【事例】
定住者として太陽光パネルの設置の仕事をしているAさんは親方から,「C県の仕事がまだ終わらないから,C県で働いてくれる?」と言われたことから,自身の住んでいるB県から離れて生活していたところ,その間にオーバーステイとなってしまいました。
その後も,Aさんは在留期間の更新を忘れて,1年ほどC県で働いていたところ,深夜にコンビニに行く際に警察官に呼び止められ,オーバーステイが発覚し,その場で逮捕されました。
この事例の場合に,①どのような刑罰を受けるのか,②退去強制となってしまうのかについて解説していきます。
このページの目次
(1)オーバーステイの刑事罰
オーバーステイが刑事罰になる根拠は,入管法70条1項5号に根拠があります。
この規定によると,「在留期間の更新又は変更を受けないで在留期間(第二十条第六項(第二十一条第四項において準用する場合を含む。)の規定により本邦に在留することができる期間を含む。)を経過して本邦に残留する者」について刑罰を科することができると規定されています。
この刑の重さですが,「三年以下の懲役若しくは禁錮若しくは三百万円以下の罰金に処し、又はその懲役若しくは禁錮及び罰金とその併科」が予定されています。
量刑傾向としては,単にオーバーステイのみですと,執行猶予付きの有罪判決になる例が多いです。
量刑を左右する事情としては,オーバーステイとなった期間が重要な量刑事情になります。
大まかに,1年程度であれば,懲役1年,執行猶予3年程度,オーバーステイ(不法残留)の期間が5年を超えると,懲役2年6カ月執行猶予5年程度となるケースが散見されます。
そのため,今回のAさんの件であれば,懲役1年,執行猶予3年程度となるケースであると考えられます。
(2)退去強制になるのか
入管法24条4号ロによれば,「在留期間の更新又は変更を受けないで在留期間を経過して本邦に在留する者」に該当することから,オーバーステイになってしまうと退去強制の対象となります。
そのため,警察官にオーバーステイで検挙されてしまうと,その後の証拠収集によってオーバーステイの事実が確認されてしまうため,退去強制に向けた手続きが進められることになります。
(3)弁護士として出来ること
このような刑罰が予想されるため,弁護士としては,①有利な情状があることから,不起訴とすべきであること,②やむを得ない理由によってオーバーステイとなってしまったため,退去強制は違法であると主張することが考えられます。
例えば,Aさんが仕事の関係で強制的な労働がされており,職場を離れることができなかったというような事情がある場合には,Aさんに対して刑罰を科すのが不適当と判断され,刑罰を受けずに済む可能性があります。
他にも,在留期間の更新や在留資格の変更の申請を行ったが,まだ入国管理局からの判断がされていないため,オーバーステイとなる在留カードを持っていたという場合もあり,そのような場合であればそもそもオーバーステイにはならないという場合もあります。
オーバーステイの事案であったとしても,特別な事情がある場合には迅速に弁護士に依頼し,不起訴あるいは退去強制の阻止に向けて動いてもらう必要があると考えられます。
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