも上がりやすい構造です。
入管法上、退去強制の判断に直結しやすい線引きの一つが、「無期または一年を超える拘禁刑」かどうかです。
この類型では、全部の執行猶予が付いた場合などは除外される扱いになっています。
そのため、公務執行妨害罪でも「1年超の実刑になるか」「全部執行猶予で収まるか」は、在留の見通しに直結し得ます。
ここで必ず知っておきたいのが「在留特別許可」です。
在留特別許可は、本来は退去強制となる方向の事案でも、個別事情を踏まえて例外的に日本での在留を認める仕組みです。
永住者であることは、在留特別許可を検討する場面で法律上明示されている事情の一つです。
ただし「必ず許可される制度」ではなく、最終的には裁量で「許可できる」とされている点に注意が必要です。
刑事処分別にみる永住者の在留カードの更新と再入国への影響
永住者の在留への影響を考えるときは、在留カードの更新と再入国の場面を分けて考えると整理しやすいです。
永住者の在留カードは、原則として交付日から7年が有効期間とされています。
再入国については、再入国許可を申請して得る形と、要件を満たすと「みなし」で許可を受けた扱いになる形があります。
それでは、不起訴・略式罰金・執行猶予付き判決・実刑判決で、入管上の見通しがどう変わりやすいかを、永住者という前提で説明します。
不起訴の場合の見通し
不起訴は、検察官が裁判所に起訴しないと決める処分です。
刑事手続としては裁判に進まないため、「どんな刑を科すか」という局面自体が生じません。
この場合、公務執行妨害罪で「無期または1年を超える拘禁刑」に処せられることを前提とした退去強制類型には通常当たりません。
一方で、刑事手続と入管手続は別枠で進み得るため、事実関係の説明や、再発防止の示し方が重要になることがあります。
再入国の面では、渡航のタイミングに注意が必要です。
出国確認が一時的に留保され得る規定があり、手続上の制約が生じ得ますことがあります。
略式罰金の場合の見通し
略式手続は、公開の法廷での審理ではなく書面審理で、裁判所が「略式命令」を出す簡便な手続です。
略式命令で科せる刑罰は、100万円以下の罰金または科料に限られます。
罰金で確定した場合でも、「無期または1年を超える身柄刑」という類型そのものには当たりません。
そのため、退去強制リスクの観点では、少なくとも「1年超の実刑」を前提とする退去強制類型には直結しませんので、永住者が公務執行妨害罪で略式罰金となった場合、通常は退去強制事由には直結しません。
ただし、公務執行妨害罪は暴行または脅迫を要件とするため、行為態様が重いと判断されれば、略式ではなく正式裁判になり得る点は押さえてください。
再入国の場面では、渡航前に「再入国許可が必要か」「みなし再入国許可で足りるか」を確認し、手続を誤らないことが重要です。
執行猶予付き判決の場合の見通し
執行猶予は、一定の条件を満たすと、刑の執行を一定期間猶予できる制度です。
刑法上は、猶予期間を1年以上5年以下の範囲で定める仕組みが示されています。
入管法上の「無期または1年を超える拘禁刑」の類型では、刑の全部の執行猶予が付いたときは除外されることが明示されています。
この点は、永住者の在留への影響を考えるうえで重要です。
もっとも、執行猶予であっても「公務執行妨害罪で有罪になった」という事実は残ります。
そのため、再発防止の具体策や、生活の安定、家族の事情などを整理して、在留特別許可の判断材料として示せる形にしておくことが大切です。
再入国については、出国日から1年を原則とする「みなし再入国許可」の枠を超える渡航なら、事前の再入国許可が必要になります。
実刑判決の場合の見通し
実刑は、判決後に実際に身柄拘束を受けて刑務所に入ることを意味します。
公務執行妨害罪の法定刑は3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金で、事案によっては実刑になる可能性が否定できません。
入管法上、「無期または1年を超える拘禁刑」に該当し、かつ全部執行猶予ではない場合は、退去強制の判断に直結しやすくなります。
この局面では、在留特別許可を得られるかどうかが最大の焦点になります。
永住者であること自体は、在留特別許可の検討枠組みに明記されている事情です。
また、刑事手続や刑の執行と並行して、退去強制手続が進み得ることも、現実のリスクとして理解しておく必要があります。
退去強制を回避・軽減するために重要なポイント
結論として、目指すべき方向は「刑事処分を軽くすること」と「入管に出すべき事情を早い段階から積み上げること」の両方です。
在留特別許可は、永住者であるから自動的に認められる制度ではなく、個別事情の総合評価です。
永住者という性質に照らすと、次のような事情が「日本での生活の根付き」を示す情報になり得ます。
- 長年の在留実績があること
- 家族がいることや、家族の生活が日本に固定されていること
- 住居や仕事が安定していること
- これまでの在留状況が適正であること
公務執行妨害罪の特性を踏まえると、入管で見られやすい焦点は「暴行または脅迫の程度」と「再発防止の具体性」になりやすいです。
たとえば、当時の状況を丁寧に説明し、なぜ動転したのかを説得的に説明できるようにします。
そのうえで、同じ状況でも暴力的な反応をしないための具体策を示します。
公務執行妨害罪は、公務員の職務に対する暴行または脅迫が問題になります。
そのため、謝罪の意思表示や、必要に応じた賠償など「責任を取る姿勢」を形にすることが、刑事面でも入管面でも意味を持ちます。
ここは感情論ではなく、証拠として残る形に整えることが重要です。
刑事手続と入管手続を同時に見据える必要がある理由は、「刑事での結果が入管の入口要件になり得る」からです。
特に「1年を超える実刑」かどうかは、退去強制リスクを大きく動かします。
弁護士が早期に関与すると、刑事面では処分の見通しを立て、入管面では提出すべき事情を時系列で整理し、矛盾なく説明できる体制を作りやすくなります。
退去強制後に在留資格は再取得できるのか
結論として、退去強制になっても「将来が必ず閉ざされる」とは限りません。
ただし、退去強制のあと一定期間は、日本への上陸が認められない期間が設けられています。
この期間は、初めて退去強制された場合は原則として5年、過去にも退去強制がある場合は原則として10年とされています。
したがって、退去強制が現実化した場合は「いつから再入国を目指せるか」を年単位で設計する必要があります。
在留特別許可と上陸拒否期間は、位置づけが異なります。
在留特別許可は、退去強制の手続の中で例外的に日本での在留を認める判断です。
上陸拒否期間は、退去強制でいったん出国したあとに、一定期間は上陸できないという入口側の制約です。
外国人事件に強い弁護士へ早期に相談すべき理由
結論として、永住者の公務執行妨害罪は「刑事の出口」と「入管の出口」を同時に設計しないと、取り返しがつかない不利益が生じ得ます。
特に、退去強制リスクが上がりやすい境目として「1年を超える実刑」かどうかがあり、刑事弁護の方針が在留の見通しを左右します。
また、再入国許可やみなし再入国許可の理解が不十分なまま出国し、結果として帰国手続が複雑化することもあり得ます。
さらに、捜査や公判の段階で「何を証拠として残すか」を誤ると、在留特別許可の判断材料が薄くなりかねません。
専門家が関与すれば、刑事面では不起訴や罰金、執行猶予の可能性を具体的に見立て、入管面では将来の審査で評価されやすい事情を一貫した形で提出しやすくなります。
過度に悲観せず、早い段階で正しい手順に乗せることが、結果を変える現実的な方法です。
事務所紹介
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事弁護の実務を軸に、外国人の在留への影響まで一体で見通す弁護に注力しています。
公務執行妨害罪は、事実関係の整理と再発防止の示し方で、処分の方向が変わり得る類型です。
同時に、入管では「1年を超える実刑」かどうかが在留の分岐点になり得るため、刑事と入管の両方を視野に入れた初動が重要です。
ご本人とご家族の生活を守るために、必要な事実と資料を漏れなく整え、見通しをご説明することを大切にしています。
定住者が公務執行妨害罪で捜査・処分を受けたときの在留への影響と今後の見通し

日本で生活する定住者のAさんは、深夜、警察官から職務質問を受けた際に口論となり、警察官の腕を振り払うなどの行為をしたとして、公務執行妨害罪の疑いで捜査を受けることになりました。
逮捕はされなかったものの、取調べを受ける状況となり、「このまま日本に住み続けられるのか」「強制送還されるのではないか」と、本人だけでなく家族も強い不安を感じています。
このようなケースでは、刑事事件の結果だけで在留資格の結論が自動的に決まるわけではありません。
刑事手続と入管手続は別の制度として運用されており、同じ事案でも判断の観点が異なります。
この記事では、定住者の方が公務執行妨害罪を疑われた場合に、日本での在留にどのような影響があり得るのかについて、
- 在留資格への影響
- 退去強制のリスク
- 将来の在留更新や永住許可の見通し
といった点を、結論から分かりやすく整理します。
刑事手続と入管手続が別々に進む理由
まず押さえておきたい重要な点は、刑事手続と入管手続は、別のルールに基づいて進むということです。
刑事事件では、警察の捜査の後、検察官が証拠を検討し、起訴するか不起訴にするかを決定します。
また、逮捕・勾留が行われるか、在宅のまま捜査が進むかなど、手続の進み方も事案によって異なります。最終的な処分が決まるまで、数か月程度かかることも珍しくありません。
一方、在留資格の更新や変更などは、出入国在留管理庁による行政手続であり、法務大臣が「引き続き日本での在留を認めるのが適当か」を判断する制度です。
また、退去強制も刑事裁判とは別の行政手続として行われます。
そのため、刑事事件で軽い処分となった場合でも、在留に関する問題が完全に消えるとは限りません。
逆に、刑事事件が問題になったとしても、必ず退去強制になるとは限らず、個別事情を踏まえた判断が行われます。
「不起訴なら安心」と思われがちですが、実務上は必ずしもそうとは言い切れません。
在留資格の更新や変更の審査では、単に有罪か無罪かだけでなく、
- 日常生活における法令遵守状況
- 社会生活上の問題行動の有無
- 今後の再発可能性
といった素行(ふだんの行い)を含む総合的な評価が行われることがあります。
また、将来の永住許可の審査でも、「素行が善良であること」が審査基準の一つとして示されています。
そのため、刑事事件の内容やその後の生活状況が、在留審査に影響する可能性は残ります。
退去強制の意味と在留特別許可
退去強制とは、一定の要件に該当する外国人について、日本から出国するよう命じ、国外へ送還する行政手続です。
これも刑事裁判とは別の制度として運用されています。
刑事事件の結果は、退去強制の判断において重要な要素になりますが、それだけで結論が機械的に決まるわけではありません。
公務執行妨害罪は、職務を行っている公務員に対して暴行または脅迫を加え、公務の執行を妨害した場合に成立する犯罪です。
法定刑は、3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金とされています。
下記のような刑事処分の違いによって、在留への影響の大きさも一般的には次のように変わります。
不起訴の場合
不起訴の場合は、有罪判決が確定しないため、前科にはなりません。
そのため、直ちに退去強制の問題になることは通常考えにくいといえます。
もっとも、在留資格の更新などの審査では、事件の経緯やその後の生活状況が確認される可能性があるため、再発防止の説明などが重要になる場合があります。
略式罰金の場合
略式罰金は、有罪が認定され、罰金刑が科される処分です。
簡易裁判所での略式手続により、公判を開かずに書面審理で罰金刑が科される仕組みですが、有罪判決である点には変わりありません。
そのため、在留資格の更新や永住許可の審査では、素行評価の観点から不利な事情として扱われる可能性があります。
執行猶予付き判決の場合
執行猶予付き判決は、拘禁刑が言い渡されつつも、一定期間別の犯罪をしなければ、刑務所に収容されないこととなる、社会内で更生を図る制度です。
ただし、拘禁刑の有罪判決が言い渡されている点は重く評価される可能性があり、在留資格の更新や永住許可の審査では慎重な判断がされることがあります。
実刑判決の場合
実刑判決となると、刑務所への収容を伴う刑が確定します。
特に1年以上の拘禁刑が確定した場合には、退去強制事由に該当します。この場合、在留資格の維持が難しくなり、退去強制が現実的な問題となります。
在留特別許可という制度
ここで重要になるのが「在留特別許可」という制度です。
在留特別許可とは、本来は退去強制すべき事情がある場合であっても、
- 日本での生活状況
- 家族関係
- 在留期間
- 社会生活への影響
などを総合的に考慮し、例外的に日本での在留を認める制度です。
もっとも、これは権利として当然に認められるものではなく、法務大臣の裁量による個別判断となります。
したがって、刑事事件の内容だけでなく、その後の生活状況や再発防止策など、さまざまな事情が総合的に評価されることになります。
刑事処分別にみる定住者の在留更新・永住許可・再入国への影響
同じ公務執行妨害罪であっても、刑事事件の処分の内容によって、その後の在留への影響の現れ方は変わります。
ここでは、在留資格の更新、永住許可、再入国の3つの観点から整理します。
不起訴の場合
不起訴の場合、検察官が起訴しない判断をするため、有罪判決はなく、前科にもなりません。
そのため、直ちに在留資格を失うような事態になる可能性は通常高くありません。
もっとも、在留資格の更新審査では「素行が善良であること」が前提とされるため、事件の経緯やその後の生活状況が確認されることがあります。
そのため、
- 事件の経緯をどのように説明するか
- 再発防止のためにどのような生活改善をしているか
といった点を整理しておくことが実務上重要になります。
永住許可申請でも「素行善良」が審査基準とされているため、不起訴となった場合でも、将来に向けて生活状況の安定性や再発防止の取り組みを具体的に示すことが望ましいといえます。
再入国については、在留資格を保ったまま一時的に出国する場合、通常は次のいずれかの制度を利用します。
- 再入国許可(事前に入管から許可を取得
- みなし再入国許可(有効なパスポートと在留カードを所持し、1年以内に再入国する場合)
みなし再入国許可は出国日から1年以内に再入国することが条件で、この期間を過ぎると在留資格は失われます。
また、在留期間の満了日が1年より早い場合は、その満了日までに再入国する必要があります。
そのため、刑事事件の処理中や在留更新の時期が近い場合には、安易な出国が思わぬ不利益につながることもあるため注意が必要です。
略式罰金の場合
略式罰金は、簡易裁判所の略式手続により、公開の法廷を開かずに書面審理で罰金刑が科される制度です。
ただし、これはあくまで正式な有罪判決であり、刑罰として罰金の納付義務が生じます。
定住者の在留資格更新では、素行が善良であることが許可の前提とされているため、刑事処分を受けた事実は消極的事情として評価され得ます。
特に、更新時期が近い場合には、事件の内容やその後の生活状況について説明を求められる可能性があります。
永住許可申請でも、素行の審査は重要な要素です。
そのため、判決後の生活態度や再発防止の取り組みなどを具体的に示すことが、審査への影響を考えるうえで重要になります。
執行猶予付き判決の場合
執行猶予付き判決は、拘禁刑が言い渡されながらも、一定期間その執行を猶予し、社会内で更生する機会を与える制度です。
ただし、在留資格の審査においては、拘禁刑の有罪判決が言い渡されているという事実自体が重く評価される可能性があります。
その結果、
- 在留資格の更新が慎重に判断される
- 更新が認められても在留期間が短くなる
といった形で影響が出ることがあります。
また、永住許可の審査では、一般に「素行が善良であること」などが審査基準として示されています。
そのため、執行猶予判決がある場合には、
- 事件後の生活状況
- 再発防止の具体的な取り組み
- 社会生活の安定性
などを具体的に説明できるかが重要になります。
再入国については、執行猶予期間中に長期間出国することが、生活の安定性や更生状況の評価に影響する可能性もあります。
また、刑事手続や在留更新のタイミングと重なると手続が複雑になることもあるため、渡航の必要性や時期について慎重に検討する必要があります。
実刑判決の場合
実刑判決が確定すると、刑務所への収容が伴うため、日本での生活基盤を維持すること自体が難しくなります。
また、在留資格の更新や永住許可の前提となる生活状況が大きく変わるため、退去強制が現実的な問題として検討される可能性が高くなります。
さらに、公務執行妨害罪は公務員の職務に対する暴行・脅迫が問題となる犯罪であるため、入管の審査では、素行や再犯可能性の観点から慎重に評価される傾向があります。
退去強制に至った場合には、一定期間または無期限の上陸拒否期間が設定され、日本に入国できなくなる可能性があります。
退去強制の回避・影響軽減に向けた実務ポイント
退去強制を回避できるか、あるいは影響をどこまで軽減できるかは、個別事情の積み重ねによって判断されます。
在留特別許可の判断では、主に次のような事情が考慮されます。
- 日本での在留期間
- 家族関係
- 生活基盤の安定性
- これまでの在留状況
- 事件の内容や再発可能性
これらは「一つ当てはまれば必ず許可される」というものではなく、プラス要素とマイナス要素を総合的に比較して判断されます。
定住者の場合、日本で長く生活し、仕事や家族など生活基盤が形成されていることが多いため、その事情を丁寧に整理することが重要になります。
具体的には、
- 在留期間の長さ
- 安定した就労状況
- 家族の生活への影響
- 生活態度の改善
といった点を、資料と説明の両方で一貫して示す必要があります。
また、公務執行妨害罪の事案では、当日の状況や行為に至った経緯を整理し、再発防止策を具体的に示すことも重要です。
この類型では、相手方が警察官など公務員であるため、示談が成立しないケースも少なくありません。
そのため、謝罪の意思や賠償の意思をどのような方法で示すかについても、手続に沿った対応が求められます。
刑事事件後の再入国と在留再取得
退去強制となった場合でも、制度上は将来の再来日が完全に不可能になるわけではありません。
ただし、その際に大きな壁となるのが上陸拒否期間です。
退去強制や一定の出国手続が行われた場合には、一定期間または無期限、日本への上陸が認められない期間が設定されます。
この期間の長さは事案の内容などによって異なるため、退去強制の可能性がある段階では、自分がどの類型に該当し得るのかを具体的に確認することが重要になります。
これに対して、在留特別許可は、退去強制に該当する事情がある場合でも、例外的に日本での在留を認める制度です。
そのため、退去強制の可能性がある場合には、将来の再入国を考える前に、日本で在留を継続できる可能性を最大限検討することが重要になります。
外国人事件に強い弁護士へ早期相談が重要な理由
定住者が公務執行妨害罪で捜査を受けた場合、問題は刑事事件だけにとどまりません。
その後の在留資格の維持や更新、将来の永住許可などにも影響する可能性があります。
実務上よく見られる不利益としては、例えば次のようなケースがあります。
- 刑事事件は早く終わったが、在留資格更新で問題が生じた
- 有罪判決後に出国したところ、日本に再入国できなくなった
- 在留特別許可を検討すべき時期を逃してしまった
在留資格の更新は、法務大臣が在留継続を適当と判断する場合に許可される制度です。
そのため、準備が遅れるほどリスク管理が難しくなります。
また、再入国許可を取らずに出国すると在留資格が消滅する可能性もあり、「一度帰国して落ち着こう」という判断が、結果として日本での生活を失う原因になることもあります。
弁護士が早期に関与することで、
- 刑事事件での主張や対応の整理
- 在留資格審査で重視される事情の整理
- 提出資料や説明内容の一貫性の確保
といった点を同時に整えることができます。
不安を抱えたまま手続が進むほど、説明や書類の内容に矛盾が生じやすくなります。
そのため、早い段階で全体像を整理することが、日本で生活を続けられる可能性を守るうえで重要になります。
