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家族や友達の偽装結婚でもビザが取り消される?
Kさんは日本で「定住者」の在留資格をもって在留している外国人でしたが,Kさんの妹が日本人と結婚して「日本人の配偶者等」の在留資格を取得することになりました。
Kさんは,妹が日本で結婚する証人になることになり,婚姻届の「証人」の欄に署名をしました。その後,Kさんの妹は日本人配偶者等の在留資格で来日しました。
しかし後日,実はKさんの妹がした結婚は偽装結婚であり,来日してからは全く家族としての生活をしていないことが分かりました。
Kさんは,妹の偽装結婚の証人となってしまったことで自分の在留資格も影響が出るのではないかと思い,弁護士に相談することにしました。
偽装結婚は重い罪
事例のように,偽装結婚というのは入管実務上でも非常に悪質な犯罪とされており,刑法上も重たい刑罰が定められています。
「本当は夫婦として結婚生活を送るつもりがないのに,ビザをもらうためだけに婚姻届けを出して結婚したことにする」というのは,公正証書原本不実記録,供用罪という犯罪にあたり,最大で5年の懲役刑が科されることになります。
また,公正証書原本不実記録,供用罪で有罪の判決を受け,懲役の判決を受けた場合(執行猶予付きの判決も含みます)には,在留資格によっては強制送還の対象となってしまいます。
さらに,元々の在留資格を問わず,
・自分が偽装結婚をして在留資格を不正に取得したり,在留資格の変更,更新の許可等を得た場合
・偽装結婚によって他人に在留資格を不正に取得させたり,在留資格を変更,更新の許可を得させた場合
には,在留資格の取消し,強制送還の対象となってしまいます。この場合,仮に有罪の判決を受けていなかったとしても,入管の独自の調査によってビザが取り消されたり,強制送還に向けた手続きが進んでしまうことがあります。
特に,逮捕されて警察で取調べを受けているという状態の場合,それと並行しながらビザの取消しに向けた調査が進んでいるという場合があります。警察の取調べについては国選弁護士でも対応をしてくれますが,ビザの取消しに関しては国選弁護士も任務の範囲外になってしまいます。逮捕されている事件でビザの取消しも防ぎたいという場合には,早急に自分たちで弁護士に依頼しましょう。
Kさんの事例の場合,「他人の偽装結婚の証人になっている」ということですから,Kさん自身の在留資格については何ら不正をしていないとしても,「Kさんの妹の在留資格について不正な手段を用いた」と疑われてしまうと,強制送還に関する違反調査が始まってしまう可能性があります。
強制送還の対象になるのか
Kさんのように他人の偽装結婚に関わってしまった場合,強制送還されてしまうのでしょうか。
まず,強制送還の対象となる可能性のある場合の法律は,次のとおりです。
三 他の外国人に不正に前章第一節若しくは第二節の規定による証明書の交付、上陸許可の証印(第九条第四項の規定による記録を含む。)若しくは許可、同章第四節の規定による上陸の許可又は前二節若しくは次章第三節の規定による許可を受けさせる目的で、文書若しくは図画を偽造し、若しくは変造し、虚偽の文書若しくは図画を作成し、若しくは偽造若しくは変造された文書若しくは図画若しくは虚偽の文書若しくは図画を行使し、所持し、若しくは提供し、又はこれらの行為を唆し、若しくはこれを助けた者
難しいことが書かれているように見えるのですが,簡単にまとめると次のようになります。
誰の在留資格についてか
自分以外の外国人
どんな目的だったか
不正に在留資格を得させる目的で
何をした場合か
文書を偽造した,文書に嘘の記載をした,偽造や嘘の文書を提出/所持/提供した,またはこれらの行為の手助けをした
これらにすべて該当するのであれば,強制送還の対象となる可能性があります。
Kさんの場合には,自分で虚偽の婚姻届を作ったり入管への文書を偽造したというものではないと思われます。そのため,証人になったからと言って,直ちに強制送還の対象になってしまうということはないでしょう。
ただそ,仮に「妹の結婚が偽装結婚であることを最初から知って証人となった場合」には,文書に虚偽の記載をする手助けをしたものとして,強制送還の対象になる可能性もあります。
入管当局は,偽装結婚に対しては特に厳しい態度で臨んでいます。「日本人の配偶者等」の在留資格は,比較的日本で安定した生活を送るためのビザですが,ビザの条件が「結婚」というものだけであることから悪用されることも多いのです。
もしも他人の偽装結婚に関わってしまったという場合には,適切に対応しなければご自身の在留資格まで取り消されて,強制送還されてしまう可能性もあります。偽装結婚に関わってしまったという外国人の方は,早めに弁護士までご相談ください。
無免許運転で逮捕された外国人は強制送還されるのか
(この事例は入管手続きについて解説をするための架空のものであり,実在する地名と設例は必ずしも関係ありません)。
「技術,人文知識,国際業務」の在留資格で日本に在留していたYさん(30代男性)は,東京都内の首都高速道路で自家用車を運転していたところ,スピード違反で検挙されてしまいました。警察官から運転免許証の提示を求められたYさんは,実は日本での運転免許を持っておらず,無免許運転をしていたことが発覚し,現行犯逮捕されてしまいました。
Yさんの会社の友人は心配になり,弁護士に相談することにしました。
無免許運転で強制送還になることはあるのか
これまで当サイトにて解説している通り,入管法上,刑事事件と関連して強制送還される場合というのは,次のような場合です。
- 一定の入管法によって処罰された場合
- 一定の旅券法に違反して懲役,禁錮刑に処せられた場合(資格外活動の場合,罰金だけでもアウト!)
- 麻薬取締法,覚醒剤取締法,大麻取締法などの薬物事件で有罪判決を受けた場合
- 一定の刑法犯で懲役,禁錮刑に処せられた場合(執行猶予がついてもアウト!)
- どの法律違反であっても,「1年を超える実刑判決」を受けた場合
交通違反の場合,そもそも反則金制度の対象となる違反なのか,罰金刑以上が課される刑事罰の対象なのかという点が,区別として非常に重要です。
無免許運転の場合,反則金の対象とはならず,全て刑事事件として扱われることになります。
無免許運転は,道路交通法違反として3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金が定められています。そのため,無免許運転として検挙されて有罪の判決を受ける場合には,最大で懲役3年の刑が科されることになります。
無免許運転を含んだ道路交通法違反の事件は,上記の「一定の刑法犯」には含まれませんので,「1年を超える実刑判決」とならなければ強制送還の対象とはなりません。
これは,どの在留資格であったとしても同じです。永住者,日本人の配偶者等の在留資格の方であっても,留学や短期滞在(旅行者)の在留資格であっても,1年を超える実刑判決を受けない限り,無免許運転をしたことによって強制送還されるということは原則としてありません。
また,「逮捕された」,「勾留された」というだけでは,強制送還や在留資格の取消事由ともなりません。
Yさんのように,逮捕されただけでは,直ちに強制送還までされるということはありません。無免許運転について事実を争わない(間違いがない)ということであれば,刑事事件として有罪ん判決を受けることになりますが,この時,「1年」を超える実刑判決を受けなければ,強制送還されず,日本での生活を続けることができます。そのため,刑事裁判において,いかに軽い処分を受けられるかという点が非常に重要です。
交通違反と在留資格
強制送還の対象とはならない刑事事件であっても,ビザに影響することはあります。
Yさんのように,逮捕された後に,略式罰金によって罰金の支払いを命じられたり,正式な裁判によって執行猶予付きの懲役刑判決を受けたりした場合には,日本での素行が良くないという事情が生じてしまいます。
そのため,次回の在留期間の更新や在留資格の変更申請をした際に,「素行が不良である」として,申請が不許可となってしまう可能性があります。また,長年日本で生活してきた方が永住許可申請をするときにも,前科があるということは非常に大きなマイナスポイントになってしまいます。
無免許運転のように,強制送還とはならない事件であっても,今後の在留資格に影響する可能性があることを忘れないできちんと対応する必要があります。
交通違反,無免許運転について,ご自身・家族・友人の在留資格について不安なことがある方は,是非一度,専門家にご相談ください。
解決事例 在留資格(定住者)が認められた事例
当所の扱った事案について,在留資格認定証明書の発行が認められましたので,その事例を紹介,解説します。
事案・ご依頼の経緯
ご依頼者様は外国籍で日本人の方と結婚されていましたが,本国に外国籍の未成年のお子さんがいらっしゃいました。
お子さんは日本人の子供ではなかったので,「日本人の配偶者等」の在留資格は得られず,また,日本で生まれたお子さんでもなかったものの,家族で集まって日本に住みたいという思いが強くありましたから,なんとか日本に呼び寄せたいとのご希望でした。
なお,このご依頼者様は一度,入管に対してお子さんを「定住者」のビザで呼び寄せようと申請を行っていましたが,不許可の通知を受けてしまいました。
一度申請が不許可となったものの,どうしても家族を呼び寄せたいとの思いから,弊所にご相談に来られました。
弁護活動と成果
ご相談後,在留資格認定証明書の交付請求について,正式にご依頼を頂き,弁護士としての活動を行いました。
ご自身で一度申請をしたものの不許可となった事案で,再度同じ件について申請をしようとする場合,「前にした申請の内容と矛盾しないようにする」という点が非常に大切です。
入管に対する申請については,特に回数制限はありませんが,同じ内容で申請をしても同じ結果,つまり不許可となるだけですし,申請内容を少し変えるとしても,前の申請内容と矛盾してしまうと「申請内容が信用できない」としてやはり不許可になる恐れもあります。
申請に先立って,ご依頼者様やそのご家族からも聞き取りを行い,申請内容が矛盾しないように注意を払いました。
また,不許可となった事案において更に大切なのが,「なぜ不許可となったのか」という点をきちんと洗い出すということです。
新しくビザ(在留資格)の申請をする場合,法律上の要件が満たされているのであれば,原則としてビザは発行(在留資格が認定)されます。それが不許可となったということは,何かしらの要件を満たさなかった,つまり,入管に対して提示すべき事実が欠けていたり証拠が不足していたということです。
この事案でも,不許可となった理由を確認し,不足していた事情を補って再度の申請を行いました。その際,前の申請内容と矛盾が生じないように気をつけなければならないことは先ほど述べた通りです。
弁護士が依頼を受けて再度の申請を行ったところ,申請から約1月弱で審査が完了し,無事に在留資格認定証明書が交付され,ご依頼者様のお子様は「定住者」と支店在留資格が認められることになりました。
同性婚の場合の在留資格はどうなるのか?その2
2022年9月30日,日本人と同性婚をした外国籍の方が,国を被告として起こしていた裁判について判決の言い渡しがあり,外国籍の方の主張について一部容れた判断をしたという報道がありました。
報道:日米同性カップル、定住資格認めず 「特定活動」を与えないのは違法 朝日新聞デジタル
訴訟の内容
訴訟において訴えていたのは,「定住者」としての在留資格を付与するように,というものです。
そもそも,日本にいる外国人同士の方で同性婚をしている方については,「特定活動」としての在留資格を認めています。しかし,日本人と外国人とが同性婚をした場合の扱いについては何も規定がありませんでした。
この訴訟で原告となった外国籍の方も,日本人の方と同性婚をした後,入管で「定住者」の在留資格の変更を申請しましたが,入管はこの申請に対して不許可処分としていました。
訴訟の中で外国籍の方は,異性婚であれば「日本人の配偶者等」として在留資格が認められるのだから同性婚の場合にも同様に保護されるべき等と言った主張をしていました。
判決の内容
判決の主文としては,原告の外国籍の方の訴え(定住者としての在留資格を付与する)を認めたものではありませんでしたが,入管の対応について違法があった事を認めました。
違法とされた点は,「外国人同士の同性婚」と「日本人と外国人の同性婚」で扱いという部分で,このように扱いが違うのは法の下の平等を定めた憲法14条の趣旨に反する,とまで判断しました。そして,同性婚に対して,「日本人の配偶者等」と同じ在留資格までは認められないものの,外国人同士の同性婚と同じ「特定活動」の在留資格を認めなかったのは違法である,と判断をしました。
直接の憲法の違反であるとまでは言いませんでしたが,憲法14条に言及して入管の対応について違法な点があったとまで触れた点は,一歩踏み込んだ判決であるといえるでしょう。裁判において憲法論を扱う,それも,憲法に違反するかもしれないという判断をするということは,先例としても大きな意味を持つ裁判例になります。
判決文の全文は公開されていないため,それ以上の詳しい主張や証拠については分からないところですが,報道などによれば,今後の入管における取扱いとして,日本人と外国人との同性婚において,外国人の方に対しては「特定活動」の在留資格を付与することとなっているようです。また,原告となった外国籍の方は,「定住者」の在留資格が認められなかった点について不服が残るので控訴を申し立てるとのことです。
定住者と特定活動との違い
定住者とは,日本とのつながりや活動内容に応じて,法務大臣が個別の事情を考慮して付与する在留資格です。
「定住者」の在留資格は,就労ビザや留学ビザなどと異なり,基本的には職業に制限がありません。また,定住者として「3年」以上の在留期間がもらえていれば,「永住者」へ在留資格の変更ができる場合があります。
定住者と特定活動の在留資格との大きな違いとして,この,永住者への変更のしやすさというものがあります。
定住者の場合には「3年」以上の在留期間で良いのですが,「特定活動」の場合には「5年」の在留期間が認められないと永住者への変更ができない場合があります。より早く永住者の在留資格を得られるのは「定住者」の方になります。
上記の報道のあった事件で原告の方が「定住者」の在留資格を求めて争っている理由の一つとして,永住者の在留資格の得やすさという点も考慮されているのかもしれません。
同性婚の場合の在留資格はどうなるのか?
日本において,法律上婚姻は「両性の合意」によって成立するものとされています。そのため,日本の民法では異性婚heterosexual marrigeのみが法律上有効なものとして規定されています。
そのため,入管法での「配偶者ビザ」は,日本人夫と婚姻している外国人妻,もしくは日本人妻と婚姻している外国人夫でなければ認められていません。
参考:日本人の配偶者等 日本人の配偶者若しくは特別養子又は日本人の子として出生した者
ここでいう「配偶者」とは,「法文上,日本人の配偶者であること,すなわち日本人と当該外国人との間の法律上の婚姻関係しか要求していない」ということになる。
コンメンタール出入国管理及び難民認定法2012
ところで近年,性的指向についても異性愛のみならず,同性愛,同性婚に対しても異性婚と同様の法律上の保護を認めようという動きが活発化しています。
例えば東京都では16の市区町村でパートナーシップ制度が導入されています。自治体によって制度の詳細は異なりますが,パートナーシップ宣言をしているカップルに対しては,法律上の家族と同様の扱いをする,例えば行政サービスを受ける時に同じ世帯として扱う,死亡時の情報公開制度の当事者として扱う,医療を受ける時の家族と同じ扱いとする等といった制度です。
では,入管上の扱いはどのようになっているのでしょうか。
基本的には「配偶者等」としていない
2022年時点においては,入管法上の「配偶者」は日本の民法で有効に成立した夫婦,つまり,異性婚の配偶者のみが該当します。
そのため,同性婚をして地方自治体でのパートナーシップ宣言をしていた場合であっても,入管法上の「日本人の配偶者等」の在留資格を取得することはできないことになっています。
外国人の方が同性婚をして日本での在留を希望する場合には,「日本人の配偶者等」以外の在留資格を得なければならないことになります。
同性婚の場合の在留資格は「特定活動」
同性婚の配偶者の日本でのビザは「特定活動」になります。
平成25年10月18日に,法務省が各地方出入国管理局に対して出した通知には,外国で適法に成立している同性婚の場合には,人道上の理由から外国と同様に安定した生活できるように,原則として「特定活動」としての入国,在留を認めるようにとされています。
※法務省管在第5357号
「外国で成立している同性婚」と挙げられているように,この通知によって「特定活動」の在留資格が認められているのは,外国人同士で同性婚をした場合を指しています。また,同性婚の外国人両方に在留資格を認めるのではなくて,「他の在留資格で日本で生活している外国人」と同性婚をした外国人の方に,特定活動の在留資格を認めるというものです。
例えば,技術人文知識,国際業務のビザを持っているAさんが,Bさんと同性婚をした場合,Bさんは「特定活動」の在留資格を得て日本で生活することができるというわけです。
一方,短期滞在で日本に来たAさんとBさんが同性婚をしたとしても,AさんとBさんの両方に対して「特定活動」のビザが与えられるわけではないのです。
このように,日本の入管法では「外国人同士の同性婚」については在留資格を認めるという運用を行ってきました。その理由が,「外国で同性婚が成立しているのであれば,日本で本国と同じように安定した生活ができるようにしよう」という目的で特定活動を認めていたからです。
そのため,これまでは日本人と同性婚をした外国人の方に対して在留資格を認めていませんでした。この点について,国に対して特定活動の在留資格を認めるように訴えていた方の裁判があり,2022年9月30日に東京地方裁判所での判決が出されました。
次回はこの判決の内容と特定活動,定住者の在留資格について解説をします。
オーバーステイで入管へ出頭,その場で逮捕されるのか?日本人と結婚していた場合を弁護士事務所が解説
(次の事例は解説のための架空の事例です)
Aさん(東京都在住,独身)はSNSを通じて知り合ったX国出身のBさんと仲良くなり,将来結婚することを考えるようになりました。
AさんとBさんは結婚して,日本で生活をしようと思ったため,Bさんは「日本人の配偶者等」の在留資格を取得しようと考えました。
しかし,実はBさんは留学生ビザで来日したものの,オーバーステイとなり,Aさんと出会った時から不法残留の状態になってしまっていました。
Aさんも,Bさんから不法残留,オーバーステイの事実を聞きましたが,それでも結婚して日本で夫婦生活を継続したいと思い,インターネットサイト等を見たところ,「入管に出頭した方が良い」との記事を見つけます。Aさんは,Bさんに「配偶者ビザをもらうために,一度入管に出頭しよう」と相談しましたが,Bさんは「入管ですぐ逮捕されるのではないか」と不安です。
そこでAさんとBさんは,法律事務所に相談することにしました。
不法残留に対する対応
日本の入管は,基本的に不法残留に対しては退去強制(強制送還)の手続きをとります。
Aさん,Bさんのように「配偶者ビザをもらうために出頭した」という場合であったとしても,まずは退去強制手続きを行います。
この退去強制手続きを行う中で,日本人の配偶者等として在留特別許可をするかどうかについての審査が行われます。
注意しなければならないのは「在留資格の変更」や「新たな取得」を申請することはできない,ということです。
一度日本国内においてオーバーステイとなってしまうと,元々持っていた在留資格が失効(効果がなくなる)しますので,「延長」であるとか,「変更」の手続きをすることはできません。
延長や変更は,「元々,適法に持っていた在留資格を別のものに変更したり,在留期間を延長したりする」という手続きですから,適法な在留資格がないオーバーステイ状態では取れない手続きということになります。
Aさんのように,親しい方や婚約者である外国籍の人がオーバーステイ(不法残留)であることが分かった時の対応の仕方として,入管へ出頭する,というのは一つの選択肢であります。
というのも,Bさんのように不法残留の状態だと,放っておいても在留資格が認められることはないため,仮にきちんとした在留資格を取得しようと思うのであれば,入管へ出頭する以外には現実的な手段がないのです。
入管に出頭したら逮捕されるのか
それではBさんのように,不法残留の状態で入管に出頭した場合,その場で逮捕されてしまうのでしょうか。
結論としては,逮捕されない場合もあるというものになります。
というのも,確かに入管は不法残留や不法就労について摘発を行うことがありますが,実際に不法残留について逮捕したり捜査を行ったりするのは,警察官がほとんどです。
また,不法残留の人が入管に出頭したという場合であっても,すぐに入管が警察へ連絡するというわけでもありません。
実際には,不法残留になった期間や日本での生活の状況,出頭した経緯や在留特別許可となる見込みがどれだけあるか等といった事情を加味して,入管としての対応が決まることになります。
たとえば,不法残留になってからの期間が短かった,不法残留以外には日本での法律違反がない,出頭した事情から見て在留特別許可がされる可能性が高い,というものであれば,入管としても警察へ通報しないということがあるでしょう。
逆に,在留カードを偽造していた場合や,長い期間にわたって不法就労をしていたというような場合,不法残留以外に日本での法律違反がある等という場合には,入管から警察への通報がなされるということがあります。
在留特別許可については法務省が許可した事例と不許可にした事例を公表しています。
Bさんの事例のように,「日本人の配偶者等」としての在留資格を求めて出頭したという場合ですと,他に法律違反がなければ,逮捕されないままで手続きが進むということも考えられるでしょう。
ただ,Bさんのように「入管に出頭したら逮捕されてしまうのではないか」と不安に思うのも無理ありません。実際にオーバーステイの状態になってしまっているのであれば,なおさらです。
不法残留(オーバーステイ)の状態になっているけれども日本でのビザが欲しい,きちんとビザをもらうために入管に出頭したい,と考えている方も,あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
刑事事件に強い弁護士が,入管の手続きについても対応します。刑事事件については多数の経験がありますから,逮捕される可能性がある事案についても,ご依頼者様の利益を最大化できるような選択肢を一緒に考えていきましょう。
外国人に対する判決期日での手続
日本に在留する外国人の方が日本国内で刑事裁判を受ける場合,判決の結果によって在留資格が影響を受けたり,退去強制に関する手続きが開始されたりします。
2021年の統計資料によると,2021年のうちに日本で起訴された外国人は7932人になります(検察統計調査2021年罪名別 起訴又は起訴猶予の処分に付した外国人被疑事件の国籍別人員)。
この人数は,有罪となった人,無罪となった人の両方を含みますが,大半の人が何らかの罪名で有罪の判決を受けたであろうと推測されます。
起訴された方の罪名として,特に数が多いのが,窃盗罪(1716人),出入国管理及び難民認定法違反(2270人)です。
これらの罪名について,判決の言い渡しがあり,有罪判決となった後の手続はどのようになるのでしょう。
一般的な手続きの流れ
外国人の方が刑事事件の被告人となった場合,多くの場合では勾留されたまま裁判を受けることになります。日本に在留している外国人の方の場合,「裁判期間中に母国へ出国してそのまま帰ってこないかもしれない」という疑いをもたれ,逮捕される事案が多いからです。
事実関係について認めている事件であれば,結審すると,次回期日が判決の言い渡しとなります。
判決の言い渡し期日では有罪の判決が言い渡されると,有罪の起訴となった罪名とその人の在留資格に応じて退去強制(強制送還)の手続きが開始されることがあります。
具体的には,判決言渡し期日に入管職員が傍聴に来ており,期日が終結すると,そのまま入管職員が被告人(外国籍の方)を連れて最寄りの入管へ行きます。そこで退去強制手続きに伴う収容状が発布され,今度は入管の収容場に収容されることとなります。
ただし,その後の手続の見通しや日本に身元引受人がいるかどうかといった点を考慮して,収容状が発付されたとしても当日中に仮放免が認められる場合が多くあります。
「有罪判決の言い渡しを受けた後,入管へ行ったけれども,一旦かえって良いと言われた」という方もいますが,その場合のほとんどは当日中に仮放免を受けているということになります。
単純なオーバーステイであるとか,退去強制事由に該当するとしても在留特別許可が認められる可能性があるという事案であれば,当日中に仮放免になるということもあります。
入管の施設に収容された場合であっても,一時仮放免が認められた場合であっても,その後の「違反調査」は進められることになります。
特に,入管に収容されたままで退去強制に関する手続きが進んでしまった場合,判決から60日以内に「口頭審理」という手続きまで進むことになります。仮に,有罪判決後も日本での在留を希望する場合には,この「口頭審理」での手続きが非常に重要になります。
すぐに入管へ行く場合/後日呼び出される場合
判決言い渡し期日に入管職員が控えている場合と,そうでない場合とがあります。
この違いは,判決の言い渡し後すぐに退去強制手続きがスタートするかどうかという点です。
では,退去強制手続きがいつスタートするかというと,それは在留資格や有罪となった罪名によって異なります。
外国人で刑事事件となるケースの中で特に多い,出入国管理及び難民認定法違反(いわゆる,入管法違反)や窃盗罪で有罪となった場合,判決言い渡し後直ちに退去強制手続きがスタートするというわけではありません。有罪の判決によって退去強制の理由となるには,判決が確定する必要があります。この判決が確定するまでは,控訴を申し立てないまま,判決言い渡し日を含めて15日が経過することで確定します。
一定の入管法違反の場合には在留資格を問わず,窃盗罪の場合には就労系の在留資格や留学等の在留資格の場合,判決の確定によって退去強制手続きがスタートすることになります。
「判決の確定」が退去強制の理由となる場合には,後日入管から呼び出されて,退去強制に関する手続きがスタートすることになります。
一方,入管法違反,特に,オーバーステイの場合には,刑事裁判が始まる前から,警察署や拘置所の中で入管職員が外国人の方から事情聴取を行っています。その場合,刑事裁判の確定を待たず,「オーバーステイをしていた」こと自体が退去強制を行う理由となるのです。そのため,判決の言い渡し期日にも入管職員が控えており,刑事裁判が終わったら直ちに入管での手続きが進むことになるため,そのまま入管へ連れていかれる,ということになるのです。
同じ外国人の方であっても,刑事裁判の後すぐに入管へ行くのか,後日呼び出しがあるのか,退去強制に関する手続きがどのように進んでいくのか,というのは,その人が置かれた状況によって異なります。
日本で刑事裁判の判決を控えているという方,特に,判決後も日本での在留を希望するという方は,早めに弁護士などの専門家に相談しておいた方が良いでしょう。
外国人の子供のビザ,外国人の親のビザ
日本で生活している外国人の方の中には,
・母国で生活している親を日本に呼びたい
・離れて暮らしている子供と日本で生活したい
という方が多くいるでしょう。
日本にいる外国人の方が,自分の親や子供を日本に呼び寄せる時に活用できる在留資格について解説をします。
外国人の子供のビザ
外国人の方の子供を呼び寄せようとする場合,
- 日本にいる外国人親の在留資格(ビザ)が何なのか
- 呼び寄せようと思う子供の年齢がいくつなのか
によって,ビザの種類やビザの取りやすさが変わってきます。
日本にいる外国人親の在留資格が,就労系の在留資格または,文化活動だった場合,家族滞在の在留資格で,その子供も日本での滞在が認められます。
就労系の在留資格とは,教授,芸術,宗教,報道,経営管理,法律・会計業務,医療,研究,教育,技術,人文知識・国際業務,企業内転勤,介護,興行,技能,特定技能2号の場合を言います。
技能実習生と特定技能1号の人は,家族滞在ビザで子供を呼び寄せることができません。
外国人親の在留資格が「日本人の配偶者等」,「永住者」,「定住者」である場合には,その子供と日本との関係が重要になります。
呼び寄せようと思う子供が日本人,永住者の実子なのであれば,子供も同様に「日本人の配偶者等」や「永住者の配偶者等」の在留資格が認められます。
もっとも複雑なのが,子供が,外国人の実子ではあるけれども日本人の実子ではない(連れ子),というパターンです。
この場合,子供と日本人との関係によっては,「定住者」の在留資格が認められます。この場合,子供が18歳未満で,結婚しておらず,外国人の実子であるという点が重要です。
いずれの在留資格であっても,子供を日本に呼び寄せようと思う場合,その子供が「扶養を受ける」,つまり,日本にいる人に養ってもらって生活をするという事情がなければ子供としての在留資格は認められません。
自分で生計を立てられる(養われなくても生活ができる)というのであれば日本に呼び寄せる必要はないし,仕事に応じた就労系の在留資格を取得すればよい,ということです。
外国人の親のビザ
外国人の親を呼び寄せる場合,法文上は,ビザは「特定活動」の在留資格しかありません。
明確に認められるのは,「高度専門職1号,2号の外国人」の親です。それも,日本にいる外国人に7歳未満の子供(妊娠中の場合を含む)がいて,小さい子供の世話をする間,親(おじいちゃん,おばあちゃんの立場)に日本に来てもらって家事のお手伝いをしてもらうという場合です。
その他の在留資格の方が外国から親を呼び寄せようと思う場合には,「告示外特定活動」のビザを取得するしかありません。「老親介護」とも言われることがあります。
日本に滞在している外国人又は日本人の実の親で,本国で生活しており身寄りのいない場合に,人道上の理由から「特定活動」としての在留資格が認められる場合があります。
「老親介護」のための特定活動の在留資格を申請しようと思う場合,日本にいる外国人以外に適切な扶養者がいないこと,日本で親を扶養する資力が十分にあること等が審査の項目になります。
老親介護のための特定活動ビザの申請は,本人に一度,短期滞在等のビザで来日してもらった後で,在留資格変更許可申請(短期滞在→特定活動)をすることになります。
親のビザ,子供のビザについては弁護士等の専門家にご相談ください。
裁判中に在留期間が切れそうになったらどうしたらいいのか
(次の事例はフィクションです)
Aさんは,日本の企業に勤める外国籍の人で,「技術,人文知識・国際業務」の在留資格で「5年」の在留期間をもらっていました。
ある日,Aさんは会社のお金を横領した疑いをもたれ,警察の取調べを受けました。
Aさんは身に覚えがなかったため否認していましたが,検察官はAさんを「業務上横領罪」で在宅起訴しました。
この裁判期間中に,Aさんの在留期間の更新の期限が迫ってきたため,Aさんは在留期間について弁護士と相談することにしました。
在留期間の更新申請
Aさんのように,「永住者」の在留資格以外の外国人の人が,在留期間の後も日本で生活することを希望する場合,在留期間の更新申請をしなければなりません。
在留期間の更新申請は,最寄りの入管(出張所でも手続きができる場合があります)に,「在留期間更新許可申請書」を提出して,審査を受けます。
最新の統計によると,在留期間更新申請については,申請をしてから審査が終わるまでにかかる期間は,平均して約20日程度です(2022年1月1日~2022年3月31日までに処理された申請に関する統計001371836.pdf (moj.go.jp))。
在留期間の更新申請の時に審査の対象となるのは,
- 在留資格に適合した活動をしているか
- 在留期間を延長(更新)することが適当か(ふさわしいか)
という点になります。
冒頭の事例にあったAさんのような場面でも,日本での在留を引き続き希望するのであれば,
- 「技術,人文知識・国際業務」の在留資格に適合する活動(仕事)を続けているか
- 在留期間を延長するにふさわしい人物か(具体的には,納税をしているか,社会保険料を支払っているか,素行不良でないか,入管法で必要とされる手続きをきちんと果たしているか)
といった点が審査の対象となります。
裁判中でも在留期間を延長できるのか
通常,日本の刑事裁判は始まってから第一審の判決が出るまでに2か月程度かかります。
Aさんの事件のように「身に覚えがない事件だ」として否認して争っている場合だと,さらに審理のために時間がかかり,判決が出るまでに6か月,場合によっては1年以上の期間がかかることもあります。
そうなると,Aさんのように,裁判をしている間に在留期間を迎えてしまうという方もいるかもしれません。
裁判期間中であっても在留期間の更新,延長は認められるのでしょうか。
まず,多くの方が「裁判になってしまったら在留資格も取り消されたり強制送還されてしまうのではないか」と不安に思われるかもしれません。
しかし,入管法上,逮捕されたり起訴されたりしただけで,在留資格が取り消されたり強制送還の対象となることは極めて例外的です。Aさんの事例のような業務上横領罪といった財産犯では,判決が確定しない限りは強制送還の対象になりません。第一審の判決が出るまでの間は,無罪の推定がありますから,裁判を受けているというだけで素行が悪いと判断することもできないのです。
在留資格が取り消されたり強制送還の対象となるのではないかと不安に感じている方は,早めに弁護士などの専門家に相談しましょう。
Aさんも,業務上横領罪が疑われている裁判が終わるまでは,在留資格が取り消されたり強制送還の対象とはなりませんから,在留期間の更新が認められる可能性も十分にあります。
ただし,このような事例で注意しなければならないのは,
- 在留資格に適合した活動を続けているかどうか
という点です。
Aさんの事例のように,職場内で疑われた事件だと,刑事裁判の判決が出る前に懲戒免職となったり,雇用契約が解除されてしまったりしている可能性もあります。職を失ってしまった場合,在留資格に適合した活動を続けていないとして,在留期間の更新が認められなくなってしまいます。
そのような場合には,元の在留資格のままで期間の更新申請をするのではなく,裁判を受けることや転職活動をすることを目的とした,「特定活動」の在留資格へ資格を変更することを考えなければなりません。
在留期間内に裁判を受けるとして,裁判を受けること自体は更新申請手続きに影響するものではありませんが,元々の在留資格の内容や事件の内容によっては,単に期間の更新申請するのではなく,資格の変更申請をした方が良いという場合があります。
在留期間内であっても裁判との関係で,在留資格が取り消されたり更新が不許可になるのではないかとご不安な方は,一度弁護士などの専門家に相談しておくとよいでしょう。
「日本人の配偶者等」の在留期間が短くなったらどうする
現在,「日本人の配偶者等」の在留資格をもって日本に在留している外国人の方が多くいます。
「短期滞在」(旅行者など)の在留資格で入国する方を除くと,「定住者」についで数の多い在留資格です。
この「日本人の配偶者等」の在留資格も,「永住者」と違って在留期間が設定されており,永続的な日本での在留を希望する場合には都度,更新をしなければなりません。
「日本に滞在できる期間」という点で,在留期間の定めには意味があるものですが,実際にはさらに重要になる場面があります。
また,「思っていたよりも短い期間しか更新が認められなかった」という場合もあります。
在留期間の長さが重要になる場合
在留期間の長さが重要になる場合,それは永住許可申請をしようとする場合です。
永住許可を受ける場合に必要な条件の中に,次のようなものがあります。
・入管法施行規則に規定されている最長の在留期間をもって在留していること
在留期間について,「最長の期間が認められている場合でなければ永住許可をしないよ」ということです。
そして,当面の期間はこの「最長の在留期間」とは「3年」とされています。
「日本人の配偶者等」の在留資格の場合,在留期間については
5年,3年,1年,6か月
のいずれかが付与されることになっています。
そのため,3年の在留期間となるのか,1年の在留期間となるのかという点は,永住許可申請をすることができるかどうかについて非常に大きな差となるのです。
どのようにして在留期間が決まるのか
「日本人の配偶者等」の在留資格に該当することを証明できたとして,実際の資格付与の際には具体的な在留期間が決定されます。
この「在留期間」の決め方は,個別の在留資格によって異なります。
「日本人の配偶者等」の場合についてみると,在留資格を取得した最初のタイミングだと1年,その後の更新の際に3年,5年と延長が認められる場合が多くあります。
特に,実態を伴った婚姻生活が継続していることが,長期間の在留期間が認められるためには重要になります。「日本人の配偶者等」の在留資格を最初に取得した際の在留期間が1年とされるのも,「これから先きちんと実態のある婚姻生活が継続するかどうか」という点がまだ分からない(結婚してその後の生活が安定するかどうか分からない)という点から,「1年」の在留期間とされるのです。
その後,更新を重ねていく中で「日本での婚姻生活が継続している」と認められれば,3年,5年の在留期間が認められることになります。
逆に,全く別居していて夫婦間での交流がなく経済的にも完全に独立している,といった夫婦の場合だと,「実態を伴った婚姻生活が継続していない」として長期の在留期間が認められない場合もあります。
在留期間の更新の際にも,夫婦関係が継続していることをきちんと疎明しておく必要があるでしょう。
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