(次の事例は解説のための架空の事例です)
Aさん(東京都在住,独身)はSNSを通じて知り合ったX国出身のBさんと仲良くなり,将来結婚することを考えるようになりました。
AさんとBさんは結婚して,日本で生活をしようと思ったため,Bさんは「日本人の配偶者等」の在留資格を取得しようと考えました。
しかし,実はBさんは留学生ビザで来日したものの,オーバーステイとなり,Aさんと出会った時から不法残留の状態になってしまっていました。
Aさんも,Bさんから不法残留,オーバーステイの事実を聞きましたが,それでも結婚して日本で夫婦生活を継続したいと思い,インターネットサイト等を見たところ,「入管に出頭した方が良い」との記事を見つけます。Aさんは,Bさんに「配偶者ビザをもらうために,一度入管に出頭しよう」と相談しましたが,Bさんは「入管ですぐ逮捕されるのではないか」と不安です。
そこでAさんとBさんは,法律事務所に相談することにしました。
不法残留に対する対応
日本の入管は,基本的に不法残留に対しては退去強制(強制送還)の手続きをとります。
Aさん,Bさんのように「配偶者ビザをもらうために出頭した」という場合であったとしても,まずは退去強制手続きを行います。
この退去強制手続きを行う中で,日本人の配偶者等として在留特別許可をするかどうかについての審査が行われます。
注意しなければならないのは「在留資格の変更」や「新たな取得」を申請することはできない,ということです。
一度日本国内においてオーバーステイとなってしまうと,元々持っていた在留資格が失効(効果がなくなる)しますので,「延長」であるとか,「変更」の手続きをすることはできません。
延長や変更は,「元々,適法に持っていた在留資格を別のものに変更したり,在留期間を延長したりする」という手続きですから,適法な在留資格がないオーバーステイ状態では取れない手続きということになります。
Aさんのように,親しい方や婚約者である外国籍の人がオーバーステイ(不法残留)であることが分かった時の対応の仕方として,入管へ出頭する,というのは一つの選択肢であります。
というのも,Bさんのように不法残留の状態だと,放っておいても在留資格が認められることはないため,仮にきちんとした在留資格を取得しようと思うのであれば,入管へ出頭する以外には現実的な手段がないのです。
入管に出頭したら逮捕されるのか
それではBさんのように,不法残留の状態で入管に出頭した場合,その場で逮捕されてしまうのでしょうか。
結論としては,逮捕されない場合もあるというものになります。
というのも,確かに入管は不法残留や不法就労について摘発を行うことがありますが,実際に不法残留について逮捕したり捜査を行ったりするのは,警察官がほとんどです。
また,不法残留の人が入管に出頭したという場合であっても,すぐに入管が警察へ連絡するというわけでもありません。
実際には,不法残留になった期間や日本での生活の状況,出頭した経緯や在留特別許可となる見込みがどれだけあるか等といった事情を加味して,入管としての対応が決まることになります。
たとえば,不法残留になってからの期間が短かった,不法残留以外には日本での法律違反がない,出頭した事情から見て在留特別許可がされる可能性が高い,というものであれば,入管としても警察へ通報しないということがあるでしょう。
逆に,在留カードを偽造していた場合や,長い期間にわたって不法就労をしていたというような場合,不法残留以外に日本での法律違反がある等という場合には,入管から警察への通報がなされるということがあります。
在留特別許可については法務省が許可した事例と不許可にした事例を公表しています。
Bさんの事例のように,「日本人の配偶者等」としての在留資格を求めて出頭したという場合ですと,他に法律違反がなければ,逮捕されないままで手続きが進むということも考えられるでしょう。
ただ,Bさんのように「入管に出頭したら逮捕されてしまうのではないか」と不安に思うのも無理ありません。実際にオーバーステイの状態になってしまっているのであれば,なおさらです。
不法残留(オーバーステイ)の状態になっているけれども日本でのビザが欲しい,きちんとビザをもらうために入管に出頭したい,と考えている方も,あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
刑事事件に強い弁護士が,入管の手続きについても対応します。刑事事件については多数の経験がありますから,逮捕される可能性がある事案についても,ご依頼者様の利益を最大化できるような選択肢を一緒に考えていきましょう。