このページの目次
不法入国と入管法上の処罰・対応
不法入国とは、戦争や貧困から逃れるため、あるいは家族との暮らしを求めるためなど、様々な理由で人々が正規の手続きを経ずに日本に入国してしまう場合に生じる問題です。
本来、外国人が日本に入国するには有効なパスポートと査証(ビザ)が必要であり、それらを持たずに入国することは法律で禁じられています。
不法入国が発覚した場合、刑事上の処罰だけでなく、本国への強制送還(退去強制)といった厳しい措置がとられることがあります。
しかし、不法入国に至る背景には個人の切実な事情や人道上の理由が含まれることもあり、そのような場合には適切な法律上の対応が求められます。
本記事では、不法入国の定義や具体的事例、関連する法律の規定や手続、そしてその際に弁護士が果たす役割について、専門的な内容を分かりやすく解説します。
1. 不法入国とは何か(定義や典型例)
外国人が正規の手続きを踏まずに日本に入国する行為を一般に「不法入国」といいます。
入管法(出入国管理及び難民認定法)では、有効な旅券(パスポート)や査証(ビザ)を持たない者は日本に入国してはならないと定められています。
典型例として、パスポートやビザを所持せずに入国したり、他人名義のパスポートや偽造書類を使用して入国審査を通過したりするケースが挙げられます。
また、港や空港で入国審査を受けずに密かに上陸するいわゆる「密入国」も不法入国の一種です。
なお、正規に入国した後に在留期間を超えて滞在する「不法残留(オーバーステイ)」とは区別される概念です。
これらはいずれも入管法に違反する行為であり、重大な法的問題を引き起こします。
2. 事例(参考記事のAさんの事例を基に)
Aさんは15年前にブローカーの手配で興行ビザを取得し、来日した外国人です。
当時未成年だったAさんは、自分ではなく21歳のいとこの名義でパスポートを用意され、それを使って日本に入国しました。
Aさんはその後日本で働き始め、常連客だった日本人男性Bさんと知り合い半年後に結婚しました。
結婚して10年が経ち、夫Bさんとの間に2人の子(日本国籍)にも恵まれ、Aさんは日本で幸せな毎日を送っています。
しかしAさんは自分の本名と在留カード上の名前が違うという秘密を抱えていました。
いとこ本人から「自分の名前を返してほしい、でなければ入管に報告する」と迫られ、Aさんはこのままでは自分が他人名義で不法入国していた事実が発覚し、在留資格を失って強制送還されてしまうのではないかと不安に感じています。
3. 入管法上の位置づけと刑事罰
不法入国は入管法上の犯罪であり、発覚すれば刑事手続の対象となります。
入管法第70条第1項第1号により、不法入国をした者には3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金(またはその併科)という罰則が規定されています。
特に不法入国については公訴時効(刑事訴追の時効)が適用されず、長期間経過後に発覚した場合でも起訴される可能性があります。
量刑の傾向として、初犯で情状に酌むべき事情がある場合には執行猶予付きの判決となる例も見られますが、悪質な場合には実刑(服役)が科されることもあります。
いずれにせよ有罪となれば前科が付き、後述の退去強制の対象ともなるため、本人にとって極めて深刻な影響を及ぼします。
4. 退去強制処分とその例外
入管法第24条には退去強制(強制送還)となる事由が定められており、不法入国はその典型例として挙げられています。
そのため、不法入国が判明した外国人は、刑事処分の有無にかかわらず原則として日本から退去させられることになります。
退去強制となった場合、再入国禁止(一定期間または永続的な上陸拒否)の措置がとられます。もっとも、例外的に本人に特別な事情(例:日本に配偶者や子がおり日本で生活の本拠となっている場合)がある場合には、法務大臣の裁量で在留特別許可が与えられ、強制送還が免除される可能性があります。
また、難民申請を行った場合には審査が完了するまで送還は一時的に停止されるのが原則で、難民として保護すべき事情があれば送還は見合わされます。
ただし2023年の入管法改正により、3回目以降の難民申請中は送還停止の効力が認められない制度となりました。
5. 難民申請の制度と実際
難民認定申請は、迫害から逃れてきた外国人が難民として保護を求めるための制度です。
入管庁に難民認定の申請書を提出し、面接調査などの審査を経て認定の可否が判断されます。
申請中は前述のとおり強制送還が停止されますが、その審査基準は非常に厳格です。
日本では難民と認定されるケースが極めて少なく、認定率は国際的に見ても低水準となっています。
例えば2022年には難民と認定された人は過去最多でも約200人にとどまり、一方で1万人以上が難民不認定となりました。
難民と認められなかった場合、異議申立て(審査請求)や裁判で争うことも可能ですが、それでも認定に至る例は多くありません。
多くの申請者は結果的に在留を許可されないのが現状です。
6. 弁護士にできる対応とサポート
不法入国のケースでは、早期に弁護士の支援を受けることが不可欠です。
弁護士は刑事弁護人として依頼者の事情を丁寧に主張・立証し、処罰の軽減や回避を図ります。
例えば依頼者が難民に該当する場合には証拠を揃えて難民であることを主張し、入管法70条の2に基づき刑事罰の免除を求めることも可能です。
難民に該当しない場合でも、不法入国に至ったやむを得ない事情や日本での生活実態(家族関係や長期在住など)を訴え、執行猶予付き判決など寛大な処分を得られるよう尽力します。
さらに退去強制手続では、口頭審理や異議申立ての場面で日本での生活基盤や家族の存在、人権上の懸念など有利な事情を示し、在留特別許可が下りるよう働きかけます。
このように弁護士は法律の専門知識を駆使して、処罰と退去の両面で依頼者を守るために全力を尽くします。
7. 事務所紹介(弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所)
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件を専門に扱う法律事務所であり、不法入国など入管法が関係する事案の豊富な実績があります。
ビザ・在留手続に詳しい経験豊富な弁護士と行政書士が連携し、違法行為に対する刑事弁護から在留許可の申請まで一貫してサポートいたします。
英語・中国語・韓国語など外国語での対応も可能 (ビザ・在留資格の取得・更新は弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にお任せください)で、外国人の依頼者にも安心してご利用いただけます。
初回相談は無料で、365日24時間の緊急相談にも対応しており、依頼者の不安に迅速に寄り添う体制を整えています。
不法入国や入管法違反でお困りの際は、当事務所の専門チームにぜひご相談ください。