【事例】
Aさんは、日本に定住者の資格で在留する外国人です。Aさんは、中古車販売を行う会社を経営しています。
ある日、友人から紹介された中古車の販売をするBさんから、この車を売りたいと言われたことから、中古車を購入することになりました。
しかし、その自動車はなぜか、鍵穴が壊され、ナンバープレートが取り外されており、この車を持っていたとされるCさんからBさんに所有者が移ったのか車両番号から明らかでありませんでした。そのため、AさんはBさんに「盗難車じゃないのか」と聞いたところ、「そうじゃない」と言われました。そのため、盗難車でないなら買い取ろうと思って100万円で購入しました。
なお、Aさんはこれまで、盗品の中古車を会社で買うことはありませんでした。また、Aさんには前科等はありませんでした。
そうやってBさんから中古車を購入して数か月たったころ、警察から、盗品有償譲受の疑いで会社に対する捜査が入り、Aさんは逮捕されてしまいました。
このような場合に、①どのような刑事処分を受けるのか、②退去強制処分になるのかについて解説していきます。
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(1)盗品有償譲受罪に対する刑事処分
刑法256条2項によれば、「前項に規定する物(盗品その他財産に対する罪に当たる行為によって領得された物)を…(中略)…有償で譲り受け」た場合に盗品有償譲受罪が成立し、10年以下の拘禁刑及び50万円以下の罰金の刑に処されるとされます。注意が必要なのは、盗品関与罪に当たる罪を犯した場合、必ず、懲役刑(執行猶予も含む)と罰金が科されるということです。
盗品有償譲受罪が成立した場合の量刑傾向は、①被害品の価格、②業務として継続的にやっているか否か、③前科があるかなどによって判断されます。
①については、金額が大きければ大きいほど重く見られます。
②については、継続的にやっていれば、やっているほど重く見られます。
③については、前科があれば、重く見られます。
今回のAさんの場合、金額が100万円と高額ですが、これまで盗品の中古車を買い受けていないこと、前科がないことが有利な事情として考慮されて、執行猶予付きの有罪判決に罰金刑が併科される可能性が高いです。
(2)退去強制処分の可能性について
定住者が退去強制処分になるかどうかについては、入管法24条4号リに規定があります。
これによれば、1年以上の実刑判決を受けた場合には、退去強制処分の対象となります。
本件事案におけるAさんは、執行猶予付きの有罪判決と罰金の刑罰を受けることが予想されることから、退去強制処分になるとは考えにくいです。
(3)弁護士にできること
弁護士としてできることとしては、①中古車が盗品だと知らなかったと主張して無罪判決を得ることのできるよう活動すること、②被害者と示談して、不起訴を目指す活動をすることが考えられます。
①のように、中古車が盗品だと知らなかったと主張するためには弁護士を付けて対応することが望ましいこと、②示談をして、不起訴を目指すためには、弁護士を付けることが望ましいことから、盗難車の売買に関わって、お困りの方は迅速に弁護士に相談されることをお勧めします。