永住者が威力業務妨害罪で検挙されてしまった場合

 


【事例】(フィクションです)

Aさんは永住者の資格で日本に在留している外国人で,プロ野球の球団Vのファンです。
これまでは,業務妨害と言われるような行為をしたことはありませんでした。
ある日,Aが試合に負けてしまったことから,ふがいなさに腹が立ち,VのスポンサーであるB新聞に「Vにアメリカからスラッガーを入れて大型補強しろ,でなければVの球場に爆弾を仕掛けるぞ」と書いたはがきを100通送りつけました。
このような脅しがあったことから,B新聞からVに連絡を送り,Vの球場に警備員を多数配置させざるを得なくなりました。
このように,混乱を起こしたことから,Aさんは警察に呼ばれ,事件について検察庁に送検されました。

この場合に
①Aさんはどのような刑事処分を受けるのか
②退去強制となる可能性はあるのか
について解説していきます。

(1)威力業務妨害罪の刑事処分について

Aさんは,VやB社の社員や関係者を怯えさせる文言のあるはがきを100通送り,VやB社の業務に混乱をもたらしていることから,威力業務妨害罪が成立します。

参考:威力業務妨害罪の解説

刑事罰の重さですが,刑法234条の威力業務妨害罪が成立する場合,3年以下の懲役又は50万円以下の罰金が規定されています。

威力業務妨害罪の罪の重さは,①どのような行為をしたのか,②その結果どのような混乱が発生したのか,③どのくらいの財産的被害が発生したのか,④被害回復は行っているのか,⑤何回同様の行為を行っているのかによって判断されます。

①については,何度も繰り返すような形で行う悪質な態様であれば,重く見られます。
②については,混乱を収めるのに時間がかかるようなものや広範囲に混乱が発生するような事件であれば重く見られます。
③については,会社などに経済的な損害が発生した場合に,その金額が高くなれば高くなるほど重く見られます。
④については,経済的な損害を埋め合わせるだけの被害回復を行った場合,有利な事情として見られます。
⑤については,同様の業務妨害行為を繰り返し行っている場合に,重く見られます。

今回のAさんの件ですが,100通ものはがきを送っていること,Vの球場における混乱を発生させていること,Vの球場において警備員を多数配置しなければならなくなったことや,B新聞社による無用な連絡をさせたことなどによる損害が考えられますので,これらの事情については重く見られます。

一方,被害回復を行っているかどうかは分かりませんが,V及びBに対して被害弁償がなされれば,有利な事情として見られます。また,Aさんはこれまでに業務妨害と言われる行為をしていないので,その点についても有利に見られます。
こういった事情があることから,Aさんのしたような事件については,執行猶予付きの有罪判決となる例が多く見られます。

(2)入管関係でどのような処分がされるのか

入管法24条4号リによれば,懲役1年を超える実刑判決となった場合に退去強制処分となることが規定されています。

退去強制(強制送還)について

今回のAさんの場合,執行猶予付きの有罪判決が予想されるので,入管法24条4号リの事由に当たることは考えられませんが,前科がある,非常に悪質であり,実刑が相当といえるような事件である場合,実刑判決を受ける可能性がありますので,事前に刑事事件・入管事件に強い専門家・弁護士に相談しておくこと重要です。

(3)弁護士として出来ること

このような刑罰や,退去強制処分に関する処分が予想されることから,弁護士としては,①有利な事情があることから,執行猶予判決を求めること,②示談をするなどして不起訴を求めることが考えられます。
例えば,①の方法としても,Aさんに前科が無いなどの有利な事情を集めて,裁判所に提出することで,執行猶予判決になるよう進めることができます。
②の方法としては,起訴される前に,示談を行い事件については解決したとして,不起訴を求めることが考えられます。

このように,威力業務妨害罪当たる行為をして警察から事情聴取を受けたり,逮捕された場合には,弁護士に迅速に依頼して,対応してもらうことが適切です。

威力業務妨害罪など,刑事事件でお困りのことがある方やご家族の方は,弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所までご相談ください。

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