【事例】
Aさんは,甲国と乙国が戦争になってしまったことから,甲国を出発する豪華客船の貨物室に侵入し,日本に不法に入国した乙国民です。このような経緯で日本に入国したことから,日本に入国するための正当な旅券も無く,入国審査官からの上陸許可の証印などもありません。
Aさんは,このような経緯で,日本に入国していたため,何とか仕事を探そうとして,就職活動を行う際,身分証明書を示せなかったことから,警察官に通報され,不法入国外国人であることが判明しました。
このように不法入国した人が日本法で,刑事罰や退去強制処分を受けるかについて解説していきます。
このページの目次
(1)不法入国を行った場合の刑事罰について
入管法3条には,日本に入国できない外国人となるための要件が規定されています。それによれば,「有効な旅券を所持しない者」(入管法3条1項1号)又は,「入国審査官から上陸許可の証印…(中略)…を受けないで本邦に上陸する目的を有する者」(入管法3条1項2号)と規定されています。
そのため,豪華客船の貨物室にパスポートを持たずに侵入し,日本で降りるというような行為は,「有効な旅券を所持しない」(入管法3条1項1号)として,入管法3条に違反しているため,入管法70条1項1号の不法入国罪に該当するとして処罰されます。
入管法70条1項1号によれば,3年以下の懲役若しくは禁錮若しくは300万円以下の罰金又は,懲役若しくは禁錮及び罰金を併科することが予定されています。
この不法入国罪の量刑傾向としては,懲役1年6月執行猶予3年程度となる例が多いです。
ただし,不法入国期間が長期間にわたっている場合や,集団密航の先導者となっていたような場合には,重大な不法入国事案と見られ,これよりも重い刑が科される場合があります。
特に,集団密航の先導者となっていたような場合については,実刑となる事案が多いようです。
なお,後述しますが,難民と認定された場合には,刑が免除されます。
(2)退去強制処分となるか
退去強制処分になるかどうかについては,入管法24条1号に規定があります。
入管法24条1号によれば,「第3条の規定に違反して本邦に入った者」と規定されていることから,入管法3条に違反して不法入国を行った場合には,入管法24条1号に基づき,退去強制処分になります。
ただし,入管法61条の2に基づいて,難民認定がされた場合には,入管法61条の2の6第1項に基づいて,退去強制処分が行われないことになります。
この難民申請については,各地の出入国在留管理局に提出することによって行われます。
この出入国在留管理局で難民であるかどうかについての審査が行われ,難民であると認められた場合には,退去強制処分とならずに済みます。
ただし,日本における難民認定のハードルは高く,認められるのは簡単ではありません。
今回のAさんは,甲国と乙国の戦争中に甲国内にいた乙国民なので,難民と認められる可能性はあります。
(3)結論
このように,弁護士として出来ることとしては,①Aさんが難民申請を行った難民であることを主張して,刑の免除の判決を得ること,②難民であることを理由として,退去強制処分を避けることを目指して弁護活動を行っていくことになります。
このように,戦争などの理由で不法入国をしてしまった方が身近にいる場合,弁護士をつけて,難民申請を行い,不法入国罪の免除の判決を得ることや,退去強制処分を避けるよう活動することができますので,迅速に弁護士にご相談ください。
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