在留資格「定住者」の「素行善良要件」について弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
「定住者」の在留資格について
在留資格「定住者」の中には「定住者告示」と呼ばれるものがあります。
「定住者告示」とは、定住者に該当するものを一般に周知するため要件をあらかじめ公示することをいいます。定住者告示第3、4、5号ハ及び第6号ハ(日系3世、日系3世の配偶者、日系3世の実子)の在留資格認定申請、在留更新申請には、「素行善良要件」が審査要件として定められており、原則として「素行善良要件」を満たさなければ在留許可が認められないことになっています。
ここでいう「素行善良要件」とは、「法律を遵守し日常生活においても住民として社会的に非難されることにない生活を営んでいること(出入国在留管理局永住許可のガイドライン)で、以下の(ア)から(エ)までのいずれにも該当しないことをいいます。
(ア)日本国又は日本国以外の国の法令に違反して、懲役、禁錮若しくは罰金又はこれらに相当する刑(道路交通法違反による罰金又はこれに相当する刑を除く。以下同じ。)に処せられたことのある者
ただし、懲役若しくは禁錮又はこれらに相当する刑については、そのすべての執行を終わり若しくは刑の免除を得た日から10年を経過し、又は、刑の執行猶予の言渡し若しくはこれに相当する措置を受けた場合で当該執行猶予の期間若しくはこれに相当する期間を経過したとき、また、罰金又はこれに相当する刑については、その執行を終わった日又はその執行の免除を得た日から5年を経過したときは該当しないものとして扱う。
(イ)少年法による保護処分(少年法第24条第1項第1号及び第3号)が継続中の者
(ウ)日常生活又は社会生活において、違法行為又は風紀を乱す行為を繰り返して行う等素行善良要件と認められない特段の事情のある者
(エ)他人に入管法に定める証明書の交付又は許可を受けさせる目的で不正な行為を行った者又は不法就労のあっせんを行った者
(以上が審査要領)
では具体的にどのような場合に「素行善良要件」が問題になるか、ケースを元に確認してみましょう。
具体例
ケース1.
大手自動車会社で働く「定住者」のAさんは、スポーツカーが大好きです。
最近自社で開発されたスポーツカーが発売され、これまで貯めてきた貯金とボーナスを併せて一括払いで購入しました。早速購入したスポーツカーを試そうと思い、高速道路で試し乗りをしました。大変性能の良い車で、軽くアクセルを踏んだつもりがあっという間に時速180キロのスピードが出てしまいました。そこを運悪くオービスで撮影されました。
Aさんはその後逮捕、起訴され裁判を受け懲役3月、執行猶予2年の有罪判決をうけました。
ケース2.
Bさんは愛車のスポーツカーで高速道を走っていたところ、30キロオーバーでオービスに撮影されてしまいました。Bさんはその後管轄の警察署から行政処分による反則金の支払を命じられ、期日までに支払いました。Bさんはこれに懲りて以後、制限速度を順守して運転することを心掛けています。
ケース1の場合、Aさんは80キロオーバーのスピード違反で逮捕・起訴され懲役6月、執行猶予2年の有罪判決を受けています。これは「素行善良要件に該当しないこと」(ア)から(エ)のうち(ア)の日本国又は日本国以外の国の法令に違反して、懲役、禁錮若しくは罰金又はこれらに相当する刑(道路交通法違反による罰金又はこれに相当する刑を除く。以下同じ。)に処せられたことがある者に該当し、Aさんは原則として次回の在留更新が認められないことになります。
ケース2の場合、Bさんは30キロオーバーのスピード違反で、管轄の警察署から反則金の支払を命じられ期日までに支払いました。元々,道路交通法違反による罰金は該当事由に含まれておらず、その後は反省して制限速度を遵守していることで(エ)の要件にも該当しないことから、Bさんの30キロスピードオーバーは「素行善良要件」に影響しませんでした。その結果Aさんは在留更新が許可されしかも5年の在留期間がもらえました。Bさんは近いうちに「永住資格」の申請を考えています。
このように素行が善良でないと判断されるか否かで、その後の人生が大きく異なる結果となる場合があります。
「定住者」の「素行善良条件」でご心配や困りごとがあるという方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律所内の専用窓口(03-5989-0843)までご相談ください。