外国人永住者が不法就労助長罪に疑われたらどうなる!?

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日本で永住資格を持つ外国人が刑事事件に関与してしまうと、刑事罰だけでなく在留資格(永住資格)やこれまで築いてきた生活基盤を失う危険があります。
特に「不法就労助長罪」の疑いをかけられた場合、そのリスクは極めて深刻です。
この記事では、不法就労助長罪とは何か、その成立要件や法定刑、疑われた場合に受ける刑事上のリスクと永住資格への影響について、入管・刑事事件に精通した法律事務所の視点から解説します。
また、取調べへの対応方法や弁護活動のポイント、早期に弁護士へ相談する重要性についても紹介いたします。

不法就労助長罪とは

「不法就労助長罪」とは、外国人に不法就労(在留資格外の違法な就労)をさせたり、その行為を助けたりする行為を処罰する犯罪です(不法就労をした外国人本人を罰する「不法就労罪」とは別個の犯罪です。)

なお、日本人であっても処罰の対象になります。

典型的な例としては、事業主が在留資格を持たない外国人を自分の店で働かせるケースや、業者が不法就労させるために外国人を集めて紹介するブローカー行為を行ったケースなどが挙げられます。
この罪の法定刑は3年以下の拘禁または300万円以下の罰金(またはその併科)と非常に重く、また個人とは別に法人(会社)にも罰金刑が科されます。また、不法就労助長罪は令和6年の法改正により厳罰化することが決定しており、改正法が施行されると法定刑が「5年以下の拘禁または500万円以下の罰金(またはその併科)」に引き上げられる予定です。
そして、外国人自身がこの罪を犯した場合は入管法上の退去強制(強制送還)の対象ともなります。

事例(永住者が不法就労助長罪で疑われたケースを想定)

Aさんは永住権を持って日本に在留している外国人で、国内で飲食店を経営しています。
ある日、Aさんは外国人留学生のBさんを在留資格や在留期限を確認せずに「アルバイトスタッフ」として採用し、違法になるとは知らず店で働かせはじめました。
ところが後日、警察の摘発によりBさんが不法残留(オーバーステイ)の疑いで逮捕されてしまいました。
その事件の捜査の過程で、実はBさんの在留資格が「留学」であり、Aさんが採用した時点ですでに在留期限を超えていたことが明らかになりました。
その結果、Aさんも「外国人に不法就労をさせた」容疑で警察に逮捕される事態となってしまいました。
自分は悪意なく雇っただけと思っていたAさんにとって、まさに青天の霹靂と言える状況です。

刑事罰のリスクと影響

不法就労助長罪が成立した場合、現行法の法定刑は「3年以下の拘禁」または「300万円以下の罰金」、もしくはその両方と定められています(法改正後の厳罰化については既にお話した通りです)。

具体的な刑の重さを決める際には、不法就労させた外国人の人数や就労させた期間といった事情が考慮され、その人数が多いほど、期間が長いほど処罰が重くなる傾向があります。
初犯であれば執行猶予付きの拘禁刑に加えて罰金刑が一緒に科されるケースが多いようです。
特に注意を要する点として、入管法には、在留資格を確認せず外国人を働かせた場合には「知らなかった」「うっかり」では済まされず処罰されるという規定があります。

確認義務を怠った以上、雇った外国人の在留資格について問題ないと認識していたとしても、罪に問われてしまう可能性があるので注意が必要です。
もし逮捕・起訴されて有罪判決を受ければ前科がつき、社会生活や就労にも大きな支障をきたします。

更に、刑事裁判で実刑判決を受け服役する事態になれば、仕事や家庭など生活基盤への大きな打撃は避けられません。

特に、日本に在留している外国人にとっては、このまま日本に在留し続けられるかという重大な問題も生じてきます。これは、永住資格を有している人でも同じです。

永住資格への影響

永住者にとって重大なのは、有罪か否かにかかわらず不法就労助長の事実によって在留資格自体が危うくなることです。
不法就労助長を行った外国人は、入管法24条3号の4に定める退去強制事由に該当し、永住者であっても強制送還の対象となり得ます。
たとえ刑事事件については不起訴となるなど罰を受けなかった場合でも、在留資格の審査は裁判所とは別の機関である入管当局が取り扱うので、入管当局に不法就労助長行為が認められてしまうと、直ちに強制退去の手続きが進められてしまうおそれがあります。
そして、一度でも退去強制となれば永住許可は取り消され、日本からの出国を余儀なくされます。
日本での職場や家庭、暮らしの基盤を一瞬にして失ってしまう可能性があり、その影響は計り知れません。
永住資格を持つ方にとって、「本罪の嫌疑をかけられること」それ自体が、日本に住み続ける権利を失う非常に深刻なリスクを伴うのです。

取調べ対応と弁護活動

捜査段階で警察から取調べを受ける際には、自身の権利を理解し慎重に対応する必要があります。
取調べを受ける人には黙秘権(話したくないことは話さなくてよい権利)が保障されており、警察に言われるがままに供述する義務は全くありません。
不用意な発言が自分に不利な証拠となりかねないため、可能であれば弁護士と相談した上で取調べに臨むことが望ましいでしょう。
弁護士から取調べ対応のアドバイスを受ければ、供述内容に注意しながら適切に対処でき、結果的により重い刑罰を避けることにもつながります。
また、弁護人となった弁護士は、早い段階で検察官と交渉し、有利な事情を示して不起訴処分や減刑を求める弁護活動を行います。
さらに、永住者の場合は悪質な故意がなく過失にとどまることなどを、入管当局に対しても事案に応じて強調し、退去強制処分を避けるよう弁護します。
このように専門家による適切な弁護活動によって、刑事処分や強制送還といった最悪の事態を回避できる可能性があります。

早期の弁護士相談の重要性

不法就労助長罪の疑いをかけられた場合、できるだけ早く弁護士に相談することが肝心です。
刑事事件は時間との勝負であり、初動の対応次第でその後の結果が大きく変わります。
特に逮捕後は警察での取調べと並行して在留資格取消しの調査が進むケースもあります。
しかし、国選弁護士(裁判所が選任する弁護人)は刑事事件のみを担当する弁護士であり、入管当局によるビザ取消し手続きには関与できないため、永住資格を守るためにはビザにも対応できる私選の弁護士を早急に依頼する必要があります。

早期に経験豊富な弁護士に相談すれば、刑事弁護と入管手続の両面にわたる戦略を立てることが可能です。
例えば、証拠が揃う前に適切な弁解を準備したり、必要に応じて入管当局への働きかけ(在留特別許可の申請等)を検討したりと、打てる手は格段に増えます。
事態が深刻化する前に専門家のサポートを受けることで、処分の軽減や在留資格維持の可能性を高められるでしょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所までご相談ください

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、日本でも数少ない刑事事件・少年事件を専門的に取り扱う全国規模の法律事務所です。
全国の主要都市に拠点を構え、外国人の入管在留案件を含む様々な刑事事件で豊富な実績を有しています。
特に、入管手続にも精通した弁護士および行政書士チームが在籍しており、刑事手続と在留資格手続の両面でワンストップの法的サポートが可能です。
永住者を含む在日外国人の権利と生活を守るために全力で対応いたします。
当事務所では24時間365日、初回無料法律相談を受け付けております。

永住者の方で刑事事件について不安がある方は、ぜひ弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。

 

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