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偽装結婚で有罪となった,その後はどうしたらいいか?
(以下は解説のための架空の事例です)
事例-偽装結婚についての判決後
Cさんは日本国籍の男性ですが,ある時,「戸籍を貸してくれたら毎月10万円振り込む」といわれて,外国籍女性のEさんと偽装結婚をしてしまいました。
その後,CさんはEさんとは何も関係することなく生活していましたが,ある日池袋警察署の警察官がCさんの自宅に捜索差し押さえを行い,Cさんは公正証書原本不実記録罪によって逮捕されてしまいました。
Cさんは起訴され,刑事裁判で有罪の判決を受けました。幸いにして執行猶予判決となりましたが,Cさんは「Eさんとの戸籍はどうなるのだろう」と思い,外国人事件,入管事件に詳しい弁護士に相談しようと思いました。
偽装結婚の罪
一般的に偽装結婚と呼ばれるものの中には,公正証書原本不実記録,同供用罪という犯罪に該当するものがあります。
これは,公務員(市役所職員など)に対して,嘘の申立てや届出を行い,登記簿や戸籍簿と呼ばれる公正証書の原本に虚偽の記載をさせた,またはその原本を供え置かせるというものです。
難しいように聞こえるかもしれませんが,結婚するつもりがないのに婚姻届けを提出して,戸籍上も婚姻したことにした場合には,犯罪が成立することになります。
偽装結婚というと,「結婚するつもりがないのに結婚したことにして婚姻届けを出す」という意味が一般的ですが,まさにこれが犯罪です。
一方,婚姻届けを出したときは幸せいっぱいの夫婦だったけれども結婚生活の中ですれ違い,今はただ「夫婦」という体を保っているだけという,いわゆる「仮面夫婦」のような状態だけでは犯罪とは言えません。あくまで,虚偽の届出を出して,戸籍に虚偽の記載をさせるというのが犯罪なのです。
Cさんのように,当初から婚姻生活を送るつもりがなく,また金銭を得るだけ(もしくは外国人に在留資格を得させるだけ)の目的でした婚姻届の提出なのであれば,公正証書原本不実記録罪に該当するでしょう。
同罪は5年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処せられる可能性があります。
有罪の判決が出た後はどうなるのか
Cさんのように日本人の立場からすると,偽装結婚がばれた後に自分の戸籍がどうなるのかという点が気になる方もいるかもしれません。
というのも,刑事裁判では「有罪(刑の重さ)/無罪」を決めるだけで,戸籍そのものについては何も訂正をしてくれないからです。
刑事裁判の後,Cさんはある困った問題に直面します。それは再婚ができないというものです。
戸籍が元に戻る(CさんとEさんの結婚が虚偽のものだからという理由で訂正される)までは,Cさんは戸籍上既婚者という立場が続くことになります。一方,Eさんと離婚に向けた手続きを行おうとしても,刑事裁判が確定すればEさんのような人は,ほとんど強制送還されるため,そもそもCさんはEさんと連絡を取る事すら難しくなってしまいます。
このような場合に,Cさんの戸籍を訂正して,再婚できるようにするためには次のような手続きが必要です。
まず一つ目は,役所内部での処理を待つというものです。
偽装結婚であることの刑事裁判が確定すると,検察庁から市区町村役場に対して,「あの婚姻届けは虚偽のものでしたよ」という通報がなされます。この通報を受けて,役所が内部の処理として,戸籍を自分たちで訂正するというものです。この手続には時間が掛かり,判決が確定した後,少なくとも数か月かかることになります。
次の手段としては,Cさんのような本人が裁判所に申立てをする場合です。
刑事裁判の中で偽装結婚であることが認められているのであれば,その裁判資料を使って家庭裁判所に対して「戸籍を直すことを許可してください」という申立てをすることができます。この場合には自分たちである程度資料を集めて手続きを行う必要がありますが,役所が自分たちで戸籍を訂正するよりも早く手続きが進むことが期待できます。
戸籍の訂正など,裁判所での手続きについては専門家へ依頼することを検討された方が良いでしょう。
もしも刑事裁判になっていなかったら?
Cさんのように,刑事裁判が確定していればよいですが,もしも刑事裁判になっていないという場合に戸籍を訂正しようと思ったら,どうしたらよいでしょう。
その場合には,そもそも婚姻届の提出自体が無効だったのだということを確定させるために,婚姻無効確認訴訟を起こして,裁判所に「結婚が無効である」ことの判決をもらわなくてはなりません。
また,刑事裁判になっていないという場合には,偽装結婚の相手となった外国籍の人が今どこで何をしているのかということの調査まで行わなければなりません。
加えて,警察には何も知られていない状態で,裁判で「偽装結婚をしていました」と話すことのリスクについても考えなければなりません。
もしも,過去に偽装結婚をしたまま戸籍を放置してしまっているという方,偽装結婚でお悩み・お困りの方がいれば,早めに弁護士などの専門家にご相談ください。
名古屋出入国管理局の紹介
今回は、名古屋出入国在留管理局のご紹介をいたします。
名古屋出入国在留管理局の住所:愛知県名古屋市港区正保町5-18
名古屋出入国在留管理局の電話番号:0570-052259
名古屋出入国在留管理局への最寄りの駅:あおなみ線「港北駅」出口から徒歩1分
名古屋出入国在留管理局の窓口受付時間;9時~16時 (土・日曜日、休日を除く)
名古屋出入国在留管理局の管轄
名古屋出入国在留管理局は、愛知県、三重県、静岡県、岐阜県、福井県、富山県、石川県を管轄し、本局、1支局及び8出張所で構成されています。
名古屋出入国在留管理局の特徴
名古屋出入国在留管理局は、東海北陸地方全域を網羅し、大変エリアの広い地方出入国在留管理局です。東海北陸地方最大の都市である名古屋市に本局が置かれています。
3大都市圏を含む名古屋出入国在留管理局管轄の在留外国人は、令和3年6月末現在約53万3千人で、全国の在留外国人のおよそ18%を占めています。
名古屋出入国在留管理局の弊所の最寄りの支部は、名古屋市中村区にある弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋本部です。
東京出入国管理局の紹介
今回は、東京出入国在留管理局をご紹介いたします。
東京出入国在留管理局の住所:東京都港区港南5-5-30
東京出入国在留管理局の電話番号:0570-034259
東京出入国在留管理局へのアクセス:JR品川駅南口(東口)から都バス「品川埠頭(循環)」又は「東京入管出入国在留管理局(折り返し)」で「東京出入国在留管理局前」下車
東京出入国在留管理局の管轄
東京出入国在留管理局は、東京都、神奈川県(横浜支局)が管轄、埼玉県、千葉県、茨城県、
群馬県、山梨県、長野県、新潟県を管轄し、本局、3支局及び12出張所(横浜支局下の
1出張所を含む)で構成されています。
東京出入国在留管理局の特徴
東京出入国在留管理局の特徴は、他の地方出入国在留管理局と比べ圧倒的に規模が大きいということです。
令和2年末現在の在留外国人は約288万人ですが、そのうちの約48%にあたる139万人が、東京出入国在留管理局管轄の在留外国人です。東京都だけでも約56万人の在留外国人がいます。
全国に8つある地方出入国在留管理局の中で、在留申請件数は全国一位。
2020年度処理済みの申請手続の中で、在留期間更新手続数は全体で941819件に対し、東京出入国在留管理局の処理数は505614件、全体の54%、2位が名古屋出入国在留管理局の172560件と圧倒的に2位を引き離して断トツの申請件数となっています。
東京出入国在留管理局の弊所の最寄りの支部は、東京都新宿区にある弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所東京支部です。
札幌出入国在留管理局のご紹介
出入国在留管理庁は①出入国審査②在留管理③退去強制④難民認定⑤外国人の受け入れ環境整備などの出入国管理行政を管轄する法務省の外局として、2019年4月に設置されました。それまでは法務省の中に入国管理局が置かれていました。
出入国在留管理庁の中に8つの地方出入国在留管理局が置かれ、それぞれの局が出入国在留管理業務を行っています。
北から札幌、仙台、東京、名古屋、大阪、広島、高松、福岡に置かれ、局の中に支局、出張所が設けられています。
今回は、全国に8つある地方出入国在留管理局のうち、日本で一番北にある出入国在留管理局である、札幌出入国在留管理局をご紹介します。
札幌出入国在留管理局の住所:札幌市中央区大通西12丁目札幌第3合同庁舎
札幌出入国在留管理局の電話番号:011-261-7502
札幌出入国在留管理局への最寄り駅:札幌市市営地下鉄東西線「西11丁目駅」1番出口
札幌出入国在留管理局の管轄
5つの出張所と小樽と苫小牧の分室で構成されています。
出張所は函館、旭川、釧路港、稚内港、千歳苫小牧出張所が設けられています。
千歳苫小牧出張所は空港業務の取扱いであり、申請業務は取り扱っていません。
札幌出入国在留管理局の窓口は、総務課、審査部門、警備部門、小樽分室に分かれており、
総務課は、総務・人事・会計等、審査部門は在留審査一般、警備部門は退去強制業務、
小樽分室は海港業務を行っています。
窓口受付時間は総務課が9時~12時、13時~16時(土・日、休日を除く)
審査部門が9時~12時(土、日曜日、休日を除く)となっています。
札幌出入国在留管理局の特徴
札幌出入国在留管理局管轄の外国人労働者の在留資格において、全国平均と比較した場合、技能実習の割合が高く、身分に基づく在留資格の割合が低い結果となっています。
令和3年10月現在、外国人労働者における在留資格「技能実習」は全国平均で20,4%
に対し、札幌出入国在留管理局管轄では48,8%、身分に基づく在留資格(永住・特別永住者・永住者の配偶者・定住者)の割合は、全国平均が33,6%に対し、札幌出入国在留管理局は12,6%となっています。
札幌出入国在留管理局の弊所の最寄りの支部は、札幌市中央区にある弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所札幌支部です。
仙台出入国管理局の紹介
今回は仙台出入国在留管理局のご紹介をいたします。
仙台出入国在留管理局の住所;仙台市宮城野区五輪1-3-20仙台第二法務合同庁舎
仙台出入国在留管理局電話番号:022-256-6076
仙台出入国在留管理局への最寄りの駅:JR仙石線、榴ヶ岡駅出口1から徒歩10分
仙台出入国在留管理局の管轄
仙台出入国在留管理局は、全国に8局ある地方分局の中の一つです。
青森県、岩手県、宮城県、秋田県、山形県。福島県の東北6県を管轄し、6出張所で構成
されています。
出張所として、青森 盛岡 仙台空港 秋田 酒田港 郡山が置かれています。
仙台出入国在留管理局は、総務課、審査部門、警備部門の3つの部門に分かれています。
営業時間はそれぞれ9時~16時までです。
総務課は、管理局全体の管理、総務・人事・会計等の業務を行います。
人事課は、仙台入管で働く人の管理や局内部のお金の管理を行います。
審査部門は、在留審査一般・海港業務、在留の審査と港で日本に来る外国人を調べます。
警備部門は、退去強制業務、法律を守らなかった外国人に、日本から他の国へ帰る命令をします。
仙台入管にあって出張所にない業務として、警備部門による退去強制業務があります。
よく強制送還とか強制退去とか言われています。
退去強制とは、日本に不法に入国したり、在留許可の範囲を超えて滞在するなど、出入国在留管理法第24条に規定する、退去強制事由に該当する外国人を強制的に国外へ退去させ、日本の安全や利益が害されるのを防ぐのが目的とされています。
仙台出入国在留管理局の特徴
6つある各出張所の業務は、①青森出張所が在留審査一般と海港業務②盛岡出張出張所が在留審査一般と海港業務③仙台空港出張所が空港業務④秋田出張所が在留審査一般と空海港業務⑤酒田港出張所が海港業務と在留審査一般⑥郡山出張所が在留審査一般、空海港業務となっています。
6つある出張所は全て海に面しており、出張所の業務に海港業務が多いのが特徴です。
仙台出入国在留管理局の弊所の最寄りの支部は、仙台市青葉区にある弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所仙台支部です。
口頭審理で忘れてはいけないこと,日本で在留を続けるため
(以下は解説のための架空の事例です)
事例―MDMAの裁判の後・・・・
Bさんは「定住者」の在留資格で18年間,日本で生活をしていました。日本人の交際相手もおり,日本の企業にも就職していて,出来ればずっと日本で生活し続けたいと願っていました。
しかし,Bさんはある時,仕事がうまく行っていなかったことや友達から勧められたこともあり,MDMAを使ってしまい,警察に逮捕されました。
Bさんには懲役1年6月,執行猶予3年の判決が言い渡さた後,今度は入管からの呼出がありました。
Bさんは,インタビューの中でも日本に残りたいことを伝えましたが,口頭審理では「あなたは強制送還になります」と言われました。
Bさんとその交際相手のかたは,弁護士に相談することにしました。
口頭審理とは何か?
口頭審理とは,入国審査官が「退去強制事由がある」と判断をしたことに対して,特別審査官が再度審査をするという手続きのことです。
強制送還になるまでには,
- 強制送還となる事実の発生(例:オーバーステイ,不法就労,虚偽の申請,犯罪歴などなど)
- 入国警備員による調査
- 入国審査官による審査
という段階がありますが,「口頭審理」という手続きは,この「3」の次にある手続ということになります。
口頭審理期日は,入管の審判部門でのインタビューとなります。
東京入管の場合には,6階のエレベーターを降りて,ちょうどその裏にある部屋になります。名古屋入管の場合には3階です。
口頭審理の場では,,入国審査官の判断が間違っていたかどうか,が審理の対象になります。
そのためまずは,強制送還の理由となった事情について再度細かく質問を受け,その後,日本での在留に関する質問をされます。
口頭審理で忘れてはいけないこと
もしも日本での在留を続けたい方で,これから口頭審理を受ける方がいれば,覚えておいてほしいことがあります。
それは,口頭審理を受けただけでは在留特別許可は出ないということです。
どんな事案であっても,口頭審理の結果として在留特別許可をするということはできません。これは,法律上,できないからです。
口頭審理の結果というのは,
- 入国審査官の判断は間違っていた
- 入国審査官の判断は間違っていない
この二つしかありえません。ですから,口頭審理の場で在留特別許可がされなかったことで,パニックになってはいけません。
在留特別許可を望むのであれば,口頭審理の結果出てから3日以内に,法務大臣に異議の申出をしなければいけません。異議の申出があってから初めて,在留特別許可をするかどうかという判断が始まるのです。口頭審理の結果を受けて諦めてしまい,異議の申出をしないでいると,在留特別許可を受けるチャンスをつぶしてしまうことになりかねません。
口頭審理が終わったら必ず異議の申出をする,ということは,忘れてはいけません。
在留特別許可までの流れが複雑すぎる?
現在の法律によると,在留特別許可がされるかどうかの判断には,
- 強制送還となる事実の発生(例:オーバーステイ,不法就労,虚偽の申請,犯罪歴などなど)
- 入国警備員による調査
- 入国審査官による審査
- 特別審査官による口頭審理
- 法務大臣(もしくは各地方入管局長)の裁決
という手続きを踏まなければならず,事実を認めて争っていない場合であっても,何度もインタビューを受ける必要がありました。一度廃案になってしまいましたが,入管法の改正案の中には,「在留特別許可についても窓口で申請ができるようにする」というものもありました。これまでは,入管側のアクションを待たなければならなかったものが,自分たちでも申請ができるようになる,という改正案です。
将来的には,在留特別許可についても手続きが大きく変わってくるかもしれません。
在留特別許可に関する手続きや,口頭審理に向けた手続きについてご不安がある方は,弁護士,行政書士といった専門家に早めにご相談ください。
強盗罪で逮捕されたら強制送還されるのか?
(解説のための架空の事例です)
Bさんは外国籍の「定住者」(日系三世,在留期間3年)の在留資格を持っています。
ある日,Bさんは同胞の友人たちと居酒屋でお酒を飲み,自宅へ帰るためにタクシーに乗り込みました。Bさんはお酒に酔っぱらっていたこともあり,些細なことからタクシー運転手と口論になってしまい,タクシー運転手の腕を殴って,タクシー代を払わずにタクシーを降りてしまいました。
被害者であるタクシー運転手が110番通報したところ,Bさんは現行犯逮捕されてしまいました。
Bさんの家族は,Bさんが強制送還されてしまうのではないかと心配で,法律事務所に相談することにしました。
タクシー運転手との口論から「強盗」に
タクシー運転手と口論になって暴力をふるい,強盗罪として逮捕されるというケースは少なくありません。
Bさんの事例のように,「暴力」をふるって,「払うべきお金を払わなかった」という場合,強盗罪として逮捕されてしまう場合があります。
強盗罪に対する刑罰は極めて重く,「5年以上の懲役」と定められています。つまり,逮捕されて,起訴されて,刑事裁判で有罪の判決を受けてしまった場合には,特別な事情が認められない限りは5年以上の期間,刑務所に入らなければならないということになります。
強盗罪で強制送還される場合
Bさんは強盗罪によって強制送還されてしまうのでしょうか。
まず,強盗罪によって「5年以上の懲役刑」を受けてしまった場合には,「1年を超える懲役」を受けた場合に該当しますから,例え在留資格が何であったとしても強制送還の対象となってきます。
また,仮に裁判で執行猶予判決がついたとしても,強盗罪の場合だと,身分関係の在留資格(永住者,日本人の配偶者,定住者,特別永住者)以外の在留資格の人については,強制送還の対象となってしまいます。
Bさんの場合には,定住者の在留資格ですから身分関係の在留資格に該当することになり,執行猶予付きの判決に留まった場合には,強制送還の対象にはならないことになります。
逮捕だけで強制送還されるのか
それでは,Bさんの家族としてはどうするべきなのでしょうか。
Bさんの場合,1年を超える実刑判決を受けなければ強制送還の対象にはなりません。つまり,逮捕されただけで,すぐに強制送還の対象となるわけではありません。
ただし,それでも早めに在留資格についても併せて対応できる,弁護士に相談すべきでしょう。
Bさんのように,逮捕された直後では,次のような点に気を付けなければなりません。
・逮捕,勾留されている間に在留期間が切れてしまう場合
・起訴されるのか,示談したら不起訴になる可能性があるのか
・不起訴になったとしても,次回の在留期間の更新申請が認められないのではないか
逮捕された直後から,「これから先,この事件がどのように進んでいくのか」について,きちんと分かったうえで,日本での在留を続けられるように対応していくことが非常に重要です。
「警察から大丈夫だと言われた」,「国選弁護士から『自分はよく分からないから』と言われた」という方が相談に来られることが非常に多くありますが,既に手遅れになっているという場合すらありますし,もっと早く相談に来てくれていればよかったのに・・・と思うことも多くあります。
外国人の方は,逮捕された直後の段階で,在留資格についてもきちんとケアしておかなければなりません。
ご不安なことがある方や,逮捕されたご家族の在留について心配なことがあるという方は,いち早く専門家にお問い合わせください。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では,これまで数多くの刑事事件について弁護を行ってきた実績があります。その中には当然,外国人の方が当事者となっていた事件も含まれています。在留資格の問題をはじめとした入管業務について,弁護士や行政書士がチームを編成して事件に対応していきます。
解決事例 在留特別許可(日本人の配偶者等)が認められた事例
当所の扱った事案について,在留特別許可が認められましたので,その事例を紹介,解説します。
(守秘義務の関係上,事実の詳細を明らかにしない部分があります)
事案
ご依頼者であるXさんは,日本国内にて大麻を所持していたという事案によって,執行猶予付きの懲役刑の判決を受けました。
執行猶予付きの判決ではあったものの,大麻取締法違反の事件でしたので,判決が確定後に,入管から違反調査のための呼出が来ることになりました。
ご依頼の経緯
判決の言い渡し前から,Xさんは,「刑事事件の判決によって自分の在留資格がどのようになるか」という点について不安があり,当所へ相談に来られました。
Xさんは日本で育ち,家族のほとんどが日本で生活しているという状況であるため,違反調査の後,強制送還されてしまうと非常に不利益が大きいという状況でもあり,在留特別許可に向けた活動をご希望でした。
刑事事件の判決が言い渡される前からご相談に来られたことで,事前のリサーチなどを行う時間も十分に確保でき,実際に入管からの違反調査が始まって以降は速やかに正式に代理人として受任し,在留特別許可の獲得に向けた活動を行うことができました。
弁護活動
Xさんに対する違反調査,違反認定については,在宅のままで進められました。Xさんは元々日本で生活していた方で,日本人の家族もいたことから,違反調査があっても在留資格は直ちには影響を受けなかったためです。
違反認定の結果,違反事実があり,口頭審理に進むという段階でも,入管の施設内に収容されてしまうということもなく,身元保証人もいたことから,即日仮放免で出てこられました。
代理人弁護士としては,「Xさんが日本にいなければXさんが困る/Xさん以外にも困る人がいる/Xさんを日本に在留させ続けるのが誰にとっても良い」ということを入管にアピールするために,手続の早い段階から,Xさんが置かれた状況について入管の担当者に対して説明を行いました。
口頭審理が行われる前から,先だって在留特別許可を求める具体的な事情を述べ,また,入管が判断する基準に基づいても「在留特別許可するべきである」という意見と理由をつけた意見書を提出しました。ただ意見を言うだけではなく,Xさんのご家族からも嘆願書をもらう等して,資料を集めました。
実際の口頭審理の場でも,弁護士が立ち会い,Xさんに在留資格が付与されるべきであることの意見を述べ,審理の中でXさんにとって不利な供述がなされてしまわないかどうかを立会確認しました。
口頭審理の結果
口頭審理から約2週間程度という速さで,結果が出て,在留特別許可が認められることになりました。
Xさんはもともと,「日本人の配偶者等」の在留資格で日本に在留していましたので,在留特別許可(日本人の配偶者等,在留期間1年)という形で認められました。
Xさんは日本で家族との生活を続けられることになり,お仕事についても日本の法律上,何らの問題もなく続けられることとなりました。
ポイント
Xさんの事件では,Xさんが日本に長く在留していたこと,日本に家族がいたことが審理において非常に有利な点として考慮してもらう事ができました。また,Xさんの事例では,Xさん自身が日本で仕事をしていたこと,この仕事が日本や地域社会の利益にもつながっていたことも,入管に対して主張していました。
ただ,大麻をはじめとした薬物事件というのは,やはり入管業務においても重たい事案として扱われていることも事実です。
刑事裁判の結果についても触れて,その責任が必ずしも重大なものではないことについても,刑事弁護的な観点から意見を述べています。
よりよい弁護活動や一貫した弁護活動を目指すのであれば,刑事裁判の段階から入管まで見据えた弁護活動が望ましいでしょう。
今後も在留資格や強制送還に関する手続きでお困りの方,そのご家族の力になれるよう,事案に取り組んでいきたいと思っております。
家族や友達の偽装結婚でもビザが取り消される?
Kさんは日本で「定住者」の在留資格をもって在留している外国人でしたが,Kさんの妹が日本人と結婚して「日本人の配偶者等」の在留資格を取得することになりました。
Kさんは,妹が日本で結婚する証人になることになり,婚姻届の「証人」の欄に署名をしました。その後,Kさんの妹は日本人配偶者等の在留資格で来日しました。
しかし後日,実はKさんの妹がした結婚は偽装結婚であり,来日してからは全く家族としての生活をしていないことが分かりました。
Kさんは,妹の偽装結婚の証人となってしまったことで自分の在留資格も影響が出るのではないかと思い,弁護士に相談することにしました。
偽装結婚は重い罪
事例のように,偽装結婚というのは入管実務上でも非常に悪質な犯罪とされており,刑法上も重たい刑罰が定められています。
「本当は夫婦として結婚生活を送るつもりがないのに,ビザをもらうためだけに婚姻届けを出して結婚したことにする」というのは,公正証書原本不実記録,供用罪という犯罪にあたり,最大で5年の懲役刑が科されることになります。
また,公正証書原本不実記録,供用罪で有罪の判決を受け,懲役の判決を受けた場合(執行猶予付きの判決も含みます)には,在留資格によっては強制送還の対象となってしまいます。
さらに,元々の在留資格を問わず,
・自分が偽装結婚をして在留資格を不正に取得したり,在留資格の変更,更新の許可等を得た場合
・偽装結婚によって他人に在留資格を不正に取得させたり,在留資格を変更,更新の許可を得させた場合
には,在留資格の取消し,強制送還の対象となってしまいます。この場合,仮に有罪の判決を受けていなかったとしても,入管の独自の調査によってビザが取り消されたり,強制送還に向けた手続きが進んでしまうことがあります。
特に,逮捕されて警察で取調べを受けているという状態の場合,それと並行しながらビザの取消しに向けた調査が進んでいるという場合があります。警察の取調べについては国選弁護士でも対応をしてくれますが,ビザの取消しに関しては国選弁護士も任務の範囲外になってしまいます。逮捕されている事件でビザの取消しも防ぎたいという場合には,早急に自分たちで弁護士に依頼しましょう。
Kさんの事例の場合,「他人の偽装結婚の証人になっている」ということですから,Kさん自身の在留資格については何ら不正をしていないとしても,「Kさんの妹の在留資格について不正な手段を用いた」と疑われてしまうと,強制送還に関する違反調査が始まってしまう可能性があります。
強制送還の対象になるのか
Kさんのように他人の偽装結婚に関わってしまった場合,強制送還されてしまうのでしょうか。
まず,強制送還の対象となる可能性のある場合の法律は,次のとおりです。
三 他の外国人に不正に前章第一節若しくは第二節の規定による証明書の交付、上陸許可の証印(第九条第四項の規定による記録を含む。)若しくは許可、同章第四節の規定による上陸の許可又は前二節若しくは次章第三節の規定による許可を受けさせる目的で、文書若しくは図画を偽造し、若しくは変造し、虚偽の文書若しくは図画を作成し、若しくは偽造若しくは変造された文書若しくは図画若しくは虚偽の文書若しくは図画を行使し、所持し、若しくは提供し、又はこれらの行為を唆し、若しくはこれを助けた者
難しいことが書かれているように見えるのですが,簡単にまとめると次のようになります。
誰の在留資格についてか
自分以外の外国人
どんな目的だったか
不正に在留資格を得させる目的で
何をした場合か
文書を偽造した,文書に嘘の記載をした,偽造や嘘の文書を提出/所持/提供した,またはこれらの行為の手助けをした
これらにすべて該当するのであれば,強制送還の対象となる可能性があります。
Kさんの場合には,自分で虚偽の婚姻届を作ったり入管への文書を偽造したというものではないと思われます。そのため,証人になったからと言って,直ちに強制送還の対象になってしまうということはないでしょう。
ただそ,仮に「妹の結婚が偽装結婚であることを最初から知って証人となった場合」には,文書に虚偽の記載をする手助けをしたものとして,強制送還の対象になる可能性もあります。
入管当局は,偽装結婚に対しては特に厳しい態度で臨んでいます。「日本人の配偶者等」の在留資格は,比較的日本で安定した生活を送るためのビザですが,ビザの条件が「結婚」というものだけであることから悪用されることも多いのです。
もしも他人の偽装結婚に関わってしまったという場合には,適切に対応しなければご自身の在留資格まで取り消されて,強制送還されてしまう可能性もあります。偽装結婚に関わってしまったという外国人の方は,早めに弁護士までご相談ください。
無免許運転で逮捕された外国人は強制送還されるのか
(この事例は入管手続きについて解説をするための架空のものであり,実在する地名と設例は必ずしも関係ありません)。
「技術,人文知識,国際業務」の在留資格で日本に在留していたYさん(30代男性)は,東京都内の首都高速道路で自家用車を運転していたところ,スピード違反で検挙されてしまいました。警察官から運転免許証の提示を求められたYさんは,実は日本での運転免許を持っておらず,無免許運転をしていたことが発覚し,現行犯逮捕されてしまいました。
Yさんの会社の友人は心配になり,弁護士に相談することにしました。
無免許運転で強制送還になることはあるのか
これまで当サイトにて解説している通り,入管法上,刑事事件と関連して強制送還される場合というのは,次のような場合です。
- 一定の入管法によって処罰された場合
- 一定の旅券法に違反して懲役,禁錮刑に処せられた場合(資格外活動の場合,罰金だけでもアウト!)
- 麻薬取締法,覚醒剤取締法,大麻取締法などの薬物事件で有罪判決を受けた場合
- 一定の刑法犯で懲役,禁錮刑に処せられた場合(執行猶予がついてもアウト!)
- どの法律違反であっても,「1年を超える実刑判決」を受けた場合
交通違反の場合,そもそも反則金制度の対象となる違反なのか,罰金刑以上が課される刑事罰の対象なのかという点が,区別として非常に重要です。
無免許運転の場合,反則金の対象とはならず,全て刑事事件として扱われることになります。
無免許運転は,道路交通法違反として3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金が定められています。そのため,無免許運転として検挙されて有罪の判決を受ける場合には,最大で懲役3年の刑が科されることになります。
無免許運転を含んだ道路交通法違反の事件は,上記の「一定の刑法犯」には含まれませんので,「1年を超える実刑判決」とならなければ強制送還の対象とはなりません。
これは,どの在留資格であったとしても同じです。永住者,日本人の配偶者等の在留資格の方であっても,留学や短期滞在(旅行者)の在留資格であっても,1年を超える実刑判決を受けない限り,無免許運転をしたことによって強制送還されるということは原則としてありません。
また,「逮捕された」,「勾留された」というだけでは,強制送還や在留資格の取消事由ともなりません。
Yさんのように,逮捕されただけでは,直ちに強制送還までされるということはありません。無免許運転について事実を争わない(間違いがない)ということであれば,刑事事件として有罪ん判決を受けることになりますが,この時,「1年」を超える実刑判決を受けなければ,強制送還されず,日本での生活を続けることができます。そのため,刑事裁判において,いかに軽い処分を受けられるかという点が非常に重要です。
交通違反と在留資格
強制送還の対象とはならない刑事事件であっても,ビザに影響することはあります。
Yさんのように,逮捕された後に,略式罰金によって罰金の支払いを命じられたり,正式な裁判によって執行猶予付きの懲役刑判決を受けたりした場合には,日本での素行が良くないという事情が生じてしまいます。
そのため,次回の在留期間の更新や在留資格の変更申請をした際に,「素行が不良である」として,申請が不許可となってしまう可能性があります。また,長年日本で生活してきた方が永住許可申請をするときにも,前科があるということは非常に大きなマイナスポイントになってしまいます。
無免許運転のように,強制送還とはならない事件であっても,今後の在留資格に影響する可能性があることを忘れないできちんと対応する必要があります。
交通違反,無免許運転について,ご自身・家族・友人の在留資格について不安なことがある方は,是非一度,専門家にご相談ください。
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