留学生が特殊詐欺を起こしてしまった場合にどのような処分を受けるのか

【事例】
Aさんは,留学の在留資格で日本に在留している留学生です。
ある日,SNSを見ていたところ,「軽作業の参加者募集」「日当一人5万円」と書かれている投稿があったことから,その投稿を行った人に連絡を取り,軽作業に加わることになりました。
その当日,「市役所の職員を名乗って,『レターパックを取りに来ました』と言うように,受取ったら,近くの公園に止めてある軽バンの人に渡すように,場所は指示するので,イヤホンマイクを着けていくように」と言われ,その通りに実行して,Bさんよりレターパックを受け取りました。
Bさん宅で受け取り,帰ろうとしたところ警察官に逮捕されました。
警察の話をよく聞くと,Aさんのしようとしていたとことは,特殊詐欺の受け子だったようで,Bさんは地方税の支払いのためとして300万円をレターパックに入れるよう言われていたとのことでした。
なお,Aさんに前科前歴はありません。

以上の事例を前提として,
①Aさんが受ける刑事罰はどのようになるか,②①の刑事罰によって退去強制処分になるかという点について解説していきます。

(1)特殊詐欺の刑事罰

このような,多数人が関わって公共機関の職員等を名乗って,被害者を信じ込ませ,現金などを要求し,現金などを騙し取る詐欺を一般に「特殊詐欺」と言います。
このような事件は,人を欺いて現金の交付を求めることから,刑法246条1項の詐欺罪に当たるとして,処罰されます。詐欺罪の法定刑は,10年以下の懲役が予定されています。
この特殊詐欺の量刑については,①被害金額はいくらなのか,②どのような立場で,特殊詐欺に関わったのか,③前科前歴はあるのか,④被害弁償を行ったのかによって決まります。

①については,金額が多ければ多いほど重く見られます。
②については,上位の立場から関わっていると見られれば,重く見られます。上位の立場と言うのは,特殊詐欺の全体的な計画を作った立場にあるとか,被害者に電話をかけ,金銭の受取役に指示を出すような立場のことを指します。
③については,前科前歴があれば,重く見られます。
④については,被害弁償を行って居れば,有利な事情として見られます。

一番重要な事情は,①の被害金額で,おおむね100万円を超えていて,被害弁償が行われていなければ実刑は避けられません。
また,被害金額が1000万円を超えていると,被害弁償を行ったとしても,実刑は避けられません。
一般に,特殊詐欺の被害金額は100万円を超えることが多く,前科前歴がなくとも実刑判決を受けてしまう例が多いです。

今回のAさんの件は,被害金額300万円の事件で,金銭の受け取り役として関わっていること,前科前歴がないという事情はありますが,被害金額が100万円を超えており,何もしないと実刑判決になる可能性が高い事案と言えます。

逮捕直後から早急に弁護士のアドバイスを受けて対応すべき事案と言えます。
特殊詐欺事案についての弁護活動はこちらでも解説しています

特殊詐欺の受け子 銀行協会職員になりすまし逮捕

(2)強制送還になるのか

退去強制処分になるか留学生の場合,退去強制処分になるかどうかは,入管法24条4号の2に規定があります。
入管法24条4号の2によれば,刑法第三十七章の罪により,懲役又は禁錮に処せられた場合には,退去強制処分になることが規定されています。
そのため,留学生が特殊詐欺に関わってしまい,有罪判決となった場合には,退去強制処分になることが予定されているということができます。

(3)弁護人として何ができるか

上記の通り,特殊詐欺を行った場合,実刑判決となり,退去強制処分となることが予想されます。
そのため,①何とか実刑判決を免れたり,②退去強制処分を避けるというための弁護活動を行っていく必要があります。
まず,①のための弁護活動を行うためには,特殊詐欺とはわからなかったなどの主張を行い無罪判決を得るか,起訴前に被害弁償を行い,不起訴を目指すということになります。
②のための弁護活動としては,無罪を目指すほかありません。仮に,執行猶予付きの有罪判決を受けたとしても,入管法24条4号の2に基づいて退去強制処分を受けてしまうので,日本に在留することは困難になります。

そのため,特殊詐欺については,起訴される前の段階から,弁護士をつけて対応することが望ましいということが言えます。

お問い合わせはこちらからどうぞ。

お問い合わせ

無料相談ご予約・お問い合わせ

 

 

ページの上部へ戻る

トップへ戻る

03-5989-0843電話番号リンク 問い合わせバナー