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経営管理の人が不同意性交等で退去強制となるか

2025-09-13

「経営、管理」の在留資格で日本に滞在しているAさんは、ある日通行中の女性にいきなり抱き付き、背後から胸をもみ、押さえつけ、暗がりの中で性交を行うという不同意性交事件を起こしました。
数ヶ月後、Aさんは警察により逮捕されてしまいました。
このとき
①Aさんが受ける刑事罰はどのようなものになるか
②①の刑事罰により退去強制になることはあるのか
③Aさんとしてできることはあるのか
以上の点について解説していきたいと思います。

⑴不同意性交等の刑事罰

Aさんの起こした事件は「不同意性交等」と呼ばれるものに該当する可能性が高いと言えます。
不同意性交等罪の法定刑は、5年以上の拘禁刑となっていますが、具体的な刑罰は、行為の程度や回数、被害者の処罰感情などにより決められます。
典型的な不同意性交等事件であっても、5年の拘禁刑となることが多く、示談等ができていない限り執行猶予付き判決となることは稀であると言えます。

⑵退去強制事由となるか

刑事事件と退去強制が関わる条項は、いくつかありますが、代表的なものは入管法24条の
4号チ 薬物事件で有罪判決を受けた者
4号リ 1年以上の実刑判決を受けた者
4号の2 窃盗などの事件で有罪判決を受けた者(別表第1の資格に限る)
となっています。

今回の事件であれば、1年以上の実刑判決となる可能性が極めて高いと言えます。そのため、退去強制事由に該当し、強制退去となる可能性が高いと言えます。
しかし、仮に執行猶予付き判決などで退去強制とならなくても、在留資格の更新を受けられるかどうかは別問題です。
在留資格の更新時には素行が善良であることが求められていますが、有罪判決を受けた場合には素行善良の要件に問題が生じ、在留資格の更新がされない場合があります。
このような場合、在留資格が更新できず、期限が到来してしまうと、オーバーステイ状態となり、退去強制事由に該当してしまいます。

⑶Aさんはどうすればよいか

不同意性交等罪で逮捕された場合、最初は家族であっても面会できません。
逮捕されてから2日程度は、弁護士以外が面会できない状況になりますので、家族としても状況の把握などが困難です。
また、仮に釈放されたとしても、捜査が継続して、場合によっては刑事罰を受けてしまうことは上述の通りです。
逮捕された場合には警察からの連絡を受けてすぐに、在宅事件の場合でもできる限り早く、弁護士に相談し、被害者の方への謝罪や
入管への対応などを検討する必要があります。
在留資格の不更新の決定が出てしまってからとなると、在留特別許可を得る方法以外が困難となり、取りうる手段が減ってしまいます。
まだ処分が出る前、色々な対策を講じることができる時期に、弁護士にご相談ください。

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経営管理ビザで大麻事件を起こして退去強制となるか

2025-09-06

Aさんは経営管理のビザで入国し、日本国内で事業を営んでいました。
ある日、Aさんが路上を歩いていたところ、職務質問を受け、持っていた大麻草が発見されてしまいました。

このとき
①Aさんが受ける刑事罰はどのようなものになるか
②①の刑事罰によりAさんは退去強制となるか
以上の点について解説していきたいと思います。

大麻所持の刑事罰

大麻を所持していた場合、従前は大麻取締法違反で処罰されていました。しかし、法改正により麻薬及び向精神薬取締法違反で処罰されることになりました。
なお、注意を要する点として、従来大麻使用が処罰されていなかったところ、改正法では大麻使用(施用)も処罰の対象となりました。
大麻所持の法定刑は、従前は5年以下の懲役でしたが、改正により7年以下の懲役となりました。若干法定刑が重くなったこととの関係で、今後の裁判では今までよりも量刑が重くなる可能性があります。
ただ、初犯の所持の場合は執行猶予付き判決ということで変わりがないのではないかと思います。

大麻事件の刑事弁護についてはこちらからどうぞ。

退去強制となる可能性

それでは刑罰法令違反が退去強制事由となるかどうかを考えていきます。別表第2の在留資格の場合、入管法等在留関係の法律以外の刑罰法令が問題となる退去強制事由には、入管法24条4号チがあります。

入管法24条4号チは、「昭和二十六年十一月一日以後に麻薬及び向精神薬取締法、大麻草の栽培の規制に関する法律(昭和二十三年法律第百二十四号)、あへん法、覚醒剤取締法、国際的な協力の下に規制薬物に係る不正行為を助長する行為等の防止を図るための麻薬及び向精神薬取締法等の特例等に関する法律(平成三年法律第九十四号)又は刑法第二編第十四章の規定に違反して有罪の判決を受けた者」とするものです。

この4号チで問題とされるのは、いわゆる薬物事件で、罰金、執行猶予、懲役を問わず有罪となった場合には退去強制事由に該当します。大麻所持の場合執行猶予付き判決の可能性が高いと考えられますので、このままであれば退去強制事由に該当します。

先述の通り、大麻所持罪で刑事罰を受けてしまうと、退去強制となる可能性があり、日本国内に留まれない可能性があることを指摘しました。

検察庁は、全ての刑事事件について起訴をし、刑事処分を求めるのではなく、一定の事件を起訴猶予(不起訴)としています。
最終的な処分を決定する際、再犯の可能性や所持していた量は大きな考慮要素となります。
出来る限り刑事処分を軽減するためにも、検察官との交渉は不可欠です。

具体的な事件についてはこちらにご相談ください。

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経営管理の外国人が暴処法違反を起こした場合,強制送還の可能性は

2025-08-30

【事例】
Aさんは、経営管理の資格で日本に在留する外国人です。
ある日、奥さんのBさん(外国籍)とけんかになった際に、「誰が、稼いできていると思っているんだ」と怒鳴りながら、Bさんに包丁(刃体の長さ16センチ)を向け、腕にけが(全治7日程度)をさせてしまいました。この際、Aさんとしては、Bさんに反省してもらいたいという思いから刃を向けており、殺すつもりはなかったとのことでした。
なお、Aさんに前科前歴はありません。
この場合に、Aさんは、どのような刑事処分を受けるのか、退去強制になるのかについて解説していきます。

(1)どのような刑事処分を受けるのか

 人をけがさせた場合、通常は傷害罪が成立するのですが、今回の事件のように、包丁などの刃物を使って人をけがさせた場合は異なります。暴力行為等処罰に関する法律1条の2によれば、「刀剣類を用いて人の身体を傷害した」場合には加重傷害罪が成立することが規定されています。
この加重傷害罪の法定刑は1年以上5年以下の懲役刑であり、通常の傷害罪とは異なり、罰金刑が予定されていません。そのため、軽くとも、執行猶予付きの懲役刑となります。
この暴処法違反の刑の重さは、①どのくらいのけがをさせたのか、②用いられた刃物はどのくらい危険だったのか、③前科前歴はあるのかなどによって判断されます。
①については、けがの程度が重ければ重いほど、重く見られます。
②については、用いられた刃物が大きいなど危険な場合、重く見られます。
③については、前科前歴があれば、重く見られます。
なお、被害者が家族ではない場合には、示談をすれば不起訴で終わったり、刑罰を軽くすることも考えられます。しかし、家族である場合被害者へ被害弁償をしたとしても、実質的には、加害者の金のままであるということが考えられるので、今回の事件のような場合には示談を行ったかどうかについては、決定打にはなりません。
今回の事件の場合、Bさんのけがの程度は、全治7日と重くはないこと、包丁を用いており危険性がかなり高いとまでは言えないこと、Aさんには前科前歴がないことから、執行猶予付きの有罪判決となることが見込まれます。

暴力行為等処罰法違反事件についての解説はこちら。

暴力行為等の処罰に関する法律違反事件

(2)退去強制処分になるのか

「経営管理」の在留資格の人が退去強制になるかについては、入管法24条4号の2に根拠があります。
この規定は、暴力行為等処罰に関する法律1条の2の罪が掲げられていますので、執行猶予付きでも懲役刑になった場合には、退去強制処分の対象となります。
そのため、仮に、日本に残りたいという場合には、在留特別許可を求める必要があります。

(3)弁護士としてできること

このような刑罰や退去強制処分が予想されることから、弁護士としては、①再犯防止のために、別居するなどの再発防止措置をとり不起訴を目指すこと、②在留特別許可を得られるよう活動することができます。
①については、AさんとBさんでいったん別居するなどして、再度暴力をふるうことがないような環境を整え、不起訴を目指していくことが考えられます。
②については、仮に、この件で有罪になったとしても、在留特別許可を得ることができるよう活動することで、日本に在留できるよう目指すことが考えられます。
このような活動ができますので、DV事件や暴力行為等処罰に関する法律違反の事件を起こしてしまった場合には、早めに弁護士に相談することをお勧めします。

お問い合わせはこちらからどうぞ。

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経営管理ビザの外国人経営者が逮捕されたらどうなる?在留期間更新への影響と対応

2025-08-23

事例

(解説のための架空の事例です)

X国籍のAさんは経営・管理ビザで入国し、日本国内で会社を経営していました。ある日、Aさんが東京都内の路上を歩いていたところ、警察官に職務質問を受けます。所持品検査の結果、Aさんのカバンから乾燥大麻(いわゆるマリファナ)が数グラム見つかり、その場で現行犯逮捕されてしまいました。

この事例をもとに、以下の2点について解説します。

  1. Aさんが受ける刑事罰はどのようなものになるか(大麻所持の刑事罰)

  2. その刑事罰によってAさんの在留期間の更新は可能か(ビザ更新への影響と退去強制のリスク)

大麻所持の刑事罰

まず、Aさんが所持していた大麻に関する刑事罰について説明します。日本では大麻を所持した場合、「大麻取締法違反」で処罰されてきましたが、令和5年の法改正によって大麻取締法の規制内容が変更されています。改正後は、大麻は麻薬及び向精神薬取締法上の「麻薬」と位置付けられ、大麻を使用する行為(施用)も新たに処罰対象となりました。

従来は「大麻を吸っただけ」では処罰されませんでしたが、今後は体内から大麻成分が検出されれば麻薬の使用罪として逮捕・起訴される可能性があります。
これは覚醒剤などと同様に大麻の単純使用であっても7年以下の拘禁刑が科され得るという、非常に厳しい内容です。

さらに、この法改正に伴い大麻の所持に対する法定刑も引き上げられました。改正前は大麻取締法違反(営利目的でない単純所持)の法定刑は5年以下の懲役でしたが、改正後は7年以下の拘禁刑(懲役刑)となっています。営利目的で所持していた場合はさらに重く、1年以上10年以下の拘禁刑(情状により300万円以下の罰金併科)という厳しい刑に強化されています。このように大麻所持は以前にも増して重い犯罪と位置づけられ、初犯であっても状況次第では実刑判決もあり得るほど厳罰化が進んでいます。

もっとも、少量の大麻を初めて所持した程度であれば執行猶予付き判決になる可能性が高いと考えられます。実際、Aさんの所持量は数グラムと少なく、営利目的ではなく自己使用目的でした。所持の態様もカバンに入れていただけで、隠匿方法が巧妙だったわけではありません。加えて初犯である点を踏まえれば、裁判では拘禁刑(7年以下)のうち執行猶予付き判決が見込まれるでしょう。

在留期間の更新はできるか?

それでは、上記のような刑事処分を受けた場合にAさんの在留期間更新(ビザ更新)は可能かを考えてみましょう。結論から言えば、大麻所持で有罪判決を受けてしまうと在留期間の更新は極めて難しくなります
なぜなら、日本の入管法やガイドライン上、「素行が不良でないこと」(=日常の行いが善良であること)が在留継続の重要な要件とされているからです。重大な犯罪で有罪となった場合、それは「素行不良」と判断され、在留期間更新の審査で大きなマイナス要素になります。

入管法上の具体的な規定も見てみましょう。Aさんの経営・管理ビザ(外国人経営者としての在留資格)は就労ビザの一種であり、入管法別表第一に定められた在留資格です。
入管法第24条には退去強制(強制送還)となる事由が列挙されていますが、その中で薬物に関する犯罪について定めた規定があります。入管法24条4号チでは、「麻薬及び向精神薬取締法、大麻取締法、あへん法、覚せい剤取締法…の規定に違反して有罪の判決を受けた者」は退去強制の対象になると定められています。大麻所持はまさにこの規定に該当する犯罪です。罰金刑や執行猶予付き判決であっても有罪となれば退去強制事由に該当してしまいます。

以上から、Aさんが大麻所持で有罪判決を受けてしまった場合、在留期間の更新どころか、強制的に退去させられる(強制送還される)可能性が極めて高いと言えます。実際の手続きとしては、判決が確定した後、入国在留管理庁から呼び出しを受けて事情聴取(違反調査)が行われ、退去強制の手続きに入ります。

大麻取締法違反で強制送還,再入国できるのか

退去強制となれば、日本に在留し続けることはできず、本国への送還が命じられることになります。なお、退去強制の具体的な手続きや流れについてはこちらでも解説しています。

例外的な救済策: どうしても日本に残りたい事情がある場合には、「在留特別許可」を求めることも考えられます。在留特別許可とは、本来は退去強制となる外国人であっても、法務大臣の裁量で特別に在留を許可する制度です。しかし、在留特別許可が認められるのは人道上配慮すべき特段の事情がある場合など非常に限られています。したがって、退去強制事由に該当する有罪判決を受けてしまう前に、いかにその事態を回避するか・または後の在留特別許可申請をにらんだ活動が何より重要になります。

弁護活動(逮捕後の対応策)

以上のとおり、大麻所持で有罪判決を受けるとビザの更新ができないばかりか、退去強制によって日本に在留できなくなるリスクがあります。外国人経営者にとって、日本で築いた事業基盤や生活を突然失う事態にもなりかねず、避けるべき深刻な結果です。そのため、逮捕後の対応(弁護活動)が極めて重要となります。

まず検討すべきは、不起訴処分(起訴猶予)を獲得することです。起訴されて有罪判決となれば退去強制は避けられませんので、そもそも起訴されないようにすることが最善の戦略となります。検察官は全ての事件を起訴するわけではなく、情状によっては起訴猶予(不起訴)とすることがあります。特に初犯で所持量がごく少量の場合など、再犯の可能性が低いと判断されれば、不起訴とされる余地があります。実際、処分が決定される際には再犯の可能性や所持していた大麻の量が大きな考慮要素となります。少しでも処分を軽くしてもらうためには、検察官に対して反省の意思や再犯防止策(例えば薬物依存治療に取り組む意思など)を示し、起訴猶予相当であると働きかけることが有効です。

そのためには、早い段階で弁護士を通じて検察官と交渉することが不可欠です。逮捕直後から弁護士が関与し、取調べ対応のアドバイスや有利な情状の収集・提出を行うことで、不起訴や寛大な処分を引き出せる可能性が高まります。例えば、大麻所持の事実関係について情状酌量を求める嘆願書を提出したり、必要に応じて故意(違法だと知っていたか)の有無を争うことも考えられます。

いずれにせよ、退去強制を回避するためには刑事事件における対応が極めて重要です。そのためには逮捕後の初動対応が極めて重要です。
Aさんのように外国人の方が逮捕されてしまった場合、できるだけ早く刑事事件と入管手続双方に精通した弁護士に相談・依頼することを強くお勧めします。専門の弁護士であれば、刑事弁護活動によって起訴や有罪判決を回避するとともに、万一起訴された場合でも入管当局への働きかけ(在留特別許可の申請準備など)について適切なアドバイスを行ってくれるでしょう。逮捕後の対応如何で、その後も日本にとどまり事業を続けられるかどうかが決まると言っても過言ではありません。外国人経営者の方は、万が一刑事事件に巻き込まれてしまった場合、速やかに経験豊富な弁護士にご相談ください。

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経営管理で速度違反を起こすと在留資格の更新ができるか

2025-08-16

事例(フィクションです)

「経営、管理」の在留資格で日本に滞在しているAさんは、適法な運転免許証を所持し、自家用車を保有していました。
ある日、Aさんは、自動車で帰宅中、周りの景色に気を取られてしまったことが原因で、思ったより速度が出てしまいました。
たまたま速度違反の取り調べを受けていた警察官によって速度が計測されてしまい、違反の事実が明らかになってしまいました。

このとき
①Aさんが受ける刑事罰はどのようなものになるか
②①の刑事罰は、Aさんの在留期間の更新時に影響があるか、若しくは退去強制処分となるか

以上の点について解説していきたいと思います。

⑴速度違反の刑事罰

今回は速度違反についての問題です。
速度違反については、「反則金」(青切符)で処理される場合と、「罰金」(赤切符)で処理される場合の2種類があります。
どちらになるのかは、①どのような道路での違反か,②何キロオーバーかの2つの点から決定されることになります。

一般道の場合、30キロオーバー以上が赤切符であり、それ未満は青切符です。
高速道路などの場合には、40キロオーバー以上が赤切符であり、それ未満は青切符です。

青切符の場合、いわゆる行政罰の一種として処理されることになりますので、前科にはなりません。
これに対して赤切符の場合には、「罰金」ですから、前科となります。
ですので、Aさんがどこで、何キロオーバーしたかで処分が異なるということになります。

スピード違反の刑事事件の弁護についてはこちらで解説しています。

スピード違反

⑵「経営、管理」の在留資格について

在留期間の更新は「更新を適当と認めるに足りる相当の理由があるとき」(出入国管理及び難民認定法21条2項)に認められますが、この認定にあたっては、出入国在留管理庁によるガイドラインがあります。
 このガイドラインによると、在留期間の更新が許可されるのは

1 行おうとする活動が申請に係る入管法別表に掲げる在留資格に該当すること
2 法務省令で定める上陸許可基準等に適合していること(別表第1の2の表又は第4の表に掲げる在留資格の下欄に掲げる活動を行おうとする者)
3 現に有する在留資格に応じた活動を行っていたこと
4 素行が不良でないこと
5 独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有すること
6 雇用。動労条件が適正であること
7 納税義務を履行していること
8 入管法に定める届出等の義務を履行していること

とされています。
このうち4の部分には「素行については,善良であることが前提となり,良好でない場合には消極的な要素として評価され,具体的には,退去強制事由に準ずるような刑事処分を受けた行為,不法就労をあっせんするなど出入国在留管理行政上看過することのできない行為を行った場合は,素行が不良であると判断されることとなります。」との記載がなされています。

それではガイドラインに従って順に確認します。

まず、「経営管理」の在留資格は、入管法上別表第1の2の表に記載がある在留資格です。
そのため、法務省令に定める上陸許可基準等に適合する必要があります。
この上陸許可基準は公表されていますが、概ね業務に関する事項や報酬についての定めが記載されています。ですので、仮にスピード違反によって処罰されたからといって上陸許可基準に該当しないというものではありません。

強制送還の対象?

今回の場合、ガイドラインに記載されている「素行が不良でないこと」が問題となります。そして、「退去強制事由に準ずるような刑事処分を受けた」場合には素行不良であると判断されることになるため、退去強制事由に準ずるような刑事処分であるかどうかを検討していくことになります。

それでは刑罰法令違反が退去強制事由となるかどうかを考えていきます。別表第1の在留資格の場合、入管法等在留関係の法律以外の刑罰法令が問題となる退去強制事由には、入管法24条4号リと同法24条4号の2があります。
まず、入管法24条4号リは、「無期又は一年を超える拘禁刑に処せられた者。ただし、刑の全部の執行猶予の言渡しを受けた者及び刑の一部の執行猶予の言渡しを受けた者であつてその刑のうち執行が猶予されなかつた部分の期間が一年以下のものを除く。」とするものです。

この4号リで問題とされるのは、実刑となった者、つまり執行猶予付きの判決を受けた場合は除かれています。速度違反の罪で実刑の判決となるのは複数回検挙されるとか、想定し難い速度違反等に限られると思われますので、典型的な速度違反ではこれに該当しない可能性の方が高いと思われます。

次に、24条4号の2ですが、こちらは一定の犯罪で拘禁刑に処せられた場合に退去強制事由となるものです。24条4号リとの違いは、罪名の違いがあるものの、執行猶予付きの判決であっても退去強制事由となる点にあります。ただ、Aさんが問題視されている速度違反は、この列挙された犯罪に含まれていませんから、これには該当しません。
最後に、次に、Aさんの処分が退去強制事由に「準ずる」刑事処分とまで評価されることがあるかどうかが問題となります。この点について、定住者告示3号等に該当する者の素行要件についての審査要領では「日本国又は日本国以外の国の法令に違反して、懲役、禁錮若しくは罰金又はこれらに相当する刑(道路交通法違反による罰金又はこれに相当する刑を除く。以下同じ。)に処せられたことがある者(以下略)」とされています。

この審査要領は一般の在留期間の更新にも該当すると考えられます。そのため、Aさんについても同じように考えることになりますが、かっこ書きで除外されているのは「道路交通法違反による罰金又はこれに相当する刑」となっており、速度違反での赤切符はこれに該当します。

だからといってこの赤切符のことを秘して在留期間更新申請を行うことはできませんので、入管当局に正直に説明し、二度と運転しないこと等の誓約を行い在留許可の更新を求める方がよいと思われます。

在留資格を持っている状態で速度違反をしてしまった場合には、期間の更新のためいち早く弁護士にご相談ください。

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「日本語学校が絶対に守るべき法的ルール5選|在留資格・アルバイト・更新管理の注意点を徹底解説」

2025-08-05

フルバージョンの解説はこちらから

外国人留学生が日本で安心して学び、生活するためには、学校側が法令遵守を徹底する必要があります。
日本語学校を運営する立場として、法的トラブルを未然に防ぐ体制づくりは避けて通れません。

この記事では、日本語学校の経営者や職員の皆様に向けて、「外国人の強制送還を防ぐために守るべき5つのルール」をご紹介します。
どれも基本的な内容ですが、違反すれば厳しい刑事処分や退去強制のリスクが伴います。

制度の背景や実務上の注意点も含めて解説しますので、学校内での教育・指導体制の見直しにぜひお役立てください。

1.入管法に基づく手続きを怠らないこと

外国人留学生は「出入国在留管理法(入管法)」により、さまざまな義務を負っています。
最も基本的なものとして「在留カードの常時携帯義務」があります。

警察官などの職務質問に際して在留カードの提示ができなかった場合、20万円以下の罰金が科されることがあります。提示を拒んだ場合には、1年以下の拘禁刑または20万円以下の罰金となる場合もあります。

また、住所や氏名、国籍などの変更があった場合には、14日以内に届け出が必要です。引っ越したのに届け出を忘れた場合でも、罰金の対象になります。

特に注意すべきは、住所登録を怠ると「在留資格の取消し」になることがある点です。在留カード交付後90日以内に住居登録をしなければ、入管はその外国人を「行方不明」と見なし、在留資格の取消しを検討します。

実務のポイント:

  • 入学時に住民登録を早期に行うよう案内する
  • 引っ越し後の住所変更届を出すよう定期的に確認
  • 氏名・国籍などの変更にも注意喚起

「うっかり忘れていた」では済まされない手続きです。留学生本人への指導と同時に、学校側もサポート体制を整えてください。

2.在留資格の更新を忘れないこと

在留資格の更新は、外国人にとって「日本に合法的に滞在し続けるための命綱」といえます。
とりわけ留学生や就労ビザで滞在している職員は、期限付きの在留資格を有しており、その有効期間内に更新申請を行わなければ、違法滞在(オーバーステイ)と見なされてしまいます。

在留期限を1日でも過ぎてしまうと、その時点で「不法滞在者」となり、3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金が科せられる可能性があります。
さらに不法滞在は退去強制事由にも該当し、強制送還された場合は原則として「再入国禁止措置」が取られ、少なくとも1年は日本に再入国できなくなります。

このような深刻な結果を防ぐには、学校側の管理体制が不可欠です。学生個人の責任に任せていては「うっかり失念」による重大トラブルを防ぎきれません。

実務のポイント:

  • 学生・職員の在留カードを一覧管理し、有効期限を把握
  • 少なくとも3か月前から更新時期を案内・督促
  • 更新手続き中の在留資格(特例期間)に関する情報提供も行う

留学生本人が更新を怠ってしまうと、日本語学校の信頼にも関わります。入国管理局から「適切な管理が行われていない」と判断され、認定校としての地位にも影響を与えかねません。

参考報道 日本語学校、不法残留「3割以上」で認定取り消し 日本経済新聞社

確実な更新管理体制を、学校全体で築いていきましょう。

3.資格外活動をしないこと

多くの留学生がアルバイトを通じて生活費を補助したり、日本の職場環境を体験したりしています。
しかし、留学生のアルバイトには厳格なルールがあり、「資格外活動許可」の取得が必須です。

入管から許可を得たうえで、留学生は週28時間以内の範囲でアルバイトをすることができます。ところが、これを超えてしまうと「資格外活動違反」となり、法的責任が問われます。

さらに、風俗営業関連(パチンコ店、キャバクラ、マッサージ店など)での就労は禁止されており、たとえ1日でも働けば違法となります。
資格外活動違反は、1年以下の拘禁刑または200万円以下の罰金、悪質な場合には3年以下の拘禁刑や300万円以下の罰金が科されることもあります。

そして何より重要なのは、違反が判明すれば在留資格の取消し、退去強制の対象になるということです。再入国も困難になり、将来の人生に大きな影響を及ぼします。

実務のポイント:

  • アルバイトの許可証明書(資格外活動許可)の取得を必ず確認
  • 学生と定期的に面談し、労働時間・職種の状況を把握
  • 「親に仕送りしたい」「生活が苦しい」等の事情を理解しつつ、法令順守を指導

「ちょっとくらい大丈夫」は絶対に通用しません。日本で学ぶ本来の目的を見失わないよう、学校として強い姿勢で啓発していきましょう。

4.不法就労をさせないこと

「不法就労」とは、外国人が日本で働く資格がないにもかかわらず就労する行為を指します。
これは資格外活動のルール違反よりもさらに広く、重大な法律違反と位置付けられています。本人だけでなく、雇用主にも処罰が及ぶため、日本語学校の経営者や事務職員としても理解・対応が必須です。

不法就労は大きく以下の3つのケースに分類されます。

① 不法滞在者・不法入国者の就労

すでにオーバーステイ(不法残留)状態にある外国人や、そもそも正規のビザを持たずに入国した者が就労しているケースです。
この場合、発覚次第「即時退去強制」となり、再入国は原則として5年間禁止されます。

② 資格のない者による就労

たとえば短期滞在ビザ(観光)で来日した外国人が、そのまま仕事に就いた場合などです。
また、留学生が資格外活動許可を得ずにアルバイトを始めたケースも、ここに該当します。

③ 在留資格の範囲外での就労

たとえば技術・人文知識・国際業務ビザを持つ外国人が、契約にない単純労働(清掃業務など)に従事した場合などです。
これは資格外活動違反として処罰されると同時に、広義の不法就労にも該当します。

不法就労助長罪にも注意

外国人本人の処罰に加え、不法就労させた雇用主も処罰されます。
「不法就労助長罪」によって、以下のような罰則が規定されています。

  • 5年以下の拘禁刑 または 500万円以下の罰金(または併科)

この罪は、故意に不法就労者を雇った場合だけでなく、「在留カードの確認を怠った」などの過失でも適用されることがあります。
つまり、「知らなかった」では通用しないのです。

実務のポイント:

  • 学生の就労先が適法であるかを定期的に確認
  • 観光ビザ・失効ビザなどの者が働いていないか注意喚起
  • 学生に「不審な求人(高時給・現金手渡し等)」への警戒を促す

外国人留学生が不法就労に関与してしまえば、彼らの人生だけでなく、日本語学校の信頼にも傷がつきます。
学内での継続的な教育と防止策が不可欠です。

5.犯罪行為・交通違反をしないこと

「犯罪行為や交通違反をしない」ことは、すべての人に共通する基本的なルールです。
しかし、留学生の場合は違反によって「在留資格の取消し」や「退去強制」といった重大な処分につながるリスクがあるため、特に慎重である必要があります。

一般犯罪と退去強制

外国人が一定の犯罪で有罪判決を受けた場合、入管法第24条により退去強制の対象になります。
代表的な例として、次のような場合が該当します。

  • 無期または1年を超える拘禁刑の実刑 → 原則として退去強制
  • 留学等の在留資格で一定の犯罪(例:窃盗)で執行猶予判決 → 退去強制の対象
  • 薬物犯罪 → 執行猶予付きでも退去強制の可能性
  • 売春行為への加担→起訴されなくても退去強制の可能性

「一度の過ち」で日本での将来が絶たれるケースは少なくありません。特に薬物や暴力、性犯罪などは厳しく処分されます。学校としても予防啓発が求められます。

交通違反も重大なリスク

交通違反も油断できない領域です。以下のような違反は、刑事罰の対象になります。

  • 飲酒運転(酒気帯び)
     → 3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金
  • 飲酒運転(酒酔い)
     → 5年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金
  • 無免許運転
     → 3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金

さらに、近年では自転車による違反(信号無視・飲酒運転など)も厳しく取り締まられ、刑罰の対象になる場合があります。

実務のポイント:

  • 学生に対して法令順守・交通ルールの周知を徹底
  • 自転車利用者にはヘルメット着用やライト点灯のルールも指導
  • 交通違反歴の累積にも注意(更新時に素行不良と判断される恐れ)

些細な違反でも、「繰り返し違反=素行不良」とされれば、在留資格の更新が許可されないリスクがあります。
「知らなかった」では済まされない厳しい現実を、学生と共有してください。

留学生の将来を守るために、日本語学校が果たすべき役割

ここまで、日本語学校の運営において必ず守るべき「外国人留学生に関する5つの重要ルール」について解説してきました。
もう一度、簡単に振り返ってみましょう。

【日本語学校運営者が絶対に把握しておくべき5つの法的ルール】

  1. 入管法に基づく手続きを怠らないこと
     → 在留カードの携帯義務、住所・氏名・国籍変更の届け出などは必須。怠ると罰金や資格取消しのリスクあり。
  2. 在留資格の更新忘れを防ぐこと
     → 有効期限管理を徹底し、更新を失念しない体制を。オーバーステイ=不法滞在となり、強制送還対象に。
  3. 資格外活動をしないこと
     → 留学生のアルバイトは「資格外活動許可」の範囲内(週28時間以内)でのみ許容。超過や風俗関連就労は禁止。
  4. 不法就労をさせないこと
     → 資格外活動や無許可就労は本人だけでなく、雇用側も「不法就労助長罪」で罰せられる。在留カードの確認は必須。
  5. 犯罪・交通違反を防止すること
     → 窃盗・暴力・薬物・飲酒運転・無免許運転などは在留資格取消しや強制送還の原因に。違反の累積もNG。

これらはすべて、「留学生の人生そのもの」に直結する重大なルールです。そして、そのリスクを予防できる最前線に立っているのが、日本語学校の皆さまです。

学校内でできる実践的な対策とは?

  1. 学内ルールの明文化・配布

入学時オリエンテーションで法令遵守について明確に伝え、文書として配布しましょう。母国語訳資料も有効です。

  1. 定期的な在留資格の確認・チェック

在留カードのコピーを取得し、有効期限を一覧管理する体制を構築。職員間で共有し、期日が近づいたらリマインドを徹底。

  1. アルバイト状況のヒアリング

週1回の簡易アンケートや月次面談を導入することで、就労時間・職種・許可の有無を把握しやすくなります。

  1. 外部支援団体や弁護士との連携

行政書士や弁護士と連携することで、トラブル発生時にも迅速な対応が可能です。法的リスクの相談先を確保しておくことも重要です。

まとめ:守るべきルールを知ることは、未来を守ること

日本語学校の運営においては、語学教育の提供だけでなく、留学生の在留資格をめぐる法的リスクの管理も極めて重要な責務です。

「知らなかった」では済まされないルールばかりですが、正しい知識と体制があれば、多くのトラブルは防ぐことができます。
学生の将来を守ることは、学校の信頼を守ることにつながります。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、日本語学校をはじめとする教育機関の皆様に対して、外国人関連法務・刑事事件対応・予防教育に関する支援を行っております。
在留資格の取消し、強制送還、就労違反など、どんな小さなご相談でも構いません。どうぞこちらからお気軽にご相談ください。

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【お客様の声】薬物輸入事件で強制送還を回避し在留特別許可を得た事例

2025-08-02
薬物事件で逮捕された外国籍の方の在留特別許可

薬物事件で逮捕された外国籍の方の在留特別許可

【事例】

ご依頼者様は外国籍で,日本国籍の方と結婚し,本邦で実子を扶養していました。
ある時,ご依頼者様は日々のストレスから違法薬物を海外から取り寄せて使用してしまいます。
まもなく警察に発覚し,ご依頼者様は逮捕され刑事事件で有罪判決を受けてしまいました。
ご依頼者様は「日本人の配偶者等」であり,有罪判決によって強制送還となってしまう可能性が出てきました。

【弁護活動】

刑事事件について弊所でご依頼頂いており,その後の在留特別許可についても引き続き代理人として手続きを行いました。
刑事裁判が何とか執行猶予で留まっていたこと(輸入罪もあったため実刑判決が危ぶまれていました),日本で子供を扶養している立場であったため強制送還されると一家が離れ離れになってしまうこと,ご本人も深く反省して二度と薬物に関わらないという意思を持ちカウンセリングにも通っているという事情を聴き取り,在留特別許可を求める意見書を作成しました。
最後の入管での手続きでは弁護士も同行し,最終的には無事も在留特別許可を得ることができました。

【コメント】

このケースでは,「外国籍の方(特別永住者を除く)が違法薬物で検挙されてしまったケース」として,理想的な弁護活動ができたといえます。
刑事事件については「早期の保釈→執行猶予判決」,入管手続きについては「入管での収容回避→在留特別許可」というように,無用な身体拘束を避け,『家族での生活を続ける』という最終目標をぶれることなく遂行できました。刑事事件から入管手続きまで,一貫して活動することの重要性がよく表れています。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では,刑事事件から入管手続きまでをワンストップで対応できる弁護士が在籍しています。
外国籍の方の刑事事件でお困りのことがある方は,弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所までご相談ください。

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弊所の弁護士前田真一が取材を受けました

2025-07-25

20250723152941409

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所に所属している神戸支部長弁護士前田真一が取材を受け,令和7年7月24日付週刊文春に掲載されました。
本邦における外国人の在留資格と,資格外活動による在留資格の取消し,刑事罰のリスクについて弁護士の立場からコメントしています。
本邦における資格外活動についてお困りのことがある方や,外国人の雇い入れ・就労についてご不安なことがある方は,一度ご相談ください。

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「経営・管理」ビザで万引き事件,退去強制となるか?

2025-07-19

「経営、管理」の在留資格で日本に滞在しているAさんは、スーパーで万引きをしてしまいました。
数ヶ月後、Aさんは警察により逮捕されてしまいました。

このとき
①Aさんが受ける刑事罰はどのようなものになるか
②①の刑事罰により退去強制になることはあるのか
③Aさんとしてできることはあるのか

以上の点について解説していきたいと思います。

刑事罰の見込み

窃盗罪は刑法235条に定めがある罪で、その法定刑は10年以下の懲役又は50万円以下の罰金となっています。
10年以下と極めて重い罪になっていますが、これは被害額によって法定刑の区分がないからです。1000円から1万円位の万引きであれば、10年の懲役等を受けることは通常考えられません。

窃盗罪の具体的な刑罰を決める際には、①被害額がいくらであるか②どのような目的で盗んだか③被害回復がなされているか④何回目の検挙であるかが大きな考慮要素となります。

①まず被害額ですが、これは単純に多ければ多いほど重くなるということになります。ただ、1000円と1万円で比較すると1万円のほうが10倍悪いという単純なものではありません。
②目的ですが、自分で使用する目的などが通常だと思われますが、転売目的や組織的な窃盗だと重く見られます。
③窃盗罪は財産に関する犯罪です。ですので、財産的な補填が被害者になされているかどうかも重要です。
④最後に、万引きのような事件の場合これが大きな問題となってくるのですが、何回目の検挙であるかも重要です。いくら被害額が少なく、被害回復がなされていたとしても、何度も何度も検挙されているような状況では、処分を軽減することにも限度が生じます。一般的な感覚の通りですが、通常は1回目より2回目が、2回目より3回目が、3回目より4回目が重い処分となります。

また、前回と今回の間隔(何年程度空いているか)も重要です。これがあまりに近いということになると、常習性が疑われて、より重い処分となります。
そこでAさんの刑事罰ですが、1回目の検挙であれば被害回復を行っていれば起訴猶予となる可能性も十分あります。ただ、2回目であれば罰金、3回目であれば執行猶予付きの判決という形でどんどん重くなってきます。また、たとえ100円の万引きであっても、執行猶予付き判決中や猶予期間満了後すぐにやってしまうと、刑務所に行く実刑判決となる可能性が相当高いと言えます。

今回は、一例として罰金になったことを想定して検討していきます。

万引き事件に対する刑事弁護の解説はこちら

万引き

退去強制事由となるか

刑事事件と退去強制が関わる条項は、いくつかありますが、代表的なものは入管法24条の
4号チ 薬物事件で有罪判決を受けた者
4号リ 1年以上の実刑判決を受けた者
4号の2 窃盗などの事件で懲役または禁錮の判決を受けたもの
となっています。

今回の事件であれば、4号の2に該当します。

そのため、窃盗罪で罰金となったとしても、ただちに4号の2に該当するわけではありません。

しかし、仮に退去強制とならなくても、在留資格の更新を受けられるかどうかは別問題です。
在留資格の更新時には素行が善良であることが求められていますが、有罪判決を受けた場合には素行善良の要件に問題が生じ、在留資格の更新がされない場合があります。
このような場合、在留資格が更新できず、期限が到来してしまうと、オーバーステイ状態となり、退去強制事由に該当してしまいます。

Aさんはどうすればよいか

窃盗罪で逮捕された場合、最初は家族であっても面会できません面会することができません。
逮捕されてから2日程度は、弁護士以外が面会できない状況になりますので、家族としても状況の把握などが困難です。
また、仮に釈放されたとしても、捜査が継続して、場合によっては刑事罰を受けてしまうことは上述の通りです。
窃盗罪は被害者のいる犯罪です。事実間違いないという場合には、逮捕された場合には警察からの連絡を受けてすぐに、在宅事件の場合でもできる限り早く、弁護士に相談し、被害者の方への謝罪や入管への対応などを検討する必要があります。

在留資格の不更新の決定が出てしまってからとなると、在留特別許可を得る方法以外が困難となり、取りうる手段が減ってしまいます。
まだ処分が出る前、色々な対策を講じることができる時期に、弁護士にご相談ください。

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永住者が旅券法違反をしてしまった場合の処分,ビザへの影響

2025-07-12

【事例】

Aさんは、日本に永住資格で在留する外国人です。Aさんは、海外旅行に行くことが多いことから、日本のパスポートを所持しています。
ある日、友人のBさん(Aさんと同じ国の出身、見た目は似ていない)から、「明日からアメリカに旅行に行きたいが、パスポートをなくしてしまった。だから、パスポートを貸してほしい。」と言われ、パスポートを貸してしまいました。
数日後、Bさんが、アメリカにコカイン1キロを密輸しようとして逮捕されたとの報道があり、その際にAさんのパスポートを提示したとのニュースがあり、間もなく、Aさんは旅券法違反、コカインの密輸出の疑いで逮捕されてしまいました。
Aさんのコカイン密輸出については、AさんとBさんとの間でコカインに関するメール等のやり取りがなかったことから、不起訴になりましたが、Aさんは旅券法違反で起訴されてしまいました。
なお、Aさんに前科はありません。

このような事例の場合に、①Aさんはどのような刑事処分を受けるのか、②退去強制処分を受けるのかについて解説していきます。

(1)旅券法違反に対する刑事処分

旅券法23条1項3号によれば、「行使の目的をもって、自己名義の旅券又は渡航書を他人に譲渡し、又は貸与した」場合に、5年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金が予定されています。
なので、今回のAさんのように他人に旅券を貸与する行為は刑事罰の対象になります。
旅券法違反単独の事件というのは、文書偽造罪との関係で問題になった事例が多く、量刑傾向をつかむのは難しいのですが、他人にパスポートを貸す行為については、執行猶予付きの懲役刑になる傾向があるようです。
なぜなら、他人にパスポートを貸す行為というのは、密入国やパスポートの偽造などの危険が大きいものであり、パスポートの信頼を揺るがしかねない物だからです。
旅券法違反の量刑については、①パスポートを貸した目的、②パスポートを貸すことになった経緯、③営利目的でやっていないかどうかによって判断されます。
①については、パスポートを貸す目的が、密入国を助ける目的だったり、文書偽造の目的であったりする場合には、重く見られます。
②については、パスポートを貸すことになった経緯として脅されて課したなどの酌むべき事情がある場合には有利に見られます。
③については、営利目的で反復継続して貸しているような事情がある場合には重く見られます。
今回のAさんの場合、パスポートを貸す目的が海外旅行に行く友人を助けるため、友人から貸してほしいと頼まれたために課していること、営利目的で行っていないという事情を考慮してAさんの量刑を判断することになります。

外国人の刑事事件についてはこちらでも解説があります。

外国人の刑事事件 |在留資格への影響

(2)退去強制処分を受けるのか?

入管法24条4号ニによれば、「旅券法23条第1項から3項までの罪により刑に処せられた者」については、退去強制処分の対象になることが規定されています。
そのため、今回のAさんについては、旅券法23条1項の犯罪を犯して、刑に処せられると考えられることから、退去強制処分の対象となります。

(3)弁護士にできること

このような処分が予想されることから、弁護士にできることとしては、①Aさんに有利な事情を提出して刑事裁判でなるだけ有利に判断してもらうこと、②在留特別許可を得るようにして、なるだけ日本に残れるよう求めることができます。
以上のような活動を行うことができますので、他人にパスポートを貸してしまった場合には、早めに弁護士に相談することをお勧めします。

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